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最終更新日:2004.08.24

連続セミナー2004 第5回「ヒューマノイド技術最前線」

 

開催日時:平成16年11月 2日(火) 9:30-17:00
開催会場:東京電機大学 神田キャンパス7号館1F 丹羽ホール(東京都千代田区神田錦町2-2)

コーディネータ:稲葉 雅幸(東京大学)

【セミナー概要】
ロボットは、機械、電気、情報、制御などの分野の技術を統合したシステムとして創られる総合技術となっています。近年、人間型のロボットであるヒューマノイドが進化を遂げており、日本が世界をリードする研究開発分野となっています。人間と似た姿形をしたロボットに対して、人と同じような振る舞いをしてくれるのではないかと人は期待しますが、そういった期待に答えるにはヒューマノイドのふるまいを自由に形作るための情報技術が大変重要なものとなっています。
本セミナーでは、ヒューマノイドが情報技術分野において新しい計算機としても位置づけることができるくらいに進化をとげてきていることをご紹介し、社会の中での活動を期待されているヒューマノイドを実際に開発されている研究グループの方々にヒューマノイド技術の最前線についてご紹介していただきます。「安全・快適な社会を築く情報技術」という連続セミナーの中ですが、広くとらえて、学会理事からのご要望にお答えして実現が可能となったものです。ご期待ください。

【プログラム】

セッション1  9:30-11:00 「ヒューマノイドとプログラミングシステム」

(1)プロトタイピングシステム 稲葉 雅幸(東京大学)
(2)リアルタイム統合システム 加賀美 聡(産業技術総合研究所・東京大学)

【講演概要】人間のように目や手足をもって動き回る新しいコンピュータとしてのヒューマノイドをどのように創っているかを東大での事例をもとに紹介する。まずは、小型手乗りヒューマノイドから筋骨格型等身大ヒューマノイドなどを自由に設計し、回路基板ボードや機構部品などをラピッドプロトタイピングし、できあがった身体をモデル化すれば行動プログラムを簡単に作ることができる環境を紹介する。次に、通常のPCを体内に組み込み、視覚処理、関節サーボ、全身誘導制御のすべての処理を1台のPC上のソフトウェアで実現して、ボールを追いかけて蹴って歩いたり、はしごを登ったりする等身大ヒューマノイドのシステムについてその実現法を紹介する。

セッション2 11:10-12:40 「ホンダヒューマノイドASIMOまでの開発概要」
                 配川 有二(本田技術研究所)

【講演概要】人と共存して役立つヒューマノイドを目指してスタートした本田のヒューマノイドロボットの開発について、当初のコンセプトからP2、P3、ASIMOまでの技術開発の流れを解説する。ASIMOは発表後、日本でのレンタル事業や、北米、欧州、アジア大洋州等でのさまざまなイベント等の場で広く活用されきた。そのような運用によって、実際的な環境での使い勝手やシステムの信頼性は向上し、一般のオペレータによる運用も可能なレベルになっている。画像認識、音声対話、ネットワーク等の知能化技術の搭載により、より実用的な機能応用も進めている。これらの現状について紹介する。

−昼食−

セッション3 13:40-15:10 「小型二足歩行エンターテインメントロボットQRIO」

(1)開発経緯と基本構想 黒木   義博(ソニー)
(2)歩行・跳躍・走行統合運動制御 長阪 憲一郎(ソニー)
(3)画像認識技術とその行動制御への利用 佐部 浩太郎(ソニー)

【講演概要】小型二足歩行エンターテインメントロボットQRIOの開発経緯と基本構想を基に、歩行・跳躍・走行運動といった、接地状態と非接地状態が混在する多様な運動の実行が可能な、小型ヒューマノイドロボットの運動制御技術について紹介する。
ZMP安定判別規範の上位概念にあたる、非接地状態にも適用可能な安定判別規範の考え方と、その数値解法を中心に紹介する。またインテリジェントな機能として、ステレオビジョンハードウェア、環境認識、顔認識、色物体認識、動き認識などの画像認識技術とそれらを統合する短期記憶処理の技術を紹介する。QRIOの行動として発現させたアプリケーションの例として、障害物回避行動や、ユーザの発見から対話までの行動、ボール遊びや反射行動などを取り上げて解説する。

セッション4 15:30-17:00 「ヒューマノイドのソフトウェアプラットフォームOpenHRP」

(1)アーキテクチャ 金広 文男(産業技術総合研究所)
(2)コンテンツ 比留川博久(産業技術総合研究所)

【講演概要】働く人間型ロボットHRP-2のソフトウエアプラットフォームとして開発したOpenHRPの概要について紹介する。OpenHRPは、ソフトウエアモジュールの集合として実装され、ミドルウエアCORBAを用いて統合されている。ユーザ空間で実時間拡張を実現したART-Linuxをターゲットシステムで利用することや抽象化インターフェイスの導入により、開発システム上のソフトウエアとのバイナリ互換性を実現しているのが特徴の一つである。本講演では、まずOpenHRPのアーキテクチャと特徴について紹介し、続いてこの上で開発された動作制御ライブラリ等のコンテンツの概要について述べる。