イベント企画 講演概要

船井業績賞受賞記念講演:並列オブジェクト,Twitter,新型ウイルス抗体解析

9月3日(木)14:00-15:15[第1イベント会場(9号館3階 937教室 - tohtech MEMORIAL HALL)]
 
 [講演概要]
今日,ソフトウェアシステムの開発において,オブジェクト指向はメジャーな位置を占めるに至った.本講演では,問題領域のモデルから直接的にシミュレーションプログラムを構築し実行するというアプローチに沿って,70年代半ばに米澤が着想した「並列オブジェクト」の研究・開発の流れを概観する.Web2.0時代の代表でもあるセカンドライフやTwitterなどの開発に「並列オブジェクト」が使われたことを指摘し,さらにスパコン応用プログラムの開発にもその有用性が認められた事例を紹介する.
また,マルチコア時代のプログラミングの方法にも触れたい.
 
 米澤 明憲(東大)
1970年東大工学部卒.1978年MIT Ph.D.(計算機科学).東工大を経て1988年東大情報科学科〔後にコンピュータ科学専攻〕教授.1989年米国計算機学会フェロー(ACM Fellow).日本ソフトウエア科学会理事長,ドイツ国立情報科学技術研究所(GMD)科学顧問等歴任.現在,産総研情報セキュリティ研究センター副センター長や東大情報基盤センター長を兼務.昨年,並列オブジェクトの研究により第4回のダール・ニゴール賞をアジアで初受賞.
 

 
特別基調講演:垂直磁気記録 −その開拓と実現−

9月3日(木)15:30-16:30[第1イベント会場(9号館3階 937教室 - tohtech MEMORIAL HALL)]
 
 [講演概要]
2005年以降ハードディスク装置(HDD)の大容量化が一気に進み,テラバイトの時代に入ろうとしている.これはディスクの磁性面を垂直方向(従来は水平方向)に磁化する垂直磁気記録方式が実現したためで,磁気記録の世界における初めての大転換と言われている.高密度記録の性能に優れるために水平方式から垂直方式への転換が急速に行われており,2008年におけるHDDの出荷量(世界)の85%(約5億台)が垂直方式になると予想されている.
この講演では発明の契機,開発の進め方および実現の現状について述べ,これに基づいた革新技術の開発方法論についての私見を紹介したい.
 
 講   演:岩崎 俊一(東北工大)
1949年東北大学工学部通信工学科卒.1959年工学博士.1964年東北大学電気通信研究所教授.1986年東北大学電気通信研究所長.1989年東北工業大学学長,東北大学名誉教授.1991年日本学術会議会員(第5部・第15・16・17期).2003年日本学士院会員.2004年学校法人東北工業大学理事長(現在に至る).2008年東北工業大学名誉学長.1987年日本学士院賞,文化功労者.1988年科学技術功労者.2003年叙勲瑞宝重光章.
 

 
街中を移動する人によるセンシング

9月2日(水)9:30-12:00[第1イベント会場(9号館3階 937教室 - tohtech MEMORIAL HALL)]
 
 [企画概要]
近年,センサは,小型化,低価格化や低消費電力化が進み様々な機器に搭載され,簡易に人々が持ち運べるようになりつつある.
一方,情報機器としての携帯電話の所有率は90%を超え,人々が情報をアップロードし,共有可能なプラットフォームが整備されつつある.これらの状況を鑑み,センサプローブと呼ばれる試みが進められている.センサプローブでは,人々がセンサノードを持ち,得られたセンサ情報を携帯電話などで収集し,位置情報や時刻を付与してアップロードすることで,地域の情報を収集する仕組みである.都市部における微気象情報の収集や,災害時の情報収集など,様々な応用が考えられており,従来型の据え置きセンサによる情報収集に対して,低コストで実現可能であり,また,広範囲にわたり粒度の細かいセンサ情報収集が可能となる.本セッションでは,研究開発,ビジネス,経済の分野から講演者を招き,センサプローブの研究の現状,並びに今後の可能性を幅広い視点で討論する.
 
 司   会:岩本 健嗣(富山県大)
富山県立大学 工学部 情報システム工学科 講師.
1998年慶應義塾大学環境情報学部卒業.2000年慶應義塾大学政策・メディア研究科 修士課程修了.
2005年慶應義塾より博士(政策・メディア).
現在,屋内位置システム,コンテクストアウェアシステムなど,ユビキタスコンピューティングの研究に従事.
 
[9:30-9:55]講演(1)「Issues in Urban Sensing and Services − What can you offer after sensing? −」
 
 [講演概要]
本講演では,第2ラウンドに向かったユビキタスネットワーク技術の研究開発において,アーバンセンシングの構築とサービスの創出における課題について議論する.まず,スマート・ユビキタスネットワーク社会実現に向けての国内外で進行中の研究開発プロジェクトについて概観し,アーバンセンシング環境の構築やサービスの創出における問題を整理する.そして,新しい価値を創発する社会基盤として浸透していくためには,社会的なイノベーションと社会に適応できるユビキタス技術のテクノロジーイノベーションの両方が重要であることを議論する.
 
 徳田 英幸(慶大)
1975年慶應義塾大学工学部卒.同大学院工学研究科修士.ウォータールー大学計算機科学科博士.米国カーネギーメロン大学計算機科学科研究准教授を経て,1990年慶應義塾大学環境情報学部に勤務.慶應義塾常任理事を経て,現職.
主に,ユビキタスコンピューティングシステム,オペレーティングシステム,分散システムに関する研究に従事.
現在,情報通信審議会委員,日本学術会議連携会員,ネットワークロボットフォーラム会長などを務める.
研究教育業績に関してMotorola Foundation Award,IBM Faculty Award,経済産業大臣賞,総務大臣賞などを受賞.
 
[9:55-10:20]講演(2)「ヒューマンプローブ構想:課題と展望」
 
 [講演概要]
従来のネットワークセンシングでは,インフラ設置型のセンシングが議論されてきた.しかし,都市内部の情報収集に対しては,人が所持する携帯電話をセンサとして積極活用することが考えられる.携帯電話を持つ人々が都市の内部で移動することにより,人々の行動そのものや,移動に伴って得られる周囲の状況等が数多く取得できる可能性がある.これをヒューマンプローブとして参照モデルを確立し,センシング対象,デバイス,通信,情報蓄積,情報開示/相互利用,インセンティブ,他の課題等,様々な角度から考えてみる.
 
 戸辺 義人(電機大)
東京電機大学未来科学部情報メディア学科教授.
博士(政策・メディア).OSOITEプロジェクトにて,都市情報センシングに取り組む.
主たる著書「センサネットワーク技術(共著)」.
 
[10:20-10:45]講演(3)「リアルタイム都市における参加型サービスの展望」
 
 [講演概要]
地理的に分散した人々から携帯端末で取得・発信される局地的情報を,ネットワークを通じてリアルタイムに集約・編集し,ふたたび地理的に分散した人々へと送り届ける各種サービスが誕生している.その流れの背後には,都市生活者が必要とする地理空間情報を都市生活者自らが発信して共有し,利活用につなげる,空間的集合知形成への参加や貢献の欲求,また生活空間の環境情報を同期的にライブモニタリングしていく楽しさの追求といった動機も見いだすことができる.今後のユビキタス社会において,空間的共有知創造への参加機会を生み出すとともに,さらにその知をビジネス的な価値へと結びつけていく可能性を展望する.
 
 武山 政直(慶大)
1988年慶應義塾大学経済学部卒業,1990年同大学院経済学研究科修士課程修了.1992年〜1994年カリフォルニア大学大学院留学(Ph.D.取得).1994年慶應義塾大学環境情報学部助手,1997年武蔵工業大学環境情報学部講師,1999年同助教授,2003年慶應義塾大学経済学部准教授,2005年NTTDoCoMoモバイル社会研究所上席研究員兼務,2008年慶應義塾大学経済学教授.専門は都市生活者のメディア利用に関する調査分析とサービスのデザイン.
 
[10:45-11:10]講演(4)「ユーザー参加型で天気予報が変わる!」
 
 [講演概要]
携帯電話というパーソナルメディアを通し,"気象" における新しい価値創造を日々続ける"参加型" 気象ビジネスについて,昨夏に多発した "ゲリラ雷雨" への取り組みと,今年も展開している "桜プロジェクト" の事例を用いて,ウェザーニューズ個人向けビジネス統括責任者が説明する.
 
 石橋 知博(ウェザーニューズ)
株式会社ウェザーニューズ 取締役(BtoS事業統括主責任者).
1998年3月中央大学理工学部情報工学科卒業.2000年10月当社入社営業本部.
2006年12月株式会社ウィズステーション取締役.
2007年11月株式会社ウィズステーション代表取締役(現任).
2008年8月当社取締役(BtoS事業統括主責任者)(現任).
 
[11:10-12:00]パネル討論「ヒューマンプローブのインパクトと実現性」
 
 討論司会:中島 秀之(はこだて未来大)
公立はこだて未来大学学長.1952年西宮市生まれ.東京大学大学院情報工学専門課程修了(工学博士).
人工知能を状況依存性の観点から研究.複雑系の情報処理とその応用に興味を持っている.
マルチエージェント国際財団理事,認知科学会会長,情報処理学会副会長などを歴任.情報処理学会,人工知能学会各フェロー.
主要編著書に「知能の謎」(講談社ブルーバックス),「思考」(岩波講座認知科学8),「Prolog」(産業図書)など.
 
 パネリスト:石橋 知博(ウェザーニューズ)
株式会社ウェザーニューズ 取締役(BtoS事業統括主責任者).
1998年3月中央大学理工学部情報工学科卒業.2000年10月当社入社営業本部.
2006年12月株式会社ウィズステーション取締役.
2007年11月株式会社ウィズステーション代表取締役(現任).
2008年8月当社取締役(BtoS事業統括主責任者)(現任).
 
 パネリスト:武山 政直(慶大)
1988年慶應義塾大学経済学部卒業,1990年同大学院経済学研究科修士課程修了.1992年〜1994年カリフォルニア大学大学院留学(Ph.D.取得).1994年慶應義塾大学環境情報学部助手,1997年武蔵工業大学環境情報学部講師,1999年同助教授,2003年慶應義塾大学経済学部准教授,2005年NTTDoCoMoモバイル社会研究所上席研究員兼務,2008年慶應義塾大学経済学教授.専門は都市生活者のメディア利用に関する調査分析とサービスのデザイン.
 
 パネリスト:徳田 英幸(慶大)
1975年慶應義塾大学工学部卒.同大学院工学研究科修士.ウォータールー大学計算機科学科博士.米国カーネギーメロン大学計算機科学科研究准教授を経て,1990年慶應義塾大学環境情報学部に勤務.慶應義塾常任理事を経て,現職.
主に,ユビキタスコンピューティングシステム,オペレーティングシステム,分散システムに関する研究に従事.
現在,情報通信審議会委員,日本学術会議連携会員,ネットワークロボットフォーラム会長などを務める.
研究教育業績に関してMotorola Foundation Award,IBM Faculty Award,経済産業大臣賞,総務大臣賞などを受賞.
 
 パネリスト:戸辺 義人(電機大)
東京電機大学未来科学部情報メディア学科教授.
博士(政策・メディア).OSOITEプロジェクトにて,都市情報センシングに取り組む.
主たる著書「センサネットワーク技術(共著)」.
 

 
マルチメディア情報ハイディングの最新応用技術と今後の展望

9月2日(水)13:00-14:50[第1イベント会場(9号館3階 937教室 - tohtech MEMORIAL HALL)]
 
 [企画概要]
情報ハイディングは,複製や改変が容易なマルチメディア情報に対して,コンテンツの劣化なしに付加情報を埋め込む技術である.
これまでコンテンツ保護の観点を中心に研究されてきたが,近年,受信側での劣化補完や目立たない付加情報の生成などの新しい研究が展開されている.また,情報送信としてのハイディング技術の応用も注目されている.本企画ではマルチメディア情報ハイディングの要素技術・関連技術の最新動向を紹介いただき,今後の展望を議論する.
 
 司   会:鈴木 陽一(東北大)
1976年3月東北大学工学部電気工学科卒業.1978年3月東北大学大学院工学研究科博士課程前期2年の課程電気及通信工学専攻修了.1981年3月東北大学大学院工学研究科博士課程後期3年の課程電気及通信工学専攻修了.
1981年4月東北大学助手電気通信研究所.1987年6月東北大学助教授大型計算機センター.1989年7月東北大学助教授電気通信研究所.1999年8月東北大学教授 電気通信研究所(現在に至る).2007年4月東北大学電気通信研究所副所長(現在にいたる).2008年4月東北大学情報シナジー機構長(現在に至る).1986年3月日本音響学会粟谷潔学術奨励賞[日本音響学会].1992年3月日本音響学会佐藤論文賞[日本音響学会].1994年3月日本音響学会佐藤論文賞[日本音響学会].
 
[13:00-13:10]オープニング
 
 
[13:10-13:35]講演(1)「データハイディング技術を利用した音声メディアの高付加価値化」
 
 [講演概要]
データハイディング技術を利用すると,従来の標準フォーマットと互換性を保ちながら,さまざまな補助情報をディジタルデータのなかに秘密裏に埋め込むことができる.
本研究では,こうしたデータハイディング技術をIP電話に応用し,(1)パケットロスによって消失した音声データの修復,(2)狭帯域品質の音声データの広帯域化,についてこれまでに検討してきた.データハイディング技術による補助情報の埋め込みは,一見すると音声データにキズをつけ,通話品質を劣化させるだけのようにも思えるが,提案法は補助情報を埋め込むことで,逆に通話品質を向上させる可能性を秘めたパラドックス的魅力を持った手法となっている.
 
 青木 直史(北大)
1995年北大・工・電子卒.1997年同大大学院修士課程了.2000年同大大学院博士課程了.同年同大大学院工学研究科助手.2007年同大大学院情報科学研究科助教.博士(工学).1999〜2000年日本学術振興会特別研究員.
マルチメディア情報処理に関する研究に従事.ディジタル・サウンド処理入門(CQ出版社),H8マイコンによるネットワーク・プログラミング(技術評論社),C言語ではじめる音のプログラミング(オーム社).
 
 
[13:35-14:00]講演(2)「文字パターンへの情報埋め込みの試み」
 
 [講演概要]
身の回りのあらゆるものに情報を付与する技術として,RFID等の情報タグや二次元バーコードが注目されている.しかし,これらは機械可読性に優れているが,人間が直接内容を理解することはできない.本講演では,東北大学,大阪府立大学,九州大学の3大学4研究者間によるユニバーサル・パターン プロジェクト(http://www.u-pat.org/)の一環として行なっている,人間にとって可読性の高い文字パターンに情報を埋め込むことで文字パターンを情報提示の目的で利用するいくつかの試みについて紹介する.
 
 大町真一郎(東北大)
1988年東北大学工学部情報工学科卒業.1993年同大大学院博士課程修了.同年同大情報処理教育センター助手.
1996年同大工学部助手.1999年同大大学院工学研究科助教授.現在准教授.博士(工学).その間,2000〜2001年米国ブラウン大学客員准教授.パターン認識,画像処理などの研究に従事.2007年画像の認識・理解シンポジウムMIRU長尾賞,IAPR/ICDAR Best Paper Award を受賞.
 
 
[14:00-14:25]講演(3)「モバイル端末における音響データハイディング技術の応用」
 
 [講演概要]
近年,スピーカやマイクを情報伝送デバイスとして利用できる音波情報伝送技術として,既存の音源に聴覚には不快にならないように伝送信号を重畳する音響データハイディング技術が検討されている.
本講演では,データ伝送の基礎となる各種変調方式(ASK,FSK,PSK,DS-SS,OFDM)や誤り訂正技術について解説し,それらを音響データハイディングに適用するための応用技術について紹介する.また,携帯電話やPDA等のモバイル端末における音響データハイディング技術の応用例および今後の展望についても紹介する.
 
 松岡 保静(NTTドコモ)
1999年,東京工業大学理学部情報科学科卒.
2001年同大学院修士課程修了.
同年,株式会社NTTドコモ入社.
以来,マルチメディア信号処理技術,移動通信技術の研究に従事.
現在,同社先進技術研究所研究員.
 
 
[14:25-14:50]講演(4)「映像サーベイランスとプライバシ保護」
 
 [講演概要]
安全安心な社会の構築に向け,監視カメラを用いた映像サーベイランスは今後ますます重要になると考えられる一方で,Google Street View を見れば分かるように市民のプライバシーが侵害される懸念も示されている.
本講演では,映像・画像情報とプライバシー問題を考察し,映像サーベイランスが安心な社会システムとして定着するために解決すべき課題を提示し,プライバシー保護機能を有する映像サーベイランスシステムPriSurv について述べると共に,PriSurvのコア技術である視覚的抽象化,ポリシー制御,情報ハイディングについても紹介する.
 
 馬場口 登(阪大)
1979年大阪大学工学部通信工学科卒業,1981年同大学大学院前期課程修了,愛媛大学工学部,大阪大学工学部,産業科学研究所を経て,2002年大阪大学大学院工学研究科教授となり,現在に至る.
1996〜97年カリフォルニア大学サンディエゴ校文部省在外研究員.工学博士.
マルチメディア(画像・映像・音響)処理に関する研究に従事.著書:人工知能の基礎(昭晃堂)ほか.
2007〜2009年,電子情報通信学会・パターン認識メディア理解研究専門委員会委員長.
 

 
ウェアラブルテクノロジの可能性−人間福祉支援への応用−

9月2日(水)15:30-17:30[第1イベント会場(9号館3階 937教室 - tohtech MEMORIAL HALL)]
 
 [企画概要]
ウェアラブルコンピュータは文字通り着用可能なコンピュータであり,既に我々の生活の中に携帯型音楽プレーヤや携帯電話のヘッドセットなどの製品が,ウェアラブルコンピュータであるかどうかということを意識させることなく溶け込み生活の質の向上の一助を担っている.また,更なるウェアラブルテクノロジの応用を目指し,大学をはじめとする様々な研究機関において研究が行われている.
本企画では.生活の質の向上を実現する人間福祉に対して重要な役割を担うウェアラブルテクノロジの創出を目的として,ウェアラブルテクノロジに関する研究において第一線でご活躍されている研究者をお招きし現在までの研究の進展とその将来展望についてご講演いただく.
 
 司   会:水野 文雄(東北工大)
2000年名古屋工業大学工学部機械工学科卒業,2002年東北大学大学工学研究科博士課程前期2年の課程修了,2005年同大学院博士後期3年の課程修了,博士(工学),2005年名古屋工業大学寄附講座研究員,2006年名古屋工業大学寄附講座助手,2007年東北工業大学工学部講師,現在に至る.
 
 
[15:30-15:40]開会の挨拶
 
 
[15:40-16:30]講演(1)「情報と環境を持ち歩く快適ウェアラブルへの道」
 
 [講演概要]
ユビキタス情報時代と言われて久しい昨今,「情報ウェアラブル」の技術及びニーズは深化してきた.特に人間情報をセンシングするデバイスや診断・可視化などのソフトウェアが実用の段階に近づいてきた.また冷暖房などの物理的環境を服空間に人工的に作り出し持ち歩く,いわゆる「環境ウェアラブル」の試作も始まっている.
さらには体温センサや心電センサ,加速度センサなどの人間情報を検知する「情報ウェアラブル」に基づいて,人間の体を冷やしたり暖めたりとアクションを興すことのできる「環境ウェアラブル」が連動して快適空間を創り出すというアイデアが現実のものになりつつある.以上のような研究活動を進めているWINプロジェクトの実行責任者として現状と将来の夢を語る.
 
 板生  清(東理大)
1968年東京大学修士課程を修了し,日本電信電話公社に入社.1992年中央大学理学部教授,1996年東京大学大学院工学系研究科教授,1999年新領域創成科学研究科教授,04年東京理科大学総合科学技術経営研究科長/教授.2000年8月「NPO法人ウェアラブル環境情報ネット推進機構」を設立以来,理事長を務める.
科学技術振興機構「先進的統合センシング技術」研究領域総括,文部科学省安全・安心科学技術委員会の主査.東京大学名誉教授,工学博士.
 
 
[16:30-17:20]講演(2)「ハイパーホスピタル(超病院)の在宅介護支援への展開とその展望」
 
 [講演概要]
医療および介護においては,患者を物理的に援助するばかりでなく,精神的な支援によって患者自身の回復力を引き出すことが最も重要な課題の一つであると考えられる.そこで,我々は医療を患者中心に再編成するための新たな技術・環境としてハイパーホスピタル(超病院)構想を提案し,人と人とのコミュニケーションを主たる対象とした高齢者在宅介護支援システムの開発を行ってきた.また,開発を行う上で,我々はウェアラブル技術に着目し,生体情報モニタリングや介護情報参照を目的としたウェアラブルシステムやその周辺デバイスの開発を行った.本講演では,ハイパーホスピタル(超病院)構想と,我々が開発を行ってきたシステムの紹介をするとともにその将来展望について言及する.
 
 山口 隆美(東北大)
1973年東北大学医学部卒,竹田綜合病院外科,東京女子医大附属第2病院循環器外科を経て1977年同附属日本心臓血圧研究所理論外科助手,1981年英国Imperial College留学,1984年国立循環器病センタ−研究所脈管生理部脈管病態生理研究室長,1991年 東海大学教授,1997年名古屋工業大学教授,2001年東北大学大学院工学研究科教授,2008年同医工学研究科教授,現在に至る.
 
 
[17:20-17:30]閉会の挨拶
 

 
ロボットの運動と視覚における新たな展開−脳神経科学との融合−

9月3日(木)9:30-12:00[(第1イベント会場(9号館3階 937教室 - tohtech MEMORIAL HALL)]
 
 [企画概要]
人間社会に共存し,介護や支援を行うロボットが望まれている.そのためにはロボットは生物が行うように動的な環境に適応して行動を発現する必要がある.また,ロボットには知覚‐運動‐環境の動的な相互作用における情報処理が要求される.この基盤となる技術には,脳・神経科学,ロボット工学,計算機科学,情報科学などの知見の融合が必要となる.特に,近年における脳・神経科学研究の展開には視覚,運動系を中心に目を見張るものがあり,わが国においても,学際的な研究が推進されている.そこで,本企画では,ロボットおよび脳・神経科学分野の複合領域で研究を推進している最先端の研究者を講演者に招き,ロボット認知,行動機能技術の新たな展開を探る.
 
 司   会:藤田 豊己(東北工大)
1997年東北大学大学院工学研究科機械工学第二専攻博士課程修了.博士(工学).同年電気通信大学大学院情報システム学研究科助手,2001年カリフォルニア大学バークレー校客員研究員,2005年EUプロジェクトJAST(Joint-Action Science and Technology)研究員,2007年東北工業大学工学部准教授,現在に至る.
知能ロボット,視覚情報処理,ヒューマンインターフェースの研究に従事.
 
[9:30-10:20]講演(1)「昆虫とロボットの融合で探る脳神経科学」
 
 [講演概要]
昆虫は微小な寸法という制限の中で,センサや脳神経系・身体を進化させ,さまざまな環境下で適応的にふるまう.
昆虫に潜む感覚・処理・運動能力は「昆虫パワー」といわれ,その設計は哺乳類の複雑な脳神経系や,複雑化するロボットなどの機械システムとは対照的である.昆虫は脳神経科学のモデル生物として,また単純・高速・経済的なセンサや処理装置の技術開発にとって魅力的な手本であり,その設計には学ぶべきことは多い.講演では,カイコガをモデルとして,遺伝子・ニューロン・神経回路・行動にいたるマルチスケールの分析,分析結果のロボットによる実環境下での評価,さらには昆虫とロボットを融合した「生物-機械ハイブリッド」の構築を通して,昆虫パワーを理解し活用する研究を紹介する.
 
 神崎 亮平(東大)
1986年筑波大学大学院生物科学研究科修了.理学博士.1987年アリゾナ大学神経生物学研究所博士研究員.1991年筑波大学生物科学系助手,講師,助教授.2003年同教授.2004年東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻教授.2006年東京大学先端科学技術研究センター生命知能システム分野教授.アリゾナ大学神経生物学部門 Adjunct Professor.日本動物学会論文賞(1987年,1993年),日本味と匂学会中西賞(1994年),日本比較生理生化学会吉田奨励賞(1996年),日本比較生理生化学会吉田賞(2008年).
 
[10:20-11:10]講演(2)「視覚系のニューロインフォマティクス:大規模数理モデル構築を目指して」
 
 [講演概要]
脳科学は21世紀における究極の科学の一つとしてその進展が期待され,国際的にも大きく展開されようとしている.とくにロボットの運動や視覚機能の理解は今後の人間型ロボット実現に向けて必須であり,脳神経科学の知見を統合しシステムとして理解することが重要な基盤技術となる.ニューロインフォマティクス国際統合機構(INCF)はこうした背景の下に2005年に設立され,同年我が国も文科省の委託の下に,理研・脳科学総合研究センターに日本ノード(http://www.neuroinf.jp/)を立ち上げ,視覚科学や昆虫脳などのプラットフォームを立ち上げ公開運用している.
講演ではその現状と視覚系の大規模数理モデル構築を目指した取り組みについて紹介する.
 
 臼井 支朗(理研)
1974年,カリフォルニア大学(バークレー)大学院博士課程電気工学・計算機学科専攻修了,Ph.D.
同年名古屋大学工学部助手.1979年,豊橋技術科学大学工学部講師,同助教授,同教授,2002年,独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センターチームリーダー(兼),2003年,豊橋技術科学大学名誉教授・客員教授.2007年,神経情報基盤センター長(兼)現在に至る.
 
[11:10-12:00]講演(3)「ヒトの視覚運動系におけるフィードバック(FB)機構とフィードフォワード(FF)機構の混在と分離」
 
 [講演概要]
視覚追従実験では,追従運動速度のパワースペクトルに,IHz近辺を中心とするブロードバンドとターゲット軌道の対称性の低下に起因するシャープなピークが観測される.ターゲットの断続表示実験における追従位置誤差分布,位置誤差符号反転頻度の分析により,前者は位置誤差訂正のためのフィードバック制御であること,後者は追従運動に惹き起される時間刻みであり,時間刻みを生成することによって予測運動(FF)を可能にしていることを明らかにした.本実験の結果からFBとFFの混在と分離の条件を議論する.また,予測運動の先行性から,物理時間と脳内時間の関係と,複数時間系のもつ認識の特徴がヒトの意識に与える影響,及びロボットへの応用の際の問題点を議論する.
 
 沢田 康次(東北工大)
1960年東京大学工学部応用物理学科卒業.1962年東京大学大学院工学研究科電子工学専攻卒業.
1966年ペンシルバニア大学物理学科博士課程修了 Ph.D.1966-1968年ペンシルバニア大学Research Associate.
1968-1972年大阪大学理学部講師.1973-2001年東北大学電気通信研究所教授.
1996-2001年東北大学電気通信研究所長.
2001-2008年東北工業大学教授.2008年−東北工業大学学長.
 

 
FIT学術賞表彰式

9月3日(木)13:00-13:50[第1イベント会場(9号館3階 937教室 - tohtech MEMORIAL HALL)]
 
 ・FIT2008 ヤングリサーチャー賞 表彰
・FIT2009 論文賞 表彰
・FIT2009 船井ベストペーパー賞 表彰
・FIT2009 船井業績賞 表彰
 

 
Data Intensive Computingの現状と未来
−情報爆発時代におけるコンピューティングとクラウド−

※本イベント協賛:文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「情報爆発IT基盤」

9月4日(金)9:30-12:00[第1イベント会場(9号館3階 937教室 - tohtech MEMORIAL HALL)]
 
 [企画概要]
クラウドコンピューティング,ウェブサーチエンジン,データマイニング,大規模データのアーカイブ,データサイエンスなど,今日の情報爆発時代では,大規模データに対するコンピューティング技術が大いに着目されている.このような状況を踏まえて,Data Intensive Computingというキーワードを近年しばしば目にするようになってきている.このイベント企画では,ホットな話題であるクラウドコンピューティングに関する講演に加え,関連する各研究分野からパネリストを招き,Data Intensive Computingおよびクラウドコンピューティングについて,現状と今後の展開について議論する.
 
 司   会:鬼塚  真(NTT)
1991年東京工業大学工学部情報工学科卒業.同年,日本電信電話(株)入社.
2000〜2001年ワシントン州立大学客員研究員.博士(工学).
これまでオブジェクトリレーショナルデータベース,XMLストリーム処理エンジン,XMLデータベース,分散データベースなどを研究開発.
現在,日本電信電話(株)サイバースペース研究所主任研究員.
 
[9:30-10:15]講演「クラウド・コンピューティングへの期待と課題」
 
 [講演概要]
クラウド・コンピューティングは,ネットワーク上にある計算機資源や情報サービスを,その場所や実装に関知することなく,必要な時に必要なだけ利用することを実現する技術,サービス,ビジネスモデルを指すものである.研究としても,大規模分散環境における並列データ処理,非リレーショナルなデータモデル,プログラミングモデル,などの分野での発展が期待されており,また,相互運用性や標準化に向けたコミュニティベースの議論も立ち上がりつつある.本講演では,クラウド・コンピューティングが生まれた背景,技術要素,応用例などについて概説し,今後の動向を議論する.
 
 浦本 直彦(日本IBM)
1990年,日本アイ・ビー・エム(株)入社,東京基礎研究所にて,機械翻訳,テキストマイニング,XMLやWebサービス関連の標準化や研究開発を経て,現在は,Web基盤技術における性能向上やセキュリティに関するプロジェクトを担当している.博士(工学).2000年-2005 年,国立情報学研究所客員助教授を兼務.主な著作に,XMLand Java - Developing Web Applications(第1版,第2版,Addison Wesley,共著),最近では「クラウド大全」日経BP社(共著)などがある.
 
[10:15-12:00]パネル討論「Data Intensive Computingの現状と未来」
 
 [討論概要]
本パネルでは,クラウドに関する研究開発に携わる企業の研究者とdata intensive computing に関する研究に携わる大学の研究者に,それぞれの立場からの討論をお願いする.特に,大規模データを管理する技術および並列分散コンピューティング技術を中心として,研究の動向と方向性について議論を行い,data intensive computing を利用することで実現できる未来について展望したい.
 
 討論司会:鬼塚  真(NTT)
1991年東京工業大学工学部情報工学科卒業.同年,日本電信電話(株)入社.
2000〜2001年ワシントン州立大学客員研究員.博士(工学).
これまでオブジェクトリレーショナルデータベース,XMLストリーム処理エンジン,XMLデータベース,分散データベースなどを研究開発.
現在,日本電信電話(株)サイバースペース研究所主任研究員.
 
 パネリスト:有村 博紀(北大)
北海道大学大学院情報科学研究科教授.博士(理学).1988年九州大学理学部卒.1990年九州大学大学院総合理工学研究科修士課程修了.1990年九州工業大学助手,九州大学助教授等を経て,2004年より現職.この間に1996年ヘルシンキ大学および1996年リヨン大学第1客員研究員.1999-2002年JSTさきがけ研究21「情報と知」研究員.データマイニングと,情報検索,機械学習アルゴリズムの研究に従事.ACM,情報処理学会,人工知能学会各会員.2005年より文科省科研費特別推進研究「半構造マイニング」研究代表者(-2007).2007年よりグローバルCOEプログラム「知の創出を支える次世代IT基盤拠点」(-2011)拠点リーダー.
 
 パネリスト:浦本 直彦(日本IBM)
1990年,日本アイ・ビー・エム(株)入社,東京基礎研究所にて,機械翻訳,テキストマイニング,XMLやWebサービス関連の標準化や研究開発を経て,現在は,Web基盤技術における性能向上やセキュリティに関するプロジェクトを担当している.博士(工学).2000年-2005 年,国立情報学研究所客員助教授を兼務.主な著作に,XMLand Java - Developing Web Applications(第1版,第2版,Addison Wesley,共著),最近では「クラウド大全」日経BP社(共著)などがある.
 
 パネリスト:建部 修見(筑波大)
1992年東京大学理学部情報科学科卒業.1997年同大学大学院博士課程修了.同年電子技術総合研究所入所.2006年筑波大学大学院システム情報工学研究科助教授.現准教授.博士(理学).
超高速計算システム,グリッドコンピューティング,並列分散システムソフトウェアの研究に従事.
情報処理学会,日本応用数理学会,ACM各会員.
 
 パネリスト:山名 早人(早大)
1993年早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了.博士(工学).1993年通商産業省工業技術院電子技術総合研究所研究員.2000年早稲田大学理工学部助教授.2004年国立情報学研究所客員助教授.2005年早稲田大学理工学術院教授.同年国立情報学研究所客員教授,現在に至る.
情報検索,分散処理等の研究に従事.現在は主に検索エンジンの信頼性解析やWeb情報の新しい応用に興味を持つ.Google Hacks(オライリー・ジャパン)の監訳者.
 
 

 
先進予防型健康社会の実現を目指したセンサ技術とネットワーク技術

9月4日(金)13:00-16:00[第1イベント会場(9号館3階 937教室 - tohtech MEMORIAL HALL)]
 
 [企画概要]
文部科学省の委託事業として,地域の潜在力を生かした技術開発および新たな事業化支援のための「知的クラスター創成事業」が行われており,地域における産学官連携を強力に推進した地域経済の活性化が促進されている.仙台地域では「先進予防型健康社会創成クラスター(先進的疾病予防・健康維持に関する知見の集積,及びそれを活用した疾病予防・健康維持のためのサービス・機器開発を目指す産業の集積)」の形成を図っており,現地提案としてこの仙台地域における本事業の取り組みを紹介し,さらに関連するデモ・ポスターセッションを組み合わせることで先進的な技術動向を収集し,活発な意見交換・情報交換が行なわれる場を設けたい.
 
 司   会:橋本 和夫(東北大)
1977年東北大・工・電子工学卒.1979年同大大学院修士課程了.同年国際電信電話(株)入社,同研究所で人工知能の応用研究に従事.2006より東北大学大学院情報科学研究科教授.博士(情報科学).
Webコミュニケーションの研究に従事.
知的クラスター創成事業(第二期)では健康サービス創出の研究テーマを担当.
電子情報通信学会,情報処理学会,人工知能学会,AAAI,IEEEの各会員.
 
[13:00-13:10]オープニング「先進予防型健康社会創成クラスターの研究事業紹介」
 
 [講演概要]
仙台地域住民の質の高い健康維持を目指し,東北大学,福祉大学をはじめとした最先端の研究資源をサービス事業化することを目的に仙台クラスター事業が5年間の予定で始まり,今年はその中間の年度に当たる.そのための研究テーマとして(1)多様な生体情報の収集のためのセンサー及びシステムの開発,(2)複数データを用いた健康指標の検出技術開発,(3)健康情報のデータベース化と知識変換成果の市民への活用,(4)データアクセス技術とセキュアな双方向通信の確立,(5)研究全体の社会経済評価,ビジネスモデル,制度設計などのモニタリング,(6)メンタルヘルスへの介入研究(今年度から)があり,最初の2年はICTを活用する前提条件で広範な研究を展開し,今年度から市民に向けたサービスへの可能性という観点からさらにフォーカシングと選択を行っているので,その概要を紹介する.
 
 仁田 新一(東北大)
1966年東北大学医学部卒業,1996年同加齢医学研究所教授(東京工業大学併任),1998年同大学副総長,2003年同研究所臨床医工学研究部門教授,2007年同客員教授(現).
国際人工臓器学会,日本人工臓器学会理事長,日本BME学会副会長,日本統合医療学会副理事長,厚生労働省薬事審議会臨時委員,専門委員,文部科学省未来開拓研究推進事業研究評価委員会運営委員,評価委員,NEDOプログラムマネージャー,先進予防型健康社会創生仙台クラスター推進本部研究統括.
 
第一部 運動効果の見える化に向けて
 
[13:10-13:30]第一部 運動効果の見える化に向けて
        講演(1)「運動のみえる化」
 
 [講演概要]
新しいスポーツや運動をはじめた時に多くの人が気になることは自分がうまくできているか,上達しているかである.スポーツ教室などの有能なコーチやインストラクターはその望みをかなえてくれる.単にマニュアルに沿った指導を行うのではなく受講生のスキルの状態を把握し,それに基づく適切なアドバイスや指導を行う.初心者がそのスポーツや運動を継続していくために重要な動機付けの一つである.各種装着型センサーを利用してスポーツ実施者のスキルレベルを評価し,その情報を通信技術を利用して速やかにスポーツ実施者本人あるいはコーチに伝える「運動のみえる化」の意義と将来性および問題点を紹介する.
 
 永富 良一(東北大)
1984年3月東北大学医学部卒業.1984年4月仙台市立病院内科医員.1986年4月東北大学医学部第3内科医員.1988年4月東北大学教養部保健体育学科助手.1994年4月東北大学大学院医学系研究科運動学分野助手.2002年6月同教授.2008年4月東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学研究分野教授.
医学博士.日本体育協会公認スポーツドクター.国際運動免疫学会(前会長・理事),日本体力医学会(理事),日本臨床スポーツ医学会(評議員),日本老年医学会(評議員),米国スポーツ医学会,日本免疫学会,日本公衆衛生学会他,その他の活動:日本運動免疫学研究会代表,運動疫学研究会運営委員,宮城県スポーツ医学懇話会会長,仙台市スポーツ振興審議会副会長,仙台市スポーツ連盟理事,東北管区警察学校非常勤講師(体育実技),東北福祉大学健康科学部保健看護学科非常勤講師(2007年〜).
東北大学大学院医学系研究科教授.1984年東北大学医学部卒・医学博士.運動・スポーツ医科学の専門家,安静の弊害を説き,子どもから高齢者まで,虚弱者からスポーツ選手まで,運動を通じた健康づくりの研究を推進している.東北大学医学部医学科卒業.東北大学教養部保健体育学科助手,同医学系研究科助手,同医学系研究科障害科学専攻教授を経て,現在に至る.博士(医学).健康維持増進のための運動,骨粗鬆症・ねたきり予防のための運動トレーニング,日常生活活動の携帯型活動量計によるモニタリングなどの研究に従事,骨格筋の損傷・修復のメカニズム,トレーニングによる変化,運動・ストレス時の免疫系の変化などを主要な研究テーマとしている.河北新報夕刊連載「老化に負けない練筋術」(2006〜2007年).
 
[13:30-13:50]第一部 運動効果の見える化に向けて
        講演(2)「加速度センサーを用いた運動スキル評価」
 
 [講演概要]
ヘルスケアのための日常運動や機能障害に対する運動リハビリテーションにおいて,動作の客観的,定量的評価を,自宅や医療施設において簡便に行えるようにするために,ジャイロスコープを用いた簡易型下肢動作評価システムの開発を目的としている.
本研究では,ジャイロスコープによる角度算出において問題となるオフセットドリフト等による誤差に対して,加速度センサから得られる傾斜角を用いてカルマンフィルタにより補正する方法を採用し,下肢関節角度を計測する方法を検討している.これまで,実用化に向けて,ジャイロスコープと加速度センサを搭載した電池駆動式小型センサユニットを試作し,それを用いて歩行中の下肢関節角度を計測し,システムの評価を行ってきたので,それらの結果を中心に報告する.
 
 渡邊 高志(東北大)
1989年山梨大学工学部電気工学科卒業.1991年東北大学大学院工学研究科博士前期課程電気及通信工学専攻修了.
1993年同大学工学部通信工学科助手,2000年同大学院工学研究科電子工学専攻講師,2001年同情報シナジーセンター助教授,2008年同大学院医工学研究科准教授,現在に至る.博士(工学).運動機能麻痺者のための機能的電気刺激(FES)による動作制御法やFES制御システム,小型センサによる運動計測,ユーザ・インターフェイスなど,生体工学・福祉工学に関する研究に従事.
日本生体医工学会,バイオメカニズム学会,電子情報通信学会,IEEE各会員.
 
[13:50-14:10]第一部 運動効果の見える化に向けて
        講演(3)「微細加工技術を用いた身体状態モニターの可能性と試み」
 
 [講演概要]
精密な微細加工技術,特にMEMS(微小電気機械システム)技術などを用いることで,薄く,小さくとも高機能・多機能なデバイスが実現できる.違和感なく体に装着できる小型のウェアラブルセンサが日常生活や運動時に役立つ新たな計測手段としていくつか製品化されているが,計測できる項目が限られ,比較的高価なため現状では用途が限定される.MEMSをはじめとした新たな微細加工技術や精密印刷技術などを積極的に利用することで,これらの問題を解決できることが期待され,さらにセンサばかりでなくマイクロアクチュエータを用いて身体に能動的に働きかけ,生体反応に基づいた新たな計測や治療,健康管理に役立てることができると期待される.
キーワード:ウェアラブルセンサ,MEMS,細加工技術,ヘルスケアモニタリング
 
 芳賀 洋一(東北大)
1965年4月4日生まれ.1992年東北大学医学部卒業.1994〜1996年東北厚生年金病院勤務.1996年東北大学大学院工学研究科助手,2003年講師,2004年東北大学先進医工学研究機構(TUBERO)助教授,2008年東北大学大学院医工学研究科教授となり現在に至る.マイクロ/ナノテクノロジーを用いた医療・福祉機器の研究・開発に従事.医学博士および工学博士.日本生体医工学会,電気学会,日本機械学会,日本コンピュータ外科学会,IEEE(米国電気電子学会)などの各会員.
 
[14:10-14:30]第一部 運動効果の見える化に向けて
        講演(4)「ノルディックウォークにおける身体状態モニター」
 
 [講演概要]
屋外無線LANネットワークを用いてノルディックウォーキングの運動効果の検証を行うために開発した,運動計測システムのプロトタイプについて紹介する.本システムは,無線端末と行動計測デバイスをセットとすることで,ネットワーク設備が不十分な屋外における運動であっても,各人の消費カロリー等を精密に計測できるシステムである.また,プロトタイプシステムを用いた伊豆のイベントで行った実証実験を通じて,多くの参加者から同時に運動のセンシングが可能であることを検証したのでその結果について報告し,身体状態モニターの課題や将来性について講演する.
 
 中山 英久(東北工大)
2000年東北大・工・情報卒.2005年同大大学院情報科学研究科博士後期課程了.同年同大助手.2007年同助教.2008年東北工大・工・知能エレクトロニクス学科講師.現在に至る.博士(情報科学).
アドホックネットワーク,センサネットワークとセンサ情報処理およびパターン認識の研究に従事.
2000年情報処理学会東北支部奨励賞,2009年電子情報通信学会ネットワークシステム研究賞各受賞他.電子情報通信学会,情報処理学会,IEEE各会員.
 
第二部 健康度と血管情報
 
[14:40-15:00]第二部 健康度と血管情報
        講演(5)「血管健康度評価の意義」
 
 [講演概要]
2008年度より特定健診(いわゆるメタボ健診)が開始されたが,これは症状がないうちに進行する動脈硬化を早期段階で発見し,食事指導・運動などのライフスタイルの改善で病気を未然に防ぐことを目的にしている.検査項目は,簡便さ,検出率・経済効率の高さなどを総合的に勘案して,腹囲,血圧,血糖,脂質などに絞られたが,動脈硬化初期病変の検出率は必ずしも高くない.
したがって,簡便にかつ高感度に動脈硬化を超早期段階で検出できるセンサの開発が求められている.また,血管は正常者においても,トレーニングや全身状態によりその機械的特性を変化させるので,これらのセンサは予防医学だけではなくスポーツ医学への応用も期待される.
 
 西條 芳文(東北大)
1988年東北大学医学部卒業.1993年東北大学大学院医学研究科内科学専攻修了.
仙台厚生病院,東北厚生年金病院,公立深谷病院などに循環器科医師として勤務.
1997年東北大学加齢医学研究所助手,1999年デンマーク・オーフス大学客員教授,2004年東北大学加齢医学研究所助教授,2008年東北大学大学院医工学研究科 計測・診断医工学講座 医用イメージング研究分野教授.
専門:循環器内科,超音波医学,医用イメージング.
 
[15:00-15:20]第二部 健康度と血管情報
        講演(6)「健康診断サービスの現状と課題」
 
 [講演概要]
特定健診・特定保健指導では動脈硬化に関連する検査や保健指導が盛り込まれている.自覚症状が表面化しにくい動脈硬化は,保健指導の現場でその危険性を伝え,生活習慣改善につなげる事が大変難しい.現在,市町村などの健診で行われている検査は血液検査が主であり,血液検査の数値から血管の状態を伝える事は情報として乏しい面がある.血管の状態を直接見ることができれば良いが,健診で行われている検査より精度の高い検査を実施しようとすると身体的・経済的負担は大きくなる.健診の現場では比較的簡便な検査方法で,精度が高く分かりやすい(視覚的に訴える事のできる)評価指標を必要としており,受診者も関心を持っている.
 
 齊藤 辰典(宮城県成人病予防協会)
仙台大学体育学部卒,健康運動指導士取得後(財)宮城県成人病予防協会にて介護予防教室,生活習慣病予防セミナーやメタボ改善セミナー等の運動指導を実施.
2009年より東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学研究分野にて知的クラスター研究テーマ(ウェルネスアプリケーション)に従事.
 
[15:20-15:40]第二部 健康度と血管情報
        講演(7)「先端超音波技術を用いた血管状態測定」
 
 [講演概要]
動脈硬化症の進展にともない動脈壁が肥厚することから,頸動脈の内膜中膜複合体厚み(IMT)の計測による動脈硬化症診断が現在広く行われている.このIMT計測による動脈壁の形態的診断に加え,硬さ(弾性)の計測が行えるようになれば,より早期に動脈硬化症を診断できる可能性がある.
著者らは,動脈壁の局所弾性特性を評価するために,心拍による血圧変化に伴う心一拍内の動脈壁微小厚み変化(径方向ひずみ)を超音波計測できる "位相差トラッキング法" を開発した.径方向ひずみと,動脈壁に加わる力として上腕においてカフにより計測された血圧を考慮することにより,頸動脈の弾性特性を非侵襲的に評価できる.
本講演では,動脈壁の微小厚み変化を計測し弾性特性を評価できる "位相差トラッキング法" について概説する.
 
 長谷川英之(東北大)
1996年東北大学工学部卒業.1998年日本学術振興会特別研究員(DC1).2001年同大学大学院工学研究科博士課程修了.博士(工学).2001年日本学術振興会特別研究員(PD).2002年東北大学大学院工学研究科助手,2005年同講師,2007年同准教授,2008年同大学院医工学研究科准教授,現在に至る.
この間,超音波による医用生体計測に関する研究に従事.
 
[15:40-16:00]第二部 健康度と血管情報
        講演(8)「健康度のわかる血管情報の可視化」
 
 [講演概要]
伝統中国医学の診察法の一つに脈診がある.これは,患者の橈骨動脈に当てた指に感じる脈波により診察を行うものであり,簡便かつ非侵襲の診察方法であるうえに,西洋医学における疾病の他にも,臓器の弱り具合や免疫力の低下といった未病の診断も可能とされている.しかし,得られる情報量が膨大であるうえに個人差が非常に大きいため,脈診の科学的根拠は未だ得られていない.人体の血液循環系は閉ループを構成しており,血流は拍動流であるため,理論上,病変等による循環器系の変化は,何らかの形で脈波に現れる可能性がある.したがって,脈波より有用な情報を抽出することができれば,新たな診察法の確立に繋がると期待される.
 
 白井  敦(東北大)
1999年東北大学大学院工学研究科機械知能工学専攻後期3年の過程終了.
同年,東北大学流体科学研究所助手,2004年同講師,2007年同准教授となり現在に至る.
2000年〜2001年文部省在外研究員(マサチューセッツ工科大学).
専門:流体力学
 

 
アルゴリズム・サイエンスにおけるゲーム理論の新展開

9月2日(水)9:30-12:00[第2イベント会場(1号館3階 131教室)]
 
 [企画概要]
ゲーム理論は,合理的行動についての理論として,主に経済学の分野で発展してきたが,近年,行動科学,政治学,生物学,論理学などの幅広い学問分野において重要な分析手法として用いられるようになってきた.情報科学の分野においても,主にインターネット上の諸問題をゲーム的状況として捉えた研究を中心として,ゲーム理論との融合分野の研究が盛んに行われるようになってきた.そこで,本企画では,ゲーム理論と情報科学の融合分野で活躍する研究者に,この分野における最新の成果を分かりやすく解説していただくことを予定している.
 
 司   会:山田 敏規(埼玉大)
1998年3月東京工業大学大学院理工学研究科電気・電子工学専攻博士課程修了.博士(工学).
1998年4月東京工業大学工学部電気・電子工学科助手.
2003年4月埼玉大学工学部情報システム工学科講師.
2005年4月埼玉大学工学部情報システム工学科助教授.
2006年4月埼玉大学大学院理工学研究科数理電子情報部門助教授,2007年4月同准教授.現在に至る.
 
[9:30-10:15]講演(1)「無秩序の代償(price of anarchy)の理論への招待」
 
 [講演概要]
「無秩序の代償(price of anarchy)の理論」とは,システムを構成する個々の参加者が自分の利益のみを考えて行動した場合,システム全体の利益がどの程度損なわれるかということを評価した理論である.現実の人々の行動は基本的に利己的であることは自然な仮定であり,その上で全体の利益が損なわれないようにシステムを設計することは,たいへん重要な思想である.
実際この理論によると,システム設計が悪いと,利己的な行動が結果的に個々のメンバーの損に繋がってしまうような場合が有ることが分かる.
本講演では,この理論の基礎を説明し,その魅力を伝える.
 
 伊藤 大雄(京大)
1985年京大・工・数理卒.1987年大学院修士課程了.1995年京都大学博士(工学)取得.
1987年から1996年までNTT研究所,1996年より2001年まで豊橋技術科学大学.
2001年より京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻,助教授〜准教授.
グラフ・ネットワークアルゴリズム,組合せ問題,離散幾何学,組合せゲーム・パズルの研究に従事.
著書「ネットワーク設計理論(共著)」(岩波書店).電子情報通信学会,情報処理学会,日本OR学会,EATCS会員.
 
[10:15-11:00]講演(2)「協力ゲーム理論におけるアルゴリズム」
 
 [講演概要]
協力ゲーム理論では多数のプレイヤーが協力をすることで得られる総利得をどのようにプレイヤー間で分配するか議論する.
そのような「公平分担問題」はオペレーションズ・リサーチにおける重要な問題であるため,古くからアルゴリズム的な研究が行われてきた.
本講演では協力ゲーム理論の基礎概念とそのアルゴリズム的側面を現代的な視点から手短に紹介する.
 
 岡本 吉央(東工大)
2005年3月スイス連邦工科大学チューリヒ校情報科学部大学院課程修了.Ph.D.2005年4月豊橋技術科学大学情報工学系助手.2007年4月同助教.
2007年12月 東京工業大学大学院情報理工学研究科特任准教授.現在に至る.
専門は離散数学,離散アルゴリズム,離散最適化.
 
[11:00-11:15]意見交換
 
[11:15-12:00]講演(3)「インターネットオークションの理論」
 
 [講演概要]
インターネットオークションは,急成長している電子商取引の重要な一分野であり,人工知能/エージェント技術の有望な適用領域であると考えられる.インターネットの利用により,低コストで大規模なオークションが実行可能となった反面,不特定多数の人々が参加可能であることから,オークション方式の設計にあたっては,様々な不正行為に対する頑健性,オークションの結果に関するなんらかの理論的な裏付け等が重要となるものと考えられる,様々なオークションのプロトコルに関して,これらの性質を解明しようとする研究は,ミクロ経済学/ゲーム理論の一分野として活発な研究が行われてきている.本講演ではこれらのオークションの理論について概説する.
 
 横尾  真(九大)
1986年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了.同年 NTTに入社.2004年より九州大学大学院システム情報科学研究院教授.エージェントの合意形成メカニズム,制約充足/分散制約充足等に興味を持つ.博士(工学).
1992年,2002年人工知能学会論文賞,1995年情報処理学会坂井記念特別賞,2004年 ACM SIGART Autonomous Agent Research Award,2005年ソフトウェア科学会論文賞,2006年学士院学術奨励賞受賞.
 

 
第13回パターン認識・メディア理解アルゴリズムコンテスト

9月2日(水)13:00-15:50[第2イベント会場(1号館3階 131教室)]
 
 [企画概要]
本イベント企画では,「クローンを探せ!」と題した第13回パターン認識・メディア理解アルゴリズムコンテストの入賞者の発表,表彰式,および受賞者自身によるアルゴリズム発表を行う.本コンテストは,パターン認識・メディア理解(PRMU)研究専門委員会が,当該研究分野における若手研究者の育成と研究会活動の活性化を目的として1997年度より,秋の大会併催事業として実施している.本事業は,若手研究者およびこれから研究者を目指す学生(主に,高専,学部・大学院生)を主たる対象に,具体的な課題を解決することの楽しさを通して研究の面白さを体験してもらうことを目指している.募集にあたっては Web(http://www2c.comm.eng.osaka-u.ac.jp/~alcon2009/)でサンプルプログラム・画像データを公開してアルゴリズムを実装したプログラムの提出を求め,このプログラムの処理結果や計算時間等を参考に,審査委員会でアルゴリズムの新規性や性能を審査し,優秀なプログラムを選定している.応募対象者が若手研究者や学生であることから,アルゴリズムの完璧さや実装の工夫よりも,若手研究者や学生ならではの素朴なアイデアを積極的に評価する方針を採っている.
 
 司   会:新田 直子(阪大)
1998年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.2003年同大大学院博士後期課程修了.
2002〜2004年日本学術振興会特別研究員.2003〜2004年コロンビア大客員研究員.
現在,大阪大学大学院工学研究科講師.博士(工学).
PCM2006 Best Paper Award受賞.映像メディア処理に関する研究に従事.
 
[13:00-13:05]開会挨拶
 
 美濃 導彦(京大)
1978年京都大学工学部情報工学科卒業.1983年同大大学院博士課程修了.同年工学部助手,1987年〜63年マサチューセッツ州立大学客員研究員,1989年京都大学工学部附属高度情報開発実験施設助教授,1995年同教授,1997年京都大学総合情報メディアセンター教授を経て,2002年京都大学学術情報メディアセンター教授.
2006年4月同センター長に就任.2008年10月より京都大学総長室副室長を兼任.
画像処理,人工知能,知的コミュニケーション関係の研究に従事.工学博士.
 
[13:05-13:15]課題概要説明,審査結果発表
 
[13:15-13:20]入賞者表彰
 
[13:20-14:50]入賞者によるアルゴリズム紹介
 
[15:00-15:50]講演「Web画像マイニング−Web上の膨大な画像データからの知識発見−」
 
 [講演概要]
Webには大量の画像が存在している.近年はFlickrやPanoramiなどの写真共有サイト,Yahoo Image Searchなどの画像検索エンジンの提供するWebAPIを用いることで,Web上の画像を手軽に収集することが可能となり,Web上の大量の画像を用いる新しい画像認識の研究が盛んに行われるようになっている.
本講演では,Web上の画像を用いた画像認識研究の現状および,我々が行っているWeb画像に関する研究について紹介する.
 
 柳井 啓司(電通大)
1995年東京大学工学部計数工学科卒業.1997年同大学大学院工学系研究科情報工学専攻修士課程修了.
同年電気通信大学情報工学科助手.
2003〜2004年文部科学省在外研究員として米国アリゾナ大学に滞在.
2006年電気通信大学情報工学科助教授,2007年同准教授,現在に至る.
博士(工学).電子情報通信学会,情報処理学会,人工知能学会,IEEE Computer Society,ACM 各会員.
 

 
膨大な映像コンテンツを,いかに処理して,どのように応用するのか?

9月3日(木)9:30-11:55[第2イベント会場(1号館3階 131教室)]
 
 [企画概要]
現在,インターネット上の映像コンテンツだけでなく,個人が有する映像コンテンツも大量に存在し,データ量の爆発的な増加に加えて,その種類や視聴形態の多様化が進んでいる.この状況において,従来までのショット/シーン検索に留まらず,映像コンテンツの高度な意味理解,個人の視聴履歴に基づく映像検索,コーパスデータに基づく映像解析,自動メタデータ付与など次世代の技術開発が進みつつある.そこで,本企画では,膨大な映像コンテンツをどのように処理してどのように応用すればよいのかについて,最新の研究成果を講演し,今後の応用展開について議論する.
 
 司   会:久保田 彰(中央大)
1997年大分大電気電子卒.1999年東大大学院工学系研究科修士課程修了.2002年同博士課程修了.
同年日本学術振興会特別研究員.2003年米国カーネギーメロン大学訪問研究員.
2004年神奈川大学ハイテクリサーチセンターポストドクター研究員.
2005年東京工業大学大学院総合理工学研究科助手.2009年より中央大学理工学部助教.
画像再構成,イメージベースドレンダリング,映像符号化,バイオメトリクス認証などの研究に従事.
 
[9:30-9:35]オープニング
 
[9:35-10:05]講演(1)「映像アーカイブスとメタデータ」
 
 [講演概要]
映像アーカイブスの例としてNHKアーカイブスを紹介し,映像コンテンツの活用状況について説明する.また,映像コンテンツ活用のキーとなるメタデータの付与状況とメタデータ付与システムの現状と課題について述べる.さらに,コンテンツ解析を用いたメタデータ付与支援技術について,我々の取り組みとともに,概観する.コンテンツ活用に有用な高品質のメタデータを付与するためには各所で開発したコンテンツ解析技術を統合できる仕組みが必要であるが,このために我々が提案しているオープンなメタデータ制作環境であるメタデータ制作プラットフォームMPFについても紹介する.
 
 八木 伸行(NHK技研)
1980年,京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程了.同年NHK(日本放送協会)入局.甲府放送局,放送技術研究所,技術局,編成局を経て,現在,放送技術研究所(研究企画)部長.
2005年〜2008年,東京工業大学特任教授(兼任).画像・映像・メディア情報処理,コンピュータアーキテクチャ,コンテンツ制作技術,ディジタル放送などの研究開発,ITU,SMPTE,EBU,ARIBなどでの標準化活動に従事.博士(工学).
 
[10:05-10:35]講演(2)「映像連想検索」
 
 [講演概要]
本発表では,大量に蓄積された映像の視聴や検索を目的として行われた,映像連想検索とその検索インタフェースの実現に関する研究について紹介する.提案するシステムでは,映像・音楽コンテンツの特徴量を定義し,これら相互の類似性を新たに算出することを可能としている.さらに,映像固有の多義性と曖昧性を許容してユーザが効率的に望む映像に到達するため,検索結果を効果的に可視化する連想型のインタフェースを導入している.提案する連想型映像検索インタフェースを用いることによって,従来では困難であったユーザが明確なクエリを持ち合わせない場合においても,効果的に検索を行うことを可能としている.
 
 長谷山美紀(北大)
1988年北海道大学大学院工学研究科修士課程修了.同大学助手,助教授を経て2006年同大学教授.
1995年10月から1996年7月までワシントン大学客員准教授.画像・映像および音響信号などマルチメディア信号処理の研究に従事.電子情報通信学会,情報処理学会,映像情報メディア学会,IEEE会員.博士(工学).
2007年8月経済産業省「情報大航海プロジェクト」技術アドバイザー.
2009年1月総務省情報通信審議会専門委員.
 
[10:35-11:00]講演(3)「一般物体認識技術の発展と映像検索への応用」
 
 [講演概要]
近年,一般的な画像に対する認識技術が,新しい特徴表現の提案,機械学習法の進歩,計算機の高速大容量化によって,急速に進歩してきている.こうした認識技術は一般物体認識とよばれ,映像検索にその技術を適用し意味的な映像検索の実現を目指す研究が,世界的なベンチマークワークショップであるTRECVIDを中心に行われている.
本研究では,意味的映像検索技術の要素技術である,一般物体認識技術と,その映像検索への応用をTRECVIDでの研究例に基づいて紹介する.
 
 柳井 啓司(電通大)
1995年東京大学工学部計数工学科卒業.1997年同大学大学院工学系研究科情報工学専攻修士課程修了.
同年電気通信大学情報工学科助手.
2003〜2004年文部科学省在外研究員として米国アリゾナ大学に滞在.
2006年電気通信大学情報工学科助教授,2007年同准教授,現在に至る.
博士(工学).電子情報通信学会,情報処理学会,人工知能学会,IEEE Computer Society,ACM 各会員.
 
[11:00-11:25]講演(4)「CGM動画像の処理と応用」
 
 [講演概要]
『YouTube』や『ニコニコ動画』を代表とする動画共有サイトの普及を背景として,ユーザが作成・公開する映像コンテンツである"CGM動画" は,日々劇的な増加を続けている.合わせて,単純な作成・視聴のみに留まらない,新たな利用形態も生み出されてきている.今後も増え続けていくことが予想されるCGM動画を,更に楽しく利用しやすいものにするために,どのような映像処理・応用技術を創出していくべきであろうか.
本講演では,CGM動画の処理と応用における課題とこれまでの取り組みについて,最新の事例を交えながら紹介し,今後の方向性について検討する.
 
 入江  豪(NTT)
2004年慶応義塾大学理工学部卒業,2006年同大大学院理工学研究科開放環境科学専攻修士課程修了.
同年より,日本電信電話株式会社NTTサイバーソリューション研究所勤務.
2008年より,東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程.
映像処理・応用技術の研究開発に従事.
 
[11:25-11:55]講演(5)「ライフログ」
 
 [講演概要]
何らかの電子的な手段で日常生活の有り様,活動をライフログとして取得することで,体験のデジタル化とアーカイブ化の道が開ける.そのようなデジタル体験ログを残すことで,今まで何気なく過ごし,見落としたり,忘れたりしてきた情報を活用することが可能になる.ライフログの概要を述べ,その研究のアプローチについて論じる.さらに,限定応用に特化したログが徐々に身近で用いられ始めた現状を鑑み,今後どのようにライフログ技術を展望すればよいかについても論じる.
 
 相澤 清晴(東大)
1983年東京大学工学部電子工学科卒.1988年同大博士課程修了.工学博士.
1988年東京大学にて助手,専任講師,助教授,2001年より教授.
この間,工学系研究科,新領域創成科学研究科,情報理工学系研究科を経て,現在,情報学環に所属.
映像処理,マルチメディア応用の分野の研究に従事.
近年,ライフログ,3次元映像に興味.
 

 
次世代を担う若い情報・システム研究開発者を迎えて
−気鋭の若手研究者とベテラン研究者の熱い議論−


9月3日(木)15:30-17:30[第2イベント会場(1号館3階 131教室)]
 
 [企画概要]
最近,FIT,MIRU,PRMUで受賞された斬新なアイデアを発表されている若い研究・開発従事者に,最近の研究開発成果とともに,次の展開となる研究計画について発表をいただく.そのテーマ設定・アプローチ・成果出し・評価・応用展開などについてフェロー団を中心として参加者(フロア)との意見交換し,講演者の今後の研究遂行に寄与するとともに,参加者にも有益な情報を提供することを目指す討論重視の講演会です.昨年,FIT2008において「情報・システム研究開発の今昔 −若者の夢をどこまで膨らませるか−」を実施し,好評でありました.今年はさらに未来を見つめた研究テーマの計画立案について熱く議論する場をつくり,充実した時間を持ちたいと思います.
 
 司   会:北橋 忠宏(電子情報通信学会フェロー)
1962年:阪大・工卒,工博(阪大).1968年:阪大・基礎工・助手.1978〜1985年:豊橋技科大・助教授・教授.
1986年:阪大・産業科学研究所・教授.2002年:同上・定年退職.
研究分野:神経細胞の論理機能,パターン認識・画像処理と自然言語処理.
1987年信学会PRMU委員長.1992年人工知能学会理事.1999年情処学会関西支部長.2000年信学会フェロー.
信学会,情処学会,人工知能学会,認知科学会,IEEE各会員.
 
 座   長:武川 直樹(電機大)
1976年早稲田大学大学院修士課程修了.博士(工学).
NTT研究所,NTTデータ,NTTコミュニケーション科学基礎研究所を経て,現在東京電機大学情報環境学部教授.
高能率符号化の国際標準化,コンピュータビジョン,ヒューマンインタフェース,ヒューマンコンピュータインタラクション,ノンバーバルコミュニケーション.電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション基礎専門委員会委員長,電子情報通信学会フェロー.
 
[15:30-16:10]講演(1)「映像に基づく人物行動のモデリングと学習」
 
 [講演概要]
映像にもとづく人物の基本動作の学習,行動文法の学習,階層的行動認識のための推論,といった3つの課題に関する手法を紹介する.
(1)人物のプリミティブ動作の学習:視覚的文脈を考慮した教師無し学習手法を述べ,動作に関連した物体や背景のアピアランスを利用する学習の重要性を説明する.(2)行動文法の学習:人物の行動を基本動作の記号列として扱い,最小記述長原理にもとづき,ノイズ(余計な動作)を考慮した文法の獲得手法を解説する.(3)構造的行動認識のための推論:文脈自由文法,ベイジアンネットワークと削除補間法を併用した構文推論モデルを紹介する.
 
 木谷クリス(電通大)
1999年南カリフォルニア大学工学部電子工学専攻卒業.2000年ケーエルエー・テンコール株式会社入社.
2005 年東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻修士課程修了.
2008 同大学院同研究科同専攻博士課程修了.
現在,電気通信大学大学院情報システム学研究科助教.MIRU2008学生優秀論文賞受賞.
 
[16:10-16:50]講演(2)「実世界指向画像認識・検索手法の開発とその応用」
 
 [講演概要]
実画像の汎用的な認識理解を自動的に行う一般物体認識は,コンピュータビジョンにおける究極の目標の一つであり,近年盛んに技術開発が行われている.本研究では,確率的正準相関分析の枠組みを応用した画像アノテーション・リトリーバル手法を提案する.
提案手法は,教師として与えられる複数ラベルによる画像のコンテキスト(雰囲気)を用い,高速かつ柔軟に学習・認識を行うことが可能である.実験において,標準的なベンチマークであるCorel 画像セットにより比較実験を行い,本手法が既存手法に比べ高性能であることを示す.また,より広範な画像知識獲得の鍵となる大量のWeb画像を用いた学習や,実世界における応用アプリケーションについても触れる.
 
 中山 英樹(東大)
2006年東京大学工学部機械情報工学科卒業.2008年東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻修士課程修了.同年同博士課程入学,現在に至る.2008年より日本学術振興会特別研究員(DC1).画像認識,パターン認識手法と応用アプリケーションの研究に従事.日本機械学会三浦賞(2008),PRMU研究奨励賞(2008),計測自動制御学会SI部門賞若手奨励賞(2008),情報処理学会全国大会大会奨励賞(2009)受賞.情報処理学会,電子情報通信学会,日本ロボット学会,計測自動制御学会学生会員.
 
[16:50-17:30]講演(3)「視覚感度特性に基づく動画像符号化の高能率化」
 
 [講演概要]
映像符号化の国際標準規格H.264/AVCが,近年,大きな注目を集めている.高画質・高圧縮のH.264/AVC符号化器を実現するためには,符号化器において適切な符号化パラメータ選択する必要がある.ただし,こうした符号化器での動作は標準化の範囲外であり,設計の自由度が残されている.従来の代表的なH.264/AVC符号化器では,レート・歪みコストを最小化する符号化パラメータを選択している.こうした符号化で用いられている歪み量の尺度は二乗誤差である.しかし,二乗誤差は必ずしも主観的な画質劣化を反映した歪み量ではない.そこで,本講演では,視覚特性を考慮した歪尺度をレート・歪みコストに導入し,効率的に符号量を削減する符号化パラメータ選択方法を紹介する.
 
 坂東 幸浩(NTT)
2000年から2002年まで日本学術振興会特別研究員.
2002年九州大学大学院システム情報科学研究科知能システム学専攻博士後期課程了.
同年,日本電信電話株式会社入社.主に高能率ビデオ符号化の研究に従事.
現在,NTTサイバースペース研究所画像メディア通信プロジェクト映像符号化技術グループ研究主任.
2005年 情報処理学会 山下記念研究賞,2008年 FIT 船井ベストペーパー賞 各受賞.博士(工学).
 

 
マルチモーダルWeb−いつでも,どこでも,そして誰もが透過的にWeb上の情報にアクセスするために

9月4日(金)9:30-12:00[第2イベント会場(1号館3階 131教室)]
 
 [企画概要] 企画資料はこちらからご覧いただけます
近年,携帯電話,カーナビ,情報家電など各種機器による全地球規模での情報取得,配信が可能となりつつあるが,具体的なデータへのアクセス方法は,今なお機器やサービスベンダごとに異なる部分が大きい.あらゆる機器を利用し,全ての人々があらゆる情報にシームレスにアクセスできるようにするという,マルチモーダルWebの観点からもWeb上の情報共有のためのフレームワーク整備が望まれる.今回提案するシンポジウムでは,2006年および2008年の FITにおいて開催してきたWeb技術標準化に関するパネルでの議論を踏まえ,「わが国におけるWebアプリケーションの実装・サービス提供の現状」について概観した上で,マルチモーダルWeb実現のための課題について討議する.
 
 司   会:芦村 和幸(W3C/慶大)
1992年京都大学理学部数学科卒業.
2005年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程単位取得退学.
NTTソフトウェア株式会社,ATR音声翻訳通信研究所,株式会社アルカディア,JST/CREST「表現豊かな発話音声のコンピュータ処理」研究員を経て, 2005年よりW3C音声ブラウザ担当,2006年よりマルチモーダル対話担当兼務.音声およびマルチモーダル対話技術に関する各種Web標準策定に従事.
電子情報通信学会,日本音響学会各会員.
 
[9:30-9:50]講演(1)「マルチモーダルWeb−(X)HTML+CSSだけじゃないWebアプリ」
 
 [講演概要]
W3Cマルチモーダル対話ワーキンググループでは,「いつでも,どこでも,誰でも,そしてあらゆるデバイスを用いて透過的にWebにアクセスする」ことを可能とするために必要な,マルチモーダル対話アプリケーション記述のための標準的アーキテクチャである「MMIアーキテクチャ(Multimodal Architecture and Interfaces)」の策定に取り組んでいる.本講演では,マルチモーダル対話処理の概念,およびMMIアーキテクチャについて概説するとともに,GUI,音声,手書き情報等,「多様な入出力形態を利用した (=マルチモーダルな)」Webアプリケーションを例示する.
 
 芦村 和幸(W3C/慶大)
1992年京都大学理学部数学科卒業.
2005年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程単位取得退学.
NTTソフトウェア株式会社,ATR音声翻訳通信研究所,株式会社アルカディア,JST/CREST「表現豊かな発話音声のコンピュータ処理」研究員を経て, 2005年よりW3C音声ブラウザ担当,2006年よりマルチモーダル対話担当兼務.音声およびマルチモーダル対話技術に関する各種Web標準策定に従事.
電子情報通信学会,日本音響学会各会員.
 
[9:50-10:10]講演(2)「マルチモーダル対話システムの標準アーキテクチャと周辺技術」
 
 [講演概要]
本講演では,W3Cおよび情報処理学会試行標準/WG4小委員会(音声言語インタフェース)によって検討されているマルチモーダル対話システムの標準アーキテクチャについて,それぞれの概要を紹介するとともに,各種のインタラクション記述言語標準化,セマンティックWeb関連の知識記述手法,Webアプリケーション開発フレームワークが密接に関連して,新たな技術コアができつつある状況を概観する.
 
 荒木 雅弘(京都工繊大)
1988年京都大学工学部卒業.1993年京都大学大学院工学研究科博士課程研究指導認定退学.
京都大学工学部助手,同総合情報メディアセンター講師を経て,現在京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科准教授.
音声対話システムおよびマルチモーダル対話記述言語の研究に従事.
ACL,ISCA,情報処理学会等各会員.博士(工学).
 
[10:10-10:30]講演(3)「WebアプリプラットフォームとしてのHTML5とSVG」
 
 [講演概要]
Webのハイパーテキスト記述言語として生まれたHTMLと,Webのグラフィック記述言語として生まれたSVG.
どちらもその本来の役割りを大きく超えて,Webアプリケーションのプラットフォームというべき技術に発展しつつある.
本講演ではHTMLの最新仕様であるHTML5とSVGの最新仕様であるSVG 1.2の概要を紹介し,これらの技術がどのように統合化されて将来のWebアプリケーションアーキテクチャが構築されるかを説明する.またHTML5とSVGの両方でサポートが計画されている2D/3Dグラフィック機能,アニメーション機能,ビデオ再生機能の相違点を明らかにし,どのように使い分けてゆくべきかについて議論する.
 
 藤沢  淳(キヤノン)
東京都出身.1983年東京工業大学応用物理学科卒業,1988年東京工業大学理工学研究科博士後期課程修了(博士号取得)後,東京工業大学助手を経て,1990年にキヤノン株式会社に入社,現在に至る.
専門はグラフィックス技術とインターネット技術.
2000年よりW3C SVG(Scalable Vector Graphics)標準化ワーキンググループに参加.
 
[10:30-10:50]講演(4)「SVGによるウェブ地図の標準化」
 
 [講演概要]
WWWは,ハイパーリンクによって世界中の情報システムの間に自由で広汎な連携機構を創出した.そして今もWWWにおける標準化された連携機構はハイパーリンクだけと言って過言ではない.しかしWeb2.0と呼ばれるサービスでは,より高度な連携機構が独自に提供された.その結果WWW上の連携機構は特定のサービスに強く依存するものに変化している.
一方,地図はWeb2.0で提供された代表的なメディアであると同時に,情報システムのユビキタス化や実世界化に伴いその重要性が増している.すなわち地図サービスは高い重要性にかかわらず連携機構に課題を残している.
筆者はこの問題を察知し,地図を用いた情報サービスの連携機構の標準化をSVGによって進めている.活動は既に10年経過したが,まだその効果が発揮されるには至っていない.
 
 高木  悟(KDDI)
KDDI技術戦略部所属.WebGIS,WebMappingシステムを専門とする.
1996年ハイパーリンクにより地図を重ね合わせる技術(ハイパーレイヤリング)を発明.その技術は,SVG1.1に導入され標準化された.未だ各社個別のプラットホームを展開しているウェブ地図サービスを統合するオープンプラットホームとして,国際及び国内の標準化と実用化を推進する活動を行っている.2007年にはSVGを用いた位置情報サービス災害時ナビや,地図プラットホームEZガイドマップがau携帯電話で開始された.
 
[11:00-12:00]パネル討論「マルチモーダルWeb実現の課題」
 
 [討論概要]
本パネル討論では,2006年 [1] および2008年 [2] にFITで開催してきたイベント踏まえ,W3Cで取り組む国際標準化,および情報処理学会情報規格調査会「音声入出力インタフェース委員会」による試行標準等,今までに取り組まれてきた標準化活動について概観した上で,日本におけるマルチモーダルWebアプリケーションの実装・提供状況と今後の課題について,具体的な製品やサービス提供の観点から討議する.
[1] http://www.ipsj.or.jp/10jigyo/fit/fit2006/fit2006program/html/event/event.html#16
[2] http://www.ipsj.or.jp/10jigyo/fit/fit2008/fit2008program/html/event/event.html#19
 
 討論司会:芦村 和幸(W3C/慶大)
1992年京都大学理学部数学科卒業.
2005年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程単位取得退学.
NTTソフトウェア株式会社,ATR音声翻訳通信研究所,株式会社アルカディア,JST/CREST「表現豊かな発話音声のコンピュータ処理」研究員を経て, 2005年よりW3C音声ブラウザ担当,2006年よりマルチモーダル対話担当兼務.音声およびマルチモーダル対話技術に関する各種Web標準策定に従事.
電子情報通信学会,日本音響学会各会員.
 パネリスト:荒木 雅弘(京都工繊大)
1988年京都大学工学部卒業.1993年京都大学大学院工学研究科博士課程研究指導認定退学.
京都大学工学部助手,同総合情報メディアセンター講師を経て,現在京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科准教授.
音声対話システムおよびマルチモーダル対話記述言語の研究に従事.
ACL,ISCA,情報処理学会等各会員.博士(工学).
 パネリスト:桂田 浩一(豊橋技科大)
1995年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.2000年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.
同年豊橋技術科学大学工学研究科助手.2007年同研究科講師.博士(工学).
マルチモーダル対話,知識処理に関する研究に従事.
AAAI,IEEE,情報処理学会,人工知能学会,日本音響学会,言語処理学会,ヒューマンインタフェース学会の各会員.
 パネリスト:五寳 匡郎(マイクロソフトディベロップメント)
1997年東京学芸大学教育学部卒業後,NECクリエイティブに入社.
ITインストラクター,総務省/郵政大学校IT講師を務める傍ら,UNIX Server管理やCGI・ASPプログラムを担当.2000年にマイクロソフトへ転職後,日本の大企業や外資企業における,大規模なWindowsシステム移行プロジェクトを担当.
2003年にウィンドウズ開発統括部(R&D)へ異動後,現在はプログラム マネージャとしてWindows製品のネットワーク機能とInternet Explorerを担当し,Windows International Teamの一員として,日本・アジア市場の要求やフィードバックを反映させる製品開発プロジェクトに携わっている.
W3C 会員.オブザーバーとして W3C SVG IG Japan に参加.
 パネリスト:高木  悟(KDDI)
KDDI技術戦略部所属.WebGIS,WebMappingシステムを専門とする.
1996年ハイパーリンクにより地図を重ね合わせる技術(ハイパーレイヤリング)を発明.その技術は,SVG1.1に導入され標準化された.未だ各社個別のプラットホームを展開しているウェブ地図サービスを統合するオープンプラットホームとして,国際及び国内の標準化と実用化を推進する活動を行っている.2007年にはSVGを用いた位置情報サービス災害時ナビや,地図プラットホームEZガイドマップがau携帯電話で開始された.
 パネリスト:藤沢  淳(キヤノン)
東京都出身.1983年東京工業大学応用物理学科卒業,1988年東京工業大学理工学研究科博士後期課程修了(博士号取得)後,東京工業大学助手を経て,1990年にキヤノン株式会社に入社,現在に至る.
専門はグラフィックス技術とインターネット技術.
2000年よりW3C SVG(Scalable Vector Graphics)標準化ワーキンググループに参加.
 

 
lifelogを情報システムに −収集から活用へ−

9月4日(金)13:00-16:20[第2イベント会場(1号館3階 131教室)]
 
 [企画概要]
現在,モバイル機器およびモバイル家電などに,GPS,カメラなどの記録機器が付き,また,記憶メディアの低価格化により,購買履歴,移動履歴,写真撮影情報などの様々な情報が,大量のライフログとして蓄積されつつある.
本セッションでは,参加者にライフログの活用方法の理解を深めることを目的とし,どのようにライフログを情報システムとして構築するかということを考えていく.また,若手(30才前後)の専門家(研究者・開発者・利用者)による,ライフログに関する様々なプレゼンテーション(デモorポスター)も行い,具体的なシステム構築手法,また社会への活用について,突っ込んだ意見交換を行う予定である.

FIT2009 LOIS シンポジウム「lifelogを情報システムに−収集から活用へ−」の開催にあたって(PDF)
 
 司   会:瀬川 典久(岩手県大)
1994年3月東北大学工学部.1997年3月奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程.
2004年 3月東北大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻博士前期課程修了(博士(情報科学)).
1998年から岩手県立大学ソフトウェア情報学部助手,2004年から岩手県立大学ソフトウェア情報学部講師.
現在の研究テーマは,野外におけるセンサネットワークの活用で,岩手大学農学部との共同研究で里山におけるセンサネットワークの研究に従事.
 
第1部 lifelogの現在
 
[13:00-13:20]第1部 lifelogの現在
        講演(1)「ライフログを利用したサービスと研究の動向」
 
 [講演概要]
ライフログとは個人の活動をディジタル化して蓄積したものである.Eメールやドキュメント,デジタルカメラで撮った写真のように個人が作成したコンテンツはもとより,体重や摂取カロリの電子的記録,さらには,閲覧したWeb履歴や,検索のために入力したキーワード群,電話の発着信履歴なども含まれる.最近ではGPSで位置情報が取れ,ICカードで乗降駅やコンビニでの購買商品が記録できるなど,実生活により密着したライフログが構築できるようになってきている.ライフログを分析して個人の好みや行動傾向を知ることにより,その人に合ったサービスを提供することが期待できる.本講演では,このようなライフログを利用したサービスとその研究動向について概説する.
 
 阿部 匡伸(NTT)
1982年早大理工,電気卒.1984年同大大学院修士課程了.同年日本電信電話公社入社.
1987年から1991年まで,ATR自動翻訳電話研究所出向.1989年MIT滞在研究員.
2007年からNTTサーバーソリューション研究所ヒューマンアプライアンスプロジェクトマネージャ.工博.現在,ライフログ処理技術,ライフログを用いたサービス,ホームネットワークの研究に従事.
日本音響学会,電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員.
 
[13:20-13:40]第1部 lifelogの現在
        講演(2)「日常生活行動における大規模データモデリング」
 
 [講演概要]
日常生活行動が各種のセンサやデバイスにより観測可能になっている.こうして生み出される大規模データを再利用可能な計算モデルとすることで,様々な情報システムやサービスを実現することができる.統計データから構築可能な計算モデルとしてベイジアンネットがあるが実環境で観測されるセンサデータなどの多様な大規模データからモデルを構築するためには様々な工夫が必要であった.
本発表では日常生活中に観測可能な様々なデータや,それを計算モデル化するために必要な技術,構築した計算モデルを活用する技術などについて具体的な事例を通じて紹介する.
 
 本村 陽一(産総研)
1993年電気通信大学大学院博士前期課程電子情報学専攻修了.
1993年通産省工業技術院電子技術総合研究所入所,2001年産業技術総合研究所情報処理研究部門主任研究員,2003年〜同研究所デジタルヒューマン研究センター人間行動理解研究チーム主任研究員.
2008年〜同研究所サービス工学研究センター大規模データモデリング研究チーム長.
大規模データからの計算モデル化技術,モデル活用技術などの研究に従事.博士(工学).
ドコモモバイルサイエンス賞,人工知能学会研究奨励賞,人工知能学会全国大会優秀賞,IPA未踏ソフトウェアスーパークリエーターなど受賞.
 
第2部 lifelogってどう?若手研究者,技術者による研究・開発・サービス事例の紹介
 
 司    会:阿部 匡伸(NTT)
1982年早大理工,電気卒.1984年同大大学院修士課程了.同年日本電信電話公社入社.
1987年から1991年まで,ATR自動翻訳電話研究所出向.1989年MIT滞在研究員.
2007年からNTTサーバーソリューション研究所ヒューマンアプライアンスプロジェクトマネージャ.工博.現在,ライフログ処理技術,ライフログを用いたサービス,ホームネットワークの研究に従事.
日本音響学会,電子情報通信学会,IEEE,ACM各会員.
 
 コメンテータ:本村 陽一(産総研)
1993年電気通信大学大学院博士前期課程電子情報学専攻修了.
1993年通産省工業技術院電子技術総合研究所入所,2001年産業技術総合研究所情報処理研究部門主任研究員,2003年〜同研究所デジタルヒューマン研究センター人間行動理解研究チーム主任研究員.
2008年〜同研究所サービス工学研究センター大規模データモデリング研究チーム長.
大規模データからの計算モデル化技術,モデル活用技術などの研究に従事.博士(工学).
ドコモモバイルサイエンス賞,人工知能学会研究奨励賞,人工知能学会全国大会優秀賞,IPA未踏ソフトウェアスーパークリエーターなど受賞.
 
[13:45-14:00]第2部 lifelogってどう?若手研究者,技術者による研究・開発・サービス事例の紹介
        講演(1)「コンテンツアグリゲータ「coRockets」によるライフログ収集と運用」
 
 [講演概要]
インターネット上からメディアコンテンツの収集を行うコンテンツアグリゲータ「coRockets」を,独立行政法人・情報処理推進機構により2008年度上期の未踏IT人材発掘・育成事業に採択され,この支援を受け開発を行った.
この「coRockets」の特徴の一つであるGUIの設計コンセプトから,ブログを活用した宣伝を考慮した配布までの一連のノウハウを公開する.
また,ユーザから送信されるメディアコンテンツのお気に入り履歴を用いたレコメンデーションの開発と運用について紹介を行う予定である.
 
 川田 正明(慶大)
2004年慶應義塾大学環境情報学部卒業.
2006年同大学院政策・メディア研究科修士課程修了.
現在,同大学院政策・メディア研究科後期博士課程に在学中.
ユーザの行動履歴を用いた情報検索などの研究に従事.
また,複数のフリーソフトの開発と運用も行う.
 
[14:00-14:15]第2部 lifelogってどう?若手研究者,技術者による研究・開発・サービス事例の紹介
        講演(2)「ライフログデータにおけるスケッチによる移動パターン検索」
 
 [講演概要]
We propose a system for retrieving human locomotion patterns from tracking data captured within a large geographical area, over a long period of time. A GPS receiver continuously captures data regarding the location of the person carrying it. A constrained agglomerative hierarchical clustering algorithm segments these data according to the person's navigational behavior. Sketches made on a map displayed on a computer screen are used for specifying queries regarding locomotion patterns. Two basic sketch primitives, selected based on a user study, are combined to form five different types of queries.
We implement algorithms to analyze a sketch made by a user, identify the query, and retrieve results from the collection of data. A graphical user interface combines the user interaction strategy and algorithms, and allows hierarchical querying and visualization of intermediate results.
We demonstrate two applications of the proposed system. In the first application, a person uses sketches to retrieve his own patterns of movement using continuously archived GPS data. The second application creates multimedia travel stories by combining location data, photos, online maps and street view panoramas.
We evaluate the system using a collection of data captured during nine months. The constrained hierarchical clustering algorithm is able to segment GPS data at an overall accuracy of 94% despite the presence of location-dependent noise. A user study was conducted to evaluate the proposed user interaction strategy and the usability of the overall system. The results of this study demonstrate that the proposed user interaction strategy facilitates fast querying, and efficient and accurate retrieval, in an intuitive manner.

講演資料はこちら
 
 Gamhewage Chaminda De Silva(東大)
2003年,シンガポール国立大学電気コンピューター工学研究科修士課程終了.
同年,国際電気通信通信基礎技術研究所[ATR]入社.
2007年,東京大学新領域創成科学研究科基盤情報学専攻博士課程修了.2009年1月まで東京大学電子工学科インテリジェント・モデリング・ラボラトリーの機関研究員.2009年2月より日本ヒューレット・パッカード研究所準研究員.同年4月より,東京大学大学院情報学環・学際情報学府客員研究員.
 
[14:15-14:30]第2部 lifelogってどう?若手研究者,技術者による研究・開発・サービス事例の紹介
        講演(3)「地球大と手のひらの情報デザイン」
 
 [講演概要]
私たちが考える「感じる・触れる」メディアとしての情報デザインを紹介する.地球大にひろがる神経網としてのインターネットがもたらす集合知・経験知を,いかに私たちの感覚経験と知性に訴えかけるものにしていくか.
地球全体をまるごと博物館にする「ユビキタスミュージアム」.現実の風景を見るといった経験をブロードバンド化し,またその場所に訪れた人,住む人たちの「経験知」を集約していく.
球面ディスプレイによるデジタル地球儀「触れる地球」.平面ディスプレイとは異なり,自らの手で球面ディスプレイに現れる地球を回しながら,地球大に広がる情報を得ることができる世界初のインタフェース.宇宙から地球を眺めた様な,この新しい身体感覚は,私たちにどのような新しい情報の風景を見せてくれるのだろうか.
 
 アラカワケンスケ(プロジェクト・タオス)
インタラクティブメディアデザイナー.岩手県盛岡市出身.
ユーザ参加型のWEBサイト,インスタレーション等メディア作品を手がける.Earth Literacy Programに参加.
これまでに,グッドデザイン賞,文化庁メディア芸術祭審査員会推奨作品などに入賞.
http://www.elp.or.jp
http://www.kalium.net
 
[14:30-14:45]第2部 lifelogってどう?若手研究者,技術者による研究・開発・サービス事例の紹介
        講演(4)「無線センサネットワークによるオフィス空間ライフログ」
 
 [講演概要]
本発表では,オフィス空間に埋め込まれたセンサやユーザが携帯するセンサによって実現されるオフィス空間ライフログについて紹介する.今後労働人口が減っていくことが予想される日本では,少ない資源や労働力で最大限に生産性や創造性を実現することが求められる.オフィス空間を高度情報空間に拡張することでオフィス作業の生産性や創造性の向上や,ビルなどのオフィス資源の効率的な品質管理を実現することができる.本発表では,地震による空間の変形をセンシングしてオフィス空間の安全性を検証する地震モニタリングシステム,ユーザの行動をオフィス内のユーザ間で共有するCreative Office Projectの2つの応用に関して,基盤技術と今後の展開に関して述べる.
 
 猿渡 俊介(東大)
2007年東京大学大学院博士課程修了.2004年IPA未踏プロジェクト.2006年〜2008年日本学術振興会特別研究員.2007年〜2008年イリノイ大学客員研究員.現在,東京大学先端科学技術研究センター助教.
専門はコンピュータネットワーク,モバイルコンピューティング,無線ネットワーク.現在は無線センサネットワークにおけるリアルタイム処理技術と応用技術の研究に従事.
情報処理学会MBL研究会運営委員.ACM,IEEE,電子情報通信学会,情報処理学会会員.
 
[14:45-15:00]第2部 lifelogってどう?若手研究者,技術者による研究・開発・サービス事例の紹介
        講演(5)「岩手県遠野市付近におけるツキノワグマの環境利用に関する研究」
 
 [講演概要]
近年,ツキノワグマが全国各地で頻繁に出没し問題となっている.岩手県の北上山系に位置する遠野市ではクマが人里近くに高密度で生息しており,農業被害の多発に伴ってクマの有害駆除個体数は増え続けている.人とツキノワグマの共存を目指すには,まずツキノワグマに関する生態学的な知見(ライフログ)の蓄積が必要である.
しかし遠野市の様に人里付近に生息するツキノワグマに関する生態学的な報文は非常に少ない.そこで本研究では,発信機を装着したツキノワグマの追跡調査によって人里付近に生息するクマのライフログの収集をし, (1)ツキノワグマの行動圏 (2)ツキノワグマの季節的な環境利用 (3)ツキノワグマの行動と人為的環境(道路,建物,農地)との関係を把握することを目的とした.
 
 高橋 広和(岩手大)
2002.3石巻専修大学学士(理学).
2002.4-2004.3 九州大学農学部修士(農学).
2006.3岩手大学大学院修士(農学).
2006.4-現在 岩手連合大学大学院(博士).
 
[15:00-15:15]第2部 lifelogってどう?若手研究者,技術者による研究・開発・サービス事例の紹介
        講演(6)「lifelogデータを用いた社会サービスシステムの構築」
 
 [講演概要]
lifelogを収集するためのウェアラブル・ユビキタスセンサの開発や,収集したlifelogデータの分析手法や検索手法に関する研究が数多く行われてきた.これらのデータや技術の価値をさらに高めていくためには,実応用である社会の中で利用されるサービスに組み込むことが重要である.また,サービスを利用者の選択や傾向をとらえるためのセンサと考えれば,lifelogデータを組み込んだサービスにより,さらに価値ある情報を収集することが可能となる.
本講演では,lifelogデータに基づく社会サービスシステムの具体的な事例を紹介し,その意義と利点について考察する.
 
 北村 光司(産総研)
2008年東京理科大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士課程修了.博士(工学).
同年,独立行政法人 産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究センター 研究員.
2005年より2008年まで日本学術振興会特別研究員(DC1).第6回ドコモ・モバイルサイエンス賞などを受賞.
ヒューマンインタフェース学会,日本ロボット学会,ヴァーチャルリアリティ学会の会員.
 
[15:15-15:30]第2部 lifelogってどう?若手研究者,技術者による研究・開発・サービス事例の紹介
        講演(7)「集合的ライフログを活用したレコメンドシステムの構築」
 
 [講演概要]
サイバー空間上とリアル世界上のライフログを集合的に利用し,レコメンドサービスを実現するライフログ活用システムを構築した.
近年,リアル世界上では,携帯端末の小型化および各種センサの搭載が進んでいる.これにより容易にライフログ収集が可能になってきた.
一方,サイバー空間上では,購買や検索履歴等を用い,複数人の情報を利用した協調フィルタリング技術が盛んに行われている.
このようなサイバー空間での複数人の情報を利用したサービスをリアル世界にも拡張可能であれば,新しいライフログ活用サービス領域が開拓される可能性がある.上記サービスを実現するためのプロトタイプシステムを構築したのでここに紹介する.

講演資料はこちら
 
 茂木  学(NTT)
1995年東工大大学院修士課程修了.同年日本電信電話株式会社に入社.以来,複数センサロボット制御,および現場作業支援システムに関する研究開発に従事.2008年より同社サイバーソリューション研究所にてライフログ技術に関する研究開発に従事.博士(工学).2009年より東工大特別研究員兼務.
1997年ロボティクス・シンポジア論文賞,1998年日本ロボット学会研究奨励賞,2008年医療の質・安全学会ベストトライアル賞を受賞.
 
第3部 lifelogを活用したシステムの紹介
 
[15:30-16:10]デモ/ポスター セッション
 
第4部 クロージング Lifelog活用の未来
 
[16:10-16:20]総合討論
 

 
FIT2009 論文賞セッション

9月2日(水)9:30-16:00[第3イベント会場(1号館3階 132教室)]

 
※著者の先頭は講演者
 
[9:30-12:00] 午前の部
 
[9:30-10:00]講演1:An LP-Based Heuristic Algorithm for the Node Capacitated In-tree Packing Problem
  田中勇真(名大)・佐々木美裕(南山大)・柳浦睦憲(名大)
 
[10:00-10:30]講演2:高速復元可能な接尾辞配列圧縮法
  田中洋輔・小野廣隆(九大)・定兼邦彦(国立情報学研)・山下雅史(九大)
 
[10:30-11:00]講演3:柔軟かつ複数プログラミング言語対応のテストカバレッジ測定フレームワーク
  坂本一憲・鷲崎弘宜・深澤良彰(早大)
 
[11:00-11:30]講演4:多機能コンセントのスケジューリング機能による待機電力の削減
  明山寛史・川村尚生・菅原一孔・齊藤剛史・小西亮介(鳥取大)
 
[11:30-12:00]講演5:タスク割当てアルゴリズムにおける消費電力削減のためのDVS適用タスク選択機構
  森裕一朗(名大)・朝倉宏一(大同大)・渡邉豊英(名大)
 
[13:00-16:00]午後の部
 
[13:00-13:30]講演6:局所変化率変換に基づく有声音声の正弦波モデル
  伊藤 仁・伊藤彰則(東北大)
 
[13:30-14:00]講演7:同期とグラフを用いたクラスタリング手法の提案と評価
  速水雄太郎・菅原俊治(早大)
 
[14:00-14:30]講演8:Effects of Multimodal Error Feedback on Human Performance in Steering Tasks
  Minghui Sun・Xiangshi Ren・Xiang Cao(高知工科大)
 
[14:30-15:00]講演9:表形式の言語資源からのメタデータ抽出
  石松昌展(京大)・田仲正弘(NICT)・石田 亨(京大)
 
[15:00-15:30]講演10:事例映像に基づくシーンに対する適応的音楽選択
  金 壯一・新田直子・馬場口登(阪大)
 
[15:30-16:00]講演11:説得性に基づく情報推薦手法の提案−『ぷらっとPlat@ 自由が丘』における統合された行動ログの活用−
  小柴 等・相原健郎(国立情報学研)・森純一郎(東大)・武田英明(国立情報学研/東大)・小田朋宏(SRA先端技研)・星 孝哲(SRA)・松原伸人(SRA先端技研)
 
[16:00-17:00]選考会議
 

 
21世紀はベクトルコンピューティングの時代!?
−パーソナルスーパーコンピューティングからペタ・エクサスケールスーパーコンピューティングまでを俯瞰する−


9月3日(木)9:30-12:00[第3イベント会場(1号館3階 132教室)]
 
 [企画概要]
プロセッサの高性能化に伴い,相対的に低いメモリ性能の問題(メモリウォール問題)や電力消費問題(パワーウォール問題)がプロセッサ設計制約として顕著になるにつれ,よりシンプルな計算モデルで高い実行効率を実現するベクトルコンピューティングモデルがプロセッサ設計およびコンパイラ設計などハードウェアとソフトウェアの両面で再度注目を集めつつある.
本企画では,メディアプロセッサやメディア処理拡張された汎用プロセッサなどコモディティベクトルプロセッサから,スパコン専用のカスタムベクトルプロセッサに至るまで,それぞれの専門家による講演を元にベクトルコンピューティングの潜在能力を探り,パーソナルレベルからペタ,さらにはエクサスケールレベルまで高性能計算に関する今後の展望を議論する.
 
 司   会:小林 広明(東北大)
1988年東北大学博士了.同年東北大学助手.1991年同講師.1993年同助教授.2001年同教授,現在に至る.この間,1995,1997,2001〜2002年スタンフォード大学客員助教授(電気工学科,コンピュータシステム研究所),2002〜2007年東北大学情報シナジーセンター副センター長,2006年より国立情報学研究所客員教授,2008年より東北大学サイバーサイエンスセンター長併任.高性能計算に関する研究に従事.工学博士.
IEEE Senior Member,ACM,情報処理学会,電子情報通信学会各会員.
 
[9:30-9:40]オープニング:21世紀はベクトルコンピューティングの時代!?
 
[9:40-10:00]講演(1)「Cell/B.E.の特徴と最適化技法」
 
 [講演概要]
Cell Broadband Engine(Cell/B.E.)はコンピュータエンタテインメントシステムであるPLAYSTATIONR3(PS3R)のCPUとして知られていますが,CPUの中にヘテロジニアスな9個のマルチプロセッサコアを持ち,Folding@homeなどのための高性能なアクセラレータとしても活用されています.今回の発表ではCell/B.E.のアーキテクチャ,プログラミングモデル,最適化技法について概要を説明し,ヘテロジニアスなCell/B.E.の性能を引き出す上で不可欠な MARS ライブラリーをつかったプログラミング手法を中心に紹介します.
 
 塚本  明(ソニー・コンピュータエンタテインメント)
2002年米国コロンビア大学でコンピューターサイエンス学科修士号取得.
在学中からLinux Kernelの開発経験をベースにSIP/RTPを利用したVoIPソフトウェアの研究ならびに製品開発などに携わる.
日本電気(株)中央研究所で主任研究員を経て2006年より(株)ソニー・コンピュータエンタテインメントに入社しCell/B.E.のLinux関連開発に従事.
 
[10:00-10:20]講演(2)「Larrabee: 次世代ビジュアル・コンピューティング・マイクロ・アーキテクチャ」
 
 [講演概要]
インテルは,メニーコアの画像処理プロセッサとして,Larrabeeという開発コードネームの製品を発売予定である.これは,画像処理用の専用処理の回路に加えて,x86の命令セットと互換性のあるイン・オーダのプロセッサコアを多数持ち,レンダリング処理の一部をソフトウェアで行うものである.それぞれのプロセッサコアには,16個の単精度浮動小数点演算が同時に処理を行えるベクトル処理ユニットを追加しており,このため,画像処理において,高い性能とスループットをフレキシブルに実現することが期待できる.
 
 池井  満(インテル)
1993年インテル株式会社に入社,インテル社分散メモリ型並列計算機PARAGON用の科学技術計算プログラムの並列化,最適化業務に従事.1998年同社アプリケーションセンタにて,HPC担当部長として,Itaniumプロセッサを始めとするインテル社プロセッサへの最適化を行う.2006年から現職,同社ソフトウェア&サービス本部長.情報処理,ACM,IEEE学会員,2006年ACMゴードンベル・オーナブルメンション,著書 "Parallel Studioプログラミングガイド","IA-64プロセッサ基本講座".
 
[10:20-10:40]講演(3)「次世代プログラミング環境 −多様なプロセッサを使いこなす−」
 
 [講演概要]
現在,プロセッサの複雑化と多様化が進んでいる.例えばCellやGPUなどは非常に高い理論演算性能を持っているが,その能力を活用するためにはそれぞれのハードウェアの事情を考慮した抽象度の低いレベルでのプログラミングが求められる.速度を度外視してただ単に希望どおりの動作をするだけの「動くコード」と,ハードウェア側の事情に配慮して記述された「速く動くコード」には大きな性能差があり,前者を後者に変換するいわゆる最適化作業には高度な知識と多大な労力が必要となる.
本講演では,多様で複雑なプロセッサ群の性能を容易に活用するため,プログラミング言語やツール,ライブラリなどの開発環境の整備の重要性について考える.
 
 滝沢 寛之(東北大)
1999年東北大学大学院情報科学研究科博士課程修了.博士(情報科学).
同年新潟大学総合情報処理センター助手,2003年東北大学情報シナジーセンター助手,2004年同大学大学院情報科学研究科講師を経て,2009年1月より同研究科准教授.
高性能計算システム,コンピュータアーキテクチャとその応用分野に興味を持ち,特に近年ではGPUやCell等のアクセラレータに関する研究に取り組んでいる.
 
[10:40-11:00]講演(4)「TSUBAME2.0における高バンド幅なペタフロップス・コンピューティングの可能性」
 
 [講演概要]
近年HPCにおいてGPUが注目されているが,従来のアクセラレータと異なり(1)コモディティであること,(2)多数の並列演算ユニットによる高計算密度だけでなく,多大なメモリバンド幅(100GB/s超)およびメモリレーテンシ隠蔽のための大量スレッドを有すること,を特徴としている.これらの性質はベクトル計算機と同じであり,GPUは言わばその現代版と言えよう.実際,我々の研究では,多くのベクトル系の数値アルゴリズムをGPU上に実現し,良好な結果を得ている.これらを元に東工大GSICセンターでは,2008年10月に680台の最新のNVIDIA Tesla GPUを導入し,スパコンTSUBAME上に展開した.
現在,様々な研究や教育活動により,GPU利用が増えている状況で,我が国初の「ペタコン」となる予定の2010年6月に稼働するTSUBAME2.0においてはGPU利用がメインになると期待している.
 
 松岡  聡(東工大)
東京大学情報科学科・情報科学専攻・博士(理学)(東京大学,1993年).2001年より東京工業大学学術国際情報センター・研究教育基盤部門・教授.専門は高性能システムソフトウェア・グリッド・並列処理など.最近のプロジェクトはNAREGIプロジェクト(サブリーダー,2003-2007),東工大キャンパスグリッド(2002-2006),科研特定領域・情報爆発(柱長,2006-2010),JST-CREST Ultra Low Power HPC(2007-2011)など.2006年に構築したスパコンTSUBAMEは我が国トップスパコンの地位を二年間維持・世界最大のGPUスパコンなど多くの話題を呼ぶ.
ACM OOPSLA 2002,IEEE CCGrid2003/2006,ACM/IEEE Supercomputing 2009の論文委員長など,数多くの国際学会の大会委員長・プログラム委員長を歴任.情報処理学会坂井記念賞(1997年),学術振興会賞(2006年),ISC Award(2008年)などを受賞.
 
[11:00-11:20]講演(5)「エクサスケール・ベクトルコンピューティングへのアプローチ」
 
 [講演概要]
高性能計算向けのコモディティ・プロセッサは,単一コア性能やメモリバンド幅の点でマルチコア化が潮流である.しかしながらチップの複雑化と電力消費の制約,プログラミングの煩雑化とあいまって,高並列アプリケーションの性能やスケーラビリティの確保が大規模計算における課題である.一方で近年,ベクトル演算のコア技術でもあるSIMD機構が,汎用プロセッサや付加プロセッサにおける演算加速機構としても活用され,有用性が実証されてきている.
本講演では,超高速計算に向けたアーキテクチャ上の課題を概観するとともに,SIMDベースの技術を含めたアプローチの可能性について吟味する.またアプリケーションの実例についても触れる.
 
 高原 浩志(NEC)
名古屋大学大学院理学研究科(大気水圏科学)博士課程修了.1987年 NEC入社.科学技術計算関連の応用ソフトウェア開発プロジェクトの統括などを経験後,高性能計算システムのマーケティング/販売,利用拡大などを推進.またサイエンス系グリッドをはじめ研究開発プロジェクトを担当.米国IEEE/ACM SC2002にてGordon Bell Award受賞(地球シミュレータ応用).現在,HPC事業部・統括部長.日本計算工学会理事.情報処理学会会員.
 
[11:20-12:00]全体討論
 

 
ポストH.264/AVC:次世代映像符号化標準へむけた取り組みと今後の展望

9月4日(金)9:30-12:00[第3イベント会場(1号館3階 132教室)]
 
 [企画概要]
H.264/AVCをはじめとする映像圧縮技術により映像コミュニケーションが手軽に可能となった.映像情報の流通量は現在急速に増加し続けており,圧縮技術のさらなる向上(すなわち高精細・高圧縮化)が強く希求されている.そのような背景をうけ,2009年2月,MPEGからHigh-Performance Video Coding(HVC)のCall for Evidenceが,ITU-TからNext-Generation Video Coding(NGVC)のDraft Requirements(TD 24R1/WP 3)が相次ぎ出力されたように,次世代映像符号化標準の制定へ向けた取り組みが活発化してきている.
本セッションでは,これまでの映像符号化国際標準の動向を踏まえたのち,標準化最前線に携わっているキーパーソンの方々から取組状況を紹介いただき,さらに今後の展望を議論する.
 
 司   会:高村 誠之(NTT)
1991年,東京大学工学部電子工学科卒業.1996年,同大大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了.同年,日本電信電話(株)入社.以来,画像・映像の高能率圧縮符号化アルゴリズムの研究開発,MPEG国際標準化活動などに従事.現在,日本電信電話(株)NTTサイバースペース研究所画像メディア通信プロジェクト映像符号化技術グループ主幹研究員.2005年〜2006年スタンフォード大学客員研究員.2001年画像電子学会研究奨励賞,2002年映像情報メディア学会丹羽高柳賞論文賞,2002年および2003年画像符号化シンポジウム(PCSJ)ベストポスター賞,2004年および2008年電気通信普及財団テレコムシステム技術賞,2004年および2008年PCSJフロンティア賞,2005年情報処理学会長尾真記念特別賞,2008年船井ベストペーパー賞ほか受賞.2006年より,IEEE Trans.CSVT Associate Editor(2008年Certificate of Appreciation受賞).2009年より,NTT特別研究員.IEEEシニア会員.電子情報通信学会,映像情報メディア学会,情報処理学会,画像電子学会,MENSA各会員.博士(工学).
 
[9:30-9:35]オープニング
 
[9:35-10:05]基調講演「高品質映像サービスの可能性と新たな符号化技術への期待」
 
 [講演概要]
映像符号化の役割は回線速度やストレージ容量の制約条件をみたすことから,より高品質な映像サービスを実現することへと変わりつつある.1988年のMPEG設立時からスコープの一部であったHDTVはMPEG-2によるデジタル放送やパッケージとして普及し,MPEG-4 AVC|H.264がHDTVからモバイルまで,さらに性能を向上させた.今,HDTVを越える解像度,色,諧調を持つ高品質映像を活用する条件が整いつつあり,映像符号化にも今以上の性能が求められる.MPEG,ITU-Tの国際標準化は新たな映像符号化技術の課題に取り組んでいる.高品質映像の利用に期待される符号化技術と現在の取り組みについて述べる.
 
 浅井光太郎(三菱)
1981年東京大学電気工学科卒業.同年,三菱電機株式会社入社.
映像符号化・伝送技術およびビデオコーデックの研究開発,ISO/IEC,ITU-Tの国際標準化活動に従事.
1992-1993年コロンビア大学客員研究員.2006年よりISO/IEC JTC1/SC29議長.
現在,三菱電機情報技術総合研究所勤務.
電子情報通信学会,情報処理学会,映像情報メディア学会,画像電子学会,IEEE,SMPTE各会員.
 
[10:05-10:30]講演(1)「時間・空間・コンテキスト依存性を用いた次世代符号化向け圧縮率改善方式」
 
 [講演概要]
H.264/AVCを超える符号化効率の実現を目指して,MPEGではHigh-Performance Video Coding(HVC)の検討が,VCEGではNext-Generation Video Coding(NGVC)の検討が進められている.講演者らは次世代符号化に向けた圧縮率改善技術を開発し,主にVCEG会合を中心に提案活動を行ってきた.
本講演では,これまでの提案技術に関して,画像特徴の時間・空間・コンテキスト依存性を利用した圧縮率改善方式について,それぞれの技術的な特徴を説明する.また,これらの技術を応用した次世代符号化方式の今後の展望について述べる.
 
 村上 智一(日立)
1998年,東京大学大学院工学系研究科修士課程修了.
日立製作所中央研究所組込みシステム基盤研究所組込みソフトウェア研究部にて,画像符号化の研究,国際標準化活動に従事.
2007年〜2008年,米国スタンフォード大学客員研究員.
2009年より東京大学大学院情報理工学研究科博士課程在学中.
 
[10:30-10:55]講演(2)「AVC/H.264を超える符号化効率の実現を目指して−イントラ符号化を中心とした取り組み−」
 
 [講演概要]
ITU-T傘下で映像符号化の標準化を進めるVCEGでは,既存の標準であるH.264/AVCの策定後,その後継となる新たな標準の策定開始に向けて様々な基礎技術の検討が行われてきた.検討は,KTAと呼ばれる参照コーデックを利用して各組織が提案をアピールする形式で進められてきており,当社からもイントラ符号化技術を中心に複数の提案を行ってきた.
本講演では,当社の各提案方式の概要と効果を既存技術と対比しつつ紹介する.
 
 山本 智幸(シャープ)
2002年,東京大学工学部卒.2004年,同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了.
同年,シャープ株式会社入社.現在,研究開発本部 先端映像・通信技術研究所に所属.
映像符号化技術の研究開発に従事し,2005年以降,映像符号化の国際標準化活動(MPEG/VCEG/JVT)に継続的に参加.
 
[10:55-11:20]講演(3)「次世代標準に向けた動画像符号化技術 −符号化効率改善への挑戦−」
 
 [講演概要]
現在,H.264/AVCの符号化効率を大幅に改善する新しい動画像符号化標準への期待が高まっている.
本講演では,我々がITU-TのVCEG(Video Coding Experts Group)で技術提案を行ってきた適応量子化マトリックス選択(AQMS:Adaptive Quantization Matrix Selection)方式,4分木適応ループフィルタ(QALF:Quadtree-based Adaptive Loop Filter),及び内部画素ビット長拡張(IBDI:Internal Bit Depth Increase)方式について紹介する.
 
 中條  健(東芝)
1989年早稲田大学理工学部工業経営学科卒.1991年同大大学院理工学研究科修士課程了.
同年,株式会社 東芝入社.現在,研究開発センターに勤務.主として動画像符号化技術に関する研究開発に従事.博士(工学).
電子情報通信学会,映像情報メディア学会,IEEE会員.
情報規格調査会SC29/WG11/VIDEO小委員会委員.
 
[11:20-11:45]講演(4)「超高精細映像に対する次世代の符号化方式」
 
 [講演概要]
近い将来,放送サービスにおける映像コンテンツの更なる高解像度化が見込まれており,その一つとしてスーパーハイビジョンに代表される超高精細映像(8K映像)が期待されている.しかしながら,十分な画質を満足しつつ8K映像を圧縮することは,H.264の単純適用では困難であり,同方式よりも優れた符号化性能を有する新規圧縮符号化方式が求められる.以上の背景から,筆者らは8K映像を対象とした圧縮符号化方式を,標準化会合などにおいて提案している.
本講演では,8K映像に関する最新動向を紹介し,筆者らが提案する符号化方式について紹介する.
 
 吉野 知伸(KDDI研)
2001年,東京工業大学工学部情報工学科卒業.
2003年,同大学大学院修士課程修了.
同年4月KDDI(株)入社.
2005年以来,(株)KDDI研究所にて,主に高解像度映像を対象とした符号化方式に関する研究・開発に従事.
 
[11:45-12:00]総合討論
 

 
サイバーワールドとリアルワールドとの接点
−家庭に "入り込む" 映像メディアの新展開−


9月4日(金)13:00-16:00[第3イベント会場(1号館3階 132教室)]
 
 [企画概要]
本企画では,昨今の普及が目覚しい映像配信サービスビジネスの動きを探る.携帯音楽プレーヤーや携帯電話による楽曲ダウンロードの普及により,ネットワークを通したサービスはインフラとして存在して当然という感覚を抱かせるようになった.
今や,PCを,あるいはPCを持っていなくてもテレビをブロードバンドのインターネット環境に接続すれば,映像配信サービスを誰もが自宅に居ながらにして即座に利用することが可能となっている.
本企画では,実際の映像配信サービスの関係者の方々を講演者に招き,今後のビジネス・技術・研究に関して討論を行う.
 
 司   会:石川 彰夫(KDDI研)
1972年生.1995年,東京大学工学部電子情報工学科を卒業.
1997年,同大学院工学系研究科電子情報工学専攻の修士課程を修了.
同年,国際電信電話株式会社(現,KDDI株式会社)に入社.
現在,株式会社KDDI研究所にて,多視点映像および自由視点映像の研究に従事.
 
[13:00-14:00]講演(1)「家庭に入り込むIPTV −'ひかりTV'の取り組み−」
 
 [講演概要]
パソコンをモデムに接続し,パラパラ漫画のような動画を配信していた時代から10年が過ぎ,光ファイバーや大画面デジタルテレビの普及により,家庭のテレビでハイビジョン映像が楽しめる時代がやってきた.NTTグループでもこのIPTVを一つの中核事業として据えるべく検討を進め,2008年3月にNTTぷららが「ひかりTV」を開始した.
本講演では,IPTVが台頭してきた背景を概観するとともに,「ひかりTV」のサービスや課題,NTTぷららのIPTVの普及促進に向けた取り組みを紹介する.
 
 木谷  靖(NTTぷらら)
1996年,神戸大学自然科学研究科修士課程修了.同年,日本電信電話(株)に入社,映像配信,顔認識の研究に従事.1999年よりNTTコミュニケーションズ(株)にてインターネット映像配信の事業化,IPTVの技術戦略策定,標準化に従事.2007年,NTTぷらら技術開発部担当部長として「ひかりTV」の配信設備,受信機の開発に従事し,2008年3月の「ひかりTV」サービス開始時より現職.現在は「ひかりTV」の配信システムの構築・運用,技術戦略策定,渉外,IPTVフォーラムにおける標準化に従事.
 
[14:00-15:00]講演(2)「FMBC時代の映像サービスについて」
 
 [講演概要]
モバイル,固定回線いずれもブロードバンド化が急速に進み,モバイルでは,3G携帯が主流になる一方,WiMAXやLTEなどの新世代ネットワークへの動きも加速化されてきた.一方,固定回線では2008年にはFTTH契約数がADSLを抜き,モバイル,固定いずれも数Mbpsから数+Mbpsレベルの帯域を利用できる環境が整いつつある.このようなブロードバンド環境では,固定,モバイル,放送がお互いに連携・融合するFMBC(Fixed Mobile and Broadcasting Convergence)を実現することが可能となる.
本講演では,このようなFMBC時代における映像サービスについて,現状と今後の展望について述べる.
 
 中島 康之(KDDI)
1980年早稲田大学理工学部電子通信科卒業.1982年同大学院工学研究科(電気工学)修了.
同年 国際電信電話株式会社.1985年米国マサチューセッツ工科大学客員研究員を経て,KDD研究所勤務.MPEG等の動画像符号化方式やマルチメディアコンテンツ処理技術等に従事.工学博士.
2006年 (株)KDDI研究所取締役.2006年度電子情報通信学会 業績賞受賞.
2007年KDDI(株)コンテンツ・メディア本部メディアサービス企画部部長.
 
[15:00-16:00]講演(3)「Web2.0/3.0時代に向けたユーザ発信コンテンツ創生/配信技術の現状と今後」
 
 [講演概要]
従来,マスメディアからの情報を一方的に受信するだけの状態であった情報の流れが,Webやブログ等の普及に伴い,CGM/UGC(Comsumer Generated Media / UserGenerated Content)という新しいコンテンツジャンルを生み出したことは周知の通りである.
近年ではCGM/UGCが商業的にも強い意味を持つことが明らかになり,Web2.0/3.0時代の中核を担うコンテンツとして,さらなる成長ならびに新しい文化としての成熟が期待されている.
しかしながら,現在のCGM/UGCはそのほとんどが文字や写真に限られていることに加え,道徳性や著作権違反など様々な問題も包含しており,「新しい文化」と呼ぶにはあまりにも未成熟な状況である.本講演では,健全な次世代CGM/UGC文化を築くものとして近年注目を集めているSTA(Scenario to Animation)技術に着目し,講演者が開発しているDMD(Digital Movie Director)を中心に次世代ユーザ発信コンテンツ創生/配信の現状と今後の展望について述べる.
 
 青木 輝勝(東北大)
1998年東京大学大学院博士課程了.同年,同大・先端科学技術研究センター助手,2002年同大同センター講師.2007年東北大学准教授(電気通信研究所/情報科学研究科).情報コンテンツの創生技術,検索技術,配信技術,保護技術,次世代メディア技術等の研究に従事.
2007年文科大臣表彰若手科学者賞,2007年情報処理学会優秀教育賞,2003年・2008年画像電子学会最優秀論文賞,2008年石田(實)記念財団学術奨励賞等々を受賞.博士(工学).