イベント企画 講演概要

船井業績賞受賞記念講演:ブレイン・ネットワーク・インタフェース(BNI)技術の最前線

9月3日(水)14:00-15:15[第1イベント会場(θ館1F 大講義室)]
 
 [講演概要]
脳の機能を解き明かし,情報通信に役立てるためには,脳の中に情報がどのように表現され,処理されているのかを調べなくてはならない.しかし,これは生物学がこれまで得意としてきた物質や場所に関する研究に比べて格段に難しくなる.このような困難を克服するために,脳を創ることによって脳を理解する研究を続けてきた.その結果,ヒトの脳を傷つけずに,脳の外側から活動を記録し,必要な情報を抽出して,ロボットを動かすことができるようになった(BNI技術).この技術は,工学として革新的なだけではなく,脳内の情報を実時間で抽出し,解読し,計算理論の予測に基づいてこれに操作を加え,直接または間接に操作した情報を脳にフィードバックする新しい方法論も可能にする.今回の講演では,急速に発展しつつある,BNIやサイボーグ技術と,それに基づく未来の情報通信に関して解説したい.
 
 川人 光男(ATR脳情報研究所 所長)
1976年東京大学物理卒,1981年大阪大学博士課程修了,同年助手,1987年同講師.1988年(株)ATRに移る.2003年よりATR脳情報研究所所長,2004年ATRフェロー,電子情報通信学会フェロー,JST-ICORP「計算脳プロジェクト」研究総括兼任.1996〜2001年JST-ERATO「川人学習動態脳プロジェクト」総括責任者兼任.2008年3月よりJSTさきがけ「脳情報の解読と制御」領域研究総括兼任.計算論的神経科学の研究に従事.米澤賞,大阪科学賞,科学技術長官賞,塚原賞,志田林三郎賞,朝日賞などを受賞.著書に「脳の仕組み」,「脳の計算理論」等.HFSP(Human Frontier Science Program)Journal編集委員,日本神経科学会理事.
 

 
慶應義塾創立150年記念講演:情報 "実学 " 実践の場としてのSFC

9月2日(火)10:30-12:00[第1イベント会場(θ館1F 大講義室)]
 
 [企画概要]
SFC Open Research Forum 2007で,我々は次のようなメッセージを送った.「未来創造,すなわち,未来を構想しその実現に向けて新しい実践を生み出すこと.それが,開設以来揺るぐことのない,慶應義塾湘南藤沢キャンパス(SFC)の使命である.未来を創造するチカラとは,『並大抵でない』スケールや価値観,『見えないものを見えるようにする』技術と技法,そして『何が起きても動じない』地に足のついた行動力である」と.まさに実学の実践である.これら未来創造力は,SFCの教育理念ともなっており,それらのチカラに裏付けを与えるものとして,情報科学は欠くことのできないものである.そのSFCもまもなく開設20年を迎えようとしている.本フォーラムを湘南藤沢キャンパスで開催するこの機会に,環境情報学部の設立にご尽力された相磯秀夫氏(初代環境情報学部長)をお招きし,「慶應義塾創立150年記念イベント」の一環として,慶應義塾関係者,SFC関係者をまじえ,実学実践の場としての湘南藤沢キャンパス(特に環境情報学部)設立の意義,キャンパス開校から約20年を経た現状の評価,さらには,これからの情報科学の在り方などについて幅広いテーマでご講演いただく.
 
 [講演概要]
学術の急速な進歩ならびに社会の急激な変革は,大学の教育・研究のあり方にも大な影響を与えている.中でも将来の高度情報社会における学術・産業・社会・生活のあらゆる基盤を支える情報科学系学問分野には抜本的なパラダイム・シフトが求められている.この場合のパラダイム・シフトは大学の改革と同義語であり,情報科学系以外の学問分野にも多くの共通点をもっている.慶應義塾大学では,1980年代半ばから新しい実践的な学問の創設を目指して,(1)学術の進歩,(2)産業・社会との関連,(3)教育の本質,(4)大学の体質改善,(5)社会環境の変化,(6)大学運営の刷新,(7)大学の未来像策定などの視点から,その実現に挑戦してきた.慶大SFCはその成果を世に示したものである.ここでは,その概要を伝えると同時に,将来検討すべき課題について概観する.沈滞ぎみの情報科学系学問分野の活性化に役立つことを願っている.
 
 講   演:相磯 秀夫(東京工科大学 理事(前学長)/慶應義塾大学名誉教授)
1932年生まれ.1957年慶應義塾大学大学院工学研究科修士課程修了.同年大阪大学工学部助手.同年通産省電気試験所技官.1960年イリノイ大学計算機研究所研究助手.1971年慶應義塾大学工学部教授.1983年ケンブリッジ大学計算機研究所訪問教授.1990年慶應義塾大学環境情報学部学部長.1994年同大学大学院政策・メディア研究科委員長.1999年東京工科大学メディア学部学部長.同年同大学学長.2008年同大学理事.1968年工学博士(慶應義塾大学).1992年情報処理学会副会長.
 
 司   会:高汐 一紀(慶大)
1967年生まれ.1995年慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程単位取得退学.電気通信大学電気通信学部情報工学科助手を経て,現在,慶應義塾大学環境情報学部准教授.主に,分散実時間システム,小型デバイス向けモバイルアプリケーション,ユビキタスコンピューティングの研究に従事.情報処理学会,日本ソフトウェア科学会,ACM,IEEE各会員.博士(工学).
 

 
情報爆発時代の自然言語処理の新展開
−大規模ウェブリソースは対話を賢くするか?−


9月2日(火)13:00-17:30[第1イベント会場(θ館1F 大講義室)]
 
 [企画概要]
コーパスからの知識獲得はこれまでも行われてきたが,現在,さらに大規模なデータを対象として真に必要とする情報の取得を目指す研究を行っている科研費特定領域研究,「情報爆発時代に向けた新しいIT基盤技術の研究」がある.
この科研費の元で進められている研究から,大規模な知識,情報を利用,獲得するための研究を研究代表者の方々から紹介いただき,研究パラダイム,得られる結果の可能性について考察する.
そして知識を利用する応用側からの,知識の規模や質に対するニーズ,得られた知識を用いたアプリケーションのブレイクスルーを含めた未来像について議論する.
 
 司   会:二宮 崇(東大)
1996年3月東京大学理学部情報科学科卒.1998年3月同大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.2001年3月同大学同大学院博士課程修了.2001年3月理学博士(東京大学).その間1999年2月〜2000年1月にドイツDFKIで客員研究員,1998年4月〜2001年3月に日本学術振興会特別研究員(DC1).2001年4月〜2006年3月科学技術振興機構CREST研究員.2006年4月に東京大学情報基盤センター講師となり,現在に至る.
 
 司   会:村上 浩司(奈良先端大)
1973年生.2003年北海道大学大学院工学研究科電子情報工学専攻博士課程単位取得退学.同年ニューヨーク大学コンピュータ科学科アシスタントリサーチサイエンティスト.2006年東京工業大学統合研究院イノベーションシステム研究センター特任助教.2008年より奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科特任助教.博士(工学).自然言語処理における意味処理の研究に従事.
 
[13:00-13:05]オープニング(講演者の方々の紹介など)
 
 村上 浩司(奈良先端大)
1973年生.2003年北海道大学大学院工学研究科電子情報工学専攻博士課程単位取得退学.同年ニューヨーク大学コンピュータ科学科アシスタントリサーチサイエンティスト.2006年東京工業大学統合研究院イノベーションシステム研究センター特任助教.2008年より奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科特任助教.博士(工学).自然言語処理における意味処理の研究に従事.
 
[13:05-13:50]講演1「対話的情報探索支援のための統合分類体系の構築」
 
 [講演概要]
Web検索サービスの普及に伴い,一般の人々にとって情報検索は身近な存在となったが,情報検索の効率は利用者が持っているノウハウによって大きく左右される.必要なノウハウを獲得するには,Webや図書館に存在する多様な情報資源へインタラクティブにアクセスすることが有効である.本講演では,図書館情報資源とWeb情報資源との中間的な性質を持つ「Wikipedia」を活用し,Wikipediaと図書館分類体系を統合的に活用する手法について論じる.また,本手法を応用し,さまざまなキーワードから図書館の有用な情報資料に誘導する情報探索支援ツール「Littel Navigator」を紹介し,図書館の現場での利用状況などについて報告する.
 
 清田 陽司(東大)
1998年京都大学工学部電気工学第二学科卒.2004年同大学院情報学研究科知能情報学専攻博士後期課程修了.JSTさきがけポスドク研究員などを経て,2004年より東京大学情報基盤センター助手(助教),現在に至る.自然言語処理技術を応用した実用システムとして,ダイアログナビ(マイクロソフト(株)との共同研究),図書館レファレンス業務支援ツールなどを開発.図書館の現場への支援ツールの普及を目的として(株)リッテルの設立に参画し,サービス開発に関するアドバイスを行っている.
 
[13:50-14:35]講演2「行動データに基づくインタラクティブシステムのデザイン」
 
 [講演概要]
人は言語行動に加え,ジェスチャ,視線,表情等の様々な非言語行動を通して意思疎通を図っているが,人間のように非言語情報を認識・解釈できるインタラクティブシステムは未だ実現していない.しかし,センシング技術や認識技術のめざましい発展により,人間の身体運動を精密に計測できるようになってきており,計測された膨大な行動データをユーザ対システムのコミュニケーションに有用な情報へと変形し,利用する技術は,情報爆発時代のコミュニケーション技術として重要である.本講演では,「ユーザの様子に気づく」会話エージェントに焦点をあて,会話時のユーザの身体運動データを解釈し,システムの動作決定に利用する方法を紹介するとともに,インタラクティブシステムにおける非言語情報の重要性と有用性について議論する.
 
 中野 有紀子(成蹊大)
1990年東京大学大学院教育学研究科修士課程修了.同年,日本電信電話株式会社入社.2002年MIT Media Arts & Sciences修士課程修了.2002-2005年科学技術振興機構社会技術研究開発センター専門研究員,2005-2008年東京農工大学大学院工学府特任准教授.2008年4月より成蹊大学理工学部情報科学科准教授.知的ユーザインタフェース,会話エージェントの研究に従事.博士(情報理工学).
 
[14:50-15:35]講演3「対話でユーザの希望を引き出して検索する『ラダリング型検索サービス』」
 
 [講演概要]
平成19年度情報大航海プロジェクトに採択されたラダリング型検索サービスは,システムがユーザに質問を投げかけることで,ユーザが単独では表現できなかった,求めるサービスやコンテンツに関する情報を引き出し,多種多様でかつ大量のサービスやコンテンツの中からそれとマッチするものを探し出す次世代型検索サービスである.最初はあいまいとしたイメージしかなかったとしても,システムとの対話の中で徐々に刺激を受けて,明らかにしていくことができる.
昨年度,検索対象のドメインとして人材分野を選び,転職希望者に対して求人情報を紹介するシステムを構築し,約1000人に対して実証実験を行ったので,その成果と課題を述べる.
 
 村田 稔樹(沖電気)
1991年大阪府立大学大学院修了.同年沖電気工業株式会社入社.
同社研究開発本部関西総合研究所にて機械翻訳システムの研究開発に従事.
1995年世界初のWeb翻訳システム「PENSEE for Internet」を考案,開発.
2004年コミュニティ型機械翻訳サイト「訳してねっと」を公開.
2007年経済産業省平成19年度情報大航海プロジェクトにおける「ラダリング型検索サービス」のプロジェクトマネージャに従事.
 
[15:35-16:20]講演4「Web質問応答システム:自然言語による答の検索」
 
 [講演概要]
質問応答とは,利用者が入力した自然言語による質問文に対し,情報源となる文書群からその答となる部分を見つけ出す技術である.検索要求に適合する文書を見つけ出す情報検索とは異なり,質問文に現われる「誰」,「なぜ」等の表現で示される回答の種類を考慮した上で,必要十分な文書部分を回答候補として抽出して利用者に提示する点に特長がある.利用者は質問文により自然な形で情報要求を記述できるので,情報爆発時代における人に優しい情報アクセス手法として期待されている.
本講演では,質問応答システムに関して,概説を行なうとともに,Web上に存在する膨大な量の文書情報を対象として我々が行なっている研究事例を紹介し,情報爆発時代における質問応答システムの役割について論じる.
 
 森 辰則(横浜国大)
1991年横浜国立大学大学院工学研究科博士課程後期修了.工学博士.同年,同大学工学部助手着任.同講師,同助教授を経て,現在,同大学大学院環境情報研究院教授.この間,1998年2月より11月までStanford大学CSLI客員研究員.自然言語処理,情報検索,情報抽出などの研究に従事.言語処理学会,情報処理学会,日本ソフトウェア科学会,ACM各会員.
 
[16:20-17:05]講演5「コミュニケーションエージェントによるメッセージ理解とモバイル情報提供」
 
 [講演概要]
本発表では,要求内容の明確化と要求を充足する簡便な手段を統合的に提供するコミュニケーションエージェントについて説明する.コミュニケーションエージェントの実現に向けた取組みとして,相手にメッセージを理解させたいという要求充足をターゲットとしてリアルな対話型コミュニケーションロボットPaPeRo上に実現したリッチメディアメッセージクリエーションシステムについて述べる.そして,PaPeRoをバーチャル化してモビリティを向上し,リアルロボットからカーナビや携帯端末など端末間を移動しながら利用者の履歴情報を蓄積し,利用者と対話しながら情報推薦を行うモバイル情報エージェントについて説明する.
 
 奥村 明俊(NEC)
1986年,京都大学大学院工学研究科修士課程修了.同年,NEC入社.機械翻訳や情報抽出など自然言語処理,音声翻訳,ロボットエージェントの研究開発に従事.現在,共通基盤ソフトウェア研究所にてメディアプロセシング,情報センシング,音声言語,情報セマンティクスの研究グループを統括.工学博士.
 
[17:05-17:30]総合討議
 

 
これでいいのか,ユビキタス
−今後のユビキタスコンピューティングの研究を考える−


9月3日(水)9:30-12:00[第1イベント会場(θ館1F 大講義室)]
 
 [企画概要]
Mark Weiserがユビキタスコンピューティングの概念を提唱してから,およそ20年が経過した.その間に機器,部品の高機能化と小型低消費電力化,無線通信技術の進歩などにより,その概念が現実のものとなりつつある.しかし,その一方で,ユビキタスコンピューティング発祥の米国では,ここ数年で急激に関心が低下してきており,現在活発に研究活動が行われているのは,欧州,日本,韓国という状況である.このような背景を踏まえ,現在のユビキタス研究における課題と,今後のユビキタス研究・社会はどうあるべきかについて,情報分野以外の分野の専門家も交えて幅広い視点で討論する.
 
 司   会:戸辺 義人(電機大)
1986年東京大学大学院修士修了.2000年慶應義塾大学博士(政策・メディア).
現在,東京電機大学未来科学部情報メディア学科教授.実世界指向センサネットワークの研究に従事.
 
[9:30-9:40]オープニング
 
 中島 秀之(はこだて未来大)
1983年,東大情報工学専門課程修了(工学博士).同年,電総研入所.2001年より産総研サイバーアシスト研究センター長.2004年より公立はこだて未来大学学長.産総研サービス工学研究センター研究顧問.認知科学会元会長,ソフトウェア科学会元理事,人工知能学会元理事,情報処理学会フェロー,同元副会長.マルチエージェントシステム国際財団元理事.日本工学アカデミー会員,電子情報通信学会会員,日本学術会議連携会員.
主要編著書:知能の謎(講談社ブルーバックス),AI事典第2版(共立出版),知的エージェントのための集合と論理(共立出版),思考(岩波講座認知科学8),Prolog(産業図書).
 
 
[9:40-10:00]講演1「ユビキタスコンピューティング研究の停滞とその将来」
 
 [講演概要]
ユビキタスコンピューティングの概念が提唱されてから15年以上が経過し,これまでに国内外でユビキタスコンピューティングに関する数多くの研究プロジェクトが行われた.
しかし,残念ながらユビキタスコンピューティングは実用化されているとは言い難いし,多くの研究プロジェクトは似たようなプロトタイプと簡易実験・評価を繰り返しており,まさにデジャブー状態にある.
この結果,10年前のユビキタスコンピューティングの研究と現在の研究を比べたときに大きな発展があるかというと疑わしい.
なぜユビキタスコンピューティングの研究が進歩しないのかを議論していく.
 
 佐藤 一郎(国立情報学研)
1991年慶應義塾大学理工学部電気工学科卒,1996年同大大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了,博士(工学).現在,国立情報学研究所・アーキテクチャ科学研究系・教授.このほか科学技術振興事業団さきがけ研究21研究員,Rank Xerox研究所客員研究員などに従事.専門は分散システム及びユビキタスコンピューティング向けのミドルウェア.平成18年度科学技術分野 文部科学大臣表彰 若手科学者賞他多数受賞.
 
 
[10:00-10:20]講演2「遊戯的生活環境とユビキタスコンピューティング」
 
 [講演概要]
集合知やピアプロダクションと呼ばれるように,今日のインターネットの世界では,多数の人々の遊戯的かつ社交的な振舞いを通じて,様々な情報やコンテンツがつなぎ合わされ,書き換えられ,そこから新たな知識や価値が生み出されている.
今後は,ユビキタスコンピューティングの技術が物理的な生活環境と融合し,日常生活で利用する様々な物や空間が,それらと接する人々の遊び心や想像力を喚起し,また人々によって,物や空間に仕組まれた機能の書き換えや読み替えがなされるようになるのではないか.パーベイシブゲームや代替現実ゲーミング等の事例を参考にして,そのような可塑的で遊戯性に満ちた生活環境や暮らしの姿を展望してみたい.
 
 武山 政直(慶大)
1988年慶應義塾大学経済学部卒業,1990年同大学院経済学研究科修士課程修了.1992年〜1994年カリフォルニア大学大学院留学(Ph.D.取得).1994年慶應義塾大学環境情報学部助手,1997年武蔵工業大学環境情報学部講師,1999年同助教授,2003年慶應義塾大学経済学部准教授,2008年同教授.
専門は都市生活者のメディア利用に関する調査分析とサービスのデザイン.
 
 
[10:20-10:40]講演3「これからのユビキタスコンピューティング−本当のインパクトはこれからだ!−」
 
 [講演概要]
我が国におけるユビキタスコンピューティングの研究開発は,着実な進歩を遂げている.
従来のIT技術が人や組織のエンパワーメントを可能にしてきたのに加え,ユビキタス技術は,人間中心主義的な視点に立って,モノや空間,都市や環境のエンパワ−メントを加速する技術である.
しかし,いくつかの課題が見えていることも事実である.
本講演では,乗り越えるべき技術的課題と社会的課題について議論する.
 
 徳田 英幸(慶大)
1975年慶應義塾大学工学部卒.同大学院工学研究科修士.ウォータールー大学計算機科学科博士.米国カーネギーメロン大学計算機科学科研究准教授を経て,1990年慶應義塾大学環境情報学部に勤務.慶應義塾常任理事を経て,現職.主に,ユビキタスコンピューティングシステム,オペレーティングシステム,分散システムに関する研究に従事.現在,情報通信審議会委員,日本学術会議連携会員,情報処理学会理事などを務める.研究教育業績に関してMotorola Foundation Award,IBM Faculty Award,経済産業大臣賞,総務大臣賞などを受賞.
 
 
[10:40-11:00]講演4「脳に学ぶ遇有性の設計原理」
 
 [講演概要]
インターネットなどの新しいメディアにおいて「遇有性」をどのように設計したらよいか,脳科学の知見に基づき検討する.
 
 茂木 健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究所)
脳科学者.ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー.東京工業大学大学院連携教授(脳科学,認知科学),東京芸術大学非常勤講師(美術解剖学).その他,東京大学,大阪大学,早稲田大学,聖心女子大学などの非常勤講師もつとめる.1962年10月20日東京生まれ.東京大学理学部,法学部卒業後,東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了.理学博士.理化学研究所,ケンブリッジ大学を経て現職.主な著書に「脳とクオリア」(日経サイエンス社),「生きて死ぬ私」(徳間書店)「心を生みだす脳のシステム」(NHK出版),「意識とはなにか−<私>を生成する脳」(ちくま新書),「脳内現象」(NHK出版),「脳と仮想」(新潮社),「脳と創造性」(PHP研究所),「スルメを見てイカがわかるか!」(角川書店,養老孟司氏との共著),「脳の中の小さな神々」(柏書房,歌田明宏氏との共著),「『脳』整理法」(ちくま新書),「クオリア降臨」(文藝春秋),「脳の中の人生」(中央公論新社),「プロセス・アイ」(徳間書店),「ひらめき脳」(新潮社),The Future of Learning(共著),Understanding Representation(共著)がある.専門は脳科学,認知科学.「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに,文芸評論,美術評論にも取り組んでいる.「脳と仮想」で,第四回小林秀雄賞<http://www.shinchosha.co.jp/kobayashisho/>を受賞.2006年1月より,NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」<http://www.nhk.or.jp/professional/>キャスター.
 
[11:00-12:00]パネル討論「これでいいのか,ユビキタス−今後のユビキタスコンピューティングの研究を考える−」
 
 [討論概要]
Mark Weiserがユビキタスコンピューティングの概念を提唱してから,およそ20年が経過した.その間に機器,部品の高機能化と小型低消費電力化,無線通信技術の進歩などにより,その概念が現実のものとなりつつある.しかし,その一方で,ユビキタスコンピューティング発祥の米国では,最近,関心が低下してきており,現在活発に研究活動が行われているのは,欧州,日本,韓国という状況である.このような背景を踏まえ,現在のユビキタスコンピューティングの研究を見つめ直し,今後のユビキタスコンピューティング研究・社会はどうあるべきか,情報分野以外の分野の専門家も交えて幅広い視点で討論する.
 
 討論司会:中島 秀之(はこだて未来大)
1983年,東大情報工学専門課程修了(工学博士).同年,電総研入所.2001年より産総研サイバーアシスト研究センター長.2004年より公立はこだて未来大学学長.産総研サービス工学研究センター研究顧問.認知科学会元会長,ソフトウェア科学会元理事,人工知能学会元理事,情報処理学会フェロー,同元副会長.マルチエージェントシステム国際財団元理事.日本工学アカデミー会員,電子情報通信学会会員,日本学術会議連携会員.
主要編著書:知能の謎(講談社ブルーバックス),AI事典第2版(共立出版),知的エージェントのための集合と論理(共立出版),思考(岩波講座認知科学8),Prolog(産業図書).
 パネリスト:佐藤 一郎(国立情報学研)
1991年慶應義塾大学理工学部電気工学科卒,1996年同大大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了,博士(工学).現在,国立情報学研究所・アーキテクチャ科学研究系・教授.このほか科学技術振興事業団さきがけ研究21研究員,Rank Xerox研究所客員研究員などに従事.専門は分散システム及びユビキタスコンピューティング向けのミドルウェア.平成18年度科学技術分野 文部科学大臣表彰 若手科学者賞他多数受賞.
 パネリスト:武山 政直(慶大)
1988年慶應義塾大学経済学部卒業,1990年同大学院経済学研究科修士課程修了.1992年〜1994年カリフォルニア大学大学院留学(Ph.D.取得).1994年慶應義塾大学環境情報学部助手,1997年武蔵工業大学環境情報学部講師,1999年同助教授,2003年慶應義塾大学経済学部准教授,2008年同教授.
専門は都市生活者のメディア利用に関する調査分析とサービスのデザイン.
 パネリスト:徳田 英幸(慶大)
1975年慶應義塾大学工学部卒.同大学院工学研究科修士.ウォータールー大学計算機科学科博士.米国カーネギーメロン大学計算機科学科研究准教授を経て,1990年慶應義塾大学環境情報学部に勤務.慶應義塾常任理事を経て,現職.主に,ユビキタスコンピューティングシステム,オペレーティングシステム,分散システムに関する研究に従事.現在,情報通信審議会委員,日本学術会議連携会員,情報処理学会理事などを務める.研究教育業績に関してMotorola Foundation Award,IBM Faculty Award,経済産業大臣賞,総務大臣賞などを受賞.
 パネリスト:茂木 健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究所)
脳科学者.ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー.東京工業大学大学院連携教授(脳科学,認知科学),東京芸術大学非常勤講師(美術解剖学).その他,東京大学,大阪大学,早稲田大学,聖心女子大学などの非常勤講師もつとめる.1962年10月20日東京生まれ.東京大学理学部,法学部卒業後,東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了.理学博士.理化学研究所,ケンブリッジ大学を経て現職.主な著書に「脳とクオリア」(日経サイエンス社),「生きて死ぬ私」(徳間書店)「心を生みだす脳のシステム」(NHK出版),「意識とはなにか−<私>を生成する脳」(ちくま新書),「脳内現象」(NHK出版),「脳と仮想」(新潮社),「脳と創造性」(PHP研究所),「スルメを見てイカがわかるか!」(角川書店,養老孟司氏との共著),「脳の中の小さな神々」(柏書房,歌田明宏氏との共著),「『脳』整理法」(ちくま新書),「クオリア降臨」(文藝春秋),「脳の中の人生」(中央公論新社),「プロセス・アイ」(徳間書店),「ひらめき脳」(新潮社),The Future of Learning(共著),Understanding Representation(共著)がある.専門は脳科学,認知科学.「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに,文芸評論,美術評論にも取り組んでいる.「脳と仮想」で,第四回小林秀雄賞<http://www.shinchosha.co.jp/kobayashisho/>を受賞.2006年1月より,NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」<http://www.nhk.or.jp/professional/>キャスター.
 

 
FIT学術賞表彰式

9月3日(水)13:00-13:50[第1イベント会場(θ館1F 大講義室)]
 
 ・FIT2007 ヤングリサーチャー賞 表彰
・FIT2008 論文賞 表彰
・FIT2008 船井ベストペーパー賞 表彰
・FIT2008 船井業績賞 表彰
 

 
無料公開パネル討論:情報処理で社会を守る

9月3日(水)15:30-17:30[第1イベント会場(θ館1F 大講義室)]
 
 [討論概要]
情報システムは社会インフラとして我々の生活を支えている.しかし,目に見えないため,その恩恵がなかなかわかりにくい.しかし,航空機,鉄道,通信の情報システムにおいて,ひとたび事故がおこると,その事故が与える影響の大きさは多大であり,やっとそのありがたみがわかる.ライフライン化した情報システムをさらに進化させていくために,研究者も技術者もユーザが抱える真のニーズを知ることが重要と考える.本パネルを通じて,ユーザからの要望,開発の現状を共有化するための,対話を促進したい.
 
 討論司会:土井 美和子(東芝)
1979年東京大学工学系修士課程修了.同年(株)東芝入社.WPやVR,道案内システムなどのヒューマンインタフェース研究開発に従事.博士(工学).2004-05年度情報処理学会理事.情報処理学会会誌編集委員会委員,日本学術会議,総務省,文部科学省などの委員や電子情報通信学会理事などを務める.全国発明表彰発明賞など受賞.
 パネリスト:加藤 和彦(筑波大)
1985年筑波大学第三学群情報学類卒業.1989年東京大学大学院理学系研究科博士課程中退.1992年博士(理学)(東京大学).1989年東京大学理学部情報科学科助手,1993年筑波大学電子・情報工学系講師,1996年同助教授,2004年より筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻教授.オペレーティングシステム,仮想計算環境,分散システム,セキュリティに興味を持つ.
 パネリスト:小谷 誠剛(Fujitsu Laboratories of America, Inc.)
1980年東北大理・物理卒,1982年筑波大大学院理工・修士了,富士通研入社.超伝導回路研究に従事,当時の半導体LSIより二桁高速で動作する8-bit Digital Signal Processorを開発,工学博士(名古屋大).超高速LSI応用から発展して暗号,著作権保護,生体認証,Secure通信などを研究開発.TCG(Trusted Computing Group)仕様準拠の国際標準システム研究の過程で2005年経産省Projectを担当し2006年TCG理事に当選.富士通米国研でTrusted Infrastructureを研究.これを世界規模で確立し運用する事で,無辜の民が悪事の片棒を担がされる(DDoSの踏み台)こと無く,安心してInternetの利便性を享受できる世界平和の実現を熱望している.
 パネリスト:佐々木 元(NEC)
1961年東京大学大学院数物系研究科修了,日本電気株式会社入社.88年取締役支配人,96年代表取締役副社長,99年代表取締役会長就任,現在に至る.
情報通信ネットワーク産業協会,電子情報技術産業協会,日本工学会,日本工学教育協会の会長を歴任し,内閣府総合科学技術会議科学技術システム改革専門調査会委員を務め,現在日本規格協会,九州半導体イノベーション協議会,ナノテクノロジービジネス推進協議会,情報処理学会の会長に就任.
 パネリスト:重木 昭信(NTTデータ)
1973年 日本電信電話公社に入社,データ通信機器の開発に従事.
1988年のNTTデータ通信株式会社分社以降,公共分野における大規模システム開発の責任者を歴任し,2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 取締役,2005年 同 常務執行役員,2007年6月より現職.CISOとしてセキュリティー戦略を練るとともに,プロジェクト管理手法,開発プロセスの改善,システムの品質保証問題に取り組む.また,日本経団連 高度情報通信人材育成部会長を務める.
 パネリスト:三浦 一朗(住友商事)
1974年3月京都大学法学部卒.同年4月住友商事入社.1984年3月米国住友商事会社ヒューストン支店(ヒューストン駐在).1987年1月米国住友商事会社(ニューヨーク 駐在).1998年7月人事グループ人事第一部長.2004年4月執行役員人材・情報グループ長.2007年4月常務執行役員人材・情報グループ長.2008年4月常務執行役員内部監査部分掌,同コーポレート・コーディネーショングループ分掌補佐.
 

 
コンピュータ囲碁最前線

9月4日(木)9:30-16:30[第1イベント会場(θ館1F 大講義室)]
 
 [企画概要]
チェス界では,1997年にDeepBlueが当時の世界チャンピオンカスパロフ氏に勝利し,近年将棋界では,コンピュータ将棋がプロ棋士に肉薄する実力になっている.一方,コンピュータ囲碁は,合法手の多さと終了手数の長さなどからチェス,将棋に比べはるかに探索範囲が広く,従来の手法ではなかなか強いプログラムが作れない状態が長く続いていた.
しかし,近年モンテカルロ法を用いた新しい考え方のプログラムが出現し,急速な進歩を遂げている.本企画では,コンピュータ囲碁の研究としての位置づけと現状に関して講演を行い,実際にコンピュータとプロ棋士による公開対局を行うことにより,急速に実力をつけてきたコンピュータ囲碁の実力を実感していただくと共に,パネル討論で囲碁プログラム界の将来について展望していく.
 
 司   会:伊藤 毅志(電通大)
1994年,名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻博士課程修了.工学博士.1994年より電気通信大学電気通信学部情報工学科助手.2007年より同助教.
一貫して,人間の問題解決,学習過程に興味をもち,認知科学,人工知能的手法を用いて,学習支援,教育工学,ゲーム情報学の研究に従事.ここ数年は,将棋や囲碁を題材とした熟達者の思考に関する認知科学的研究を行っている.情報処理学会,電子情報通信学会,ICGA,日本認知科学会各会員.コンピュータ囲碁フォーラム理事.UEC杯コンピュータ囲碁大会実行委員長.
 
[9:30-10:40]講演1「ゲーム情報学の中のコンピュータ囲碁」
 
 [講演概要]
チェスやチェッカーといった西洋の伝統的なゲームを舞台として,コンピュータと名人の闘いが繰り広げられてきた.チェスでは名人を打ち負かし,チェッカーでは理論値(引き分け)を解明するまでに至っている.現在,コンピュータ将棋は急ピッチで強くなり,名人に迫る勢いである.一方,コンピュータ囲碁ではモンテカルロ法に基づくゲームプログラミングの台頭により今後の急速な進展が期待される.本講演では,伝統的なゲームを舞台として繰り広げられてきたコンピュータと人間のこれまでの闘いを振り返り,囲碁を舞台とすることの意義を問いたい.コンピュータが名人に勝つことは,コンピュータサイエンスの進歩の貴重なマイルストーンとなるゆえ,チェッカー,チェス,将棋と次々に舞台を模様替えして,コンピュータと人間の闘いは延々と続いてきた.囲碁をもってその闘いも終焉を迎えようとしている.つまり,囲碁は最後の舞台になると筆者は認識する.
 
 飯田 弘之(北陸先端大)
日本将棋連盟プロ棋士六段, 静岡大学助教授,マーストリヒト大学客員教授,科学技術振興機構さきがけ研究員などを経て,2005年より北陸先端科学技術大学院大学教授.
名人を超えるコンピュータ将棋の開発に関心を持つ一方,スリル観を説明するゲーム洗練度の理論を提唱.当該分野関連の多数の国際会議プログラム委員長,国際ジャーナル編集委員,国際学会(ICGA)事務局長などを歴任.現在,ゲーム情報学研究会主査.
 
[10:50-12:00]講演2「コンピュータ囲碁の現状」
 
 [講演概要]
コンピュータにとって囲碁は,探索範囲が広く,盤面評価も難しいので,チェスや将棋で培った技法があまりうまく働かず,長らく鬼門であった.ところが近年,今までとは全く異なるアプローチによるブレークスルーが生まれ,広まりつつある.それがモンテカルロ囲碁である.モンテカルロ囲碁では,確率的シミュレーション技法を用いることにより最善手を計算するが,その裏には精緻な理論と,大胆なヒューリスティクスがある.本講演では,コンピュータ囲碁に関する基本知識(従来手法を含む)を述べた後,モンテカルロ囲碁に関してその考え方,性質,現在の強さなどについて解説する.
 
 村松 正和(電通大)
1994年総合研究大学院大学数物科学研究科博士課程統計科学専攻修了.博士(学術)取得.
1994年上智大学機械工学科管理工学講座助手
2000年電気通信大学電気通信学部情報工学科講師
2002年同助教授,2008年同教授.
 
[13:00-15:00]公開対局「CrazyStone VS 青葉かおり四段」
 
 対局者:青葉 かおり(日本棋院プロ棋士四段)
1978年7月11日生,愛知県出身.羽根泰正九段門下.1996年入段.日本棋院中部総本部に所属.1998年二段,1999年三段,2002年四段.早稲田大学卒業.2008年5月,日本棋院東京本院に移籍 .2004年4月から2年間 「NHK杯テレビ囲碁トーナメント」の聞き手を務める.2005年11月より,日本棋院携帯サイト「碁バイルセンター」で ,『青葉かおりのfrom名古屋だぎゃ』を連載中.2008年4月より NHK囲碁講座出演中.
 
 対局解説者:王 銘エン(日本棋院プロ棋士九段)
1961年11月22日生,台湾・台北市出身.1975年11月来日,同年院生.1977年入段,1978年二段,1979年三段,1981年5月四段,同年12月五段,1984年六段,1986年七段,1988年八段,1992年九段.日本棋院東京本院所属.1993年棋聖戦九段戦優勝,ほか多数の棋戦で優勝歴あり,2000年〜2001年第55期本因坊.2002年第50期王座獲得.2007年第2回大和証券杯ネット囲碁オープン優勝.著書に,「我間違えるゆえに我あり」(マイコミ),「読みの地平線」(マイコミ),「攻めの三原則」(NHK出版)など.
 
 聞き手:村松 正和(電通大)
1994年総合研究大学院大学数物科学研究科博士課程統計科学専攻修了.博士(学術)取得.
1994年上智大学機械工学科管理工学講座助手
2000年電気通信大学電気通信学部情報工学科講師
2002年同助教授,2008年同教授.
 
[15:10-16:30]パネル討論「コンピュータ囲碁はいつトッププロに勝てるか?」
 
 [討論概要]
囲碁は,チェスや将棋などと同様の二人完全情報確定ゼロ和ゲームに分類されるが,その中でも圧倒的に合法手が多く,探索に基づくこれまでの手法では組み合わせ爆発を起こしてしまい,なかなか強いプログラムを作ることが困難であると言われてきた.実際,チェスや将棋に比べて強いプログラムの開発は大幅に遅れ,数年前まではアマチュア初段にもなかなか到達しないレベルであった.しかし,一昨年前に現れたモンテカルロ法に新しい改良を加えたプログラムの出現が一つの大きなブレークスルーとなった.そして,この数年で,これまでの進歩とは桁違いの進歩を見せ,アマチュア有段者レベルのプログラムが数多く出現するようになってきている.本パネル討論では,討論の前に実施するプロ棋士とコンピュータ囲碁との対局を受けて,コンピュータ囲碁の現状と展望について概観し,人間のトップ棋士に追いつくために必要な技術について討論していく.
 
 討論司会:伊藤 毅志(電通大)
1994年,名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻博士課程修了.工学博士.1994年より電気通信大学電気通信学部情報工学科助手.2007年より同助教.
一貫して,人間の問題解決,学習過程に興味をもち,認知科学,人工知能的手法を用いて,学習支援,教育工学,ゲーム情報学の研究に従事.ここ数年は,将棋や囲碁を題材とした熟達者の思考に関する認知科学的研究を行っている.情報処理学会,電子情報通信学会,ICGA,日本認知科学会各会員.コンピュータ囲碁フォーラム理事.UEC杯コンピュータ囲碁大会実行委員長.
 パネリスト:王 銘エン(日本棋院プロ棋士九段)
1961年11月22日生,台湾・台北市出身.1975年11月来日,同年院生.1977年入段,1978年二段,1979年三段,1981年5月四段,同年12月五段,1984年六段,1986年七段,1988年八段,1992年九段.日本棋院東京本院所属.1993年棋聖戦九段戦優勝,ほか多数の棋戦で優勝歴あり,2000年〜2001年第55期本因坊.2002年第50期王座獲得.2007年第2回大和証券杯ネット囲碁オープン優勝.著書に,「我間違えるゆえに我あり」(マイコミ),「読みの地平線」(マイコミ),「攻めの三原則」(NHK出版)など.
 パネリスト:清 愼一(富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ)
1986年日本大学文理学部応用数学科卒業.同年(株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ入社.1988〜1993年(財)新世代コンピュータ技術開発機構出向.現在は情報セキュリティ業務に従事.開発した囲碁対局プログラム「勝也」は2007年第1回UEC杯コンピュータ囲碁大会にて準優勝.著書:「コンピュータ囲碁の入門」.
 パネリスト:中村 貞吾(九工大)
1984年九州大学大学院工学研究科電子工学専攻修士課程修了.
1987年九州大学大学院工学研究科電子工学専攻博士後期課程満期退学.
同年九州大学工学部助手.自然言語処理研究に従事.
1992年より九州工業大学情報工学部講師.
自然言語処理,および,ゲームプログラミングに関する研究に従事.
最近は,組合せゲーム理論を用いた囲碁局面解析を行なう.
工学博士.情報処理学会,人工知能学会,電子情報通信学会,Computer Go Forum 各会員.
 パネリスト:松原 仁(はこだて未来大)
1981年東大理学部情報科学科卒業.1986年同大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了.同年通産省工技院電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)入所.2000年から公立はこだて未来大学教授.現在に至る.ゲーム情報学,エンタテインメントコンピューティング,観光情報学などに携わる.コンピュータ囲碁フォーラム副会長.
 パネリスト:山下 宏(囲碁プログラマー)
1995年3月 東北大学工学部資源工学科卒.
1997年将棋プログラムYSS(市販名はAI将棋)がコンピュータ将棋選手権で優勝.以下2004年,2007年にも優勝.
2003年Computer Olympiad 9路盤部門で囲碁プログラム彩が優勝.
2004年岐阜チャレンジ(19路盤)で彩が準優勝.
著書「コンピュータ将棋の進歩2」「コンピュータ将棋の進歩5」「コンピュータ囲碁の入門」
コンピュータ囲碁フォーラム理事
 

 
データサイエンスで活躍する列挙アルゴリズム−設計技法とその応用−

9月2日(火)9:30-12:00[第2イベント会場(Ω棟 Ω11教室)]
 
 [企画概要]
近年広まっているデータ解析の手法として,基礎的な手法の組合せにより高い精度の解を短時間で出すものが注目されている.特に列挙アルゴリズムは指定された条件を満たすものをすべて見つけるため,他の手法との相性が良く,パターンマイニングをはじめとする多くの問題で利用されている.しかし,アルゴリズム理論の研究対象として,列挙問題はさほど中心的な存在ではなく,基礎的な事柄でさえも広く知られていないのが実情である.本チュートリアルでは,データサイエンス,アルゴリズムの研究者およびデータ解析での利用を考えている方々を対象にして,列挙アルゴリズムの設計技法とその応用を解説する.
 
 司   会:岡本 吉央(東工大)
2005年3月スイス連邦工科大学チューリヒ校情報科学部大学院課程修了.Ph.D.
2005年4月豊橋技術科学大学情報工学系助手.2007年4月同助教.
2007年12月 東京工業大学大学院情報理工学研究科特任准教授.現在に至る.
専門は離散数学,離散アルゴリズム,離散最適化.
 
[9:30-10:05]講演1「部分グラフ列挙と頻出パターンマイニング」
 
 [講演概要]
近年データベースの巨大化と情報処理の多様化により,列挙手法を解候補の生成ツールとして利用するアプローチが増えている.問題を基礎的な部分と応用的な部分に切り分けることにより,効率的なシステム開発を容易にし,モデル化を含めた研究開発の見通しを良くしているのである.本講演では,実社会での事例があるものとして,部分グラフ列挙と頻出パターンマイニングを取り上げ,列挙手法の基礎から応用を簡単に紹介する.
 
 宇野 毅明(国立情報学研)
1970年生.1998年東京工業大学大学院総合理工学研究科システム科学専攻博士課程修了.博士(理学)を取得.同年東京工業大学経営工学専攻助手着任.2001年国立情報学研究所助教授に着任.2005年から2006年にかけてスイス連邦工科大学客員研究員.現在情報・システム研究機構国立情報学研究所准教授.アルゴリズム理論とその応用研究に従事.特に,離散アルゴリズム,列挙アルゴリズム,データマイニング,組合せ最適化など.日本オペレーションズリサーチ学会,情報処理学会,各会員.
 
[10:05-10:40]講演2「大規模半構造データからの系列,木,グラフのマイニング」
 
 [講演概要]
1990年代以降の高速ネットワークと大規模記憶装置の急速な発展を背景として,蓄積された大量のデータから有用な規則性やパターンを見つけるための効率よい手法であるデータマイニングの研究が盛んになっている.データマイニング研究は,1994年のビジネスデータにおける結合規則発見の研究を契機として顕在化し,データベースや,数理統計学,機械学習の境界分野として発展してきた.2000年以降の大きな流れとして,ウェブや,ゲノム,ストリームに代表される半構造データと呼ばれる多様な大規模データに対する高速なアルゴリズムの研究が注目されている.本講演では,この半構造データマイニングの基本的手法と最先端技術を紹介する.特に,半構造データを系列,木,グラフ等の離散構造としてモデル化し,列挙の観点から,高速なアルゴリズムの実現方法を解説する.また,半構造マイニングの知識発見への応用についてふれる.
 
 有村 博紀(北大)
北海道大学大学院情報科学研究科教授.博士(理学).1988年九州大学理学部物理学科卒.1990年九州大学大学院総合理工学研究科修士課程修了.1990年九州工業大学助手,同助教授, 九州大学助教授等を経て,2004年より現職.この間に1996年ヘルシンキ大学客員研究員.1999-2002年JSTさきがけ研究員.1996年リヨン大学第1客員研究員.データマイニングと,情報検索,機械学習等の大規模データ処理アルゴリズムの研究に従事.ACM,情報処理学会,人工知能学会各会員.
2005年より文科省科研費特別推進研究「知識基盤形成のための大規模半構造データからの超高速パターン発見」研究代表者(-2007).2007年よりグローバルCOEプログラム「知の創出を支える次世代IT基盤拠点」(-2011)拠点リーダー.
 
[10:40-10:50]意見交換
 
[10:50-11:25]講演3「列挙,数え上げ,ランダム生成」
 
 [講演概要]
近年の計算機パワーの増大により,様々な分野において以前には計算不可能であった大規模な問題が扱えるようになっている.列挙算法もその例に漏れず,近年のアルゴリズムの高速化と相俟って,実用データを扱う汎用手法となりつつある.
列挙算法は,対象とする要素を目的に沿って吟味し,所望の要素を取りこぼすことなく見つける.反面,計算時間は出力サイズに敏感である.この問題を回避する一つの方法に乱択近似(randomized approximation)がある.すなわち,取りこぼしを許す代わりに,欲しい数だけの要素を確率的に抽出する手法である.特に,出力の分布を能動的に実現することで,所望の要素の取りこぼしの軽減が図れる.
マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC: Markov chain Monte Carlo)法は,数値積分,シミュレーションなどに用いられる強力な確率的計算法である.特に,所望の分布を比較的容易に実現できる利点がある.本講演ではMCMC法を中心に,列挙とランダム生成の関連,ランダム生成の難しさ,ランダム生成の技法とその応用について述べる.
 
 来嶋 秀治(京大)
2007年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.
同年より京都大学数理解析研究所助教.
 
[11:25-12:00]講演4「列挙型アルゴリズムのバイオインフォマティクスへの応用」
 
 [講演概要]
バイオインフォマティクスは情報科学と生物学の境界領域であり,DNA配列をはじめとする生物情報データの情報解析手法の開発を目的の一つとしている.バイオインフォマティクスには計算困難(NP困難)な問題が多いが,個々の遺伝子やタンパク質のサイズは限られているため,分枝限定法などを用いて最適解を計算できる場合も少なくない.分枝限定法の高速化のためには解の候補を重複なしに効率良く列挙することが有用である.そのため,近年,バイオインフォマティクスの様々な問題に対し,列挙型のアルゴリズムが応用されつつある.本講演では,列挙型アルゴリズムのバイオインフォマティクスへの主要な応用例を紹介するとともに,演者らの取り組んでいる列挙型アルゴリズムに基づく特徴ベクトルからの化学構造推定手法などについて説明する.
 
 阿久津 達也(京大)
1984年東京大学工学部航空学科卒業.1989年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了.同年通産省機械技術研究所入所.1994年群馬大学工学部情報工学科助教授,1996年東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター助教授を経て,2001年京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンター教授.バイオインフォマティクスおよび離散アルゴリズムの研究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会などの会員.
 
 

 
ボリュームデータをめぐる「医」と「工」のインタラクション

9月2日(火)13:00-15:30[第2イベント会場(Ω棟 Ω11教室)]
 
 [企画概要]
医用画像に基づく診断支援,治療支援においては,X線CT,MRIなどの3次元画像,すなわちボリュームデータが従来より情報ソースの中核をなしてきた.一方,近年の工業用CT装置の普及に伴い,CAD/CAM/CAEなど,いわゆる生産技術の分野でのボリュームデータの利用が盛んとなってきており,医用画像分野とは異なるニーズに基づく処理技法の開発や研究が行われている.
本シンポジウムは,医療支援,工業支援の双方の立場の講演者が,ボリュームデータの利用に関する討論を通して情報交換を行い,両技術の共通点や相違点の発見によって相互の発展を目指すものである.
 
 司   会:増谷 佳孝(東大)
1997年東大・院・工学系・精密修了/博士(工学).1997〜1998年独ハンブルグ大客員研究員.1998〜2000年米シカゴ大常任研究員.2000〜2001年東大・院・リサーチアソシエイト.2001〜現在年東大病院放射線科講師.
画像解析/グラフィクス/ビジョン技術の診断・治療への応用に従事.
電子情報通信学会,日本医用画像工学会,日本磁気共鳴医学会,IEEEなど会員.
 
[13:00-13:10]イントロダクション
 
[13:10-13:40]講演1「3次元医用画像における薄面・細線構造の精密計測」
 
 [講演概要]
CTやMRIなどの3次元医用画像から薄面構造(関節軟骨など)や細線構造(細血管など)の幅・径を計測する際の,撮像系解像度限界に起因する計測精度限界について議論する.さらに,撮像系点広がり関数および撮像対象モデルを含む画像生成過程をモデル化し,幅・径推定の問題を,画像生成過程の逆問題として定式化することにより精度限界を克服するための方法について議論する.
 
 佐藤 嘉伸(阪大)
1982年大阪大学・基礎工学部・情報工学科卒業.1988年同・大学院博士課程修了.工学博士.1988年-1992年NTTヒューマンインタフェース研究所勤務.1992年大阪大学・医学部・機能画像診断学・助手.現在,大阪大学・大学院医学系研究科・画像解析学(旧機能画像診断学)・准教授,および,大学院情報科学研究科・コンピュータサイエンス専攻兼任准教授.この間,1996年-1997年米国ハーバード大学・医学部・Brigham and Women's病院・Surgical Planning Laboratory客員研究員.医用画像解析,手術支援システムの研究に従事.Medical Image Analysis誌 Editorial Board Member.
 
[13:40-14:10]講演2「現物融合型エンジニアリングを支える形状処理技術」
 
 [講演概要]
近年,現物の工業製品をX線CTスキャナで計測し,それをエンジニアリングに活用する「現物融合型エンジニアリング」が製造業界で盛んに行われている.ここで問題となるのは,測定データとCAD/CAM/CAEといったデジタルエンジニアリングをつなげる形状処理技術である.本講演では,このような現物融合型エンジニアリングを支える形状処理技術を研究成果を交えて紹介する.
 
 道川 隆士(東大)
1999年慶應義塾大学環境情報学部卒業,2006年東京大学大学院精密機械工学専攻博士課程修了.博士(工学).
2006年理化学研究所VCADモデリングチーム研究員.同年東京大学先端科学技術研究センター助手.
2007年同助教.デジタルエンジニアリングに関する研究に従事.
 
[14:10-14:40]講演3「医用画像計測の実例」
 
 [講演概要]
現在医療現場において,画像処理ワークステーションは臨床依頼科にとって画像診断装置にて得られる高精細な情報をベネフィットあるものへと変換する重要な位置づけになっている.今回は実際にワークステーションを使用して,実践的処理の講演を行う予定である.
 
 濱口 ちさ(GE横河メディカルシステム)
2000年3月鈴鹿医療科学大学保健衛生学部卒業.2000年4月国立近畿中央病院放射線科入社.
2002年4月国立大阪南病院放射線科転勤.2002年6月退職.2003年8月NY州立FIT大学のCertificateコース入学.
2004年9月同卒業.2005年2月GE横河メディカルシステム株式会社.CT sales&Marketing部アプリケーションGr.に入社.
2006年1月同部署 Marketing Gr.に異動しAdvanatage Workstationの製品担当.現在にいたる.
 
[14:40-15:10]講演4「工業用CT画像計測の実例」
 
 [講演概要]
工業製品の放射線を用いた非破壊検査では,自動車用エンジンブロックの鋳巣分析など,透過能力を必要とする被検体に対しては高エネルギーX線CTが必要となる.日立では高エネルギーX線CT用の薄型半導体センサを開発し,エンジンブロックサイズの被検体に対して10秒/断面で撮像可能な高エネルギーX線CT装置を開発した.また,得られるCT画像からの高精度な内部欠陥分析手法,画像データからCADデータへの変換手法,等CT画像データをエンジニアリング活用する技術を開発している.
本講演では,装置概要と各種の撮像事例および画像データ活用技術を紹介する.
 
 定岡 紀行(日立)
1981年京都大学工学部化学工学科卒業,1983年同大大学院工学研究科博士前期課程修了.
1983年日立製作所エネルギー研究所入社.原子力/熱流動数値解析関連研究に従事.
1999年以降,日立製作所電力・電機開発研究所にて高エネルギー産業用X線CT装置および画像データ分析活用技術の開発に従事.
 
[15:10-15:30]パネル討論「ボリュームデータをめぐる『医』と『工』のインタラクション」
 
 討論司会:増谷 佳孝(東大)
1997年東大・院・工学系・精密修了/博士(工学).1997〜1998年独ハンブルグ大客員研究員.1998〜2000年米シカゴ大常任研究員.2000〜2001年東大・院・リサーチアソシエイト.2001〜現在年東大病院放射線科講師.
画像解析/グラフィクス/ビジョン技術の診断・治療への応用に従事.
電子情報通信学会,日本医用画像工学会,日本磁気共鳴医学会,IEEEなど会員.
 パネリスト:定岡 紀行(日立)
1981年京都大学工学部化学工学科卒業,1983年同大大学院工学研究科博士前期課程修了.
1983年日立製作所エネルギー研究所入社.原子力/熱流動数値解析関連研究に従事.
1999年以降,日立製作所電力・電機開発研究所にて高エネルギー産業用X線CT装置および画像データ分析活用技術の開発に従事.
 パネリスト:佐藤 嘉伸(阪大)
1982年大阪大学・基礎工学部・情報工学科卒業.1988年同・大学院博士課程修了.工学博士.1988年-1992年NTTヒューマンインタフェース研究所勤務.1992年大阪大学・医学部・機能画像診断学・助手.現在,大阪大学・大学院医学系研究科・画像解析学(旧機能画像診断学)・准教授,および,大学院情報科学研究科・コンピュータサイエンス専攻兼任准教授.この間,1996年-1997年米国ハーバード大学・医学部・Brigham and Women's病院・Surgical Planning Laboratory客員研究員.医用画像解析,手術支援システムの研究に従事.Medical Image Analysis誌 Editorial Board Member.
 パネリスト:濱口 ちさ(GE横河メディカルシステム)
2000年3月鈴鹿医療科学大学保健衛生学部卒業.2000年4月国立近畿中央病院放射線科入社.
2002年4月国立大阪南病院放射線科転勤.2002年6月退職.2003年8月NY州立FIT大学のCertificateコース入学.
2004年9月同卒業.2005年2月GE横河メディカルシステム株式会社.CT sales&Marketing部アプリケーションGr.に入社.
2006年1月同部署 Marketing Gr.に異動しAdvanatage Workstationの製品担当.現在にいたる.
 パネリスト:道川 隆士(東大)
1999年慶應義塾大学環境情報学部卒業,2006年東京大学大学院精密機械工学専攻博士課程修了.博士(工学).
2006年理化学研究所VCADモデリングチーム研究員.同年東京大学先端科学技術研究センター助手.
2007年同助教.デジタルエンジニアリングに関する研究に従事.
 

 
パネル討論:情報科学教育の未来

9月3日(水)9:30-12:00[第2イベント会場(Ω棟 Ω11教室)]
 
 [討論概要]
高校生,大学生,高校教員,そして大学教員によるパネルディスカッションを実施し,今後の情報教育のあり方を考える.
1990年代に日本が「情報社会」と呼ばれる時代に入ってからだいぶ経つ.情報社会の進展にともない,情報社会で生きていくのに必要な知識(情報リテラシー),そして情報社会を構築し支えるのに必要な知識(情報科学)を若者が身につける必要性が生じ,「情報教育」が注目されるようになった.本企画では,情報教育を受ける側の視点,担当する側の視点の双方から,今後の情報教育のあり方を考える.情報リテラシー,情報科学の楽しさ,重要性をお互いに交換することによって,一貫性があり,加速できる情報教育のあるべき姿を高校,大学を通して,議論する.
 
 パネリスト:田邊 則彦(慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部)
慶應義塾湘南藤沢中・高等部教諭.1952年生まれ.1975年慶應義塾大学文学部社会・心理・教育学科心理学専攻卒業.1975年慶應義塾幼稚舎教諭,1992年慶應義塾湘南藤沢中・高等部教諭.2005年内閣府情報セキュリティー文化専門委員会委員. 2006年メディア教育開発センターNEXTプロジェクト推進メンバー.NHK教育テレビ高校講座「情報A」講師.科学技術振興機構にて理科教材コンテンツの普及促進.
編著書「43人が語る『心理学と社会』」(ブレーン出版),「新しい時代の学力づくり授業づくり」(明治図書出版),「メディアとコミュニケーションの教育」(日本文教出版),「ディジタル時代の学びの創出」(日本文教出版),文部科学省検定教科書高等学校情報科用「情報A」「情報B」「情報C」編修・執筆 「ICTE教育の実践と展望」(日本文教出版)他.
 パネリスト:中村 修(慶大)
現在,慶應義塾大学環境情報学部教授.1990年慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了,工学博士.同年東京大学大型計算機センター助手.1993年慶應義塾大学環境情報学部助手となり,専任講師,助教授を経て現職.1987年よりWIDEプロジェクトに参加し,インターネットに関する研究に従事.現在同プロジェクトボードメンバー.
 
 上記ほか,パネリスト1名および大学生/高校生各2名参加予定
 

 
情報・システム研究開発の今昔−若者の夢をどこまで膨らませる−

9月3日(水)15:30-17:30[第2イベント会場(Ω棟 Ω11教室)]
 
 [企画概要]
最近の研究開発成果例を若手3名が発表し,フェロー団を中心として,テーマ設定・アプローチ・成果出し・評価・応用展開などについて,意見交換を活発に行う.若手研究者・技術者の学位取得や事業化・社会貢献への道を,経験豊かな(?)フェロー団が夢を膨らませながら導いていく.
 
 司   会:白井 良明(立命館大)
1969年東京大学大学院工学系機械工学専攻博士課程修了.工学博士.同年電子技術総合研究所入所.1988年大阪大学工学部教授.1996年〜1999年東京大学大学院工学研究科教授併任.2002年〜2007年情報学研究所客員教授.2006年立命館大情報理工学部教授.画像処理,知能ロボットなどの研究に従事.
情報処理学会CV研究会主査,理事,電子情報通信学会PRU研究会委員長,ISSソサイエティー長等を歴任.
現在,学術会議連携会員,フェロー&マスターズ未来技術委員会副委員長.
 
[15:30-15:45]題材発表1「ロボットカメラ協調撮影システムにおける撮影ショット決定手法」
 
 [講演概要]
新しい番組制作支援技術の1つとして,複数のロボットカメラを用いたテレビ番組制作システムの構築に取り組んでいる.
本システムでは,番組の状況と撮影ショットの関係を記した撮影規則に従い,各ロボットカメラを自動制御するが,番組ごとに,出演者の人数やフリップが提示される位置など,演出スタイルは異なる.そのため,番組制作者は,毎回,撮影規則の再設定が必要となるが,準備時間が限られた中で,この作業を行うことは,非常に大きな負担となる.そこで,カメラマンの撮影手法を分析した結果に基づき,簡易な情報入力から撮影規則を自動生成するアルゴリズムを考案し,シミュレーション実験により,その有効性を確認した.さらに,番組の状況を自動検出する装置を開発し,これらを複数のロボットカメラとネットワーク接続したシステムをテレビスタジオに構築し,番組撮影実験を行って,本システムを評価した.
 
 奥田 誠(NHK技研)
1998年,神戸大学工学部電気電子工学科卒業.2000年,同大学院自然科学研究科電気電子工学専攻博士前期課程修了.同年,NHKに入局.大阪放送局を経て,2003年より,放送技術研究所に所属.主に,テレビ番組を対象とした,自動撮影システムの研究に従事.電子情報通信学会,映像情報メディア学会各会員.
 
[15:45-16:10]意見交換1
 
[16:10-16:25]題材発表2「動き領域の見えに基づく物体認識」
 
 [講演概要]
本講演では,近年の研究開発成果例として,講演者自身がFIT2006ヤングリーサーチャー賞を受賞した研究内容を再度紹介する.
この事例では,映像から抽出された動物体の種類について,動き領域の見えに基づいて認識する手法を提案した.従来の見えに基づく認識手法では,縦横比に関わる形状変動や非物体領域が大きい場合における特徴量の正規化が困難であるため,本来の勾配角度を保存しながら正規化を行うタイプの特徴抽出法について述べた.さらに非物体領域の影響を抑えるための動き領域を利用した学習方式についても述べた.そして,評価実験を通して,提案手法の効果の調査結果を報告し,今後の課題を抽出した.
 
 細井 利憲(NEC)
1999年大阪大学基礎工学部機械工学科卒業.2001年同大大学院基礎工学研究科システム人間系専攻修了.同年日本電気株式会社入社.同社研究所にて,顔検出・物体認識の研究開発等に従事.
2007年FIT2006ヤングリサーチャー賞受賞.
 
[16:25-16:50]意見交換2
 
[16:50-17:05]題材発表3「唇および口内領域形状に基づくトラジェクトリ特徴量による読唇」
 
 [講演概要]
視覚情報を利用した発話内容の認識,いわゆる読唇に関する研究は,1980年代後半より取り組まれている.音声認識では,周囲の雑音の影響により認識率の低下を招く問題がある.一方,視覚情報は雑音の影響を含まれず,高騒音下での認識が可能となる利点をもつ.しかし,読唇は音声認識に比べ報告例が少なく認識率が低い.この問題を解決するために,講演者らはフレーム毎に計測される特徴量の時間的変化を空間上にプロットし,軌道として表現するトラジェクトリ特徴量を提案した.さらに唇および口内領域形状に着目し,これまで提案されてきた手法に比べ高い認識率を得られることを,比較実験を通して確認した.本講演では,講演者がこれまで取り組んできた読唇に関して,単音認識および単語認識について紹介する.
 
 齊藤 剛史(鳥取大)
2004年豊橋技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).同年鳥取大学工学部助手.現在,鳥取大学大学院工学研究科助教.画像処理,認識に関する研究に従事.2001年電子情報通信学会東海支部学生研究奨励賞,2002年電気通信普及財団テレコムシステム技術学生賞受賞.
 
[17:05-17:30]意見交換3
 

 
パネル討論:コ・モビリティ社会の創生に向けて

9月4日(木)9:30-12:00[第2イベント会場(Ω棟 Ω11教室)]
 
 [討論概要]
慶應義塾大学では,平成19年度文部科学省科学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」を受託し,「コ・モビリティ社会の創生」プロジェクトを推進している.コ・モビリティ社会とは,子供からお年寄りまで,すべての人が,自由に安全に移動でき,交流が容易で,暮らしやすく,創造的・文化的な社会である.小さな範囲に限定され,情報が不足している地域共同体に,最先端の情報システムによる支援とともに「移動」が加わった多重で新しいコミュニティモデルを提示し,さまざまな社会問題を改善するための,現実的な道筋を描くプロジェクトである.
今回のパネルでは,「移動」や「コミュニティ」といったコ・モビリティ社会の考え方に欠かせない分野から情報提供をいただき,情報通信分野がコ・モビリティ社会の創生をどう受け止め,どうすべきかを会場の人も含めて議論する.コ・モビリティ社会における情報通信の在り方を検討することは,近年急速に社会に浸透した情報通信技術と人間が,どのように共生していくかを検討することに他ならない.
 
 討論司会:植原 啓介(慶大)
慶應義塾大学環境情報学部准教授.1970年生まれ.1995年電気通信大学大学院電気通信学研究科 情報工学専攻(博士前期課程)修了.2000年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科(後期博士課程)単位取得退学.2003年慶應義塾大学より博士(政策・メディア)の学位を取得.
インターネット移動体通信やユビキタスコンピューティングに興味を持ち,インターネット自動車プロジェクトなどを推進中.
 パネリスト:川嶋 弘尚(慶大)
1973年慶應義塾大学大学院博士課程を修了.72年同大学助手を経て,92年より同理工学部教授.ITS (Intelligent Transport Systems)におけるヒューマンインターフェースの設計・評価,システム信頼性解析等の研究に従事.ITS標準化委員会委員長(ISO/TC204対応).
 パネリスト:清水 浩(慶大)
1947年生まれ.東北大学工学部博士課程修了.国立公害研究所地域計画研究室長,国立環境研究所地域環境研究グループ総合研究官などを経て,現在,慶應義塾大学環境情報学部教授.環境問題の解析と対策技術の研究(主に電気自動車開発)に従事.国立環境研究所時代から28年間で8台の電気自動車開発に携わる.2004年には超高性能電気自動車「Eliica(エリーカ)」の開発を実現した.近著に『温暖化防止のために 一科学者からのアル・ゴア氏への提言』(ランダムハウス講談社)がある.
 パネリスト:宮垣 元(甲南大)
1970年生まれ.慶應義塾大学環境情報学部卒業,同大学院政策・メディア研究科修士課程修了,博士課程単位取得退学,博士(政策・メディア).ライフデザイン研究所(現,第一生命経済研究所),東京大学先端科学技術研究センターなどを経て,2001年より現職.専門は,社会学,経済社会学,非営利組織論,コミュニティ論.
 パネリスト:村井 純(慶大)
学校法人慶應義塾常任理事.現職:慶應義塾大学環境情報学部教授.1955年生まれ.1987年慶應義塾大学大学院工学研究科博士号取得.1984年東京工業大学総合情報処理センター助手,1987年東京大学大型計算機センター助手.1990年慶應義塾大学環境情報学部助教授を経て1997年より教授.
1984年JUNETを設立.1988年WIDEプロジェクトを設立し,今日までその代表として指導にあたる.社団法人情報処理学会フェロー,日本学術会議第20期会員.各省庁委員会の主査や委員などを多数務め,国際学会などでも活動する.2005年Internet SocietyよりJonathan B.Postel Service Award受賞,2007年第六回船井業績賞受賞.
 

 
パターン認識・メディア理解アルゴリズムコンテスト

9月4日(木)13:00-16:00[第2イベント会場(Ω棟 Ω11教室)]
 
 [企画概要]
本イベント企画では,「騎士(ナイト)を数えナイト〜画像に含まれる特定物体の計数〜」と題した第12回パターン認識・メディア理解アルゴリズムコンテストの入賞者の発表,表彰式,および受賞者自身によるアルゴリズム発表を行う.本コンテストは,パターン認識・メディア理解(PRMU)研究専門委員会が,当該研究分野における若手研究者の育成と研究会活動の活性化を目的として1997年度より,秋の大会併催事業としてを実施している.本事業は,若手研究者およびこれから研究者を目指す学生(主に,高専,学部・大学院生)を主たる対象に,具体的な課題を解決することの楽しさを通して研究の面白さを体験してもらうことを目指している.募集にあたってはWeb(http://alcon.imlab.jp/)でサンプルプログラム・画像データを公開してアルゴリズムを実装したプログラムの提出を求め,このプログラムの処理結果や計算時間等を参考に,審査委員会でアルゴリズムの新規性や性能を審査し,優秀なプログラムを選定している.応募対象者が若手研究者や学生であることから,アルゴリズムの完璧さや実装の工夫よりも,若手研究者や学生ならではの素朴なアイデアを積極的に評価する方針を採っている.
 
 司   会:岩村 雅一(大阪府大)
1998年東北大学工学部通信工学科卒業.2003年同大学院博士課程後期3年の課程修了.
同年,同助手.2004年大阪府立大学大学院工学研究科助手(現在,助教).博士(工学).
平成18年度電子情報通信学会論文賞,IAPR/ICDAR2007 The Best Paper Award各受賞.
パターン認識,コンピュータビジョン,情報検索に関する研究に従事.
 
[13:00-13:05]開会挨拶
 
 馬場口 登(阪大)
1979年大阪大学工学部通信工学科卒業.1981年同大学院前期課程修了.
1996年-1997年カリフォルニア大学サンディエゴ校文部省在外研究員.
現在,大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻教授.
2007年より電子情報通信学会パターン認識・メディア理解専門委員会委員長.
映像メディア処理に関する研究に従事.PCM2006Best Paper Award,2006年ISS活動功労賞受賞.
 
[13:05-13:15]課題概要説明,審査結果発表
 
[13:15-13:20]入賞者表彰
 
[13:20-14:50]入賞者によるアルゴリズム紹介
 
[15:00-15:50]講演「画像照合から始まる画像認識への道程」
 
 [講演概要]
画像照合は,画像解析におけるもっとも基本となる処理の一つである.本講演では,本年度のアルゴリズムコンテストの課題に対して必要であった画像照合に基づき,これをさらに一般化していくことにより,顔検出に代表される物体検出技術,顔識別や一般物体認識などの画像識別技術,さらには巨大な画像・映像データベースから有用な情報を発見するためのマイニング技術にまで発展可能であることを解説する.
 
 佐藤 真一(国立情報学研)
1992年東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程了.同年学術情報センター助手.1998年同助教授.2000年国立情報学研究所助教授,2004年同教授,現在に至る.
1995年から1997年まで,米国カーネギーメロン大学客員研究員としてInformedia 映像ディジタルライブラリの研究に従事.工博.画像理解,画像データベース,映像データベース等の研究に従事.電子情報通信学会,情報処理学会,IEEE CS,ACM各会員.
 

 
医療現場における異文化間コラボレーション

9月2日(火)9:30-12:00[第3イベント会場(ι棟 ι23教室)]
 
 [企画概要]
医療現場では,医者と患者,医者と看護士,異分野間の専門医など,異なるバックグラウンドを持った者同士のコミュニケーションが複雑に起こっている.コミュニケーションの中で些細な誤解が生じると医者と患者間の信頼関係に影響を及ぼしたり,時には医療ミスといった致命的な結果を招きかねない.最近では外国人の患者も増え,背景知識の違いに加え,言語の違いも大きな問題として認識されている.電子カルテを初めとして医療現場への情報技術の導入は進んでいるが,コミュニケーション支援を目指した情報技術の応用は少ない.
本シンポジウムでは,医療現場を異文化コラボレーションの観点から捉え,情報技術を使ってどのように医療現場でのコミュニケーションを支援することができるかについて考える場としたい.医療現場において,いくつかの場面を想定し,それぞれの場面において,使えるIT技術や使えないIT技術とは何かについて議論する.
 
 司   会:山下 直美(NTT)
1999年京都大学・情報工卒.
2001年京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻修士課程修了.
同年,日本電信電話(株)コミュニケーション科学基礎研究所入所.博士(情報学).
遠隔協調作業支援の研究に従事.
 
[9:30-9:40]講演1「医療現場における相互理解へのアプローチ−異文化理解から多文化共生へ−」
 
 [講演概要]
近年,日本社会における国際化の潮流はとどまることを知らず,在住及び渡航外国人の数に比例して医療現場での外国人受診者数も増加している.一人一人の医療を受ける患者の権利を尊重し,医療通訳活動を行っている.しかし医療現場におけるコミュニケーションツールとして,言語は大きい要素ではあるものの,医療者と患者間に存在する意思伝達手段は言葉以外のものが存在しうる.その「非言語」要素が相互認識の一致に重要な要素であることを実感している.医療提供者と外国人患者のラポール形成が出来ていないと,医療現場では重大な医療事故を起こす可能性がある.通訳事例を通して,医療通訳が伝えるべきもの,また自然に伝わってしまうものは何かを考えたい.
 
 新垣 智子(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院)
1993年大阪市立大学医学部付属看護専門学校卒後,大阪市立大学医学部付属病院,大阪府立母子保健総合医療センターで看護師として従事.2001年3月〜国際協力事業団(現国際協力機構:JICA)の青年海外協力隊プログラムで,メキシコオアハカ小児病院に派遣.帰国後,大阪外国語大学地域文化中南米文化専攻(専攻語:スペイン語)で,スペイン語を研鑽しつつ,スペイン語医療通訳を行う.現在,りんくう総合医療センター市立泉佐野病院で看護師兼スペイン語医療通訳に従事する傍ら,大阪大学大学院人間科学研究科にて在日外国人医療問題をテーマに学びを深めている.
 
[9:45-9:55]講演2「電話でつなぐ医療コミュニケーション−電話通訳にできること・できないこと−」
 
 [講演概要]
1991年のAMDA国際医療情報センター立ち上げ当初は,母国語で医療・保険・福祉について相談できる窓口としてスタートしたが,母国語で受診できる医療機関が限られていることから,電話通訳サービスもすることになった.従って当センターにとっては電話通訳と相談電話は活動の両輪というべきサービスである.相談電話を受けて医療機関を探し,合わせて派遣通訳を探したり,電話通訳での受診を受け入れてくれるよう医療機関にお願いする,という一連の流れの中で見えてくる様々な可能性と問題について整理してみたい.
 
 鈴木 亮子(AMDA国際医療情報センター)
鈴木亮子(NPO法人AMDA国際医療情報センター)
1979年早稲田大学法学部卒業.1993〜97年ブラジル・リオデジャネイロ滞在.1997年ポルトガル語通訳ガイド資格取得.1998年より日本国際協力センターにてJICA技術研修の同行通訳として勤務.2004年よりAMDA国際医療情報センター事務局勤務.
 
[10:00-10:05]講演3「言語グリッドを利用した多言語医療支援システム」
 
 [講演概要]
多文化共生センターきょうとは在住外国人患者の支援活動を行っているNPO法人である.当センターは03年より年間1500件を超える医療通訳者の派遣を行っているが,多言語の対応,緊急・24時間対応ななど多様化する患者ニーズに対してサポートが難しい現状があった.そこで05年より言語グリッドプロジェクトに参加し,和歌山大学情報通信研究機構と共に言語グリッドを活用した多言語医療支援システムを開発してきた.本会では,既に医療機関での設置運用を行っている多言語の医療受付支援システムM3(エムキューブ)と多言語医療用例収集システム(Tack Pad)のシステムについて現場・利用者の立場から紹介したい.
 
 重野 亜久里(多文化共生センターきょうと)
北海道札幌市生まれ.大学在籍中に中国雲南省へ留学.
1999年より多文化共生センター・きょうとに勤務.中国系コミュニティを支援するプロジェクトマネージャーとして地域住民と共に,多文化共生の地域づくりに取り組む.2003年より医療機関へ通訳を派遣する「医療通訳派遣システムモデル事業」を担当.現在はセンターの保健医療事業全般のマネジメントを担当.2004年より同センターの事務局長に就任,2006年7月より「特定非営利活動法人多文化共生センターきょうと」理事長に就任.
 
[10:05-10:10]講演4「多言語医療受付支援システムの導入に関する試み」
 
 [講演概要]
現在,在日外国人数の増加に伴い,多言語によるコミュニケーションの機会が増加している.コミュニケーションを行う際,言語の違いは大きな障壁となる.一般に多言語の十分な習得は困難であり,言語の違いを克服するためには,機械翻訳のような支援技術が必要になる.しかし,医療分野のような生命に直接関係する業務では,十分な相互理解が得られなければ医療過誤に繋がるため,コミュニケーションに極めて高い正確性が求められる.現在は,外国人が診療を受ける際,医療通訳者が同行することにより対応している.しかし,医療通訳者による対応にも限界があり,多言語間における正確なコミュニケーションを支援するシステムが必要とされている.しかし,このようなシステムは需要があるにもかかわらず,実用的なシステムは実現・導入には至っていない.我々はこれまでに,多言語コミュニケーション支援のための多言語医療受付支援システムM3(エムキューブ)の開発を行ってきた.本研究においては,産学官民の連携により,公的な場である京都市立病院へのシステム導入に至った.本講演では,医療機関への多言語対話支援システムM3(エムキューブ)の導入における問題点とその対応,および産学官民の連携による京都市立病院へのシステム導入について述べる.
 
 吉野 孝(和歌山大)
1992年鹿児島大学工学部電子工学科卒業.1994年同大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了.1995年鹿児島大学工学部電気電子工学科助手.1998年同大学工学部生体工学科助手.2001年より和歌山大学システム工学部デザイン情報学科助手.2004年より同大学助教授(2007年より准教授に職名変更).博士(情報科学)東北大学.2001年本会DICOMO2001シンポジウムにおいてベストプレゼンテーション賞,2003年本会大会奨励賞をそれぞれ受賞.2005年よりNICT言語グリッドプロジェクトに参加.異文化コラボレーション支援,モバイルグループウェア,遠隔授業支援システムに関する研究に従事.
 
[10:15-10:25]講演5「地域医療のコミュニケーションと情報技術」
 
 [講演概要]
高齢化が進展し慢性疾患中心へと疾病構造が変化する中,在宅医療に代表されるように組織を越えた多職種が協働して患者のケアに取り組む重要性はますます大きくなっている.しかし,そもそも医療専門職は,それぞれが異なる専門的教育を受けており,各職域の専門的知識については共有されることはほとんどなく,このことが,実際の医療現場での役割の混乱やコミュニケーションの問題にもつながっているという点が指摘されてきた.こうした中,異なる医療専門職種が組織を超えて円滑なコミュニケーションと必要十分な情報共有を実現する手段として,情報技術を生かすことができるのだろうか?「非同期・蓄積型」という特徴を持つメディアが,地域医療の現場の職種間のコミュニケーションに与える影響について,フィールドで検証した結果を報告する.
 
 秋山 美紀(慶大)
1991年慶應義塾大学法学部政治学科卒業.
(株)仙台放送報道局勤務を経て2001年ロンドン大学経済政治大学院にて修士号取得(MSC. Mediaand Communcation Regulation).
2006年慶應義塾大学にて博士号取得(政策・メディア).21世紀COE研究員,特別研究講師を経て2007年4月より現職.
著書「地域医療におけるコミュニケーションと情報技術」「地域医療を守れ」他.
 
[10:30-12:00]パネル討論「医療現場における異文化間コラボレーション」
 
 [討論概要]
医療現場では,医者と患者,医者と看護士,異分野間の専門医など,異なるバックグラウンドを持った者同士のコミュニケーションが複雑に起こっている.コミュニケーションの中で些細な誤解が生じると医者と患者間の信頼関係に影響を及ぼしたり,時には医療ミスといった致命的な結果を招きかねない.最近では外国人の患者も増え,背景知識の違いに加え,言語の違いも大きな問題として認識されている.電子カルテを初めとして医療現場への情報技術の導入は進んでいるが,コミュニケーション支援を目指した情報技術の応用は少ない.本シンポジウムでは,医療現場を異文化コラボレーションの観点から捉え,情報技術を使ってどのように医療現場でのコミュニケーションを支援することができるかについて考える場としたい.医療現場において,いくつかの場面を想定し,それぞれの場面において,使えるIT技術や使えないIT技術とは何かについて議論する.
 
 討論司会:喜多 千草(関西大)
関西大学総合情報学部准教授.2002年京都大学大学院文学研究科現代文化学専攻博士後期課程修了(博士号取得).
2003年京都大学学術情報メディアセンター助手,2004年関西大学総合情報学部助教授.「インターネットの思想史」青土社2003で日経BP社BizTech図書賞受賞.IEEE Annals of the History of Computing 編集委員.1986年から1992年までNHK番組制作局ディレクター.現在は言語グリッドアソシエーションの「教育現場の多言語利用環境を支援する情報基盤技術の研究会」主査として,多言語ツールの開発プロジェクトを進行中.
 コメンテータ:片桐 恭弘(はこだて未来大)
1981年3月東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了.工学博士.
NTT基礎研究所,ATRメディア情報科学研究所を経て現在公立はこだて未来大学教授.
自然言語処理,社会的インタフェース,対話インタラクションの認知科学の研究に従事.
日本認知科学会,日本人工知能学会,社会言語科学会,自然言語処理学会,情報処理学会,Cognitive Science Society,ACL,AAAI,IEEE各会員.
 パネリスト:秋山 美紀(慶大)
1991年慶應義塾大学法学部政治学科卒業.
(株)仙台放送報道局勤務を経て2001年ロンドン大学経済政治大学院にて修士号取得(MSC. Mediaand Communcation Regulation).
2006年慶應義塾大学にて博士号取得(政策・メディア).21世紀COE研究員,特別研究講師を経て2007年4月より現職.
著書「地域医療におけるコミュニケーションと情報技術」「地域医療を守れ」他.
 パネリスト:重野 亜久里(多文化共生センターきょうと)
北海道札幌市生まれ.大学在籍中に中国雲南省へ留学.
1999年より多文化共生センター・きょうとに勤務.中国系コミュニティを支援するプロジェクトマネージャーとして地域住民と共に,多文化共生の地域づくりに取り組む.2003年より医療機関へ通訳を派遣する「医療通訳派遣システムモデル事業」を担当.現在はセンターの保健医療事業全般のマネジメントを担当.2004年より同センターの事務局長に就任,2006年7月より「特定非営利活動法人多文化共生センターきょうと」理事長に就任.
 パネリスト:新垣 智子(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院)
1993年大阪市立大学医学部付属看護専門学校卒後,大阪市立大学医学部付属病院,大阪府立母子保健総合医療センターで看護師として従事.2001年3月〜国際協力事業団(現国際協力機構:JICA)の青年海外協力隊プログラムで,メキシコオアハカ小児病院に派遣.帰国後,大阪外国語大学地域文化中南米文化専攻(専攻語:スペイン語)で,スペイン語を研鑽しつつ,スペイン語医療通訳を行う.現在,りんくう総合医療センター市立泉佐野病院で看護師兼スペイン語医療通訳に従事する傍ら,大阪大学大学院人間科学研究科にて在日外国人医療問題をテーマに学びを深めている.
 パネリスト:鈴木 亮子(AMDA国際医療情報センター)
鈴木亮子(NPO法人AMDA国際医療情報センター)
1979年早稲田大学法学部卒業.1993〜97年ブラジル・リオデジャネイロ滞在.1997年ポルトガル語通訳ガイド資格取得.1998年より日本国際協力センターにてJICA技術研修の同行通訳として勤務.2004年よりAMDA国際医療情報センター事務局勤務.
 パネリスト:吉野 孝(和歌山大)
1992年鹿児島大学工学部電子工学科卒業.1994年同大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了.1995年鹿児島大学工学部電気電子工学科助手.1998年同大学工学部生体工学科助手.2001年より和歌山大学システム工学部デザイン情報学科助手.2004年より同大学助教授(2007年より准教授に職名変更).博士(情報科学)東北大学.2001年本会DICOMO2001シンポジウムにおいてベストプレゼンテーション賞,2003年本会大会奨励賞をそれぞれ受賞.2005年よりNICT言語グリッドプロジェクトに参加.異文化コラボレーション支援,モバイルグループウェア,遠隔授業支援システムに関する研究に従事.
 

 
サイバーワールドとリアルワールドとの接点
−ロケーションサービスを中心として−


9月2日(火)13:00-16:20[第3イベント会場(ι棟 ι23教室)]
 
 [企画概要]
サイバーワールドとリアルワールドとの接点に技術開発とサービスビジネスが新興しつつある.特に,GPS関連分野は技術開発と利用技術が進展し,携帯へのGPS組み込みによる急速な普及も予測されている.また,これに関連して地図サービス,CGMサービス,携帯を使った案内システム,無線LANを利用した位置情報取得など具体的な取り組みも活発化しており,Where2.0というキーワードも登場している.
本企画では,サイバーワールドとリアルワールドとの接点で活躍中の方々を講演者に招き,海外を含めて位置情報システムの動向や活用例,活発化する携帯電話での位置情報も含めた携帯ビジネスと技術,ユビキタスミュージアムとして位置情報システムの活用を含めた実企画,情報大航海での実証実験を踏まえて,携帯電話を利用した位置情報システムを用いたCGMやマーケッティングへの活用の可能性等,ロケーションサービス等の活発化する技術や,ビジネスへの展開,成功の秘訣についてお話しいただき,今後のビジネスの方向・必要とされる技術・研究の方向について討論を行う.
 
 司   会:成田 雅彦(産業技術大)
1980年早稲田大学大学院数学科博士前期課程修了.同年,富士通株式会社入社.ソフトウエア事業本部にてミドルウエア製品の企画や,X consortium,OMG,JCP,OASIS,WS-I,eACなどの標準化に携った.
2008年より産業技術大学院大学産業技術研究科専任教授.
Webサービスやメッセージングの標準化・相互運用,電子取引・ロボットサービス等への適用に取り組んでいる.電子情報通信学会,精密機械学会の各会員.
 
[13:00-13:10]オープニング
 
[13:10-14:00]講演1「車社会の利便性向上と環境保全を実現するITS」
 
 [講演概要]
車社会の利便性向上に伴い,環境負荷軽減は重要なテーマであり,ITSは車両自体の改良と並び,道路インフラの利用効率を計る上で大きな役割を担っている.当社は早くから道路課金システム(ERP)や自動料金支払いシステム(ETC)の開発を手掛け,路側システムや車載器を提供しており,渋滞解消や燃費向上などの効果を高めている.今後は交通流の適正化や制御,また公共交通機関との更なる連携化などを目指していくことで,環境に優しい持続可能な社会の実現に貢献していく.
 
 竹内 久治(三菱重工)
1986年東京農工大学電気工学科卒業,同年三菱重工業株式会社に入社.さまざまなプラント制御システムの設計開発業務を経て,現在はETC車載器などITS関連システムの開発に従事.
 
[14:00-14:50]講演2「携帯電話を利用した位置情報システム活用の可能性−情報大航海での実証実験を踏まえて−」
 
 [講演概要]
経済産業省の2007年度情報大航海プロジェクトにおいて,NTTドコモ,NEC他により,1000人規模の被験者を集めて約3ヶ月間の実証実験を行った.
本実験は,日常生活のなかで,特別な機器を装備したり,特別な動作などを意識することなく,どのくらい意味のある行動ログが取得できるのか,あるいはそれらの情報をどのように活用できるのかを実証した一つの試みである.
本講演では,利用者が持つ携帯電話を利用して収集した,実空間における位置情報やWeb閲覧情報などからなる行動履歴に基づいた情報推薦の方式,位置情報等の極めてプライバシ性の高い情報を扱う上での情報保護のアプローチ,そして得られた行動ログから解析できることとその限界や課題について述べる.
 
 佐治 信之(NEC)
東京工業大学理工学研究科情報科学専攻修士課程修了.同年NEC入社.プログラミング言語処理系,コンポーネントウェア,CORBA,B2B/EC,モバイルサービス基盤,ビジネスグリッド等の開発に従事.1989年情報処理学会論文賞.DOPGでは各社のCORBA/Webサービス製品の相互接続実験を8年に亘り実施.現在,サービスプラットフォーム研究所研究統括マネージャ.情報処理学会会員.
 
[15:00-15:50]講演3「ユビキタスミュージアム−位置情報システムの活用を含めて−」
 
 [講演概要]
2002年尾道市からスタートした携帯電話を活用した街歩き観光システム「ユビキタスミュージアム(どこでも博物館)」の企画コンセプト,システム概要,これまでの活動,最新状況を紹介する.企画コンセプトとして掲げる,「都市経験のブロードバンド化」「まちの記憶と経験のアーカイブ化」「暗黙知を編集するソーシャルウェア」に基づくシステムの説明を前半に行い,中盤で下諏訪,伊豆,丸の内などで展開してきたGPS対応のユビキタスミュージアムの変遷を紹介する.最後に,丸の内で展開する防災・防犯などでの応用的な活用やアプリやFlashなどを活用した地図表示システムとの連動,タッチパネルタイプのデバイスによる新たな地図ベースの情報環境提供システムの紹介を行う.
 
 池本 修悟(慶大)
2001年慶應義塾大学総合政策学部卒,2003年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了.
2003〜2004年国際大学グローバルコミュニケーションセンターリサーチアソシエイト(担当:地域情報化).
2004〜2007年慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問),2007年慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構専門員.NPO法人創造支援工房フェイス代表理事,有限会社うつつ代表取締役,Earth Literacy Programユビキタスミュージアムディレクター.
  共同発表:荒川 健介(Earth Literacy Program)
 
 
[15:50-16:20]パネル討論「サイバーワールドとリアルワールドとの接点−ロケーションサービスを中心として−」
 
 [討論概要]
サイバーワールドとリアルワールドとの接点に技術開発とサービスビジネスが新興しつつある.特に,GPS関連分野は技術開発と利用技術が進展し,携帯へのGPS組み込みによる急速な普及も予測されている.また,これに関連して地図サービス,CGMサービス,携帯を使った案内システム,無線LANを利用した位置情報取得など具体的な取り組みも活発化しており,Where2.0というキーワードも登場している.本パネル討論では,サイバーワールドとリアルワールドとの接点で活躍中の方々をパネリストに招き,海外を含めて位置情報システムの動向や活用例,活発化する携帯電話での位置情報も含めた携帯ビジネスと技術,ユビキタスミュージアムとして位置情報システムの活用を含めた実企画,情報大航海での実証実験を踏まえて,携帯電話を利用した位置情報システムを用いたCGMやマーケッティングへの活用の可能性等,ロケーションサービス等の活発化する技術や,ビジネスへの展開,成功の秘訣についてお話しいただき,今後のビジネスの方向・必要とされる技術・研究の方向について討論を行う.
 
 討論司会:鈴木 純二(三菱重工)
三菱重工業 機械・鉄構事業本部主席技師.
1983年東京大学工学部船舶工学科卒.1985年同大学院工学系研究科船舶工学専門課程修士課程修了.
同年三菱重工業入社後,船舶・海洋の設計,工作を担当,2001年より人間型ロボットの開発・マーケティングを担当.2006年より東京医科歯科大学非常勤講師を兼任.
造船学会員,電子情報通信学会サイバーワールド研究会専門委員.
 討論司会:成田 雅彦(産業技術大)
1980年早稲田大学大学院数学科博士前期課程修了.同年,富士通株式会社入社.ソフトウエア事業本部にてミドルウエア製品の企画や,X consortium,OMG,JCP,OASIS,WS-I,eACなどの標準化に携った.
2008年より産業技術大学院大学産業技術研究科専任教授.
Webサービスやメッセージングの標準化・相互運用,電子取引・ロボットサービス等への適用に取り組んでいる.電子情報通信学会,精密機械学会の各会員.
 パネリスト:池本 修悟(慶大)
2001年慶應義塾大学総合政策学部卒,2003年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了.
2003〜2004年国際大学グローバルコミュニケーションセンターリサーチアソシエイト(担当:地域情報化).
2004〜2007年慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問),2007年慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構専門員.NPO法人創造支援工房フェイス代表理事,有限会社うつつ代表取締役,Earth Literacy Programユビキタスミュージアムディレクター.
 パネリスト:佐治 信之(NEC)
東京工業大学理工学研究科情報科学専攻修士課程修了.同年NEC入社.プログラミング言語処理系,コンポーネントウェア,CORBA,B2B/EC,モバイルサービス基盤,ビジネスグリッド等の開発に従事.1989年情報処理学会論文賞.DOPGでは各社のCORBA/Webサービス製品の相互接続実験を8年に亘り実施.現在,サービスプラットフォーム研究所研究統括マネージャ.情報処理学会会員.
 パネリスト:竹内 久治(三菱重工)
1986年東京農工大学電気工学科卒業,同年三菱重工業株式会社に入社.さまざまなプラント制御システムの設計開発業務を経て,現在はETC車載器などITS関連システムの開発に従事.
 

 
エンターテイメント産業におけるモーションキャプチャ技術の将来展望

9月3日(水)9:30-12:00[第3イベント会場(ι棟 ι23教室)]
 
 [企画概要]
CG映像の制作には不可欠となったモーションキャプチャ(以後,MoCap)技術は,ハードとソフトの両面において現在でも活発な開発競争が繰り広げられている.しかし,日本のエンターテイメント産業における利活用は緒に就いたばかりであり,伝統的なアニメやゲームの制作現場においても世界的な競争力を維持するために高度な利用方法が模索されている.また,その応用範囲は伝統芸能のデジタル保存やロボットの制御,および身体科学にいたる幅広い分野に拡大しており,それらの分野を横断する技術を展開することにより新たなエンターテイメントの創出が期待できる.本企画では,MoCapに関する最先端の研究事例と映像制作やデジタルアーカイブ化に関する活動事例を,大学と様々な業界から招いた6名の講演者により紹介する.さらに,アニメやゲームの制作現場が実際に抱える問題や要望の意見を交えて,講演者と会場の参加者によってMoCapの将来技術をパネル討論する.また,技術のさらなる進化によって創出する新たなアプリケーションやビジネスの展望等についても自由に議論を交わす.
 
 司   会:栗山 繁(豊橋技科大)
1987年大阪大学大学院工学研究科修了,工学博士,1988年日本IBM(株)東京基礎研究所,1994年広島市立大学情報科学部助教授,1998年豊橋技術科学大学情報工学科助教授,2005年同教授,また現在,産総研デジタルヒューマン研究センターチーム長と早稲田大学客員研究員を兼務.
主として,CGアニメーション,画像のコード化技術等に関する研究に従事.
FIT2003船井ベストペーパー賞等受賞.
 
[9:30-9:35]講演者紹介
 
[9:35-9:50]講演1「プリビジュアリゼーションにおけるモーションキャプチャ技術の活用」
 
 [講演概要]
ここ約10年,エンターテイメント分野において,モーションキャプチャ技術は,主にゲーム用のキャラクターアニメーションデータ作成のために用いられてきた.アニメーターの手作業に頼らず,リアルな人間の動きを効率的に取り込めることが最大の利点.3次元のポイントデータを解析するためのマーカーセットを除けば,光学式のリアルタイム・モーションキャプチャはどこかビデオ撮影にも似ている.その手軽さが,近年米国の映画制作におけるプリビジュアリゼーション(プリビズ)の現場で活用され始めた.つまり,映像の設計段階でもモーションキャプチャ技術を有効利用しようということである.
本講演では,弊社での取り組みを紹介しつつ,今後の方向性について述べる.
 
 福本 隆司(リンクス・デジワークス)
1981年大阪芸術大学芸術学部映像計画学科卒,1982年大阪大学工学部CGグループ(Links-1システム開発チーム)にてCG制作を始める.同年6月(株)トーヨーリンクス設立と同時に入社.CGディレクターとしてTVコマーシャル,博展映像はじめ多くのCG制作に携わる.1989年〜1999年(株)ポリゴン・ピクチュアズ在籍中は,恐竜やペンギンなどオリジナルCGキャラクターアニメーションの企画開発に携わる.2000年4月(株)リンクス・デジワークス設立に参加.2007年6月同社社長に就任.2000年度より大阪芸術大学芸術学部映像学科,非常勤講師.
 
[9:50-10:05]講演2「モーションキャプチャと舞踊動作,ロボットによる表現」
 
 [講演概要]
筆者らは2001年より,文化遺産のデジタルアーカイブ技術の一環として無形文化財に着目し,モーションキャプチャによる無形文化財(舞踊動作)の保存,解析,およびその利活用を行う研究に取り組んできた.モーションキャプチャは人間の動作を正確に把握することが可能であるが,それを解析する技術や表現する技術が行われなければ,デジタルアーカイブを積極的に利活用することができない.まず解析する技術として,舞踊動作における「止め」動作の検出によるセグメンテーションと,動作の相関関係の導出による手法を提案した.次に,舞踊と音楽の関係に着目し,音楽のリズム(ビート)と,動作の止め動作のタイミングの間に強い相関があることを明らかにした.一方,蓄積されたデータを表現する技術として,モーションキャプチャデータを人型ロボットに入力し再演させる試みを行った.ここでは,データから得られた関節角度をロボットに合うように変形し入力する必要があるが,元の動作の特徴を保存しながら変形する手法を提案した.近年では,舞踊解析から得られた動きと音楽との関係性の知見を使って「音楽からそれに合った動作を生成する」手法を提案している.このシステムでは,音楽の信号を入力しリズム情報を得,それに合う動作を自動的に生成する.これはちょうど,音楽にあわせて自由に動作を生成するヒップホップダンサーのような能力を実現したものである.その他本講演では,筆者が米国で行った,ビデオ画像からの自由動作生成技術についても簡単に紹介する.
 
 中澤 篤志(阪大)
2001年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了,博士(工学),同年東京大学生産技術研究所研究員,2003年より大阪大学サイバーメディアセンター講師,2007年〜2008年2月までジョージア工科大学GVU Center客員研究員,画像計測,画像認識,人体動作解析,コンピュータアニメーションの研究に従事.
 
[10:05-10:20]講演3「モーションキャプチャ・データライブラリーの構築」
 
 [講演概要]
モーションキャプチャ技術の普及はアニメ,ゲーム製作の現場に革新をもたらした.しかし製作現場ではプロジェクト間でモーションデータが共有される事例はほとんどなく,データが"使い捨て"されているため,デジタルデータとしての特性が充分に発揮されていないのが現状である.アクトバート合同会社ではモーションキャプチャで収録した人の動きを,ループ処理などの編集を済ませ,細かい動きのセグメントにしたモーションデータの素材集,"アクトバートモーションライブラリー(AML)"の開発を行っている.
本講演では,エンターテイメント制作現場の現状と今後の可能性,アクトバートモーションライブラリー(AML)の使用例などについて述べる.
 
 荒木 シゲル(アクトバート)
アクトバート合同会社代表,マイムアーティスト,神奈川工科大学非常勤講師.1997年までイギリスに滞在し,パフォーマンス活動を行っていた.1998年に日本に帰国.CG,映像クリエイターを対象に演技や演出のセミナーを開催,また(株)セガなどのゲーム開発部署で「スペースチャンネル5」「Rez」などの開発に関わる.2004年マイクロソフトゲームスタジオに勤務.「ロストオデッセイ」「ナインティナインナイツ」などの開発に関わる.06年にアクトバート合同会社を設立,現在に至る.著作:DVD「荒木シゲルのアニメーションサイエンス」,書籍「動くキャラクター作りの本」.
 
[10:20-10:35]講演4「ロボット視覚としてのモーションキャプチャ」
 
 [講演概要]
高精度の運動データが大量に取得できるモーションキャプチャは,近年ロボット知能の研究に欠かせないツールとなりつつある.モーションキャプチャを用いて行われている研究の例として,模倣による運動学習,人間の運動観察による動作認識と行動予測,運動パターンの自律的セグメンテーションとシンボル化などがある.マーカレスに人間の運動を計測する試みも行われているが,現状でロボットに搭載できる程度のハードウェアによる画像では人間の視覚と同等の空間認識能力を実現するのは困難であることから,モーションキャプチャはそれに代わるロボットの"眼"として使われていると言える.
本講演では,上記のようなロボティクスにおけるモーションキャプチャの活用事例を紹介するとともに,人間の運動を観察するためのロボット視覚としてのモーションキャプチャの将来像とそれに向けた試みについて述べる.
 
 山根 克(東大)
2002年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).カーネギーメロン大学研究員を経て,2003年より東京大学情報理工学系研究科勤務,現在准教授.2004年 IEEE Robotics and Automation Society の Early Academic Career Award,2005年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞などを受賞.
ヒューマノイドロボット,CGアニメーション,バイオメカニクスに関する研究に従事.
IEEE Robotics and Automation Society,ACM SIGGRAPH,日本ロボット学会,電子情報通信学会等の会員.
 
[10:35-10:50]講演5「劇団とモーションキャプチャで早10年」
 
 [講演概要]
劇団わらび座は1951年に創立され,民族芸能をベースに,多彩な表現で現代の心を描く舞台を創り,全国で公演を行っている.劇団では創立後まもなく,日本各地の民族芸能の踊りや祭りを8mmフィルムなどで映像記録を始め,芸能研究や舞台創作に活用してきている.一方,十数年ほど前からモーションキャプチャ(MoCap)技術を使ったゲームや映画が出始め,この技術を使って踊りを記録し,劇団として活用することができないだろうかと考えた.そこで,劇団のコンピュータ部門であるDigital Art Factoryでは,劇団の本拠地の一角にMoCapスタジオを構築した.踊りを記譜する研究から始まり,踊りの伝承教材の制作や舞台への活用など,劇団ならではの試みを紹介する.
 
 海賀 孝明(わらび座)
1995年茨城大学大学院機械工学専攻博士前期課程了.
1996年株式会社わらび座入社.1997年よりモーションキャプチャによる民族芸能の記録保存および伝承に関する研究に従事.現在,同社デジタルアートファクトリ,チーフエンジニア.
情報処理学会平成13年度山下記念研究賞受賞.
 
[10:50-11:05]講演6「モーションキャプチャを用いたアニメ制作プロセスの効率化プロジェクト」
 
 [講演概要]
主としてリアル指向のモーションキャプチャ技術を日本のアニメ制作に応用する技術開発を行う研究プロジェクトの紹介である.リミテッドアニメーションの風合を持たせるため,キャプチャしたモーションデータに対してフィルタリングする技術MoCaToonを利用したアニメ制作事例を紹介し,その表現能力について述べる.また,頭髪のモーションキャプチャ手法を提案し,従来のシミュレーションベースのアプローチとのハイブリッド構成によって,作者の感性を頭髪のモーションに反映させる手法について紹介する.
 
 森島 繁生(早大)
現職:早稲田大学理工学術院先進理工学部教授.
1959年生まれ.1987年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了,工学博士.
1988年成蹊大学工学部助教授.2001年同教授を経て,2004年より現職.
2004年よりデジタルアニメーションラボ代表.早稲田大学デジタルエンタテインメント研究所所長.
 
[11:05-12:00]パネル討論「モーションキャプチャ技術の今後と新エンターテイメントの展望」
 
 [討論概要]
CG映像の制作には不可欠となったモーションキャプチャ技術は,ハードとソフトの両面において現在でも活発な開発競争が繰り広げられている.しかし,日本のエンターテイメント産業における利活用は緒に就いたばかりであり,伝統的なアニメやゲームの制作現場においても世界的な競争力を維持するために高度な利用方法が模索されている.また,その応用範囲は伝統芸能のデジタル保存やロボットの制御,および身体科学にいたる幅広い分野に拡大しており,それらの分野を横断する技術を展開することにより新たなエンターテイメントの創出が期待できる.本パネル討論では,モーションキャプチャに関する最先端の研究事例と映像制作やデジタルアーカイブ化に関する活動事例を紹介し,実際の制作現場が抱える問題や要望をふまえた今後の技術開発の方向性を討論する.また,技術のさらなる進化によって創出する新たなアプリケーションやビジネスの展望等についても自由に議論を交わす.
 
 討論司会:栗山 繁(豊橋技科大)
1987年大阪大学大学院工学研究科修了,工学博士,1988年日本IBM(株)東京基礎研究所,1994年広島市立大学情報科学部助教授,1998年豊橋技術科学大学情報工学科助教授,2005年同教授,また現在,産総研デジタルヒューマン研究センターチーム長と早稲田大学客員研究員を兼務.
主として,CGアニメーション,画像のコード化技術等に関する研究に従事.
FIT2003船井ベストペーパー賞等受賞.
 パネリスト:荒木 シゲル(アクトバート)
アクトバート合同会社代表,マイムアーティスト,神奈川工科大学非常勤講師.1997年までイギリスに滞在し,パフォーマンス活動を行っていた.1998年に日本に帰国.CG,映像クリエイターを対象に演技や演出のセミナーを開催,また(株)セガなどのゲーム開発部署で「スペースチャンネル5」「Rez」などの開発に関わる.2004年マイクロソフトゲームスタジオに勤務.「ロストオデッセイ」「ナインティナインナイツ」などの開発に関わる.06年にアクトバート合同会社を設立,現在に至る.著作:DVD「荒木シゲルのアニメーションサイエンス」,書籍「動くキャラクター作りの本」.
 パネリスト:海賀 孝明(わらび座)
1995年茨城大学大学院機械工学専攻博士前期課程了.
1996年株式会社わらび座入社.1997年よりモーションキャプチャによる民族芸能の記録保存および伝承に関する研究に従事.現在,同社デジタルアートファクトリ,チーフエンジニア.
情報処理学会平成13年度山下記念研究賞受賞.
 パネリスト:中澤 篤志(阪大)
2001年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了,博士(工学),同年東京大学生産技術研究所研究員,2003年より大阪大学サイバーメディアセンター講師,2007年〜2008年2月までジョージア工科大学GVU Center客員研究員,画像計測,画像認識,人体動作解析,コンピュータアニメーションの研究に従事.
 パネリスト:福本 隆司(リンクス・デジワークス)
1981年大阪芸術大学芸術学部映像計画学科卒,1982年大阪大学工学部CGグループ(Links-1システム開発チーム)にてCG制作を始める.同年6月(株)トーヨーリンクス設立と同時に入社.CGディレクターとしてTVコマーシャル,博展映像はじめ多くのCG制作に携わる.1989年〜1999年(株)ポリゴン・ピクチュアズ在籍中は,恐竜やペンギンなどオリジナルCGキャラクターアニメーションの企画開発に携わる.2000年4月(株)リンクス・デジワークス設立に参加.2007年6月同社社長に就任.2000年度より大阪芸術大学芸術学部映像学科,非常勤講師.
 パネリスト:森島 繁生(早大)
現職:早稲田大学理工学術院先進理工学部教授.
1959年生まれ.1987年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了,工学博士.
1988年成蹊大学工学部助教授.2001年同教授を経て,2004年より現職.
2004年よりデジタルアニメーションラボ代表.早稲田大学デジタルエンタテインメント研究所所長.
 パネリスト:山根 克(東大)
2002年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).カーネギーメロン大学研究員を経て,2003年より東京大学情報理工学系研究科勤務,現在准教授.2004年 IEEE Robotics and Automation Society の Early Academic Career Award,2005年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞などを受賞.
ヒューマノイドロボット,CGアニメーション,バイオメカニクスに関する研究に従事.
IEEE Robotics and Automation Society,ACM SIGGRAPH,日本ロボット学会,電子情報通信学会等の会員.
 

 
EIPの10年

9月3日(水)15:30-17:30[第3イベント会場(ι棟 ι23教室)]
 
 [企画概要]
情報処理学会 電子化知的財産・社会基盤研究会(EIP)の10年を振り返る.情報処理学会電子化知的財産・社会基盤研究会(略称EIP)は設立されて10年の節目を迎えた.そこで,FITにおいてEIPの10年を振り返る特別セッションを行いたい.歴代4人の主査を招いたパネル討論をメインの企画としている.企画意図としては,この10年間の知的財産権の動向を概観するとともに,社会基盤としてのICTのあり方について理解を深めたい.さらに,電子社会の未来に向けての展望についても大いに議論し,研究会を通じて今後のICTの発展の方向性について提言を行うことも考えている.技術系が大部分を占める情報処理学会において,本研究会は人文・社会系の研究者も多く参加している.今後のFITの発展のために,理工系のみならず,人文・社会系の研究者が幅広く参加できる本企画の意義は,大変大きなものがあると言えよう.
 
 司   会:井出 明(首都大)
京都大学経済学部卒.同大学院修士課程法学研究科修了.京都大学博士(情報学).
九州東海大学専任講師,大阪経済法科大学助教授,近畿大学経済学部助教授などを経て,現在は首都大学東京大学院都市環境科学研究科准教授.専門は社会情報学.
EIPでは,2002年から運営委員,2004年から2期幹事を務める.
 
[15:30-16:00]基調講演「コンテンツ流通の足跡を見る10年」
 
 [講演概要]
EIP研究会は,1998年5月28日(木)に第1回が開催され,本年5月30日(水)で第40回を迎えている.設立以来10周年となり,この間の論文発表数は439件を数えている.1980年代初めに結実した,森先生の「超流通」を嚆矢とする世界のコンテンツ流通に関する動きは,1990年代に入って大きな流れとなり,多数の研究者が取り組む領域となってきた.情報処理学会がこの流れを顕在化するために設立した研究会がEIPであり,設立以来,コンテンツ流通,著作権保護,コンテンツアイデンティティおよびこれらを支える諸技術に関わる先端的研究発表の場として,学会をリードし続けている.EIP設立10周年を迎え,EIPの10年の足跡を振り返って,本分野に果たした役割を検証するととともに,次なる発展について考察を試みる.
 
 安田 浩(電機大)
現職:東京電機大学未来科学部情報メディア学科教授,工学博士,東京大学名誉教授.
1967年東京大学工学部電子科卒業,1972年同大学院博士課程修了.同年4月日本電信電話公社入社.NTT理事・情報通信研究所所長を経て,1997年3月退社.NTT在職中は,画像符号化,画像信号処理,マルチメディアサービスに関わる研究・開発に従事.
1997年4月東京大学教授,先端科学技術研究センター所属.1998年4月から2007年3月同大学教授,国際・産学共同研究センター所属.2003年4月〜2005年3月国際・産学共同研究センター長就任.2007年4月より東京電機大学教授,未来科学部 情報メディア学科所属.高速通信網およびその応用,インターネットおよびその応用,画像処理・画像符号化・知的財産権保護技術の研究ならびに感性工学研究に取組中.
 
[16:10-17:30]パネル討論「EIPの過去,現在そして未来」
 
 [討論概要]
情報処理学会電子化知的財産・社会基盤研究会(略称EIP)は,創設後,10年の節目を迎えた.この間,社会の情報化は大きく進展し,研究会創設当時には想定していなかった社会的変化も生じている.そこで,本イベント企画では,EIPの過去・現在そして未来を見据えた基調講演を踏まえ,創設メンバーや主査経験者を交えた討論を試みる.扱うテーマは情報化社会における知的財産を主眼として,プライバシー保護やユビキタス論など,今後の制度設計論にまで踏み込みたいと考えている.文科系と理科系の双方に多くの会員を有するとともに,実務家と研究者の高次のコラボレーションが繰り広げられてきた本研究会ならではの学際的な討論を期待していただきたい.フロアーとの質疑応答時間も十分に準備しているため,FIT参加者の積極的来場をお待ち申し上げる.
 
 討論司会:井出 明(首都大)
京都大学経済学部卒.同大学院修士課程法学研究科修了.京都大学博士(情報学).
九州東海大学専任講師,大阪経済法科大学助教授,近畿大学経済学部助教授などを経て,現在は首都大学東京大学院都市環境科学研究科准教授.専門は社会情報学.
EIPでは,2002年から運営委員,2004年から2期幹事を務める.
 パネリスト:亀山 渉(早大)
1985年早大理工卒,1987年同大学院理工学研究科修士課程了,1990年同大学院理工学研究科博士課程了.1989年早大理工学部助手.1992年(株)アスキー.1994年フランステレコム研究所出向等を経て,1999年早大国際情報通信研究センター助教授,2002年早大大学院国際情報通信研究科教授(現職).MPEG・MHEG・DAVIC・TV-Anytimeフォーラム等の標準化に関わり,ISO/IEC 13522-1及び-8エディタ,ISO/IEC JTC1/SC29/WG12議長,TV-Anytimeフォーラム副議長等を務める.2006年より情報処理学会電子化知的財産・社会基盤研究会主査.電子情報通信学会,情報処理学会,映像情報メディア学会,画像電子学会,IEEE,ACM
各会員.工学博士.
 パネリスト:岸上 順一(NTT)
北海道大学物理出身.薄膜ヘッドのデザインから磁気ディスクの設計,VODの開発などを行い,94年から5年間NTTアメリカVPとしてIP事業に取り組む.総務省,経産省のコンテンツ流通,著作権,制度などの各種委員会に関わり,現在NTTサイバーソリューション研究所所長.中期経営戦略推進室,ならびに研究企画部門チーフプロデューサ(通信放送連携ならびにRFIDビジネスを担当).NTT理事.主な著書は「シリコンバレーモデル」NTT出版,「デジタルID革命」日本経済出版社,「コンテンツ流通教科書」アスキー出版,「RFID教科書」アスキー出版.
 パネリスト:名和 小太郎(情報セキュリティ大)
1956年東京大学理学部卒.工学博士.旭化成→新潟大学法学部→関西大学総合情報学部→(現在)情報セキュリティ大学院大学.IPSJ関連:倫理綱領制定委員会委員長→EIP初代幹事.著書:『学術情報と知的所有権』(東京大学出版会)『情報の私有・共有・公有』(NTT出版)『個人データ保護』(みすず書房)など.
「討論によせて」
1996年,IPSJは倫理綱領を制定した.そのベンチマーク・テストの場として,1997年にEIPを立ち上げた.倫理綱領委員会のメンバーは,名和小太郎(長),米田英一(幹事),大谷和子,後藤滋樹,塚本亮治,土屋俊,西村恕彦,松本恒雄,三浦賢一,吉田正夫であった.EIPの初代幹事は,森亮一(長),工藤育男,名和,松本であった.
 パネリスト:安田 浩(電機大)
現職:東京電機大学未来科学部情報メディア学科教授,工学博士,東京大学名誉教授.
1967年東京大学工学部電子科卒業,1972年同大学院博士課程修了.同年4月日本電信電話公社入社.NTT理事・情報通信研究所所長を経て,1997年3月退社.NTT在職中は,画像符号化,画像信号処理,マルチメディアサービスに関わる研究・開発に従事.
1997年4月東京大学教授,先端科学技術研究センター所属.1998年4月から2007年3月同大学教授,国際・産学共同研究センター所属.2003年4月〜2005年3月国際・産学共同研究センター長就任.2007年4月より東京電機大学教授,未来科学部 情報メディア学科所属.高速通信網およびその応用,インターネットおよびその応用,画像処理・画像符号化・知的財産権保護技術の研究ならびに感性工学研究に取組中.
 

 
KIISE会長招待講演:International Collaboration between KIISE and Japanese Organizations

9月4日(木)10:30-12:00[第3イベント会場(ι棟 ι23教室)]
 
 [講演概要]
This speech gives a brief introduction on the international activities of KIISE and states the emerging importance of future cooperative activities. KIISE stands with a noble objective of dealing with increased interdependency, connectivity and integration on a global level among international societies, researchers and academicians with respect to social and technological aspects. To accentuate contemporary research issues and challenges our seventeen special interest groups are working and sharing their viewpoints through international conferences and symposiums. The necessity of research collaboration among KIISE, IEICE-ISS and IPSJ is more important than ever before due to globalization. Mutual cooperative activities among these societies may bring win-win benefits for both the countries as well as increase the research interests of the world. To accelerate the future collaborative research KIISE suggests following mutual agreements with IPSJ and IEICE-ISS: cooperative research projects, international academic activities such as workshop, symposium and conference. Also, academic expert exchange agreement, publication exchange agreement, mutual membership agreement, mutual visiting of presidents/members etc can be considered. Research collaboration and joint activities on science and industrial developments can intensify mutually reinforcing objectives. KIISE seeks to work together with IEICE-ISS and IPSJ in order to make research opportunities better known and a reality for a larger share of young and enthusiastic researchers who look for excitement and inspiration for their future. In this regard, KIISE wants to build trust, mutual understanding and respect that are necessary to develop better research relationship among the academic societies of the two countries. In the long run, the above collaborative research activities will play a noteworthy role in the development of future technologies as well as leverages community networking of both the countries.
 
 Yanghee Choi(KIISE会長)
President of Korean Institute of Information Scientists and Engineers (KIISE), received B.S. in electronics engineering from Seoul National University, M.S. in electrical engineering from Korea Advanced Institute of Science, and Doctor of Engineering in Computer Science from Ecole Nationale Superieure des Telecommunications (ENST) in Paris, in 1975, 1977 and 1984 respectively. Before joining the School of Computer Engineering, Seoul National University in 1991, he has been with Electronics and Telecommunications Research Institute (ETRI) during 1977-1991, where he served as director of Data Communication Section, and Protocol Engineering Center. He was research student at Centre National d'Etude des Telecommunications (CNET) , Issy-les-Moulineaux, during 1981-1984. He was also Visiting Scientist to IBM T. J. Watson Research Center for the year 1988-1989. He is now leading the Multimedia and Mobile Communications Laboratory in Seoul National University. He is also director of Computer Network Research Center in Institute of Computer Technology (ICT). He was editor-in-chief of KIISE journals and also chairman of the Special Interest Group on Information Networking. He has been associate dean of research affairs at Seoul National University. He was president of Open Systems and Internet Association of Korea. His research interest lies in the field of Multimedia Systems and Future Internet.
 

 
イノベータが語るオブジェクトの世界
−いかに生まれ,浸透し,そしてどこに向かうのか?−


9月4日(木)13:00-15:30[第3イベント会場(ι棟 ι23教室)]
 
 [企画概要]
オブジェクト指向の概念は1960年代に生まれ,1970〜80年代には研究レベルで発展をとげ,その後,爆発的に普及するに至った.今日では,プログラミング言語,フレームワーク,ソフトウェアの設計・分析法などの主要なものが,多かれ少なかれオブジェクト指向のアイデアを取り入れている.オブジェクト指向は,今や空気や水のように当たり前の存在と言えよう.このオブジェクト指向に対する我が国からの貢献は意外に大きく,この分野で最も権威あるAITOのDahl-Nygaard賞を,今年は東京大学教授の米澤明憲氏が受賞した.第4回目にして,アジア圏から初の受賞者が生まれたことになる.そこで,これを機会に,オブジェクト指向を今一度見つめ直したい.2件の講演とパネル討論を通して,オブジェクト指向が世の中に与えたインパクト,新しい潮流や今後の展望などについて語りあう場を設ける.
 
 司   会:柴山 悦哉(東大)
1981年京都大学理学部卒.1983年同大学院修士課程修了.同年,東京工業大学理学部助手.その後,龍谷大学理工学部講師,東京工業大学理学部助教授,同大学院情報理工学研究科助教授および教授を経て,2008年より東京大学情報基盤センター教授.理学博士.
プログラミング言語,ソフトウェアセキュリティ,ユーザインタフェースソフトウェアなどに興味を持つ.
現在,東京工業大学大学院情報理工学研究科連携教授,産業技術総合研究所招へい研究員,情報処理学会理事.
 
[13:00-14:00]講演1「並列オブジェクト−その始まりと将来−」
 
 [講演概要]
まず,並列オブジェクトの着想を得るに至った頃の米国の計算機科学の研究状況について述べ,並列オブジェクトの概念について簡単に説明する.次いで,米澤グループによる,並列オブジェクトにもとづく言語の設計,形式的意味論,自己反映計算,超並列マシン上での処理系の実装等について述べ,また,どのような実際的な応用プログラムを作成したかを説明する.加えて,自立的にネットワークを移動するオブジェクト(モバイルオブジェクト)を実現したことについても触れる.このような研究開発で得られた技術や知見が,マルチコアチップが豊富に使われるようになり,プログラムの並列化が強く求められるような状況となった今日において,どのような応用的意味があるかを,リンデン社のセカンドライフの例を述べつつ,議論する.
 
 米澤 明憲(東大)
1947年生.1970年東京大学工学部計数工学科卒.1977年マサチューセッツ工科大学計算機科学科博士課程修了.Ph.D. in Computer Science.1988年東京大学理学部情報科学科教授に着任.日本ソフトウエア科学会理事長,政府情報科学技術委員会委員,内閣府総合規制改革会議委員,同教育分野主査などを歴任.
現在,情報システム研究機構監事,(独)産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センター副センター長,東京大学情報基盤センター長を兼務.
 
[14:00-14:20]講演2「オープンシステムとオブジェクト指向」
 
 [講演概要]
ありとあらゆるシステムがネットワークで相互に接続されるようになり,全体として巨大な生活インフラを構成するようになった.このとき,設計者はシステム全体の構成や動作を完全に理解したうえで新たなサブシステムの設計や既存サブシステムの変更を行うことが不可能となっている.しかしながら,システムの安全性ならびに継続性の確保がますます重要になっている.また,今後ますます重要になると思われる実世界・実時間シミュレーションにおいても,シミュレーターの継続的な精緻化のために同様な課題を解決する必要がある.このようなオープンシステムの課題に対し,オブジェクト指向の思想と技術をいかに適用するか検討する.
 
 所 眞理雄(ソニーコンピュータサイエンス研究所)
慶應義塾大学助手,専任講師,助教授を経て1991年より理工学部電気工学科教授.1988年に(株)ソニーコンピュータサイエンス研究所を創立し,取締役副所長を兼務.1997年慶應義塾大学を退職し,ソニー(株)執行役員上席常務ならびにソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長.ソニー(株)IT研究所,CTO,プラットフォームテクノロジーセンター,技術渉外などを担当し,2008年6月にソニー(株)役員を退任.
 
[14:30-15:30]パネル討論「イノベータが語るオブジェクトの世界−いかに生まれ,浸透し,そしてどこに向かうのか?−」
 
 [討論概要]
本パネルでは,並列オブジェクト,モバイルオブジェクト,オブジェクト指向計算などに関する講演を受け,オブジェクト指向の世界が,今後どのように発展していくかを語り合う.オブジェクト指向のすそ野は今や広範に広がっており,さまざまな方向にフロンティアが存在する.パネリストは,アスペクト指向技術,プログラミング言語の設計と実装技術などに関して深い知見を有するオブジェクト指向分野の識者である.現在ホットな技術や将来期待される技術に関する話題を提供していただくとともに,オブジェクトの世界の大局的な動向についても議論をお願いする.
 
 討論司会:柴山 悦哉(東大)
1981年京都大学理学部卒.1983年同大学院修士課程修了.同年,東京工業大学理学部助手.その後,龍谷大学理工学部講師,東京工業大学理学部助教授,同大学院情報理工学研究科助教授および教授を経て,2008年より東京大学情報基盤センター教授.理学博士.プログラミング言語,ソフトウェアセキュリティ,ユーザインタフェースソフトウェアなどに興味を持つ.現在,東京工業大学大学院情報理工学研究科連携教授,産業技術総合研究所招へい研究員,情報処理学会理事.
 パネリスト:小野寺 民也(日本IBM)
1959年生.1988年東京大学大学院理学系研究科情報科学専門課程博士課程修了.同年日本アイ・ビー・エム(株)入社.以来,同社東京基礎研究所にて,オブジェクト指向言語の設計および実装の研究に従事.現在,同研究所シニア・テクニカル・スタッフ・メンバー.インフラストラクチャ・ソフトウェア担当.第41回(平成2年後期)全国大会学術奨励賞,平成7年度山下記念研究賞,平成16年度論文賞,平成16年度業績賞,各受賞.理学博士.ACM Senior Member.日本ソフトウェア科学会会員.
 パネリスト:千葉 滋(東工大)
東京工業大学大学院情報理工学研究科教授.1991年東京大学理学部情報科学科卒業.1993年同大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.1996年同専攻より博士(理学).東京大学助手,筑波大学講師,東京工業大学講師・助教授・准教授を経て現職.プログラミング言語およびオペレーティング・システム等,システムソフトウェアの開発に興味を持っている.平成17年度長尾真記念特別賞(情報処理学会),平成19年度科学技術分野の文部科学大臣表彰などを受賞.
 パネリスト:所 眞理雄(ソニーコンピュータサイエンス研究所)
慶應義塾大学助手,専任講師,助教授を経て1991年より理工学部電気工学科教授.1988年に(株)ソニーコンピュータサイエンス研究所を創立し,取締役副所長を兼務.1997年慶應義塾大学を退職し,ソニー(株)執行役員上席常務ならびにソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長.ソニー(株)IT研究所,CTO,プラットフォームテクノロジーセンター,技術渉外などを担当し,2008年6月にソニー(株)役員を退任.
 パネリスト:米澤 明憲(東大)
1947年生.1970年東京大学工学部計数工学科卒.1977年マサチューセッツ工科大学計算機科学科博士課程修了.Ph.D. in Computer Science.1988年東京大学理学部情報科学科教授に着任.日本ソフトウエア科学会理事長,政府情報科学技術委員会委員,内閣府総合規制改革会議委員,同教育分野主査などを歴任.
現在,情報システム研究機構監事,(独)産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センター副センター長,東京大学情報基盤センター長を兼務.
 

 
FIT2008 論文賞セッション

9月2日(火)13:00-16:00[第4イベント会場(λ棟 λ13教室)]

 
※著者の○,◎はそれぞれ講演者を示し,◎は「FITヤングリサーチャー賞」受賞候補の資格対象であることを示します.(2008年12月31日時点で32歳以下)
 
[13:00-13:30]講演1:3DCGによる浮世絵構図への変換法
  ◎久保友香・趙  捷・宇佐美貴徳・広田光一(東大)
 
[13:30-14:00]講演2:クリックスルーに基づく探検型検索サイトの設計と開発
  ○酒井哲也・小山田浩史・野上謙一・北村仁美・梶浦正浩・東美奈子・野中由美子・小野雅也・菊池 豊(ニューズウォッチ)
 
[14:00-14:30]講演3:ブロック歪みを考慮した時空間コントラスト感度特性に基づくH.264/AVC符号化器設計
  ○坂東幸浩・早瀬和也・高村誠之・上倉一人・八島由幸(NTT)
 
[14:30-15:00]講演4:ソフトウェア不正コピー対策のためのLANアクセス制御システム
  ◎山本 賢・岡山聖彦・山井成良(岡山大)
 
[15:00-15:30]講演5:LiNeSにおける仮想ネットワーク間接続機能の開発と実用可能性の検討
  ◎立岩佑一郎・安田孝美(名大)
 
[15:30-16:00]講演6: A Counting-Based Approximation of the Distribution Function of the Longest Path Length in Directed Acyclic Graphs
  ◎安藤 映・小野廣隆・定兼邦彦・山下雅史(九大)
 

 
ユビキタスWeb−これからのWebのために必要な技術は何か−

9月4日(木)13:00-16:20[第4イベント会場(λ棟 λ13教室)]
 
 [企画概要]
わずか数台の大型計算機が専用線で接続されていたに過ぎない最初のインターネットが誕生してから40年,またインターネット上の情報空間であるWebが開発されてから20年が経過している.この間,Webにアクセスするための情報機器は,当初の大型計算機から小型のワークステーション,そしてパーソナル・コンピュータへと変化してきた.近年では,デバイスおよびネットワーク技術の発展により,携帯電話による電子メールの送受信やWebへのアクセスは常識となり,コンピュータによるアクセス数をしのいでいる.Webは,さまざまなアプリケーション開発のためのプラットフォームとして普及しつつあり,より効果的なWebアクセスのための標準仕様を策定することが,多様なデバイス上でのアプリケーション開発にかかるコストを削減するためにきわめて重要である.World Wide Web Consortium(W3C)は,Web開発者であるTim Berners-Leeにより設立された,Webの発展と相互運用性を確保するために必要な各種仕様の開発を行なう国際的な技術コンソーシアムであり,アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT),フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム(ERCIM),および日本の慶應義塾大学という三つのホスト機関により共同運営されている.

本企画の詳細資料はこちら
 
 司   会:芦村 和幸(W3C/慶大)
1992年京都大学理学部数学科卒業.2005年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期過程単位取得退学.
NTTソフトウェア株式会社,ATR音声翻訳通信研究所,株式会社アルカディア,JST/CREST「表現豊かな発話音声のコンピュータ処理」研究員を経て,2005年よりW3C音声ブラウザ担当,2006年よりマルチモーダル対話担当兼務.音声およびマルチモーダル対話技術に関する各種Web標準策定に従事.
電子情報通信学会,日本音響学会各会員.
 
[13:00-13:30]講演1「W3Cにおけるマルチモーダル対話処理の標準化」
 
 [講演概要]
W3CユビキタスWebドメインでは,「誰でも,どこでも,いつでも,そしていかなるデバイスを用いてでも,Webへのアクセスを可能とする」というユビキタスWebの実現へ向けて,利用者のニーズや各種デバイスの能力,環境的条件に応じた最適な手法を用いてWebにアクセスするための,次世代ヒューマンインタフェース技術標準化に取り組んでいる.
本講演では,そのうち特に,W3Cマルチモーダル対話ワーキンググループ(Multimodal Interaction(MMI)WG)の活動に焦点を当て,GUI,音声,手書き情報等,Webアプリケーションで利用される様々なモダリティを統合するためのフレームワークであるMMIアーキテクチャを中心に,多様な入出力形態および各種情報の同期等を実現するために必要な各種仕様策定の動向について説明する.
 
 芦村 和幸(W3C/慶大)
1992年京都大学理学部数学科卒業.2005年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期過程単位取得退学.
NTTソフトウェア株式会社,ATR音声翻訳通信研究所,株式会社アルカディア,JST/CREST「表現豊かな発話音声のコンピュータ処理」研究員を経て,2005年よりW3C音声ブラウザ担当,2006年よりマルチモーダル対話担当兼務.音声およびマルチモーダル対話技術に関する各種Web標準策定に従事.
電子情報通信学会,日本音響学会各会員.
 
[13:30-14:00]講演2「Webにおけるビデオコンテンツの利用」
 
 [講演概要]
近年,Web上でのビデオコンテンツ利用は,携帯機器へのカメラ搭載や通信ネットワークの高速化・一般化に伴い,世界的に急速に拡大しつつある.本講演では,現在W3Cで検討を進めている,Web上におけるビデオコンテンツの取扱いに関する新しい活動について紹介する.本活動の目的は,Web上において,動画や音声情報からなるビデオコンテンツを,今までのような副次的な情報としてではなく,テキスト情報や静止画情報と同様に「第一種」の情報として自由に取り扱うためのフレームワークを提供することであり,2007年12月にサンノゼおよびブリュッセルにて合同で開催された「W3C Video on the Web ワークショップ」(http://www.w3.org/2007/08/video/report.html)の議論を通して明確化された,(1)動画および音声情報に含まれる断片的情報の位置的・時間的な指定方法,および(2)動画情報の検索に用いることができるようなメタデータの付与方法等が対象となる.
 
 Felix Sasaki(W3C/慶大)
Felix Sasaki joined the W3C in April 2005 to work in the Internationalization Activity.
He is also working in the area of Web Services, and on Video on the Web. He is part of the W3C staff at Keio-SFC. His main field of interest is the combined application of W3C technologies for the representation and processing of multilingual information.
 
[14:00-14:30]講演3「Webアプリケーションにおける地理位置情報の活用」
 
 [講演概要]
現在W3Cでは,Web アクセスに利用される各種機器の位置情報を,一般的なWeb ブラウザ上のアプリケーションで自由に取り扱うことを可能とするための標準的なAPIの仕様策定に取り組んでいる,本 APIを利用することにより,Webアプリケーションの開発者は,各ブラウザの実装に依存しない形で,位置情報を活用したWebアプリケーションの開発を行なうことができるようになる.例えば,既に一部の携帯電話において提供されているナビゲーションサービスのように,GPS情報にもとづいて利用者の位置を特定するとともに,その位置情報を住所や地名と対応づけた上で画面上に表示し,さらには,「交差点を曲がる度に,利用者の位置や今後の進路を自動更新する」といった付加的なサービスを提供することもできるようになる.
 
 Michael Smith(W3C/慶大)
Michael (tm) Smith is co-chair of the W3C HTML Working Group (helping develop the next version of the Web's core language,HTML5) as well as one-half of a tag team of W3C rowdies who do the grunt work for the Web Applications Working Group. Mike's been involved in design, development, testing, and deployment of Internet applications for more than 10 years - from carrier-grade e-mail delivery systems and server-side content-transformation technologies to Web browsers deployed across a range of devices.Before joining the W3C, he worked on systems for mobile operators in Japan - at Openwave Systems (whose mobile browser has shipped on more than one billion handsets) and at Opera Software (whose mobile browser was the first "full" browser to ship preinstalled on handsets in Japan). At the W3C, he started as the Asia lead for the Mobile Web Initiative before shifting to his current focus on work related to core browser technologies.
 
[14:30-15:00]講演4「わが国におけるマルチモーダル対話記述標準化−現状と将来への期待−」
 
 [講演概要]
マルチモーダル対話は,近未来のヒューマンインタフェース中核技術として,携帯端末,カーナビ,情報家電からロボット応用まで実現への期待が大きい.しかしながら,各種モダリティの統合・分化にあたっての具体的な方法論や,多様なアプリケーションの開発に利用できる柔軟なフレームワークが存在しないこと等により,いまだ実用化への見通しが立っているとは言えないのが現状である.本講演では,このような状況を踏まえ,情報処理学会情報企画調査会「音声入出力インタフェース委員会」で取り組んでいる,マルチモーダルシステムのための標準的なシステムアーキテクチャ,およびその記述言語について述べる.
 
 荒木 雅弘(京都工繊大)
1988年京都大学工学部卒業.1993年京都大学大学院工学研究科博士課程研究指導認定退学.
京都大学工学部助手,同総合情報メディアセンター講師を経て,現在京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科准教授.
音声対話システムおよびマルチモーダル対話記述言語の研究に従事.
ACL,ISCA,情報処理学会等各会員.博士(工学).
 
[15:20-16:20]パネル討論「ユビキタスWeb実現にあたっての課題」
 
 [討論概要]
パネル討論ではこれまでの講演を受け,まず,マルチモーダル対話記述の現状,各種標準仕様がわが国では普及しにくい要因,今後の対話記述言語標準化への展望などについて討議した上で,近い将来利用の増大するであろうマルチモーダル対話応用システムを軸に,「誰でも,どこでも,いつでも,そしていかなるデバイスを用いてでも,Webへのアクセスを可能とする」というユビキタスWeb実現のための要件について討議する.
 
 討論司会:芦村 和幸(W3C/慶大)
1992年京都大学理学部数学科卒業.2005年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期過程単位取得退学.
NTTソフトウェア株式会社,ATR音声翻訳通信研究所,株式会社アルカディア,JST/CREST「表現豊かな発話音声のコンピュータ処理」研究員を経て,2005年よりW3C音声ブラウザ担当,2006年よりマルチモーダル対話担当兼務.音声およびマルチモーダル対話技術に関する各種Web標準策定に従事.
電子情報通信学会,日本音響学会各会員.
 パネリスト:荒木 雅弘(京都工繊大)
1988年京都大学工学部卒業.1993年京都大学大学院工学研究科博士課程研究指導認定退学.
京都大学工学部助手,同総合情報メディアセンター講師を経て,現在京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科准教授.
音声対話システムおよびマルチモーダル対話記述言語の研究に従事.
ACL,ISCA,情報処理学会等各会員.博士(工学).
 パネリスト:桂田 浩一(豊橋技科大)
1995年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.2000年同大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.同年豊橋技術科学大学工学研究科助手.2007年 豊橋技術科学大学 留学生センター,および大学院工学研究科 知識情報工学専攻講師.博士(工学).マルチモーダル対話,知識処理に関する研究に従事.情報処理学会,AAAI,人工知能学会,日本音響学会,言語処理学会,ヒューマンインタフェース学会各会員.
 パネリスト:西本 卓也(東大)
1993年早稲田大学理工学部卒業.1995年同大大学院理工学研究科修士課程修了.1996年京都工芸繊維大学工芸学部助手.2002年東京大学大学院情報理工学系研究科助手.2002年東京大学大学院情報理工学系研究科助手.2007年同助教.音声インタフェース,パターン認識,福祉情報工学,音楽情報処理の研究に従事.電子情報通信学会,日本音響学会,情報処理学会,人工知能学会,ヒューマンインタフェース学会会員.
 パネリスト:Felix Sasaki(W3C/慶大)
Felix Sasaki joined the W3C in April 2005 to work in the Internationalization Activity.
He is also working in the area of Web Services, and on Video on the Web. He is part of the W3C staff at Keio-SFC. His main field of interest is the combined application of W3C technologies for the representation and processing of multilingual information.
 パネリスト:Michael Smith(W3C/慶大)
Michael (tm) Smith is co-chair of the W3C HTML Working Group (helping develop the next version of the Web's core language,HTML5) as well as one-half of a tag team of W3C rowdies who do the grunt work for the Web Applications Working Group. Mike's been involved in design, development, testing, and deployment of Internet applications for more than 10 years - from carrier-grade e-mail delivery systems and server-side content-transformation technologies to Web browsers deployed across a range of devices.Before joining the W3C, he worked on systems for mobile operators in Japan - at Openwave Systems (whose mobile browser has shipped on more than one billion handsets) and at Opera Software (whose mobile browser was the first "full" browser to ship preinstalled on handsets in Japan). At the W3C, he started as the Asia lead for the Mobile Web Initiative before shifting to his current focus on work related to core browser technologies.