4F-06
薬剤耐性の出現と拡散につながる社会的ジレンマの観測
○伊東 啓(長崎大),和田崇之(大阪公立大),一ノ瀬元喜(静岡大),谷本 潤(九大),吉村 仁,山本太郎(長崎大),守田 智(静岡大)
現在,抗生剤の効かない薬剤耐性菌が世界的に増え続けている.耐性菌のリスクを減らすためには社会全体で抗生剤の使用をなるべく控える必要があるが,現実には社会的ジレンマにより抗生剤の過剰使用に歯止めがかからない可能性がある.本研究では二種類の仮想の医療診断システムの普及に関するウェブ調査を8カ国/地域で実施し,約4万人から回答を得た.結果から,各国の15~30%の回答者が「自分は気軽に抗生剤を使用したいが,他人にはなるべく控えてほしい」という社会的ジレンマを抱えていた.また,世界的な薬剤耐性問題よりも個人の治療を優先する回答者が過半数を占めており,薬剤耐性問題を考慮する診断システムに忌避的であった.