1X-06
遅延CTS返送による無線アドホック通信の性能向上
○野村和奏,桧垣博章(電機大)
固定基地局を介することなく隣接する無線ノードが直接データメッセージを送受信する無線アドホックネットワークでは,無線LAN プロトコルの備えるCSMA/CA とRTS/CTS 制御によって制御メッセージおよびデータメッセージの衝突を回避している.RTS の衝突を回避するために各無線ノードの待機時間をランダムに決定するバックオフタイマ機能は,その値を単調減少させることにより隣接ノードにその送信機会を平等に与える.ところが,受信ノードによるCTS の送信タイミングはRTS の受信タイミングによって決まることから,CTS を受信ノードが送信できるとは限らない.DATA 送受信に至る確率は,受信ノードとその隣接ノードにおける通信要求頻度に依存する.このため,無線LAN プロトコルのバックオフタイマ機能のみでは,RTS の送信機会の平等性は改善されるものの,データメッセージ配送機会の平等性が改善されないという問題がある.本論文では,周辺の通信要求頻度が高い受信ノードがすべてのNAV が解除されるまでCTS 送信を遅延させる手法を提案する.また,これを実現するプロトコルを設計する.最後に,従来手法の適用機会を評価する.特に,無線信号の減衰によるキャプチャエフェクトの影響を考慮すると提案手法は多くの適用機会を持つことを示す.