情報処理学会第84回全国大会 会期:2022年3月3日~3日 会場:愛媛大学 城北キャンパス

IPSJ-ONE

日時:3/5 15:30-17:30

会場:第2イベント会場

【セッション概要】情報処理学会には多数の研究会がある一方,それぞれの研究者が異分野で現在注目されている研究を知る機会は少ない.専門家ではない学生や他分野からの参加者にとってはなおさらである.そこで本企画では,多様な研究分野を垣根なく俯瞰するため,若手を中心とする優れた研究者が次々と登壇し,各自の研究を端的に紹介する.専門家のみならず,高校生,学部生,他分野の参加者にも理解しやすい講演を提供する.優れた研究と高いプレゼン力のある研究者を各研究会に推薦頂き,研究の内容などを考慮して登壇者を厳選した.分かりやすいプレゼンと完成度の高い演出を通じて優れた研究者をハイライトしつつ,異分野も含めた交流が研究を更に発展させるような場を目指す.また,マスメディア・ネットメディア等を通じた多数のアウトリーチも予定している.

司会

村尾 和哉(立命館大学 情報理工学部 准教授)

村尾 和哉

【略歴】2010年大阪大学大学院情報科学研究科博士課程後期課程修了(短縮).博士(情報科学).2011年より日本学術振興会特別研究員(PD).2012年より神戸大学大学院工学研究科助教,2014年より立命館大学情報理工学部助教,2017年より同准教授.2019年よりJSTさきがけ(兼任).ウェアラブル・ユビキタス・モバイルコンピューティングの研究に従事.

司会

廣井 慧(京都大学 防災研究所 准教授 )

廣井 慧

【略歴】2004年東北大学工学部電子工学専攻卒業.同年東日本電信電話株式会社入社. 2014年慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科博士(メディアデザイン 学).名古屋大学未来社会創造機構特任助教,同大学工学研究科助教を経て, 2020年から京都大学防災研究所巨大災害研究センター准教授.防災情報システ ム,災害情報の時空間解析の研究に従事.

講演(1) いきものらしい仕組みで創る,心を感じさせるキャラクタ

三武 裕玄(東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 助教)

三武 裕玄

【講演概要】VR/MR等の発展で,画面の向こうの存在だった「CGキャラクタ」は私達と同じ空間に存在し,生活の中で人を楽しませ人と人をつなげる存在となることが期待されます.しかし目前のキャラクタを「生きた存在」と感じさせるには,周囲の人や状況に応じた反応を刻々し続ける必要があります.この課題に対して,人が滑らかな運動を生成する仕組みや視覚・触覚等の感覚と運動が連携する仕組みを再現して,いきものらしく動く動作を自動生成する研究や,これらの仕組みを用いて個性的なキャラクタ表現をデザインするための研究とその応用例を紹介します.

【略歴】2011年 東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士後期課程修了(博士(工学)).同年まで日本学術振興会特別研究員(DC1).2011年より同大学 精密工学研究所(現 未来産業技術研究所)助教.キャラクタ動作生成およびインタラクティブキャラクタエージェントを中心にVR,エンタテインメントコンピューティングの研究に従事.

講演(2) タッチ入力を拡張するインタフェース

池松 香(ヤフー株式会社 Yahoo! JAPAN研究所 上席研究員)

池松 香

【講演概要】スマートフォンやタブレットPC,タッチパッドといったタッチサーフェスは広く普及しており,現在では最も一般的な指示装置になりました.こうしたタッチサーフェスの二次元平面におけるインタフェースは,ごく限られた手指の動作を取り入れているに過ぎず,いまだ改良・開拓の余地が多く残されています.本講演では,タッチのセンシングデータを活用することで,指先のタッチ入力に限らず多様な手指の動作を検出し,新規なタッチインタラクションとして導入する研究を紹介します.

【略歴】2019年 お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科 博士課程了.博士(理学).同年,ヤフー株式会社 Yahoo! JAPAN研究所 特任研究員.主任研究員を経て2021年より上席研究員.2020年より東北大学電気通信研究所 助教を兼任.ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)を専門とし,特にスマートデバイスにおける入出力インタフェースの研究に従事.

講演(3) コンピュータで進化した”次世代”のカメラの新常識

青砥 隆仁(筑波大学 システム情報系 青砥研究室 助教)

青砥 隆仁

【講演概要】コンピュータが発達することによって,カメラは新たなステージへと進化しようとしている.古来より,カメラはシーンの映像を単に記録するだけのものであった.しかし,今,コンピュータで計算することを前提にカメラの仕組みを一から見直すことで,距離や材質といった従来のカメラでは撮影できなかった新しい情報を撮影できるようになってきている.本講演では,そんな新しい仕組みを取り入れた次世代のカメラにおける新常識を講演者の取り組みを例に挙げつつ紹介します.

【略歴】2015年 奈良先端大 情報科学研究科 修了. 博士(工学). 2016年 奈良先端大 研究員,2017年 国立情報学研究所 研究員,2018年 Optech Innovation合同会社 設立(代表),2018年 筑波大学 研究員,2020年 同助教(主宰). 主としてコンピュテーショナルフォトグラフィやコンピュテーショナルイメージングの研究に従事. IEE,ACM,Optica各会員.

講演(4) 聴力操作による「聴力自在化」の実現

渡邉 拓貴(北海道大学 大学院情報科学研究院 助教)

渡邉 拓貴

【講演概要】人の耳は自分の意思では制御が難しく,重要な情報を逃したり,必要のない情報まで取得したりすることがある.一方,近年イヤホン型のウェアラブルデバイス(ヒアラブルデバイス)が普及してきている.ヒアラブルデバイスには外部音取り込み用のマイクと情報提示用のスピーカが搭載されており,常に耳にマイクとスピーカを装着している環境だといえる.本講演では,このヒアラブルデバイスを用いて外部の音を操作することで,人の聴力を操作する「聴力自在化技術」について紹介する.

【略歴】2017年神戸大学大学院工学研究科電気電子工学専攻博士課程後期課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員(DC2).2017年より北海道大学大学院情報科学研究院助教.2021年10月よりさきがけ研究者として兼務.ウェアラブル,ユビキタス,モバイルコンピューティング,知覚情報処理,人間行動認識の研究に従事.情報処理学会,ACM各会員.

講演(5) 聴けなかった音が聴けるようになる~音楽スキル向上のインタラクションデザイン~

松原 正樹(筑波大学 図書館情報メディア系融合知能デザイン研究室 准教授)

松原 正樹

【講演概要】音楽を聴く能力はどうしたら伸ばせるのでしょうか?聴覚に障害があっても楽器を演奏し音楽を楽しむ人がいるように耳の聴力=音楽聴取能力ではありません.実は自分が音楽をどのように聴いているかを知る「メタ認知」が,これまで聴けなかった音が聴けるようになる秘訣であることを明らかにしてきました.さらに情報可視化技術により鏡のような働きをするインタフェースがメタ認知を支援します.本講演では,メタ認知を促進させるインタラクションデザイン,スコアリーディング支援システム,長期間に渡る音楽聴取のメタ認知実践の様子について紹介します.

【略歴】2013年博士(工学)(慶應義塾大学).2014年日本認知科学会野島久雄賞受賞.筑波大学図書館情報メディア系助教等を経て,2021年より現職.芸術表現における身体知に興味を持ち,他者視点や自身の在り方への気づきを促す認知的インタラクションの研究に従事.

講演(6) 組合せ最適化のための最先端ハードウェア

川村 一志(東京工業大学 科学技術創成研究院 AIコンピューティング研究ユニット 特任助教)

川村 一志

【講演概要】私たちが住む世界には至る所に組合せ最適化問題が存在しています.例えば,学校の時間割表や宅配の配送計画を決めようとすると,無数の選択肢から最も良さそうなものを選び出す「組合せ最適化」の作業が必要です.これはとても大変な作業で時間がかかる上,問題によって与えられる条件や最適化したい指標が異なります.ところが,近年注目を集めるイジングマシンと呼ばれる最先端ハードウェアを用いれば,この作業を「統一的」かつ「効率的」に遂行してくれるというではありませんか.本講演では,イジングマシンとは何者か?について,我々の研究成果と併せて紹介します.

【略歴】2016年早稲田大学大学院情報理工学専攻博士課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員(DC2).早稲田大学情報通信学科講師(任期付)を経て,2020年より東京工業大学科学技術創成研究院AIコンピューティング研究ユニット特任助教.情報処理推進機構未踏ターゲット事業2020年度採択者.現在はイジングマシンの原理・ハードウェア設計に関する研究に従事.

講演(7) 組合せ遷移のアルゴリズム理論 ―パズル・ゲームから配電制御まで―

伊藤 健洋(東北大学 大学院情報科学研究科)

伊藤 健洋

【講演概要】15パズル,箱入り娘など,ブロックをスライドさせるパズルで遊んだことがある方も多いでしょう.では,これらのパズルをコンピュータに解かせることはできるでしょうか?すなわち,パズルを解く「アルゴリズム」は開発できるでしょうか?私が研究を進める「組合せ遷移」は,これらパズルの例のように「状態空間上での遷り変り」を数理モデル化・解析する新しいアルゴリズム理論です.組合せ遷移は,電力の配電制御にも現れ,私は,停電を起こさないスイッチ切替手順を算出するアルゴリズムの研究開発も行ってきました.本講演では,パズルから配電網のスイッチ切替まで,「組合せ遷移」の広範な世界をアルゴリズム理論の視点からご紹介します.

【略歴】2006年東北大学大学院情報科学研究科博士課程後期3年の課程修了.博士(情報科学).同年より同研究科の助手,助教,准教授を経て,2020年より教授.アルゴリズムの理論研究に従事し,特にグラフに関連する問題の研究に取り組む.2018年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞,第17回船井学術賞,国際会議ISAAC 2008 Best Paper Award等,受賞.2020-2022年度東北大学ディスティングイッシュトリサーチャー,科研費・学術変革領域研究(B)「組合せ遷移」領域代表.

講演(8) 情報科学でゲームの可能性に挑む

大渡 勝己(株式会社quantum AIアスリート)

大渡 勝己

【講演概要】ゲーム情報学ではゲームを題材に,理論と実装を駆使して謎に迫ります.私たちはこれまで数多くのゲームに対して強いAIを開発し,さらに理論的側面からもゲームの面白さにスポットライトを当ててきました.本講演ではその一端として,トランプゲーム「大富豪」にまつわる学問的課題と現在の研究について紹介します.

【略歴】2014年東京大学教養学部卒業.大分県庁臨時職員を経て,2017年東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了.以降,主にフリーでAIの研究開発に従事.学生自体からこれまでに数多くのゲームのAIの開発やゲームの理論研究を行う.現在,株式会社quantum所属のプロAIアスリートとして,AI対戦競技を通じてAIの魅力を伝える活動を行う.株式会社ディー・エヌ・エーでも強化学習の応用研究を担当.

講演(9) 言葉の形を教えてくれる自然言語処理

横井 祥(東北大学 大学院情報科学研究科)

横井 祥

【講演概要】コンピュータで人間の言葉を扱うための自然言語処理技術はここ数年で大きく進展しました.外国語の文書を読む際に便利な機械翻訳システムやSNSでAIに問い合わせできるチャットボットはすでに私たちの生活に欠かせない道具になっています.分野のこうした著しい発展を支えているのは,離散的な言葉を連続的なベクトルで表すという一風変わった考え方です.この講演では,「犬」と「動物」の “なす角” はどの程度なのか,どちらが “長い” のか,日本語の “形” と英語の “形” はどう違うのかといった手触りのある問いを通して,自然言語処理技術が私たちの言葉について教えてくれることを紹介します.

【略歴】2020年東北大学大学院情報科学研究科博士課程修了.博士(情報科学).2020年より同大学助教,同年より理化学研究所革新知能統合研究センター客員研究員を兼務.自然言語処理と機械学習,とりわけ単語埋込に関する研究に従事.言語処理学会年次大会最優秀賞(2件),同優秀賞(1件),人工知能学会全国大会優秀賞(5件)などを受賞.

講演(10) 生命科学にパラダイムシフトを起こすテンソル分解技術

露崎 弘毅(理化学研究所 生命機能科学研究センター バイオインフォマティクス研究開発チーム 基礎科学特別研究員)

露崎 弘毅

【講演概要】生物を構成する細胞の中には遺伝情報が記述されたゲノムがあり,そこからさらにRNA,タンパク質,代謝産物といった多種多様な生体分子がコードされ,細胞の機能を担っている.昨今,実験技術の発展により,これら生体分子一つ一つを網羅的な計測するオミックス実験が普及している.しかしながら,オミックスデータの変数は数百〜数十万と膨大であり,また互いに複雑に繋がり合っていることから,複雑なデータ構造に特化した解析手法がもとめられる.本講演では,今後ますます複雑化するオミックスデータを統一的に解析するアプローチの一つとして,演者が現在取り組んでいるテンソル分解を紹介する.

【略歴】2015年東京理科大学大学院薬科学専攻博士後期課程修了.2020年より理化学研究所生命機能科学研究センターバイオインフォマティクス研究開発チーム基礎科学特別研究員.2019年よりJSTさきがけ研究員兼.専門は,バイオインフォマティクス,オミックス解析,行列・テンソル分解等.

講演(11) NewSpaceセキュリティ

吉田 真紀(情報通信研究機構 サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室 主任研究員)

吉田 真紀

【講演概要】NewSpace(ニュースペース)と呼ばれる民間主導の宇宙開発が世界で活発化しています.この動きを受けて日本でも平成30年11月15日に宇宙活動法が施行されました.本講演では,NewSpaceとセキュリティの関わりを紹介し,具体的な事例として宇宙機の乗っ取り防止による飛行の安全確保と,宇宙機から伝送される飛行状況や学術的・商業的価値の高いデータの保護することを目的とした研究と宇宙ロケットMOMOによる実証実験を紹介します.

【略歴】2001年大阪大学大学院基礎工学研究科情報数理系専攻博士課程修了.博士(工学).2001年より大阪大学基礎工学研究科助手および同大学情報科学研究科助教を経て,2013年より情報通信研究機構主任研究員,現在に至る.情報セキュリティの研究に従事.IIH-MSP 2008 Best paper award,2008年SITA奨励賞,電子情報通信学会第67回(平成22年度)論文賞などを受賞.

講演(12) 安全なIoTデバイスを開発するための自動バグ発見・自動修正技術

吉田 則裕(名古屋大学 大学院情報学研究科 附属組込みシステム研究センター 准教授)

吉田 則裕

【講演概要】スマート家電等,インターネットに接続されたIoTデバイスがどんどん普及してきています.IoTデバイスを開発するメーカーはバグが存在しないように,十分に検証を行ってからリリースします.しかし,IoTデバイスが複数のユーザーや 他のデバイスを識別しつつ,ユーザーやデバイスに合わせた複雑な動作をするため,バグを発見・修正することは容易ではありません.安全なIoTデバイスを実現するためには,コンピューターが自動的にバグを発見したり,自動的にバグを修正したりしてくれたら便利だと思いませんか?本講演では,このような自動バグ発見・自動修正技術の実現に向けた取り組みを紹介します.

【略歴】2009年大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了.博士(情報科学).日本学術振興会特別研究員(PD),奈良先端科学技術大学院大学助教等を経て,2014年より名古屋大学准教授.2021年よりJST さきがけ 研究者(兼任).ソフトウェア工学を専門とし,中でもファジングなどの自動テストやプログラム解析に取り組む.

講演(13) 「普段使い」できる情報技術を目指して

角田 啓介(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 dX Garage アーキテクト)

角田 啓介

【講演概要】AI,IoTといった様々な情報技術が世の中にあふれ,世の中がどんどん便利になっているといわれている.ところで,AI,IoT,そして情報技術と聞いてそれがどんなものか,どう使うか,そしていつ何の役に立つのか,想像できない方も非常に多いのではないだろうか.
本講演では,私の研究の最終目的である「普段使いできる情報技術」についてお話ししたうえで,その実現に向け,私が取り組んできた具体的な研究内容を紹介する.そしてそれらの研究でできたこと,できなかったことの振り返り通じ,「普段使いできる情報技術」を実現するためのポイントをまとめる.

【略歴】2011年 早大創造理工学研究科修士課程修了.
2011年 NTTサービスエボリューション研究所 バイタルデータ分析とその応用サービスに関する研究開発に従事.
2016年 NTTコムウェア 企業業務支援アプリケーションの企画・開発・導入に従事
2019年 筑波大システム情報工学研究科博士後期課程修了.
2019年 NTTスマートデータサイエンスセンタ エリアマネジメント支援の研究開発に従事
2021年 現職.
博士(工学).情報処理学会,電子情報通信学会各会員.

講演(14) 協働する教育AIの実現に向けての挑戦

毛利 考佑(広島市立大学 情報科学研究科 准教授)

毛利 考佑

【講演概要】昨今,教育DXの推進により,学習者のきめ細かな教育・学習活動の履歴を教育ビッグデータとして蓄積されています.これにより,教育ビッグデータを多種多様な分析・可視化を行うことで,学習者の学習傾向や理解度を明らかにすることができます.本講演では,教育データの多種多様な分析・可視化結果に基づいて学習者に教育AIが協働的に議論・支援することができる協働学習の研究を紹介します.

【略歴】2016年9月九州大学大学院システム情報科学府情報知能工学専攻博士課程早期終了,博士(工学). 2016年4月から2016年9月まで日本学術振興会特別研究員(DC2).2016年9月から2017年4月まで日本学術振興会特別研究員(PD).2017年4月から2020年3月まで東京農工大学工学研究院助教. 2020年4月から2021年3月まで京都大学 学術情報メディアセンター 講師. 2021年4月から現在まで広島市立大学 情報科学研究科 准教授. 2014年ICCE Best Student Paper Award,2018年 GCCCE Best Teacher Forum Paper Award,2019年 IIAI Best Poster Award等を受賞.