情報処理学会第84回全国大会 会期:2022年3月3日~3日 会場:愛媛大学 城北キャンパス

情報科学の達人 2.0

日時:3/5 10:30-12:00

会場:第4イベント会場

【セッション概要】国立情報学研究所,情報処理学会,日本情報オリンピック委員会は,共同で,高校生,高専生のトップ才能に対して,我が国の情報学分野研究力の向上と底上げにつなげるプログラムとして,世界最先端の情報学研究に触れてもらい,研究を始める「情報科学の達人」プログラムを4月より実施している.本企画では,今年度1年間に,主にオンラインで行ったプログラムを解説し,さらなる発展を議論する.また,受講生の成果も発表する予定である.

10:30-10:35 オープニング

岡部 寿男(京都大学 学術情報メディアセンター 教授)

岡部 寿男

【略歴】1988年京都大学大学院工学研究科修士課程修了,京都大学博士(工学).2002年より現職.インターネット技術,並列・分散システムとアルゴリズム,ネットワークセキュリティなどの研究に従事.2018・2019年度本会副会長.JST GSC「情報科学の達人」サブコーディネータ

10:35-10:50 講演(1) 「情報科学の達人」プログラムと第2期生の取り組み

河原林 健一(国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 教授)

河原林 健一

【講演概要】講演者は,現在,高校生・高専生のトップ才能(情報オリンピック経験者など)が,日本のトップ研究組織で研究遂行を行うJST GSC「情報科学の達人」と,大学院生,そして若手研究者対象のACT-X「数理・情報のフロンティア」の総括を行っている. 本講演では,「情報科学の達人」プログラムの第2年度の取り組みを紹介するとともに,これらのプログラムを通して10年間でどのように数多くのトップ研究者を育成していくかの展望を講演する.

【略歴】1998年慶応大学理工学部卒,2001年慶応大学理工学研究科後期博士課程終了(理学博士).2003年東北大学情報科学研究科助手,2006年国立情報学研究所助教授,2009年より同教授,2019年より同副所長.現在ビッグデータ数理国際センター長,およびJST ACT-X「数理・情報のフロンティア」の総括.離散数学,アルゴリズム,理論計算機科学からAI,データマイニングの研究に従事.2008年度IBM科学賞,2012年度日本学術振興会賞,日本学士院学術奨励賞.SODA’13 Best paper、2021年Fulkerson Prize.JST GSC「情報科学の達人」コーディネータ

10:50-11:00 講演(2) 国際情報オリンピック (IOI) と情報オリンピック日本委員会の取り組みについて

谷 聖一(特定非営利活動法人情報オリンピック日本委員会 専務理事/日本大学文理学部 教授)

谷 聖一

【講演概要】国際情報オリンピック (IOI) は,情報科学領域における国際科学オリンピックである.その目的は,中等教育段階の生徒が情報科学(コンピュータサイエンス)への興味関心を高めることや,各国から才能豊かな生徒を集め科学的経験や文化的経験を共有させることなどにある.情報オリンピック日本委員会では,中高生競技プログラマー日本一を決める日本情報オリンピック (JOI) の開催やIOI日本代表選手の選抜・派遣だけでなく,情報科学の普及啓発にも力を入れている.本講演では,JOI 女性部門・JOI 入門講座・国際情報科学コンテストビーバーチャレンジなどの普及活動を含めて,情報オリンピック日本委員会の取り組みを紹介する.

【略歴】1994年早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程単位取得退学,1996年 博士(理学)(早稲田大学).2005年より日本大学文理学部教授.計算論的位相幾何学,グラフアルゴリズム,複雑ネットワーク解析などの研究,及び,情報科学教育の普及活動に従事.2005年より情報オリンピック日本委員会理事,2006年〜2010年 国際情報オリンピック日本選手団団長,2015年〜2019年 国際情報オリンピック国際委員.

11:00-11:50 ポスター発表

ポスター発表実施要領   https://u.kyoto-u.jp/tatsujin-84taikai-poster-jisshi

11:50-12:00 講評・クロージング

評価委員

運営委員:河原林健一,岡部寿男,萩谷昌己,高橋尚子,中山泰一,佐藤真一,筧捷彦,谷聖一

メンター:原祐子(東京工業大学),吉田悠一(国立情報学研究所),荒瀬由紀(大阪大学),高前田伸也(東京大学),杉山麿人(国立情報学研究所),松井勇佑(東京大学),石畠正和(NTTコミュニケーション科学基礎研究所),山口勇太郎(大阪大学),平原秀一(国立情報学研究所),鳴海紘也(東京大学),片岡裕雄(産業技術総合研究所),河瀬康志 (東京大学),村田真悟(慶應義塾大学),米谷竜(オムロンサイニックエックス)

展示番号 ポスタータイトル・応募者・概要

以下の発表の他、当日は追加発表もあります

#01「日本語における教師無し機械翻訳」
飯沢 海(灘高等学校 高2年)
教師無し機械翻訳とは、翻訳対象となる二言語間の対訳文対を使わず、それぞれの言語の単言語コーパスを使って学習を行う機械翻訳である。対訳コーパスの少ない言語に対して有効で、近年盛んに研究がなされている一方、日本語-英語間のような遠戚の言語における研究はあまり多くない。これは、二言語間の文法の違い、文字の種類の違いが大きく、対応付けが難しいためである。
そこで本研究では、離れた言語でも使える共通の性質を利用して、遠戚の言語でも翻訳精度の高い機械翻訳モデルを開発することを試みる。具体的には、発音記号の利用、事前学習済み多言語モデルのファインチューニングなどを行う予定である。
日本語から他の言語への翻訳を対象とし、日本語特有の性質を活用する。また発展として、日本語だけではなく、他の言語対に応用することも視野に入れている。
#02「p-コラッツグラフに対する考察」
村上大知(慶進高等学校 高1年)
本発表では, コラッツ予想とよばれる整数論の未解決問題に対して, グラフ理論を用いたアプローチを提示します. コラッツ予想とは, すべての正整数について, 偶数ならば2で割り, 奇数ならば3倍して1を足すという操作を繰り返すと, 必ず1にたどり着くという予想です. これまで, コラッツ予想を「コラッツグラフ」上の問題に言い換え, 「コラッツグラフ」の様々な統計量を調べる研究が行われてきました. 私は, コラッツ予想と正整数の素因数の分布に深い関係があることに注目し, コラッツ予想で扱う数の範囲を素数に限定した「p-コラッツ予想」を考えました. そして, 「コラッツグラフ」において, 素数の頂点のみ取り出し, 適切に辺を張った「p-コラッツグラフ」を定義しました. 今回の発表では, 「p-コラッツ予想」について詳しく説明するとともに, 「p-コラッツグラフ」に対して様々な統計量を調べ, その結果を示します.
#03「人からの指示とロボットからの提案を扱う言語コミュニケーションを用いた協調作業を実現するRNNモデルの提案」
國吉仁志(玉川学園 中3年)
本研究は、人とコミュケーションを取りながら協調作業するロボットの機械学習モデルを提案する。提案モデルは、RNNの出力に時系列としての意味を持たせるよう改良することで、協調作業に適用する。これにより、人とロボットがコミュニケーションをとることが可能となる。協調作業として荷物持ち上げタスクを提案し、データセットを作成し、提案モデルの学習を行なう。結果として、「人からの指示」を加えることで人の動作の変化に対応できるようになり、「ロボットからの提案」を加えることで目標時間内に作業を終わらせることを実現した。更に、複数単語による会話のような自然なコミュニケーションを目指し、より現実的なタスクを提案する。
#04「箱入り娘パズルの近似解の探索について」
甲賀悠一郎(弓削商船高等専門学校 高専2年)
箱入り娘パズルとは、駒を動かして特定の駒を外に出すことが目的のスライディングブロックパズルである。このパズルの近似解を、WA*,BeamSearchを用いて探索した。ヒューリスティクスには、定数時間で計算可能で許容的な関数を用いた。その結果、先行研究で解が得られなかった盤面サイズについても高速に解が得られた。また、速度や手数についても先行研究よりよい結果が得られた。WA*は実行速度が早く、BeamSearchはより少ない手数の解が得られるという特徴があった。
#05「ナイトの動きに基づいたチェス盤彩色」
小林優文(福井県立藤島高等学校 高2年)
チェスのナイトの移動可能なマス同士をつないだグラフを作り、その構造をチェス盤上で可視化する彩色規則を考えた。このグラフの辺は規則的で複雑な図形を描く。我々は、この図が網目状に見えることに着目し、複数の格子に分解することを考えた。これはマスを色分けすることと本質的に同じであるため、マスに一定の規則で色を塗ることで格子を可視化した。ここで現れた模様にも規則性が見られたので、現れる模様についても研究した。また、ナイトに似た動きの駒を考え、同様の規則で彩色したときに現れる模様の法則を調べた。
#06「生徒間の不満が小さく透明性が高いスケーラビリティのある高校クラス割り当てメカニズムの開発」
清原光夏(Menlo School 高3年)
アメリカの高校では、受講したい授業を生徒が選択して決めるクラス割り当て方法が一般的であるが、多くの場合希望通りにならず、不満が発生する。この割当方法は不透明であり、人数の増加に対応できるかも不明である。本研究では、生徒間の不満が小さく透明性が高い、スケーラビリティのあるメカニズムの開発を目指す。具体的には、安定配分理論(DAアルゴリズム)に希望順位を羅列したList方式と、ポイント数を使って振り分けるPoint方式の2通りの調査方法を導入した。実データと同数の人工データにて検証した結果、両方式ともスケーラブルであることが示された。さらに、List方式はPoint方式に比べ、大幅に不満が少ない事が示された。したがって、List方式が現在のところ問題解決に最も有効な方法であるという事が分かった。今後は、細かい条件を加味した研究と実際のデータを用いた実装で現実社会への実用化を図る。
#07「音楽ゲームにおける運指最適化問題」
林涼太郎(筑波大学附属駒場中学校 中3年)
音楽ゲーム(音ゲー)とは、音楽のリズムに合わせてプレイヤーが指示されたアクションを行うゲームである。例えば「CHUNITHM」では、ノーツと呼ばれる物体が画面を上から下へと動き、ノーツが判定線に重なった時に対応する箇所を指で触れることで得点が得られる。上級者はプレイ前に適切な運指を考えることも多い。私はこれを運指最適化問題として解くことができないかと考えた。「CHUNITHN」のノーツは大きく分けると2種類あり、①一瞬触れるだけで良いものと、②指定された時間押し続けるものがある。まずはノーツが全て①であるという単純化した状況を考え、ノーツ数をNとしてO(N^2)時間でコストの最小化ができることを示した。今後は、①と②を含む一般的な問題を効率的に解けるアルゴリズムを実現するために、適切なコスト関数の設計を進める。
#08「独立点集合の組合せ遷移問題における解導出アルゴリズムの考案」
石井晃斗(東京工業高等専門学校 高専3年)
組合せ遷移問題とは、組合せ問題の解空間上を遷移する経路を導出する問題であり、主にグラフアルゴリズムの分野で盛んに研究が行われている。今回、私は「Core Challenge 2022」のソルバー部門に参加し、グラフ上の独立点集合における組合せ遷移問題の解の有無、最短経路、および最長経路を導出するアルゴリズムを考案・実装する。現状、幅優先探索によって解の有無と最短経路の厳密解を導出するアルゴリズムを実装した。提案手法は指数的な計算量を要するが、頂点数が1000以内であれば現実的な時間で解けている。しかし頂点数10000以上の問題では現実的な時間で解くことができない。そこで計算量の少ない手法として、ヒューリスティック的な手法による近似解の導出を目指す。まずは局所探索やヒューリスティック探索といった汎用的な手法を試し、さらに組合せ遷移問題に特化した独自のアルゴリズムの開発を目指す。
#09「ハプティックな入力と出力が可能なマウス型デバイス」
佐々木 哲(呉工業高等専門学校 高専2年)
本研究では,マウスでユーザの移動を取得するだけでなく,マウス自身が動きユーザを支援することを目指す.また、実際には移動していない異方性のモータが移動錯覚を引き起こす現象を利用して,ユーザに対してマウスを動かすべき方向だけを提示して支援することも検討している.マウスは開発されてから時間が経っているデバイスではあるが,マウスからユーザに対して移動や移動錯覚の出力を行う研究は行われていない.本研究ではIllustrator, 3D CADなどマウスが重要となるアプリケーションを,マウスから人間に対する出力によって拡張することを目指す.このシステムの応用として,例えばソフトウェアのチュートリアルでユーザが行うべき操作をタンジブルに指示することが可能となる.さらに,入出力が可能になれば,複数人のユーザ間で,あるユーザの入力を別のユーザの出力として変換するテレプレゼンスのような応用も期待できる.
#10「独立点集合における組合せ遷移問題の最短手順を求めるヒューリスティック的手法」
石井泰斗(東京工業高等専門学校 高専3年)
組合せ遷移問題は、組合せ問題においてある解を別の解へと遷移させる経路を導出する問題である。近年研究が盛んに行われるようになってきたが、組合せ遷移問題の解法はいまだ理論的な考察が進められている途上である。そこで、本研究では独立点集合に関する組合せ遷移問題の競技であるCore Challenge 2022に参加し、最短経路部門に挑戦することで、組合せ遷移の具体的な問題を解く実践的な方法について検討する。現状は解の探索にA*等の既存の探索アルゴリズムを用いているが、これらのアルゴリズムは組合せ遷移に最適化されておらず、改善の余地がある。また、単に探索アルゴリズムで解が導出できるかどうかを見るのではなく、解の存在判定用に独自のアルゴリズムを構築した方が良いとも考えられる。今後は組合せ遷移に特化したこれらのアルゴリズムについて研究を行いたい。
#11「VRサービスにおけるアバターの感情表示に向けたApple Watchによる感情分析手法」
田中陽也(N高等学校 高2年)
近年、VRChat・NEOS・ClusterなどのVRを利用したコミュニケーションサービスが一般ユーザにまで広がりを見せている。それらのサービスではユーザの感情をアバターに表示することが重要であるが、ユーザの顔をカメラで取得して感情を推定するような既存手法では、追加のハードウェアが必要となるため一般ユーザに適用するのは難しい。そこで本研究では、広く普及しているウェアラブルデバイスであるApple Watchを用いて感情分析を行い、VR空間に感情を反映する。具体的な手法として、Apple Watchに搭載されている心拍センサ・血中酸素濃度センサ・モーションセンサなどを併用することによって、ユーザの感情を推定するアルゴリズムの実装を進めている。現在は自分1人のセンサデータにより検証を進めているが、実装が進み次第複数人によるユーザ実験を行う予定である。
#12「クラウドサービスにおける機械学習の精度向上とプライバシー保護の両立の研究」
藤井悠伍(京都市立西京高等学校 高2年)
これまで、ブロックチェーンを活用したIoTデータの収集サービスについて考えていた。しかしながら、ユーザーから収集するIoTデータの質とプライバシーの保護にはトレードオフの関係があることに課題を感じた。そこで、なるべくユーザーの情報を隠蔽しながら、質の良いデータを収集することはできないかという問いを立てた。具体的には、センシティブなデータを持つ複数の教師モデルを統合する際にDifferential Privacy(差分プライバシー)を取り入れてデータを保護する、PATE(Private Aggregation of Teacher Ensembles)と呼ばれる機械学習の手法の可能性について研究を行った。
まず、教師モデルの数やバッチサイズの違いによる機械学習の精度の比較を行った。さらに、悪意のある教師モデルを識別し、機械学習の精度を向上させる手法について検討した。
#13「エコたわしの編み図自動生成」
有野真優(関西学院千里国際中等部 中3年)
エコたわしとはアクリル糸をかぎ針編みによって編んだ手編みのタワシである。洗剤を使わずに使用できるため環境にやさしく、自分だけのデザインを実現できるためものづくり愛好家の間で近年注目を集めている。通常かぎ針編みの編み図を作るときは、大体の編み図を考えて、実際に作りつつおかしいところを修正する。しかし、①初心者には編み図を考えることが困難である上、②途中で編み図を修正することも難しい。そこで、私はエコたわしの編み図生成を行う。具体的には、エコたわしが1ピースで出来ていて平面であるという特性に着目し、写真やイラストから平面の編み図を生成する。現状は、生成アルゴリズムの実装を進めている。今後は編み図作製のシステム実装をさらに進めるとともに、途中で編み図を修正する機能を実現する予定である。
#14「環境変化耐性の強い屋内ナビゲーションシステムの構築」
平田誠治(筑波大学附属駒場高校 高1年)
屋内ナビゲーションシステムにおいては自己位置推定及び環境地図作成を同時に行う SLAM 技術が活用されていますが、事前に屋内を撮影してデータを準備する形式のため、撮影後の急激な環境の変化に弱い性質があります。例えば、私の通う高校の文化祭では、開催前日に各教室の外に外装パネルが設置されるなど環境が著しく変化するため、正確な位置推定が困難となります。
本研究では、このように物体が追加/移動/除去されて環境が変化する場合に焦点を置き、その場合でも正確な位置推定を行える屋内ナビゲーションシステムの構築を目指します。
#15「強化学習による交通渋滞時の最適行動の検討」
矢野敦大(長岡工業高等専門学校 高専4年)
交通渋滞は、大気汚染や騒音被害などを引き起こす社会課題の一つである。現在行われている渋滞についての研究は、「どのように渋滞を起こさないか」、「起きた渋滞をどのように解消するか」といった社会的視点のものが多い。本研究では、社会的な視点ではなく、実際に渋滞に遭遇してしまったときのドライバーの視点に立ち、より早く渋滞を通過するための行動を検討する。具体的には、Unity上で渋滞を再現し、ML-Agents(「機械学習」の学習環境を構築するためのフレームワーク)を利用することで、渋滞をより早く通過するエージェントを学習させる。得られた学習モデルの動きを観察することで、まわりの状況を見て車線を変更したり、車間距離の取り方を状況に応じて変えたりする、といった渋滞に遭遇した時の最適な行動を考察する。
#16「並列指向プログラミング言語「Coa」と導電糸を使ったウェアラブル入力デバイス「曲キー」」
柴田 謙(William Lyon Mackenzie Collegiate Institute 高1年)
①特別な配慮無しでマルチコアの利点を活かせる並列指向プログラミング言語「Coa」を開発した。Coaは、CPUのアウト・オブ・オーダー実行がデータ間の依存関係を検出するのと同様に、変数の依存関係を自動検出してプログラムを並列実行する。このため、内部で並列実行を行いつつも外から見た振る舞いは逐次実行の様になり、プログラムの複雑さを増やさずに実行速度を向上できる。②Coaの開発と並行して、ウェアラブル入力デバイス「曲キー」も開発している。ズボンに縫い付けられた導電糸により6点のタッチセンシングを行い、太股上に書いた文字を入力できる。曲キーの利点として、アルファベットに似た一筆書きの文字を書くだけなので、入力方法が覚えやすい;指1本を1辺2 cmの矩形領域で動かすだけなので、満員電車で立った状態など狭い空間でも使用できる;表に出る部分は導電糸だけなので、目立たず軽量で持運びしやすい、が挙げられる。
#17「RNNを用いた予測学習に基づく環境構造の把握」
大西 航(東京都立武蔵高等学校 高1年)
人間は環境と相互作用する物体の挙動から環境の構造を学習できる。本研究では再帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural network: RNN)に着目し、このような能力をロボットが学習によって獲得できるような仕組みを構築することを目的とする。
RNNとは、隠れ層の出力を次の時刻の隠れ層の入力として利用する再帰構造を持った ニューラルネットワークであり、時系列データの予測学習が出来る。研究の第一ステップとして、簡単な実験環境をセットアップし、その実験環境で物体を転がして、その挙動をRNNに予測学習させる。
実験では、壁で囲われた正方形の空間内に坂や小さな壁、摩擦の大きい床等を設置した環境を作成する。そこに球体を転がして球体の位置座標を取得する。このようにして取得した時系列データを用いてRNNを学習し、球体の挙動の一部から将来の挙動が予測可能であるかを評価する。
#18「RGB 画像のみによる手の三次元構造推定の軽量化」
甲斐主陸 (熊本高等専門学校 高専4年)
近年,VR,AR,メタバースといった分野は急速な発展を見せている.3D モデルを用いたライブ配信も増えている.3D モデルを用いたライブ配信では,3D モデルをユーザーの動きに合わせて動作させるにあたり,対象となるユーザーの動作を検出する必要がある.
その検出方法は複数存在する.大規模に行われる場合,高額・高性能な機材を用いて高速・高精度に行われるが,その一方で小規模に行われる場合,一般的な Web カメラと計算機が検出に用いられる.当然,高額な機材を用いる場合に比べて検出の精度や速度は劣り,特に指先等の細部においてその精度・速度差は歴然である.Web カメラと安価な計算機を用いる場合でも高速・高精度に検出できれば,VR,AR,メタバースといった分野の発展に寄与できると考える.
そこで,本論文では RGB 画像のみによる高速・高精度な手の三次元構造推定を目指す.Graph CNN を用いた既存手法は,高精度な推定を実現している一方で低速である.提案方式は,それの高速化,入力の低品質化を目的とする,
#19「再配達を考慮した配送の最適化」
児玉大樹(灘高等学校 高1年)
近年宅配需要は急増しており、再配達によるコストが大きな課題となっている。本研究では、時間枠付き巡回セールスマン問題(TSPTW)を一般化した問題を解くことで、再配達を考慮した配送の最適化を試みた。配送にかかった時間に配送失敗回数に応じたペナルティを加算した値をコストとして定め、TSPTW の良い解を与えることが知られている Nested Rollout Policy Adaptation を変形した手法を用いてコストが小さい解を導出した。そして、貪欲法によって得られた解や、時間枠が存在しない場合の最適解との比較を行った。また、評価関数の計算時間やアルゴリズムの探索範囲が、得られる解にどれほどの影響を及ぼすかを調べた。配送失敗に対するペナルティを変化させながら得られた解を分析し、留守宅を訪れた場合、その家を配送失敗とするべきか、帰宅を待つべきかどうかを調査した。
#20「展開図の折り手順を構成するアルゴリズム」
服部 惇(松本秀峰中等教育学校 高1年)
平坦折り可能な折り紙の展開図が与えられ、各折り線の山折り・谷折りの区別がなされているときに、その展開図を折る手順を構成する問題は NP 困難であることが示されている。そこで、展開図にどのような制約があれば高速なアルゴリズムが存在するかについて固定パラメータ容易性(FPT)の観点から研究を進めている。
#21「4手ジャンケンの被支配な手の利得がナッシュ均衡にもたらす影響について」
村山 瑞(東京大学教育学部附属中等教育学校 高1年)
フランスのじゃんけん(4手じゃんけん)にはグー、チョキ、パーの他に壺という手が存在する。ここで、グーと壺はチョキとパーに対する勝ち負けがそれぞれ同じであるが、グーは壺に負ける。つまりグーを出すことは壺を出すより良くない選択(被支配な手)となる。ここで、4手じゃんけんにおける被支配な手の存在は、ゲームの仕組み自体が余分な要素を含んでいるということができる。本研究では、被支配な手で勝つことで他の手で勝つことに比べて大きな満足度を得られるような人が4手じゃんけんを行った際のナッシュ均衡に、どのように被支配な手が現れるのかについて考察した。具体的には、片方が前述のような人物の場合、両名が前述のような人物の場合についてそれぞれの結果をまとめ、4手じゃんけんにおける被支配な手が戦略性を持つような状況について考えた。また、n手じゃんけんへ拡張した上で、同様の考察を用いる事ができるのかについても調べた。
#22「モンテカルロパストレーシング用デノイザの高速化」
黒田浩揮(筑波大学附属駒場中学校 中3年)
コンピューターグラフィックスの分野では様々なレンダリング手法が取られているが、近年注目されているのがモンテカルロ法を用いたパストレーシングである。パストレーシングでは複雑なシーンでも写実的な結果を生み出すことができるため、映画産業などでも使用される。しかし、この方式ではレンダリング結果にノイズが入ってしまい、その量はサンプル数の平方根に比例して減少していくため、モンテカルロ法単体でノイズフリーな結果を生成するには非常に大きな計算コストがかかる場合があるという問題がある。そこで提案されているのが、低サンプル数で複数の結果(バッファ)を得て、それらを組み合わせることでノイズを高速に除去するという手法である。本研究ではオープンソースのレンダリングエンジンTungstenに実装されている、非線形重み付けによる一次回帰を使用したデノイザの分析と高速化を目指した。
#23「ソースコードからの AtCoder レーティング推定」
渡邉雄斗(渋谷教育学園幕張高等学校 高2年)
近年、参加者の成績を数値化するレーティングシステムを持つプログラミングコンテストが注目されている。しかしその多くでは、参加者のレーティングがある程度収束し信頼に足る水準になるまでに長い時間を要する。そこで本研究では、参加歴が浅い参加者のソースコードから、収束後のレーティングを推定する手法を提案する。著名なコンテストである AtCoder を利用し、過去に AtCoder に提出されたソースコードを学習データとして採用することで検証をおこなう。ソースコードから、著者のレーティングに関係すると想定される特徴量を抽出し、構築した特徴量ベクトルから機械学習でレーティングを予測することで、未知のソースコードに対してどの程度正しいレーティングを推定できるか検証する。(人見玲央さんとの共同研究)
#24「ソースコードからの AtCoder レーティング推定」
人見玲央(渋谷教育学園幕張高等学校 高2年)
近年、参加者の成績を数値化するレーティングシステムを持つプログラミングコンテストが注目されている。しかしその多くでは、参加者のレーティングがある程度収束し信頼に足る水準になるまでに長い時間を要する。そこで本研究では、参加歴が浅い参加者のソースコードから、収束後のレーティングを推定する手法を提案する。著名なコンテストである AtCoder を利用し、過去に AtCoder に提出されたソースコードを学習データとして採用することで検証をおこなう。ソースコードから、著者のレーティングに関係すると想定される特徴量を抽出し、構築した特徴量ベクトルから機械学習でレーティングを予測することで、未知のソースコードに対してどの程度正しいレーティングを推定できるか検証する。(渡邉雄斗さんとの共同研究)
#25「画像及び音声モダリティ解析によるアニメキャラクター推薦システム」
菅野 晄(Rugby School 中3年)
アニメキャラクターの属性から最適な声優を推薦する。
本研究においては、キャラクターの画像及び声優の音声解析を実施するため、マルチモーダル(画像・音声・言語)の手法を要する。研究自体の感触を掴むことや、システムのプロトタイプを構築するため、手始めにWord2Vecを実装した。しかし、Word2Vecの手法では、各単語をベクトルとして表現するため、キャラクターの特徴入力を文章入力にする可能性を加味した結果、メインのシステムにはViLBERTの使用を検討している。データの入力は日本語を想定しているため、現在はMultilingual-CLIPを併用している。Multilingual-CLIPは多言語に対応しており、英文と和文の相関等調べることができるため、グローバル化の進むアニメ市場を海外側からも研究するために使用を始めた。
まず、これまで放送されてきたアニメキャラクターと担当声優を入力、特徴抽出し、キャラクターの属性をベクトル化する。そこから、担当声優の声質がどのようなキャラの属性に適合するのかを推定する。さらに、新しいキャラクターを創造する際に、同キャラクターの属性に応じて類似する声優を出力可能とする。
#26「外国人日本語学習者向けの日本語文章難易度の推定方法開発の研究計画」
小出慶介(灘高等学校 高1年)
昨今、外国人日本語学習者の数は急増しており、日本語学習のニーズも急速に高まっている。そのためには、日本語の文章の難易度を推定できる方法が不可欠である。本発表は、日本語の文章の難易度を日本語能力試験の難易度N1からN5で評価する方法を開発するための研究の計画である。
#27「Binary Indexed Tree 向けハードウェアアーキテクチャ」
長田侑馬(明石工業高等専門学校 高専4年)
Binary Indexed Treeは列を表すデータ構造であり、一点に対する更新演算と任意の区間に対する総演算結果の取得が共に列の大きさをNとしてO(logN)で行える。今回は演算をXORとし、これらをより高速に行うアーキテクチャを提案する。
BITの列の各値は特定の規則で決まった区間の総演算結果を持っており、更新ではその点を含む区間全てに演算をかけ、取得では区間を組み合わせ演算結果を得る。今回は複数区間に同じ演算をかける部分、区間を同じ演算で統合する部分をハードウェアから並列化し高速化することを考えた。
BITは既定の演算に対し列の各値の逆元を求められる必要がある。XORは逆元がもとの元と等しいため逆元を求める機構が必要なく、演算自体も最も単純な部類のため回路面積の縮小につながる。XORは暗号合成や2値の積の表現などの使い方があり、これを高速化することで高速な暗号化・復号などが期待できる。
#28「映像の特定領域における顕著性の最適化」
浅田睦葉 (東京都立桜修館中等教育学校 高3年)
動画編集において、視聴者にある特定領域を注目させたいケースは往々にして存在する。一方で、極端にその領域以外を黒く塗りつぶすと注目させることはできるが動画が表現可能であった情報が欠落してしまう。そこで、元の映像からなるべく処理による変化を小さく保ちながら注目度を表せる顕著性を最大化するようなフィルターの組み合わせを計算することで、編集者の負担を軽減しつつ特定領域を注目させる事ができる。
#29「超小型CPUの開発」
二ノ方理仁(芝中学校 中3年)
近年,ユーザインタフェース技術の向上が著しい.反面,CPUやOSといったコンピュータの基盤は見えにくくなっている.しかし,情報科学・情報工学を学ぶ上で,コンピュータの基礎的な仕組みを学ぶことは重要だと考える。本プロジェクトの目的は,基礎的で簡略化されたアーキテクチャをもつCPUを開発し,CPUの本質をわかりやすく提示することである.今回開発したCPUは主記憶装置とレジスタの2つの装置および制御処理(命令フェッチ・デコーダ)と演算処理(演算・メモリアクセス・ライトバック)の2つの処理からなる.また,ハードウェアへの実装は行わず,ソフトウェア上でエミュレートすることをゴールとした.結果,基本整数命令を実装し,RISC-Vの命令セットを動かすことができた.
#30「隠れマルコフモデルによるピアノ運指推定手法の改良」
揚妻慶斗(筑波大学附属駒場高等学校 高1年)
ピアノの運指推定は、演奏の過程を演奏者や学習者が理解する上で重要であり、その技術は音楽教育や演奏支援などの活動に活用できる。これまで運指推定には、コストを定義して単純な最適化問題とする方法や、隠れマルコフモデル、ニューラルネットワークを使う方法など、様々な手法が提案されてきたが、その精度は人間の処理にはまだ劣り、これらの手法にも改善の余地が多くある。この研究では特に、和音の遷移を隠れマルコフモデルに学習させる方法に着目した。この手法では、モデルにおける和音の遷移コストを定義し、そのパラメタを最適化しているが、この遷移コストは実際の演奏者の指の移動の感覚に沿わず、改善の余地があると思われた。そこで、本研究では、この既存手法の遷移コストの定義を見直し、新たなモデルの構築手法を提案する。
#31「二つのエンコーダデコーダモデルを用いた機械翻訳モデルの翻訳精度の向上」
上村宙(市立札幌開成中等教育学校 中等5年年)
現在機械翻訳は目覚ましい進歩を遂げており、高精度の翻訳ができるようになっているが、それらのモデルの作成には大量のコーパスを必要としている。そのため話者数の少ない言語に関して学習させることが難しくなっている。しかし、話者数が少なくとも対訳辞書は存在する。そのため、この研究ではまず辞書を用いて定義文翻訳のエンコーダデコーダモデルを作成する。次に、未学習のエンコーダデコーダモデルの学習を学習済みモデルも用いたマルチタスク学習をさせることで必要なコーパス数を減少させ、さらに翻訳精度を向上を目指す。