【講演概要】研究現場のデジタルトランスフォーメーションは研究室のサイバーフィジカル化と言い換えることが出来る.情報技術とロボティクスの導入によって実験,理論,計算,データという4つの主要な科学的方法論を融合し飛躍的に進展を加速するいわゆるAI駆動型科学は,「第5の科学領域」としても有望視されている.我々は,生命科学分野において実験のロボット化や実験プロトコル記述言語処理系の開発,自動実験計画による実験システムの完全自律化,さらにデータ駆動とモデル駆動の融合による仮説生成の自動化などを試み,既に再生医療領域ではiPS細胞の分化誘導条件の自動発見やコロナ禍での遠隔実験の活用などで実績を積んできた.国際動向も含め,科学の自動化に向けた最新の状況をご紹介する.
【略歴】2009年より理化学研究所で研究室を主宰.2004年慶應SFCで学位取得後,分子科 学研究所(米国バークレー市)HFSPフェローなどを経て現職.慶應義塾大学大学 院政策・メディア研究科特任教授,大阪大学大学院生命機能研究科招聘教授,特 定非営利活動法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ副代表理事,理研未来戦 略室イノベーションデザイナーなどを兼務.科学技術振興機構未来社会創造事業「ロボティック・バイオロジーによる生命科学の加速」課題研究開発代表者.