情報処理学会第83回全国大会 会期:2021年3月18日~20日 会場:オンライン開催

論文必勝法

日時:3月19日(金)15:20-17:20

会場:第3イベント会場

【セッション概要】論文誌ジャーナル/JIP編集委員会主催の本セッションでは,現在,論文誌への掲載を目指して論文を執筆中もしくは,今後,執筆する予定のある情報処理分野の若手研究者の方々へ有益な情報を提供いたします.具体的には,まず,経験豊富な講師をお迎えして研究成果を論文として執筆する過程についてお話をいただきます. また,パネル討論では,編集委員会から編集長ならびに,各グループの主査による,採録される多くの論文にみられる傾向や,査読コメントへの対応方法などのアドバイス,論文を出す前のチェック事項,および論文誌に関する最近の動向などについて情報提供と意見交換を行います. 本セッションは,論文著者の方のみならず,共著者の指導教員,査読をお引き受けくださる方にも必見です.

司会

下條 真司(論文誌運営委員会 委員長/大阪大学 サイバーメディアセンター センター長・教授)

下條 真司

【略歴】大阪大学基礎工学部大学院後期課程,昭和61年3月修了.昭和61年大阪大学・助手.平成元年同大型計算機センター・講師.平成3年4月同助教授,平成10年4月同教授,平成12年4月同大学サイバーメディアセンター副センター長,平成17年8月 同大阪大学センター長,平成19年8月 同副センター長,平成20年4月から3年間 情報通信研究機構大手町ネットワーク研究統括センター センター長/上席研究員.平成23年4月サイバーメディアセンター教授.平成27年より,センター長.現在に至る.

15:20-16:10 基調講演 盾と矛:査読者にアピールする論文の書き方と,著者が納得する査読の書き方

鬼塚 真(大阪大学 大学院情報科学研究科 教授)

鬼塚 真

【講演概要】本講演では,論文執筆にフォーカスを当て,著者と査読者の両方の立場から,論文と査読レポートの執筆についての経験を共有する.
論文の書き方:研究内容に関しては,査読者が「なるほど」と思えるようなアイデアが必要である.説明シナリオに関しては,分かりやすく実用的なrunning exampleを使ってmotivationを提示し,既存技術では何が問題であって,提案技術はこの問題をどのようなスマートなアイデアで解決するかをまとめることが重要である.説明する内容に関しては,論文のstrong pointsを査読者が容易に納得できるように論文をまとめることが重要である(概要は誰もが理解できるように,詳細は技術レベルの高さをアピールするように).
査読の書き方:査読の書き方は,1)著者が査読内容を納得すること,2)査読者間で議論になった時に「この査読者はこの論文を十分理解しているから賛成せざるを得ない」という印象を与えることが重要である.このために,査読論文の内容をどこまで深く理解しているかを質と量の観点で詳しく書き,strong pointsとweak pointsを的確・明瞭・詳細に記述することが重要である.

【略歴】1991年東京工業大学卒.同年,NTT入社.2000-2001年ワシントン大学客員研究員,2013-2014年電気通信大学客員教授,2012-2014年NTT特別研究員.博士(工学).現在,大阪大学大学院情報科学研究科教授.これまで主記憶オブジェクトリレーショナルデータベース LiteObject,XMLストリーム処理エンジン XMLToolkit,クラウド基盤システム CBoC type2の研究開発に従事.現在は,大規模グラフ分析,分散処理クエリ最適化,機械学習等を用いたデータ分析処理に取り組んでいる.

16:10-17:20 パネル討論 論文誌の査読プロセスの紹介と,査読をどう通すか

パネル司会 浅井 信吉(論文誌ジャーナル 編集長/会津大学)

浅井 信吉

【討論概要】情報処理学会論文誌ジャーナルの査読プロセスを紹介し,論文査読時に思うこと,感じることを,論文誌編集委員の立場から各グループの主査に熱く語って頂き,論文執筆時,査読コメントへの対応方法などについて討論します.

【略歴】会津大学コンピュータ理工学部上級准教授.1996年筑波大学大学院博士課程を修了後,(株)ウェーブフロント勤務を経て,現職.論文誌編集委員会基盤グループ委員(2014年〜2017年),副査(2015年,2016年),主査(2017年).論文誌ジャーナル編集長(2020),数値解析その他に関する研究に従事.

パネリスト 市野 将嗣(論文誌ジャーナル ネットワークグループ主査/電気通信大学 大学院情報理工学研究科)

市野 将嗣

【討論テーマ】査読付き論文を書くには

【討論概要】論文誌ジャーナル編集委員会での審議の経験から,論文を書く際の注意点をお話したいと思います.

【略歴】2008年早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了.2011年電気通信大学大学院情報理工学研究科助教,2016年より同大学院情報理工学研究科准教授.バイオメトリクス,ネットワークセキュリティに関する研究に従事.コンピュータセキュリティ研究会運営委員(2017年-),論文誌ジャーナル/JIP編集委員会ネットワークグループ副査(2018-19年),同副編集長/ネットワークグループ主査(2020年度)

パネリスト 中嶋 秀治(論文誌ジャーナル 知能グループ主査/日本電信電話(株) NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

中嶋 秀治

【討論テーマ】条件付き採録とは

【討論概要】投稿論文の採否判定結果のひとつに「条件付き採録」があります.条件付き採録と判定された論文のその後の流れと,どのような論文が条件付き採録になるのかを解説しますので,執筆に役立てて頂ければと思います.

【略歴】1992年NTT入社,NTT情報通信網研究所配属.国際電気通信基礎技術研究所(ATR,1997~2002年),NTTメディアインテリジェンス研究所(~2017年6月),2017年7月より現所属.2010年3月早稲田大学博士(国際情報通信学).2014年度シニア会員,2015年12月特選論文表彰,論文誌編集委員会知能グループ委員(2017年6月~),同副査(2018年6月~),同主査(2020年6月~).

パネリスト 片山 薫(論文誌ジャーナル 基盤グループ主査/東京都立大学 システムデザイン研究科 准教授)

片山 薫

【討論テーマ】条件付き採録を通すには

【討論概要】採録条件に対する著者の回答とそれに対する査読者の判定案をもとに⾏われる論⽂誌編集委員会の議論から,条件付き採録を通すためのヒントをご紹介します.

【略歴】2000年京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了.博士(情報学).東京都立大学工学研究科助手を経て,現在東京都立大学システムデザイン研究科准教授.
データ工学,特にグラフ・三次元モデルを対象とした検索技術の研究開発に従事.
情報処理学会データベースシステム研究会幹事(2019年~),情報処理学会論文誌編集委員会基盤グループ委員(2017年~),同副査(2018年,2019年),同主査(2020年).

パネリスト 耒代 誠仁(論文誌ジャーナル 情報システムグループ主査/桜美林大学 リベラルアーツ学群 准教授)

耒代 誠仁

【討論テーマ】査読報告書の書き方

【討論概要】査読報告書を作成する際のポイントを,採録/条件付き採録/不採録のそれぞれの場合に分けてご紹介します.査読をご担当いただく皆様だけでなく,査読結果を受け取る著者の皆様にも有益な内容になればと存じます.

【略歴】東京農工大学助教,特任准教授などを経て2017年より桜美林大学准教授.パターン認識,情報教育などの研究に従事.博士(工学).
情報処理学会山下記念研究賞(2012年),同会人文科学とコンピュータ研究会幹事(2013~14年),同会論文誌人文科学とコンピュータ特集号編集委員長(2018~19年),同会論文誌ジャーナル編集委員会情報システムグループ副査(2018~19年),同主査(2020年).

パネリスト 吉野 松樹(デジタルプラクティス誌 編集委員長/日立製作所 IoT・クラウドサービス事業部 ミドルウェア本部 本部員)

吉野 松樹

【討論テーマ】ディジタルプラクティス論文とは

【討論概要】デジタルプラクティスが求める論文は,デジタルプラクティスマニフェスト
プラクティス論文(digital practice paper) とは
① 自らの経験に基づく(based on own experience )
② 新規性よりも有用性を重視した(focus on usefulness rather than novelty)
③ 再利用可能な(reusable)
④ 論理性を持つ(logical)
知見(knowledge)を表現した論文である.
に集約されている.
論文誌トランザクションデジタルプラクティスに論文を投稿する上で注意すべき点について説明したい.

【略歴】1982年東京大学理学部数学科卒業.同年,(株)日立製作所入社.1988年米国コロンビア大学大学院修士課程修了(コンピュータサイエンス専攻).2011年大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了.博士(情報科学).情報処理学会フェロー.2020年〜 論文誌トランザクションデジタルプラクティス編集委員長.