情報処理学会第83回全国大会 会期:2021年3月18日~20日 会場:オンライン開催

初等中等教員研究発表セッション

日時:3月20日(土)9:30-12:00

会場:第3イベント会場

【セッション概要】初等中等教育機関の教員による優れた情報教育実践や研究を,一般セッションではなく,選抜・推薦したイベント企画セッションでご発表いただきます.全国大会は,初等中等情報教育に普段はかかわりのうすい,企業等に所属する技術研究者が多く参加されます.また,情報科学・工学系のメディアも多く参加して取材されます.これにより,情報科学・情報技術分野と情報教育分野の交流が図れる貴重な場になることを期待しています.

座長

中野 由章(神戸市立科学技術高等学校)

中野 由章

【略歴】技術士(総合技術監理・情報工学).
本会シニア会員,初等中等教育委員会委員長,情報入試委員会幹事,コンピュータと教育研究会運営委員.
日本IBM大和研究所,三重県立高校,千里金蘭大学,大阪電気通信大学を経て,神戸市立科学技術高等学校教頭.
山下記念研究賞(2015),学会活動貢献賞(2016),科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(2017),大会優秀賞(2018).

9:30-9:35 オープニング

中山 泰一(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)

中山 泰一

【略歴】1988年東京大学工学部計数工学科卒業.1993年同大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了.博士(工学).現在,電気通信大学大学院情報理工学研究科教授.
本会教育担当理事.2014年度本会学会活動貢献賞,2016年度本会山下記念研究賞,2017年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞受賞.本会シニア会員.

9:35-9:50 研究発表(1) SDGsをテーマとした総合的な学習の時間におけるICT活用

菊地 寛(浜松市立雄踏小学校)

菊地 寛

【講演概要】小学校5年生児童を対象に,SDGsについての学びを深めることを目的として,エコバッグをテーマとした授業を実施している.授業ではGoogle Classroom等を活用しながら,児童が自分の意見を書き留め,仲間と比較しながら自分の考えをより良くすることを支援している.講演では,授業の概要やICTの活用方法について紹介する.

【略歴】静岡大学教育学部(理科教育)卒業,放送大学修士課程修了.修士(学術).2000年より県内小学校I校に勤務後,2018年より現職.情報活用能力の育成やプログラミング教育の実践を推進している.

9:50-10:05 研究発表(2) 小学校におけるプログラミング教育の取組と課題

寳迫 芳人(埼玉県所沢市立上新井小学校)

寳迫 芳人

【講演概要】平成20年からの2年間で,埼玉県立総合教育センターの「オープンソースを活用した学習モデルに関する研究」に参加し,小学生を対象としたプログラミング教育に関わったことから始まった私自身のプログラミング教育の実践について紹介し,今般の「小学校プログラミング教育必修化」を受けて,教頭になった現在,これまでの実践経験を踏まえてどのような実践を行っているのか紹介する.また,文科省が示す小学校プログラミング教育のねらいや学習活動の方向性についても触れながら,現在の勤務校での取組状況からプログラミング教育の今後の課題について考察する.

【略歴】平成18・19年に埼玉県教育委員会の大学院派遣研修制度を利用し,埼玉大学大学院教育学研究科教科教育専攻数学教育専修にて学ぶ(修士課程修了)
平成20・21年に埼玉県立総合教育センターの研究に参加し,小学生を対象としたプログラミング教育に関わる.その後も単独で科学技術振興機構(JST)の助成を受けてプログラミング(フィジカル・コンピューティング)教育の研究を2年間続ける.
現職は,教頭.

10:05-10:20 研究発表(3) 小中学校におけるプログラミング教育の実践の様子と教育センターにおける研修

伊藤 亮(静岡県総合教育センター)

伊藤 亮

【講演概要】静岡県総合教育センターでは,2018年度からプログラミング教育を推進するための各種研修や授業支援を提供してきた.対象は小学校や中学校技術科である.講演では,B分類音楽科 題材「和音の音で旋律づくり」の実践を紹介するほか,各種研修で取り扱ってきた内容についても紹介予定である.

【略歴】1997年より県内小学校3校,中学校2校に勤務の後,2017年より現職.小学校プログラミング教育,中学校技術・家庭科,情報モラル教育,ICTを活用した授業改善など情報教育を担当.

10:20-10:35 研究発表(4) 学校図書館のDX 〜工学院大学附属中学校・高等学校のファブスペースの取り組みを通して

有山 裕美子(工学院大学附属中学校・高等学校)

有山 裕美子

【講演概要】学校図書館といえば,読書と調べ学習の場である,と言うのが一般的な認識ではないだろうか.もちろんそれらは学校図書館の重要な使命である.その上で例えば,3Dプリンターを使って情報を触れることができる形にし,構築すれば,学校図書館はアイデアを収集し形にする,INとOUTが同居する「創造空間」になる.また,児童生徒の学びを支援する場であり,その学びのプロセスや情報活用能力を育成する機能を有する学校図書館は,デジタルを含めたあらゆる情報を収集,構築し,提供する場でもある.本報告では,本校の5年間にわたるファブスペースの取り組みを通して,GIGAスクール時代の新しい情報センターとしての学校図書館のあり方を提示する.

【略歴】工学院大学附属中学校・高等学校 国語科教諭・司書教諭
都留文科大学,法政大学,玉川大学非常勤講師
東京都武蔵野市出身.都留文科大学文学部初等教育学科,玉川大学文学部卒業,日本大学大学院総合社会情報研究科文化情報専攻修了,修士(文化情報学)大学卒業後,公立小学校の教員に.出産を機に退職,育児中に通信教育で司書と司書教諭の資格を取得.公共図書館非常勤職員を経て,現在は中学・高等学校で国語科兼司書教諭を務める.

10:35-10:45 休憩

10:45-11:00 研究発表(5) 情報科での統計分野の指導について

加藤 和幸(金城学院高等学校)

加藤 和幸

【講演概要】新学習指導要領での統計教育に関する内容は,数学科では中学2年・数学Ⅰ・数学Bなどでかなり重点がおかれている.情報科においても情報Ⅰでの「情報通信ネットワークとデータの活用」や情報Ⅱでの「情報とデータサイエンス」などの項目が設けられ,統計分野の知識の活用が必要とされている.しかし数学科では情報機器の活用に慣れていないこと,情報科ではデータサイエンスの背景にある数学の指導はされないことなど,統計分野の指導にはまだまだ解決すべき課題が多い.ここでは情報科の本来の目的である「問題解決」に対して,統計の知識を用いてのデータ分析やその活用についての題材やそれらと数学科との連携などについて紹介する.

【略歴】金城学院中学校高等学校 数学科・情報科教諭
名古屋工業大学卒業・公立学校教員を経て現職
金城学院大学非常勤講師を兼任(2005~2015)
コンピュータと教育研究会運営委員(2016~2019)
マイクロソフト認定教育イノベーター資格

11:00-11:15 研究発表(6) 高等学校におけるPythonのプログラミング環境に関する比較実験

井手 広康(愛知県立小牧高等学校)

井手 広康

【講演概要】2019年に改訂された高等学校学習指導要領において,教科「情報」ではプログラミングの単元が必修化となった.高等学校学習指導要領では授業で取り扱うプログラミング言語に関して指定していない.しかし高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材においてPythonのプログラムが例示されたこともあり,プログラミング教育にPythonの導入を検討している学校も多い.ただしPythonにはさまざまなプログラミング環境が存在するため,これらを比較するべく,クラス毎に異なるPythonの6種7通りのプログラミング環境を用いてプログラミング教育を行った.ここでは事前・事後アンケート等の分析結果から得たPythonのプログラミング環境の違いによって生じる教育効果に関して紹介する.

【略歴】愛知県立小牧高等学校教諭(情報科).愛知県立大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了,博士(情報科学).主に情報教育,ゲーム情報学の研究に従事.日本情報科教育学会第11回全国大会論文賞<優秀研究賞>,情報処理学会ゲーム情報学研究会GPW-17ベストポスター賞,第16回情報科学技術フォーラム(FIT2017)FIT論文賞など受賞.情報処理学会,日本産業技術教育学会,日本情報科教育学会 各会員.

11:15-11:30 研究発表(7) プログラミング教育における発達の段階に応じた体系化の重要性と授業展開例

肥田 真幸(和歌山県教育庁 学校教育局県立学校教育課(兼)義務教育課)

肥田 真幸

【講演概要】和歌山県では,発達の段階に応じた体系的なプログラミング教育「きのくにICT教育」を実施しており,2019年度から,全国に先駆けて県内全ての公立小・中・高等学校で実施している.プログラミング教育の推進には,児童生徒にプログラミングに対する興味・関心を高めるための学習内容,それを通して育成すべき能力への教員の理解等が必須である.また,先駆けての実施には,教員の意識改革がとても重要であった.「きのくにICT教育」の推進を通して,どのような手立てが県内全域でのプログラミング教育の推進に有効であったかを考察するとともに,具体的な学習展開の例に触れ,和歌山県の取り組むプログラミング教育について紹介する.

【略歴】2006年,大阪学院大学情報学部情報学科 卒業.
2012年~,和歌山県内の高等学校で講師を6年経て,同県高等学校教諭として採用.
2018年~,和歌山県教育庁教育総務局総務課教育政策班 副主査.
2019年~現在,和歌山県教育庁学校教育局県立学校教育課(兼)義務教育課 指導主事.
同県において,情報教育の推進に携わる.

11:30-11:45 研究発表(8) 高校のGIGAスクール構想と情報科を一体的に考えよう!

柴田 功(神奈川県立川崎北高等学校)

柴田 功

【講演概要】小・中学校の取組に合わせて,いよいよ高校もGIGAスクール構想の実現に向けた取組がスタートする.しかし,情報科の教員はPC教室の中で思考しがちで,学校全体で中学校までに身に付けた情報活用能力を高校でどう育むのかという視点が不足しているように感じる.今後,生徒は1人1台端末を持つようになると,すべての教科及び総合的な探究の時間でどのように授業改善をして,どのように生徒の情報活用能力を育むのが望ましいのか,教育行政や校長の視点から提案する.

【略歴】2000年,川崎北高校教諭の時代に情報科の免許を取得し,情報科を2年先行して必修化した.その際に立ち上げた実践例紹介サイト「情報科.net」は当時注目された.その後,総合教育センター及び県教委で12年間,情報教育の指導主事を務め,県立高校副校長,県教委のICT推進担当課長を経て,令和2年度から神奈川県立川崎北高等学校校長.再び着任した川崎北高校ではスマートフォンを活用したオンライン学習に取り組み,自らYouTubeで情報発信するなど再び注目された.現,文部科学省ICT活用教育アドバイザー

11:45-12:00 講評

鹿野 利春(文部科学省 初等中等教育局情報教育・外国語教育課情報教育振興室 教科調査官(高等学校情報科担当))

鹿野 利春

【略歴】修士(教育学)(鳴門教育大学1996年).国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官,文部科学省において高等学校共通教科情報科及び専門教科情報科の教科調査官を併任.金沢大学理学部化学科卒(1986年).石川県の公立学校教諭,石川県教育委員会を経て2015年より現職.現行学習指導要領「情報」の調査研究協力者,教科書,問題集,副読本,情報科教育法等著者(共著).文部科学大臣優秀教員表彰(2008年).