情報処理学会第83回全国大会 会期:2021年3月18日~20日 会場:オンライン開催

2025年実施の大学情報入試への展望

日時:3月20日(土)9:30-12:00

会場:第1イベント会場

【セッション概要】2022年度から実施される高等学校学習指導要領に対応する形で,2025年度大学入試では大学入学共通テストが実施される予定である.その2022年度からの学習指導要領では,教科「情報」が「情報Ⅰ」に一本化されて必履修となり全生徒が履修することになる.さらに,その内容を深めた「情報Ⅱ」が選択科目として設けられる.
この大学入学共通テストに教科「情報」の科目を導入する計画が2020年10月に大学入試センターから示され,大学・高校の意見聴取を経て2020年度中に最終案が示される予定である.その結果を受けて,2021年6月には文部科学省から正式に共通テストの実施案が提示される予定である.
この動きの最新情報を提供しつつ,大学情報入試実現に向けての展望を語る.

全体司会

高橋 尚子(國學院大学 教授)

高橋 尚子

【略歴】大学在学中に女子大初のマイコンクラブを結成. 卒業後, 女性SE第一期生として富士通入社, 業務システムの移行や標準化に携わる. その後ASCIIでビジネスパソコンスクール開校, OAインストラクタを経て, ライティング業のナウハウスとして独立. 1995年から大学で非常勤講師を始め, 2007年から國學院大學経済学部で情報教育に就き, 2016年から全学の一般情報教育をマネジメントしている.情報処理学会 情報教育担当理事,一般情報教育委員,情報入試委員会委員,などを務める.

9:30-9:50 講演(1) 「情報」入試導入の必然性

村井 純(慶應義塾大学 教授)

村井 純

【講演概要】世界的に社会のDXは確実に進んでいる.特に人口減少が進むと想定されている我が国においてはDXによって社会的コストを下げることは必須である.このためには国民全体が,とりわけ次世代を生きる若い世代が,デジタル技術を使いこな し,それを前提とした生活ができるスキルを身につける必要がある.これは情報技術産業に限った話ではなく,生活のあらゆる場に浸透する必要がある.
現在,小学校・中学校・高校においては情報教育やプログラミング教育が導入さ れつつある.情報入試において基礎的な情報活用能力を身につけていることを確 認し,大学においては様々な分野でそれを前提とした教育を行う必要がある.そのことによって世界を先導する社会を実現することが可能となる.

【略歴】工学博士.1984年日本初のネットワーク間接続「JUNET」を設立.1988年WIDEプロジェクトを発足させ,インターネット網の整備,普及に尽力.初期インターネットを,日本語をはじめとする多言語対応へと導く.内閣官房参与,他各省庁委員会主査等を多数務め,国際学会等でも活動.2013年ISOCの選ぶ「インターネットの殿堂(パイオニア部門)」入りを果たす.「日本のインターネットの父」として知られる.

9:50-10:10 講演(2) 大学情報入試動向と情報処理学会の活動履歴

筧 捷彦(東京通信大学 教授)

筧 捷彦

【講演概要】2003年に高校では,普通教科「情報」が2003年に設けられ,必履修科目を置いて教育されている.大学入試センター試験では,それ以前から「情報関係基礎」が「数学②」の科目として,また,いくつかの大学では個別入試やAO入試の中で,情報入試が実施されてきている.当学会は,早くから大学入試センター試験への情報科目導入を提言するなど,高校での情報教育充実と情報入試導入を目指すさまざまな活動を行ってきた.これらの状況を俯瞰する.

【略歴】1968年東京大学工学部卒,立教大学などを経て,1986年から早稲田大学理工学部(現,基幹理工学部)教授,2016年に同校名誉教授.情報処理技術の標準化と情報教育推進に注力.ACM-ICPC,パソコン甲子園,U-22プログラミングコンテストの審査・運営に参与.情報オリンピック日本委員会・情報科学国際交流財団の理事長を兼任.現在,本会の情報入試委員長.

10:10-10:30 講演(3) 大学情報入試の舞台裏

【講演概要】駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部(2006年設置)では,英語と情報を基礎とする学際教育を行っている.その教育の一環として,2015年度の入試より,独自の情報入試を実施してきた.本講演では,情報入試導入の経緯や裏舞台と,本学部の情報入試の問題の特徴について述べる.

平井 辰典(駒澤大学 専任講師)

平井 辰典

【略歴】1988年生.2011年早稲田大学先進理工学部物理学科卒.2015年同大大学院博士後期課程了.博士(工学).2012年度未踏IT人材発掘・育成事業スーパークリエータ.現在,駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部専任講師.2010年より音楽情報処理,動画像処理に関する研究に従事.

吉田 尚史(駒澤大学 教授)

吉田 尚史

【略歴】1996年筑波大学第三学群情報学類卒業,1998年筑波大学大学院修士課程理工学研究科修了.2001年筑波大学大学院博士課程工学研究科(現在,システム情報工学研究科)修了.博士(工学).2001年~2006年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究教員(専任講師).2006年より駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部講師,准教授を経て2016年より現職.
2007-2014年慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問).2010年5月-9月までTampere University of Technology, Pori, Finland研究員.

10:30-10:50 講演(4) 高校からの期待

福原 利信(都立立川高等学校 副校長)

福原 利信

【講演概要】「高校からの期待」と題目をいただきましたが,コロナ禍で情報を担当する先生方との交流の回数は減り,更にはオンラインでの会議や研修となりました.できるだけ色々な方と情報交換をして高等学校で情報を担当する先生の気持ちをお伝えしたいと思いますが,十分でないことをお許しください.
私は,情報Ⅰが共通テスト出題される事には賛成です.課題も多くあるのは分かりますが,情報科が高等学校での教科として認められ,大学教育の基礎力として情報の力を測ることが必要とされたのだと考えます.また,学習指導要領に従い各高校で情報の授業を実施してきたわけです,その成果を測る「ものさし」が出来るのだと思います.課題を解決し前に進みましょう!

【略歴】東京都立立川高等学校全日制課程副校長,東京都高等学校情報教育研究会副会長
平成2年3月東京理科大学理工学部数学科卒業,同年4月より東京都立高等学校数学科教諭として着任,平成15年より情報科の教員となる.平成24,25年に東京都教育庁指導部高等学校教育指導課指導主事として勤務.平成26年より副校長.令和2年の全国高等学校情報教育研究会愛知大会がコロナ禍で中止となり,急遽オンライン大会を開催し実行委員長を務める.

11:00-12:00 パネル討論 多くの大学で情報入試が実施されるために

【討論概要】大学入学共通テストでは,2025年入学者を対象としたテストから,試験教科「情報」を導入することが検討されている.このパネルでは,より多くの大学が共通テストで情報の成績を算入する,あるいは,自ら情報科を入試教科として採用していくために,どんな行動をするべきかを議論する.

パネル司会

辰己 丈夫(放送大学 教養学部情報コース 教授)

辰己 丈夫

【略歴】1991年早稲田大学理工学部数学科卒業.2014年筑波大学博士(システムズ・マネジメント).1993年早稲田大学情報科学研究教育センター助手.その後,神戸大学.東京農工大学を経て.現在,放送大学教授.2020年より本会理事(新世代).他に,教科書委員会,会誌編集委員会,初等中等教育委員会,教員免許更新講習委員会,一般情報教育委員会など各委員.

パネリスト

井上 創造(九州工業大学 准教授)

井上 創造

【略歴】情報処理学会理事,情報処理学会UBI研究会主査,国立大学法人九州工業大学生命体工学研究科教授,合同会社AUTOCARE CTO.
九州大学博士(工学).同大助手,助教授,九州工業大学准教授を経て.2020年より同大教授.看護・介護行動センサビッグデータに興味を持つ.九州工業大学では基礎情報教育に従事し,2010-2011年に大学入試センター試験「情報関係基礎」委員を務めた.

パネリスト

村松 浩幸(信州大学 教授)

村松 浩幸

【略歴】1987年東京学芸大学卒,中学校技術科教員,三重大学を経て,2007年より信州大学教育学部,2012年より同教授.
現在,附属次世代型学び研究開発センター長.博士(学校教育学).技術・情報教育の研究・振興に注力し,特許庁の各種委員やNHK高専ロボコン審査委員等も担当.文部科学大臣表彰等の授賞.2019年より一般社団法人日本産業技術教育学会会長を務める.

パネリスト

村井 純(慶應義塾大学 教授)

村井 純

【略歴】工学博士.1984年日本初のネットワーク間接続「JUNET」を設立.1988年WIDEプロジェクトを発足させ,インターネット網の整備,普及に尽力.初期インターネットを,日本語をはじめとする多言語対応へと導く.内閣官房参与,他各省庁委員会主査等を多数務め,国際学会等でも活動.2013年ISOCの選ぶ「インターネットの殿堂(パイオニア部門)」入りを果たす.「日本のインターネットの父」として知られる.

パネリスト

福原 利信(都立立川高等学校 副校長)

福原 利信

【略歴】東京都立立川高等学校全日制課程副校長,東京都高等学校情報教育研究会副会長
平成2年3月東京理科大学理工学部数学科卒業,同年4月より東京都立高等学校数学科教諭として着任,平成15年より情報科の教員となる.平成24,25年に東京都教育庁指導部高等学校教育指導課指導主事として勤務.平成26年より副校長.令和2年の全国高等学校情報教育研究会愛知大会がコロナ禍で中止となり,急遽オンライン大会を開催し実行委員長を務める.