情報処理学会第83回全国大会 会期:2021年3月18日~20日 会場:オンライン開催

スポーツテック ~デジタルプラクティスライブ~

日時:3月19日(金)9:30-11:30

会場:第2イベント会場

【セッション概要】テクノロジー,特に情報技術は,スポーツにおける競技レベルの向上に貢献するばかりでなく,ファンの獲得やファンのコア化においても有用であり,スポーツビジネスの成長には必要不可欠です.近年は,スポーツ(Sports)と技術(Technology)を組み合わせた造語で,スポーツと情報技術を結びつけた様々な革新的な動きを指す「スポーツテック(Sports-Tech)」という言葉が注目を集めています.そこで,本セッションではこれらの取り組みを紹介します.

9:30-9:35 司会

相原 伸平(国立スポーツ科学センター スポーツ科学部 研究員)

相原 伸平

【略歴】(独)日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター 国立スポーツ科学センター スポーツ科学部,研究員.早稲田大学大学院先進理工学研究科修士課程修了.(株)日立製作所中央研究所,研究員を経て,2016年より現職.専門はスポーツ工学.競技スポーツを対象としたITシステムの研究・開発に従事.日本機械学会,計測自動制御学会,情報処理学会,IEEE,ISEA,ECSS 各会員.

9:35-9:55 講演(1) 3Dセンシング・技認識技術による体操採点支援システムの実用化

桝井 昇一(株式会社富士通研究所 シニアリサーチエキスパート)

桝井 昇一

【講演概要】富士通は,国際体操連盟・日本体操協会との連携により,体操競技における正確かつ公平な採点の実現を目指して,採点支援システムの開発に取り組んでいる.採点支援システムは,LiDAR(Light Detection and Ranging)方式の3Dレーザセンサによって取得された3次元点群から,Deep Learningと幾何モデルフィッティングにより選手の3D骨格座標を求める3Dセンシングと,3D骨格座標の時系列情報から実施技の特定を行う技認識の両技術で構成される.本講演では,体操競技における採点手法と審判による正確な採点実施の難しさを説明し,課題とデジタル化による対策をまとめた後,採点支援システムの概要を解説する.次に,高精度な3D骨格座標認識を可能とし各種スポーツに適用可能な3Dセンシング技術,および,体操採点ノウハウを取り込んだ技認識技術について説明し,最後に,本採点支援システムが国際体操連盟に正式採用されるまでの取り組みを紹介する.

【略歴】1982年 名古屋大学工学部電気工学科卒.1984年 名古屋大学大学院工学研究科博士前期課程修了.1990年 スタンフォード大学客員研究員.1999年 富士通入社.2006年 東京工業大学博士(工学).2007年 東北大学電気通信研究所・教授.2012年(株)富士通研究所.現在は3Dセンシング・姿勢認識に関わる研究に従事.2004年 文部科学大臣表彰研究功績者.現在,同社Gプロジェクト,シニアリサーチエキスパート.

9:55-10:15 講演(2) 日本野球市場に練習革命を起こすことを目指して -センサ内蔵野球ボールを活用した野球指導効率化に向けた取り組みから-

柴田 翔平(ミズノ株式会社 グローバル研究開発部 DX・UX研究開発課)

柴田 翔平

【講演概要】日本野球市場,特にアマチュアの現場では,データ計測・活用の文化が醸成されておらず,非合理的な指導も依然多い.そこで我々は,データ計測・活用文化を拡げるために,誰もが気軽に自身の球質を計測可能なセンサ内蔵野球ボールを用いた投球データ解析システム(名称:MA-Q)を開発した.社会実装により,球速以外の新たな指標の存在が認知され,従来のスピードガンのみの計測文化を変えることができた.一方,データを分析し,指導するといった環境までは構築できておらず,今後適切なデータ分析方法を提案していく構想である.本講演では,我々の取り組みの背景・システム詳細・成果と課題・今後の施策に関して,詳細を説明する.

【略歴】1988年生.2011年上智大学理工学部物理学科卒業,2018年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了.博士(学術).2013年,ミズノ(株)入社,現在に至る.バイオメカニクス,センサデータ解析に関する研究や商品開発に従事. 主な担当商品は野球のIoT製品「ミズノスイングトレーサー」や「MA-Q」.

10:15-10:35 講演(3) バーチャルリアリティでスポーツ脳を理解し鍛える

木村 聡貴(NTT コミュニケーション科学基礎研究所 主任研究員)

木村 聡貴

【講演概要】スポーツで高いパフォーマンスを発揮するためには,頑健な身体を備えるだけでなく,適切な状況の判断や予測,巧みな運動調節などを実現する高度な脳情報処理機能が不可欠である.しかし,身体的側面に関する知見やトレーニング手法については多くの蓄積がある一方で,脳機能に関する知見やノウハウは十分ではない.筆者らは,先進的な情報通信技術を活用して,スポーツパフォーマンスを支える脳機能を解明し向上させる取組みを進めている.本講演では,テニスや野球・ソフトボール用のバーチャルリアリティシステムを用いた取り組み事例を紹介する.

【略歴】NTTコミュニケーション科学基礎研究所,主任研究員.2003年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了後,NTTに入社,リサーチアソシアエイト等を経て現職.博士(学術).専門は人間の感覚運動制御.近年はスポーツスキルの脳情報処理の研究に従事.バーチャルリアリティなどのICTを用いた基礎的な研究に取り組む一方で,フィードバック・トレーニング手法に関する実践的な研究も進めている.

10:35-10:55 講演(4) 単一慣性センサを用いた競泳指導サポートシステム

高橋 弘毅(東京都市大学 総合研究所 宇宙科学研究センター 教授)

高橋 弘毅

【講演概要】我々は,選手(特に初級から中級競泳選手)の競技力向上を目指して,3軸加速度・角速度を測定可能な腰背部に装着した防水の単一小型慣性センサを用いた安価,かつ,手軽に使用可能な競泳指導サポートシステムの開発を進めてきています.本講演では,この競泳指導サポートシステムについての紹介をするとともに,その開発状況の報告をします.また,開発を進めている競泳サポートシステムを,実際のトレーニング現場で使用する際に見えてきた課題とその解決方法について議論したいと思います.
 デジタルプラクティス「スポーツテック特集」の記事では紹介できなかった,プロトタイプシステムを用いた様子の映像なども紹介する予定です.
 さらに,異分野交流から生まれる研究・開発をどのように進めてきたのかをお話しできればと思います.

【略歴】2005年3月 新潟大学大学院自然科学研究科博士後期課程 修了 博士(理学).ドイツ マックス・プランク重力物理学研究所(アルバートアインシュタイン研究所)PDなど経て,2020年9月より東京都市大学 総合研究所宇宙科学研究センター/大学院総合理工学研究科 教授.新しい信号処理手法や機械学習を用いて「人の動き」に関する様々なデータに適用する研究全般に興味を持って進めています.
 また,大型低温重力波望遠鏡KAGRAのデータ解析の研究にも従事しており,データサイエンスや数理科学などの研究を広く進めています.

10:55-11:15 講演(5) カーリングの戦術支援を目指す実証型研究 ~カーリングを科学する研究プロジェクトの取り組み

桝井 文人(北見工業大学 冬季スポーツ科学研究推進センター 教授)

桝井 文人

【講演概要】カーリングは,氷上のチェスと呼ばれる通り非常に戦術性の高い競技であるが,意外にも戦術面に着目した研究例は驚くほど少ない.我々は,カーリングの戦術面の分析と支援を目的として,国内6大学による「カーリングを科学する」共同研究プロジェクトをスタートさせ,競技情報の収集,解析,共有,可視化を実現する技術の開発研究に取り組んできた.これまでの研究成果として,デジタルスコアブックiCE,デジタルカーリング,ストーントラッキング技術,スウィーピング力測定技術,デリバリーロボットなどがある.また,令和2年10月にオープンした「アルゴグラフィックス北見カーリングホール」に併設された10組の「競技力向上支援システム」には,本プロジェクトの研究成果が応用されている.本講演では,これまでの研究活動と新カーリングホールに設置されたシステム群を紹介するとともに,同設備を活用した研究計画などを紹介する.

【略歴】北見工業大学工学部情報通信系教授,同冬季スポーツ科学研究推進センター長.兵庫県神戸市出身.1990年岡山大学理学部卒業.沖電気工業,三重大学を経て現職.この間,北海道大学大学院情報科学研究科訪問研究員,国立情報科学研究所共同研究員など.現在,一般社団法人カーリング北見理事,観光情報学会理事など.博士(工学).自然言語処理,観光情報学,カーリング情報学の研究に従事.

11:15-11:30 パネル討論 全体ディスカッション

相原 伸平(国立スポーツ科学センター スポーツ科学部 研究員)

相原 伸平

【略歴】(独)日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター 国立スポーツ科学センター スポーツ科学部,研究員.早稲田大学大学院先進理工学研究科修士課程修了.(株)日立製作所中央研究所,研究員を経て,2016年より現職.専門はスポーツ工学.競技スポーツを対象としたITシステムの研究・開発に従事.日本機械学会,計測自動制御学会,情報処理学会,IEEE,ISEA,ECSS 各会員.