情報処理学会第83回全国大会 会期:2021年3月18日~20日 会場:オンライン開催

量子技術を利用した次世代アクセラレータの活用

日時:3月19日(金)12:40-15:10

会場:第3イベント会場

【セッション概要】量子技術を利用した次世代アクセラレータについて紹介する.次世代アクセラレータとは,Society 5.0の実現に向けイジング型コンピュータ(アニーリング型量子コンピュータや古典技術を用いたイジングマシン),NISQコンピュータ,誤り耐性ゲート型量子コンピュータを用いた,従来の計算方法に比較して処理や解析の高速化・高度化を実現する技術である.パネルでは次世代アクセラレータの製造業における社会実装について議論する.

12:40-12:45 司会

袖 美樹子(国際高等専門学校)

袖 美樹子

【略歴】日本電気(株)在籍中ACOS,地球環境シミュレータ等のスーパーコンピュータの開発に従事.ルネサスエレクトロニクス(株)移籍後,R-CARなどの自動車向けLSIの開発に従事.現在,バス停など身近なものをIoT化しエッジコンピューティングにより見守りなどの生活基盤として活用する研究に従事.工学博士(早稲田大学).情報処理学会,IEEE,電子情報通信学会等会員.

12:45-13:15 講演(1) 量子技術を用いた次世代アクセラレータ

田中 宗(慶應義塾大学 理工学部 准教授)

田中 宗

【講演概要】量子技術を用いた次世代アクセラレータとして,量子アニーリング,NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum)デバイス,誤り耐性量子コンピュータ等が近年注目を集めている.これらは新しいタイプのコンピューティング技術であり,現在,ハードウェア開発,ソフトウェア開発,アプリケーション探索の観点から精力的に研究が進められている.また,物理学,情報工学,応用数学等の多様な分野のアプローチにより,次世代アクセラレータの計算原理について探求する基礎学理の構築も盛んに行われている.本講演では,これらの次世代アクセラレータの研究開発についての現在の状況ならびに乗り越えるべき課題,将来展望について概観する.

【略歴】2008年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻.博士(理学).東京大学物性研究所特任研究員,近畿大学量子コンピュータ研究センター博士研究員,東京大学大学院理学系研究科化学専攻にて日本学術振興会特別研究員(PD),京都大学基礎物理学研究所基研特任助教,早稲田大学高等研究所助教,准教授(任期付),早稲田大学グリーン・コンピューティング・システム研究機構研究院准教授等を経て現職.量子アニーリング等イジングマシン,統計力学,物性理論,計算物理学の研究に従事.

13:15-13:45 講演(2) イジング型コンピュータの活用事例

松田 佳希(株式会社フィックスターズ ソリューション第一事業部 エグゼクティブエンジニア)

松田 佳希

【講演概要】量子アニーリングによる実装をはじめとして,近年イジングマシンと呼ばれる次世代アクセラレータの開発が盛んである.イジング型コンピュータは二値二次多項式で定式化される組合せ最適化問題(QUBO)の高速処理に特化した技術として注目されており,現在様々な応用探索が行われている.本公演では,イジング型コンピュータのアプリケーション探索に関する先行研究や活用事例の紹介を行う.特に,社会実装を目指した取り組みの一つとして,通信販売業者の物流倉庫における動的タスクとそれに対する作業者の人員配置計画に関する最適化検討について述べる.また,イジング型コンピュータを用いて実装した,実データに基づく実証実験の成果や今後の展望について議論する.

【略歴】2011年東京工業大学 大学院理工学研究科 物性物理学専攻 博士課程修了.2013年株式会社フィックスターズ入社,現職.量子アニーリング・イジングマシン等の次世代アクセラレータの研究開発に従事し,ソフトウェア基盤の開発や社会実装に向けたアプリケーション探索に注力.2020年より早稲田大学 グリーン・コンピューティング・システム研究機構 客員次席研究員(講師)を兼務.

13:45-14:15 講演(3) NISQ型コンピュータと誤り耐性量子コンピュータの活用事例

楊 天任(株式会社QunaSys 代表取締役)

楊 天任

【講演概要】Googleによって量子超越が達成された今,次のマイルストーンとして現実的な問題でスーパーコンピュータより高速で,高精度に問題を解く量子加速の達成に向けての研究開発が進んでいる.
その中でもゲート型量子コンピュータであるNISQ型コンピュータと誤り耐性量子コンピュータのアプリケーションとして量子化学計算の実用化が一番早いと考えられている.量子力学に基づいて動く量子コンピュータでは,量子的な問題を扱うのが得意であり,その代表的な問題として量子化学計算が挙げられる.
この講演では量子コンピュータで期待されるアプリケーションとそれの基礎となるアルゴリズムを俯瞰し,近年開発された量子コンピュータで行う量子化学計算を中心にアルゴリズム・ソフトウェア開発の最前線をQunaSysの取り組みを交えて紹介する.

【略歴】1994年生まれ.2016年に東京大学工学部機械情報工学科を卒業し,同大学院の情報理工学系研究科知能機械情報学専攻に進学し,現在休学中.学生時代には,ロボットアームの機械学習による制御とゲームを行う強化学習エージェントについての研究を行っていた.2018年2月に株式会社QunaSysを設立し,量子コンピュータの用途を広げるアルゴリズム研究を行いながら,量子コンピュータを利用するためのソフトウェア開発に取り組んでいる.

14:15-14:45 講演(4) 次世代アクセラレータ基盤の研究開発

戸川 望(早稲田大学 理工学術院 教授)

戸川 望

【講演概要】Society5.0の実現には,組合せ最適化問題の解法や複雑な物理シミュレーションなど,困難な問題が多数ある.こうした問題の解法に,イジング型コンピュータ,NISQコンピュータ,誤り耐性ゲート型量子コンピュータ等,量子技術等を利用した次世代アクセラレータの適用が期待される.問題に応じて,適材適所で次世代アクセラレータを活用するにはどのような仕組みが必要か,その一例を紹介する.

【略歴】1997年早稲田大学理工学研究科電気工学専攻.博士(工学).早稲田大学助手,助教授,准教授等を経て,2009年早稲田大学理工学術院教授.現在に至る.集積システムや量子計算等の研究に従事.

14:45-15:10 パネル討論 量子技術を利用した次世代アクセラレータの活用に関して

田中 宗(慶應義塾大学 理工学部 准教授)

田中 宗

【討論概要】量子技術を用いた次世代アクセラレータとして,イジング型コンピュータ,NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum)デバイス,誤り耐性量子コンピュータ等が近年注目を集めており,活発な研究開発が進められている.これらの研究開発は現在どのような状況にあるのか.また,今後どのように発展していくのか.またその発展のために必要な研究開発はどのようなものが考えられているのか.更に,従来のコンピューティング技術とどのように共存していくのか.これらの点を中心に,量子技術を用いた次世代アクセラレータが活用される未来について議論する.

【略歴】2008年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻.博士(理学).東京大学物性研究所特任研究員,近畿大学量子コンピュータ研究センター博士研究員,東京大学大学院理学系研究科化学専攻にて日本学術振興会特別研究員(PD),京都大学基礎物理学研究所基研特任助教,早稲田大学高等研究所助教,准教授(任期付),早稲田大学グリーン・コンピューティング・システム研究機構研究院准教授等を経て現職.量子アニーリング等イジングマシン,統計力学,物性理論,計算物理学の研究に従事.