情報処理学会 第82回全国大会 会期:2020年3月5日~7日 会場:金沢工業大学 扇が丘キャンパス 情報処理学会 第82回全国大会 会期:2020年3月5日~7日 会場:金沢工業大学 扇が丘キャンパス
はじめての人文情報学:情報処理技術で文化資料の分析に挑戦しよう!
日時:3月6日(金)9:30-11:30
会場:第2イベント会場(23号館 218)
【セッション概要】考古学、人類学、歴史学、地理学、文学、言語学、絵画、音楽、ポップカルチャーを含む人文学における課題の解決に情報処理技術を活用する「人文情報学」について、研究シーズ発掘中の研究者(特に若手研究者)を対象としたチュートリアルを行う。データセット、情報処理技術、成果発表の場、異分野との共同研究の実践などを紹介しながら、若手研究者が、今保有している情報処理技術を生かして、新たな研究分野に挑戦するために役立つ基礎的な情報を提供する。近年、古文書史料の「くずし字」をディープラーニングで認識する自動テキスト化の研究や、市民がくずし字を学びながら協力してテキスト化を進めるクラウドソーシングの研究など、人文学における資料の分析に情報処理技術を活用する研究が新たな展開を見せている。「ITが人をより幸せにする」未来で重要な役割を果たす人文情報学に触れ、新たな研究に挑戦する契機としていただきたい。
司会:阪田 真己子 (同志社大学 文化情報学部 教授)
【略歴】神戸大学大学院総合人間科学研究科博士課程修了.博士(学術).(株)ATR知能映像通信研究所,福島学院大学を経て2005年より現所属.専門は認知科学(身体メディア論,身体表現論).日本舞踊,漫才といった芸能のデジタルアーカイブ研究に従事.情報処理学会,日本認知科学会,舞踊学会等に所属.
司会:松村 敦 (筑波大学 図書館情報メディア系 助教)
【略歴】1992年東北大学理学部物理学科卒業.1997年同大学大学院理学研究科 博士課程修了.博士(理学).現在,筑波大学図書館情報メディア系助教.履歴を活用した情報検索システム,子どもに対する絵本推薦システムの研究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,日本データベース学会,日本教育工学会,情報知識学会,日本知能情報ファジィ学会,Japanese Association for Digital Humanities各会員.
講師 活用可能な人文学のデータセット
後藤 真 (国立歴史民俗博物館 准教授)
【講演概要】情報学で利用可能な人文学のデータについて紹介します.最近は,ディープラーニングによるくずし字解読が,一つのホットトピックになっていますが,もととなるデータはこれだけではありません.私からは,情報学の研究で使えそうな,人文学のデータ群などの紹介をしていきます.技術的にはどのような可能性があるのか,人文学とのコラボレーションによる新たな研究成果につなぐ資料はあるのか,未知な資料を皆様に見つけてもらえれば幸いです.
【略歴】人間文化研究機構国立歴史民俗博物館准教授.大阪市立大学大学院文学研究科修了,日本学術振興会特別研究員(PD),花園大学専任講師,人間文化研究機構本部特任助教を経て,2015年より現職.専門は人文情報学・歴史情報学.特に歴史資料の大規模なデジタル化とそのための情報発見技術,現物資料との関係などについて研究を行う.また,人文系の研究力評価などにも携わっている.博士(文学)
 
講師 人文学を支える情報処理技術
山田 太造 (東京大学 史料編纂所)
【講演概要】人文学のデータは人文学研究者だけではなく,理工系の研究者,さらには人文学および人文学データに興味をもつ一般にも利用されつつある.たとえば古文書等でのくずし字では,情報源となる古文書画像とその目録の管理,古文書画像からの文字画像の切り出し,文字画像に対する文字データの生成,管理・検索システムの構築,AI・機械学習を用いた古文書の自動読解への利用,といったデータの生成・管理・利用・分析を行う上では情報技術導入が欠かせない.このような情報技術について紹介する.
【略歴】2005年総合研究大学院大学複合科学研究科修了.博士(情報学).2005年国立情報学研究所特任研究員,2007年東京大学史料編纂所特任助教,2010年人間文化研究機構本部特任助教を経て2013年より現職.日本史史料を対象とした情報抽出・テキストマイニング,歴史情報検索の精度向上の研究に従事.情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会主査(2017-2019),同論文誌編集委員会知能グループ委員(2018-),同副査(2019-)等を務める.
 
講師 研究成果の発表:学術誌と国際会議の動向
永崎 研宣 (人文情報学研究所 人文情報学研究部門 主席研究員)
【講演概要】国内で人文情報学の成果発表の場と言えば,当学会の人文科学とコンピュータ研究会(SIGCH)がまず挙げられます.年間で研究会3回と査読付きシンポジウムを1回開催して研究発表の場を提供し,このところは隔年で情処論文誌での研究会特集も刊行されています.他にも関連する国内論文誌はいくつかあります.海外では,国際デジタルヒューマニティーズ学会連合(ADHO)がオックスフォード大学出版局より論文誌を刊行する他,オープンアクセス誌として様々な論文誌が刊行されています.国際会議はADHOが年次総会を開催し2021年には東京でアジア初開催となる他,ADHO傘下の各学会が世界各地で年次国際会議を開催しています.TEIやIIIF等,個別の関連規格・技術に関する会議も情報交換等には有益です.本講演では,こういった成果発表の場を紹介しつつ,その選び方についてもお話しします.
【略歴】2000年,筑波大学大学院博士課程哲学・思想研究科単位取得退学.博士(関西大学・文化交渉学).東京外国語大学AA研COE研究員,山口県立大学国際文化学部助教授等を経て現所属の法人設立に参画.各地の大学研究機関で人文情報学の共同研究を行ってきた.情報処理学会論文誌編集委員,日本印度学仏教学会常務委員情報担当,日本デジタル・ヒューマニティーズ学会議長,TEI Consortium理事等を務める.著書に『日本の文化をデジタル世界に伝える』(樹村房,2019年)など.
 
講師 異分野との共同研究の実践
鹿内 菜穂 (亜細亜大学 講師)
【講演概要】人文情報学の研究者,また情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会会員の研究者は,人文科学が専門で情報技術を活用する者,情報学が専門で文学・歴史・考古・音楽・舞踊など資料にアプローチする者,それ以外の学問分野が専門である者など,研究者としてのバックグラウンドは異なり様々です.しかし,共通して,人文科学に関連する情報資源の記録・蓄積・提供や人文科学の課題に対する情報技術の開発などに関心を持ち,活発に活動してきました.本講演では,どのようにして異分野の人々と出会うのか,異分野との共同研究の実践例,そして異分野の方々と協働することの難しさと面白さについて情報提供したいと思います.
【略歴】立命館大学大学院理工学研究科修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員(DC2),日本女子大学助教を経て,現在,亜細亜大学講師.専門は認知科学,身体教育学,スポーツ科学.舞踊動作の知覚・認知,舞踊における表現者と鑑賞者/観客の相互作用,日本舞踊のデジタル・アーカイブ,ヨガによる心身への影響,バレエ学生のメンタルトレーニングについて研究を行っている.情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会主査(2019-).
 
講師 人類の文化への扉を開く人文情報学
北本 朝展 (国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授)
【講演概要】最新の情報技術によって人類の文化への扉を開く.人文情報学はそんな夢のある研究テーマに挑むことができる研究分野です.例えば,日本のくずし字を機械学習で自動認識し検索可能にする研究により,千年に及ぶ日本の文字文化への扉が開かれつつあります.このように人類の文化への扉を開くには,どんな情報技術が必要でしょうか.デジタル化から画像認識,情報抽出,情報検索まで,単体のアルゴリズムの精度を競うだけでなく,これらを総合することで価値ある知識が得られるかという視点を忘れずに研究を進めるところに,人文情報学研究の醍醐味があります.世界各地で生まれつつある人文学ビッグデータの分析を通して,人類とは,文化とは何かという謎に迫っていく.そんな挑戦への参加者をお待ちしています.
【略歴】1997年東京大学工学系研究科電子工学専攻修了.博士(工学).現在,情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 人文学オープンデータ共同利用センター センター長,国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授,総合研究大学院大学 情報学専攻 准教授.データ駆動型サイエンスを人文科学や地球科学,防災などの分野で幅広く展開する.文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品,山下記念研究賞などを受賞.オープンサイエンスの展開に向けた超学際的研究コラボレーションにも興味を持つ.