情報処理学会 第82回全国大会 会期:2020年3月5日~7日 会場:金沢工業大学 扇が丘キャンパス 情報処理学会 第82回全国大会 会期:2020年3月5日~7日 会場:金沢工業大学 扇が丘キャンパス
誰のための契約なのか?〜アジャイル開発のソフトウェアモデル契約〜
日時:3月6日(金)9:30-11:30
会場:第3イベント会場(23号館 221)

【セッション概要】2018年3月の第80回全国大会において紹介した,アジャイル開発の事例に即した契約は,スプリントごとの請負による個別契約とかかる個別契約をベースにした全体プロジェクトに関する緩やかな契約であったが,会場からの多くの意見を参考に,ユーザとベンダ双方がメリットを感じられる契約形態として準委任型をベースとした契約書の作成を試みた.今回はその契約書の紹介を行う.当事者(発注者・受注者)双方が,開発に関わるプレイヤー(プロダクトオーナー,ステークホルダー,開発チーム,スクラムチーム,スクラムマスター)とともに,刻々と変化するビジネス・技術環境等に応じてどのような役割を担い,どのような善管注意義務や協力義務を尽くべきであるのか,という点について,作成に携わった実務家と法律家がそれぞれの立場からの思いを語る.パネルでは基調講演をもとに,セッション参加者と共に日本におけるアジャイル開発の行方を探る.

司会:高岡 詠子 (上智大学 理工学部情報理工学科 教授)
【略歴】慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業,同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻博士課程修了,博士(工学).現在,上智大学理工学部教授.上智大学発ベンチャー「ソフィアメディカルインフォ(株)」代表取締役.専門分野は医療・看護・介護・福祉,環境,教育分野におけるWebアプリ/スマフォアプリ等開発と運用.2007年本会山下記念研究賞受賞,2013年度本会学会活動貢献賞受賞,主な著書:チューリングの計算理論入門,シャノンの情報理論入門(講談社ブルーバックス),「計算の科学と手引き(’19)」,「計算事始め('13)」および「情報科学の基礎('07)」(放送大学教科書).
9:35-10:05 基調講演 アジャイル開発の思想を契約にどう取り込むか?
市毛 由美子 (のぞみ総合法律事務所 パートナー弁護士)
【講演概要】企業取引で契約書を取り交わす目的は,合意内容を明確にして紛争を予防するとともに,万が一紛争が生じた時に権利・義務の構成により裁判を通じて目的を実現することにある.ところが,アジャイル開発の場合,合意内容は刻々と変容し,また,契約当事者(発注者・受注者)と,開発に関わるプレイヤー(プロダクトオーナー,ステークホルダー,開発チーム,スクラムチーム,スクラムマスター)が一致しないという特殊な環境のもと,合意内容の確定や権利・義務の構成は,通常のサービス取引の契約(請負,委任等)がすんなりあてはまらない.無理に典型契約をあてはめてしまうと,アジャイルの思想がなし崩しになりかねないリスクもある.このような中,本講演では,アジャイルの思想や現場のプラクティスを最大限尊重した望ましい契約を作るという難題にチャレンジしたチームの成果を発表し,会場からの意見をいただきながら,望ましい契約像を模索する.
【略歴】弁護士(第二東京弁護士会所属).中央大学法学部卒業.日本アイ・ビー・エム(株)法務部にて企業内弁護士として勤務後,都内法律事務所を経てのぞみ総合法律事務所パートナー.コンピュータ関連(ソフトウェアを含む)の取引法,知的財産権,独占禁止法,コンプライアンス関連の統制環境整備,株主総会,資本政策その他会社法関連,人事労務管理,営業秘密・個人情報管理,ベンチャー企業における法務戦略支援,研究開発関連法務等を手がける.著書として「基礎から学ぶSEの法律知識」(共著・日経BP社)他
 
10:05-11:30 実務家と法律家それぞれの立場から見た日本におけるアジャイル開発とそのモデル契約
【討論概要】アジャイルの準委任型の契約書作成に関する講演を聞いていただいたときに
アンケートを取り,その中からいくつか回答する形で進める
開発に携わる現場から実際に困っている点などを出していただき,それらが法的にどう解決できるのか,または解決できない場合は代替策があるのかなどの対話も期待出来る.
アジャイル開発における法的な対処内容が明らかになり,弁護氏業界とIT業界の共同理解が進むことを期待するとともに,将来,不確実性の高いビジネスへチャレンジする企業が増え,日本のデジタルトランスフォーメーションが促進することを期待する.
パネル司会:高岡 詠子 (上智大学)
【略歴】慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業,同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻博士課程修了,博士(工学).現在,上智大学理工学部教授.上智大学発ベンチャー「ソフィアメディカルインフォ(株)」代表取締役.専門分野は医療・看護・介護・福祉,環境,教育分野におけるWebアプリ/スマフォアプリ等開発と運用.2007年本会山下記念研究賞受賞,2013年度本会学会活動貢献賞受賞,主な著書:チューリングの計算理論入門,シャノンの情報理論入門(講談社ブルーバックス),「計算の科学と手引き(’19)」,「計算事始め('13)」および「情報科学の基礎('07)」(放送大学教科書).
パネリスト:市毛 由美子 (のぞみ総合法律事務所)
【略歴】弁護士(第二東京弁護士会所属).中央大学法学部卒業.日本アイ・ビー・エム(株)法務部にて企業内弁護士として勤務後,都内法律事務所を経てのぞみ総合法律事務所パートナー.コンピュータ関連(ソフトウェアを含む)の取引法,知的財産権,独占禁止法,コンプライアンス関連の統制環境整備,株主総会,資本政策その他会社法関連,人事労務管理,営業秘密・個人情報管理,ベンチャー企業における法務戦略支援,研究開発関連法務等を手がける.著書として「基礎から学ぶSEの法律知識」(共著・日経BP社)他
パネリスト:柴田 睦月 (小島国際法律事務所)
【略歴】中央大学法学部・中央大学法科大学院卒.2014年弁護士登録.同年より国内メーカーにて勤務し,海外へのインフラ輸出の契約交渉や,社内コンプラに携わる.2017年より,のぞみ総合法律事務所にて,独禁法案件,労働問題(企業側),国内訴訟等を多数担当した後,2019年8月より 小島国際法律事務所にて,渉外案件の他,M&A案件を手掛けている.
パネリスト:平岡 敦 (たつき総合法律事務所)
【略歴】1990年早稲田大学第一文学部哲学科卒業.2019年筑波大学大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻博士前期課程修了.修士(法学).1990年から(株)シーエーシーに勤務.2000年司法試験合格,2002年から弁護士(たつき総合法律事務所),現在に至る.日弁連弁護士業務改革委員会副委員長,第二東京弁護士会業革委員会委員長,情報処理推進機構(IPA)社会実装推進委員会委員・情報処理技術者試験委員,内閣府日本経済再生本部裁判手続等のIT化検討会委員等
パネリスト:和田 憲明 (アジャイルジャパン実行委員会)
【略歴】アジャイルジャパン実行委員(2015-2017は実行委員長).ITベンダー所属.2006年に社内でアジャイルコミュニティを作り普及活動を実施してきた.2011年からは,本業として社内のアジャイル支援活動に従事している.また,社外の様々なアジャイルコミュニティにも参加しており,日本でのアジャイルの潮流を長年肌で感じてきた.趣味はジャグリングを多くの人達に教えること.「ジャグリングは見るよりやる方が100倍面白いですよ」
パネリスト:中野 安美 (Agility Design株式会社 代表取締役)
【略歴】生保IT子会社にて生命保険分野のシステム開発にプロジェクトマネージャとして長年従事.2015年よりアジャイル開発,新規事業サービスデザインなどを社内で推進.その後,クラウドサービスベンダーを経て,アジャイル・クラウド開発を通じて,競争力のあるビジネス創出や働き方の改革を推し進めたい思いから,2019年9月AgilityDesign(株)を設立.AgileJapan2020実行委員長.
パネリスト:木下 史彦 (永和システムマネジメント アジャイル事業部 事業部長)
【略歴】2005年頃からエクストリーム・プログラミングを開発現場で実践.2010年には「価値創造契約」を提唱.現在は組織長であると同時に「アジャイルな開発を通じてハッピーな現場を増やす」ことをモットーにコンサルティング・コーチング活動にも従事.
監訳書:『アジャイルプラクティス』(オーム社),『アート・オブ・アジャイル デベロップメント』(オライリー)
パネリスト:居駒 幹夫 (青山学院大学)
【略歴】㈱日立製作所ソフトウェア事業部などで大規模ソフトウェア製品の品質保証,生産技術,プロセス改善,アジャイル開発での組織的な環境構築支援,品質保証方式策定などに従事.現在,青山学院大学社会情報学部学部特任教授.博士(情報学),はこだて未来大学客員教授,東京大学工学系研究科非常勤講師.