情報処理学会 第82回全国大会 会期:2020年3月5日~7日 会場:金沢工業大学 扇が丘キャンパス 情報処理学会 第82回全国大会 会期:2020年3月5日~7日 会場:金沢工業大学 扇が丘キャンパス
IoTに関する国際標準化動向と日本の取組み
日時:3月6日(金)12:40-15:10
会場:第2イベント会場(23号館 218)

【セッション概要】IoTの導入が進み、これまでネットワークとは無縁だった私たちの身近にあるものもネットワークに接続されるようになり、私たちの生活が大きく変わり始めています。このようにさまざまなものがネットワークにつながることによって新たな価値を生み出すことが期待されていますが、現在導入が進んでいるシステムは既存の技術の上に実装されているものがほとんどだと思われます。IoTには一般のITシステムでは特別考慮されていない条件などがあり、今後の幅広い導入に向けては、これらに対応したIoTにより適したシステムの実現が望まれます。本セミナーでは、IoTの実装が進むなか、これらに関する国際標準化における日本の取組みを解説します。

司会:伊藤 智 ((国研) 新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術戦略研究センター 電子・情報・機械システムユニット長)
【略歴】筑波大学にて博士号を取得.日立製作所にて計算機利用技術に関する研究に従事.2002年から産総研にてグリッド,グリーンIT,クラウド等の産業分野への応用研究,および研究マネージメントに従事.2013年6月から現在まで6年間情報処理学会標準化担当理事としてISO/IEC JTC 1国内対応を行う情報規格調査会技術委員会委員長を務める. 2017年からNEDOにて技術戦略立案に従事.
12:40-13:00 講演(1) IoT, スマートシティのデジュール国際標準化動向
櫻井 義人 (合同会社 国際さくらコンサルティング 代表社員(社長))
【講演概要】IoT及び,それに関連するデジュール国際標準化機関 (ITU-T, ISO,IEC等)の標準規格策定の現状と活用の方向性についての報告である.IoT関連の標準化は,いわゆるID (識別子:Identifier) の規格化と,そのIDを電子的に扱うことができるRFID (radio frequency identifier) の規格化から始まったと言える.その動きは2006年頃から始まり,センサーネットワーク,IoT,スマートシティへと領域は広がっていった.特にスマートシティは,IoTの活用がその実現手段と考えられており,IoT標準の応用先として捉えるべきである.
【略歴】1980年早稲田大学・理工学部・電気工学科卒業.同年(株)日立製作所入社.通信機器の開発設計に従事,広帯域交換機,光交換機,移動体基地局等の開発に関わるとともに,ITU(国際電気通信連合)のテレコム展示会への出展,通信関連国際学会(ICC,GLOBECOM等)での講演も行う.1999年より総務省国際部門対応,ITU窓口等を務め,同時に日立グループ全社の国際標準化活動とりまとめに従事.2017年9月定年退職.同年12月国際標準化コンサルタント会社「合同会社さくらコンサルティング」を起業.2020年現在同社代表社員.
 
13:00-13:20 講演(2) 国際標準化動向と日本の取組み
林 巧 (経済産業省)
【講演概要】標準とは何かを身の回りの例を使って簡単に説明したあと,国際標準と国際標準化活動のしくみを概説,そして,昨今の国際標準をめぐる環境の変化と最近の動向に触れ,ダイナミックに変化する国際情勢とその中で日本が進むべき方向性,経済産業省の取り組みについてお話します.
【略歴】埼玉大学大学院理工学研究科物理専攻修了(修士),山武ハネウエル(現アズビル)へ入社.18年間産業用近接センサの開発を担当した後,アズビルヨーロッパのドイツ支社に6年半駐在し現地スタッフとビジネスの立ち上げを経験.2019年4月から国際標準を学び,2019年7月より経済産業省国際電気標準課へ出向.
 
13:20-13:40 講演(3) ISO/IEC JTC 1における標準化動向
河合 和哉 (情報処理推進機構)
【講演概要】情報技術(Information Technology)の標準化は,国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の合同委員会であるJTC 1が担当しています.IoTの標準化は第41分科委員会(SC41)が担当しており,現在,日本からはこのSC41に3件のプロジェクトを提案して規格開発を積極的に推進しています.本企画では,この日本提案のプロジェクトについて,プロジェクトエディタを担当している3名を講師に迎えて,その概要を報告します.本講演では,各プロジェクトの紹介に先立って,JTC 1とSC41における標準化活動の最新動向を紹介します.
【略歴】1987年横浜国立大学大学院工学研究科電子情報工学専攻修了.同年松下通信工業(株)入社.2019年より(独)情報処理推進機構.2005年より2013年まで3rd Generation Partnership Project (3GPP)にて標準化活動に従事.2008年より(一社)情報処理学会情報規格調査会にてISO/IEC JTC 1の標準化活動に参画.2008年よりSC31(自動認識技術)専門員会WG6主査,2011年よりSC31専門委員会委員長.2017年よりSC41(IoTと関連技術)専門委員会委員長.また,2014年より情報規格調査会副委員長.
 
13:40-14:10 講演(4) IoTにおける信頼(trustworthiness)とその国際標準化
山田 朝彦 ((国研) 産業技術総合研究所 サイバーフィジカルセキュリティ研究センター 招聘研究員)
【講演概要】IoTシステムは,一般的に,システムオブシステムズやエコシステムであり,全体の管理主体がなく,部分の管理主体も定常的ではない.また,IoTシステムは,セキュリティ攻撃の対象になり易い傾向にあるIoTデバイスが多数サイバー空間につながっている.その結果,IoTシステムのセキュリティの構築・維持は,複雑であり,容易ではない.また,IoTシステムの適用分野は製造現場から家庭生活に及ぶため,セキュリティだけでなく,セーフティやプライバシーへの対応も重要であり,それらの相互関係は複雑である.IoTの分野では,セキュリティ・セーフティ・プライバシーなどを併せて,trustworthinessと定義している.SC 41におけるtrustworthinessに関わる国際標準化の状況を報告する.
【略歴】1986年(株)東芝入社以来,言語処理系,システムのセキュリティ開発に従事.2005年以降,ISO/IEC JTC 1/SC 27(情報セキュリティ)及びSC 37(バイオメトリクス)で両分野に跨る国際標準の編集者を担当.2014年度から3年間,産業技術総合研究所で,バイオメトリクス製品のセキュリティ評価の経済産業省事業を実施.2017年度から2年間,情報処理推進機構で,SC 41(IoTと関連技術)のIoT trustworthinessの構築・維持プロセスのプロジェクト編集者を担当.
 
14:10-14:40 講演(5) IoTにおける相互運用性とその国際標準化
山下 蘭 (株式会社 東芝 研究開発センター 主任研究員)
【講演概要】IoT(Internet of Things)では,様々なモノとシステムをネットワークで接続し,情報交換することにより新たなサービスの提供や価値の創造を実現する.異なるシステムを相互接続する複合型システムや,モノとシステム双方で相互接続する際に,相互運用性(Interoperability)が確保されていることが大前提となり,相互運用性はIoTの標準化の重要課題である.本講演は,IoT相互運用性の自動実現技術と国際標準化について紹介する.
【略歴】(株)東芝・研究開発センターに従事.情報工学修士.オントロジー,モデルベース設計とシステム開発,データ相互運用の研究開発に従事.ISO及びIEC国際標準開発活動を推進.2012年IEC 1906賞を受賞.2014年スマートグリッド共通情報モデル国際標準(IEC62656-3 IS)開発プロジェクトリーダー.2017年よりIEC SC3D国際議長.2018年よりISO/IEC JTC1/SC41(IoT)エキスパート.IoT相互運用性関連国際規格開発に参画し,ISO/IEC 21823-4 (Syntactic interoperability)提案とプロジェクトエディター.IEEE会員.
 
14:40-15:10 講演(6) ユースケースの分析に基づくIoTプラットフォーム(IoT DEP)とその国際標準化
横谷 哲也 (金沢工業大学 工学部 電気電子工学科 教授)
【講演概要】多様なIoTのサービスやそれを実現するための技術が広く議論されている.特に,国際標準化機関においては,標準化策定後の普及も視野に入れて活発に議論されている.この中で幾つかの国際標準化機関では,実際の導入を意識したユースケースの収集と分析及びそれに基づく要求条件の抽出が行われている.本講演では,最初にIoTに関する国際標準化のユースケースの収集及び分析について状況を報告する.特に,講演者が参加しているISO/IEC JTC1/SC41に焦点を充てる.次に,それらのユースケースの分析を通じて得られる要求条件について述べる.更に,その要求条件を満たすコンセプトとして現在ISO/IEC JTC1/SC41に日本が提案しているIoT Data Exchange Platform (IoT DEP)と呼ばれるIoTプラットフォームについて紹介する.このプラットフォームは,既存のインタネットインフラストラクチャ上でIoTサービス特有の大量の微小なパケットに効率的な転送を実現する.本報告では,このIoT DEPの機能構成及び運用形態について述べる.更に,今後の国際標準化のプロセスについても触れる.
【略歴】1987年 東京理科大学大学院 理工学研究科 情報科学専攻 修士課程了 同年 三菱電機(株)入社.同社情報技術総合研究所にて高速LAN,光アクセスシステム,ホームネットワークの研究開発に従事.また,関連分野の国際標準化を推進する.IEEE802, ISO/IEC JTC1/SC6, ITU-T SG15等の活動に参加.同研究所課長,部長職を経て,2012年 同社開発本部開発業務部で国際標準化・産学官連携推進グループマネージャー.2015年 金沢工業大学 工学部 教授として着任.以来,IoTシステムの研究・教育・国際標準化に従事.現在,ISO/IEC JTC1/SC41に参加し,プロジェクトエディタを務める.