歩行者シミュレーションの代表的なモデルとして、HelbingのSocial forceモデルなどがあるが、これらのモデルは現実世界の歩行者の行動を十分に再現できているとは言えない。そこで本論文では、まず、速度や位置座標などを含む、歩行者の実際の歩行データから、ある歩行者とその周囲の他の歩行者との位置関係と、歩行者のその後の動きの関係性について分析した。その結果、歩行者は対向者が目の前にいるときには対向者を避けるような動きをし、対向者とすれ違ったあとはよける前の進行ルートに戻るため、むしろ対向者に近づく動きをすることが分かった。この分析をもとに、既存のモデルよりも現実世界の歩行者の行動と近い動きをするシミュレーションの作成を行った。