情報処理学会 第80回全国大会 会期:2018年3月13日~15日 会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 情報処理学会 第80回全国大会 会期:2018年3月13日~15日 会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス
特別講演 IPSJ-ONE
日時:3月15日(木)15:30-17:30
会場:第1イベント会場(57号館 201)
【セッション概要】情報処理学会には多数の研究会がある一方,異分野で現在注目されている研究を知る機会は少ない.本企画では,多様な研究分野を垣根なく俯瞰するため,各研究会に対し,優れた研究を遂行しておりプレゼン力も高い,若手を中心とした研究者を推薦する形式で募集し,招待講演者を厳選する.講演内容も,専門家のみならず,高校生,学部生,他分野の聴衆が理解しやすいよう配慮する.本企画を通じて,異分野交流など研究の発展に向けたコラボレーションや展開を作り出していく場の構築を目指す.マスメディア・ネットメディア,動画中継,ステージ演出を含め,研究者の将来にも繋がる情報発信や,人脈形成に向けた多数のアウトリーチを予定している.
司会:森勢 将雅 (山梨大学 大学院総合研究部 准教授)
【略歴】2008年和歌山大学大学院システム工学研究科博士課程修了.博士(工学).関西学院大学大学院理工学研究科博士研究員,立命館大学情報理工学部助教,山梨大学大学院総合研究部特任助教を経て2017年4月より現職.主に音声・歌声情報処理に関する分野横断型の研究に従事.2010年のエイプリルフールネタとして始めたオープンソース音声合成システムWORLDの研究は,気が付けば自身最大の成果となる.意外にも,色々な賞を受賞する機会に恵まれた.
司会:五十嵐 悠紀 (明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 専任講師)
【略歴】2010年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).2010年より日本学術振興会特別研究員PD,2013年よりRPDとして筑波大学に所属.2015年より明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科専任講師.コンピュータグラフィックスやユーザインタフェースに関する研究に従事.2016年よりJSTさきがけ研究員.Yahoo!ニュース個人,日本ビジネスプレス,オーサー.

[研究会推薦]

 
研究会推薦:招待講演(1) 深層学習が変える画像処理・編集
[コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会]
飯塚 里志 (早稲田大学 理工学術院総合研究所 研究院講師)
【講演概要】近年,深層学習はあらゆる分野で目覚ましい成果をあげています.画像処理においても,深層学習をうまく応用することでコンピュータが画像から意味のある情報を効果的に「学習」し,これまで人間の手作業でしかできなかった複雑な画像変換を再現できるようになります.この技術は現在世界中で盛んに研究が行われており,今後も急速に発展していくことが予想されます.本講演では私のこれまで取り組んできた研究の中から,深層学習を用いて昔の白黒画像を自動でカラー画像に変換する技術や,画像の一部を自然に修復する「画像補完」の研究を紹介します.
【略歴】早稲田大学理工学術院研究院講師.2015年筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了.日本学術振興会特別研究員(DC1),2015年4月より早稲田大学に勤務.コンピュータグラフィクス,特に画像生成・編集に関する研究に従事.経済産業省Innovative Technologies 2016 特別賞「Culture」など受賞.
 
研究会推薦:招待講演(2) 視覚と言葉をつなげる技術
[コンピュータビジョンとイメージメディア研究会]
牛久 祥孝 (東京大学 大学院情報理工学系研究科 講師)
【講演概要】近年の機械学習技術の発展とコモディティ化によって,かつては独立に扱われていた視覚や言葉といったモダリティのデータを融合し,理解・生成するような研究が大きな広がりを見せつつある.それらの研究では,単に画像や動画の中のヒトやモノにラベルを付けるのではなく,人と同じように言葉で画像や動画を理解し,説明し,検索や生成を試みる技術が提案されている.本講演では,画像や動画といった視覚的なデータと,自然言語とを融合した挑戦的かつ萌芽的な取り組みについて紹介する.
【略歴】2013年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.2013年日本学術振興会特別研究員およびMicrosoft Research Redmond Intern.2014年NTTコミュニケーション科学基礎研究所入所.2016年より東京大学情報理工学系研究科講師,現在に至る.主として画像キャプション生成や画像認識,クロスメディア理解の研究に従事.2011年ACM Mutlimedia Grand Challenge Special Prize,2012年電子情報通信学会パターン認識・メディア理解研究会研究奨励賞等受賞.
 
研究会推薦:招待講演(3) 強いセキュリティほど望ましい? ~データの保護と利活用との両立に向けて~
[コンピュータセキュリティ研究会]
江村 恵太 (情報通信研究機構 サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室 主任研究員)
【講演概要】一般的に「セキュリティは高ければ高いほど良い」という風潮があり,そのため「如何に強いセキュリティを実現するか?」という観点で主に研究が進められている.しかし全ての情報を秘匿可能な最強の安全性を達成してしまうと,サービス向上や悪用防止に有用な情報をも同時に秘匿してしまう.そのため用途に応じてセキュリティと機能とのバランスを取ることが求められる.本発表では,データの保護と利活用との両立に向けて,暗号文を加工可能な準同型暗号の安全性とその応用について紹介する.
【略歴】2004年3月金沢大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了.同年より(株)富士通北陸システムズ勤務.2010年4月北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)情報科学研究科博士後期課程修了.博士(情報科学).2010年4月から2011年3月までJAIST研究員.2012年4月情報通信研究機構(NICT)研究員.14年10月より同主任研究員,現在に至る.暗号理論とその応用研究に従事.暗号と情報セキュリティシンポジウム2012イノベーション論文賞,コンピュータセキュリティシンポジウム2016最優秀論文賞,2017年度山下記念研究賞等受賞.
 
研究会推薦:招待講演(4) 出会い系タンパク質を探す旅
[バイオ情報学研究会]
大上 雅史 (東京工業大学 情報理工学院情報工学系 助教)
【講演概要】情報科学は様々な分野へと応用されているが,生命科学分野でも情報科学の重要性は増すばかりである.計算機・計算技術と実験機器・実験技術の急速な進展が相乗し,ある遺伝子やある生体分子といった個別の研究を超えて,遺伝子集団や生体分子集団といった集団の網羅的な解析研究が現実のものとなった.本講演ではタンパク質の集団に注目し,タンパク質の出会い=タンパク質間相互作用という生命現象にどのように情報科学で切り込んでいくか,その事例を紹介する.
【略歴】2014年東京工業大学大学院情報理工学研究科博士課程修了,博士(工学).2011年から2015年まで日本学術振興会特別研究員DC1およびPD,2015年から東京工業大学大学院情報理工学研究科助教,2016年に改組による所属変更,現在に至る.バイオインフォマティクス,創薬情報学,計算生物物理,ハイパフォーマンスコンピューティングに関する研究に従事.第4回日本学術振興会育志賞受賞.日本生物物理学会理事.情報処理学会,日本生物物理学会,日本バイオインフォマティクス学会,日本蛋白質科学会,情報計算化学生物学会,ISCB,ACM SIGBio各会員.
 
研究会推薦:招待講演(5) ロボットのソフトウェア部品を交換して性能アップ!
[組込みシステム研究会]
大川 猛 (宇都宮大学 大学院工学研究科情報システム科学専攻 助教)
【講演概要】最近のロボット開発の多くの部分はソフトが占め,新機能(画像認識・AI)を実現するためのカギになっています.一方,新しいロボットを開発する時に,全てを最初から作ると時間がかかります.そのため既存の部品を容易に再利用して開発期間を短縮する,新しい開発方法が必要です.更に,普通のソフトでは性能不足の場合,FPGA・GPUといったアクセラレータ(処理加速)の「ハードウェア部品」で高性能化が可能です.この講演では,ロボット開発におけるソフトウェア部品化(ROS)の技術を紹介し,更に「ハードウェア部品化」によって,ソフト・ハードの部品を簡単に交換して性能向上するための研究について紹介します.
【略歴】2003年東北大学大学院工学研究科電子工学専攻修了(博士(工学)).同専攻でポスドクをつとめた後,2004年に産業技術総合研究所に入所.以来,組込みシステム向けのFPGAを用いたソフトウェア・ハードウェア協調システム設計手法に関する研究に従事.2009年からベンチャー企業の(株)トプスシステムズにおいてマルチコアプロセッサシステムに関する研究開発を行った後,2011年12月宇都宮大学大学院工学研究科情報システム科学専攻助教となり,FPGAのロボット応用に関する研究を進めている.
 
研究会推薦:招待講演(6) デジタルとフィジカルを融合するインタフェース
[ヒューマンコンピュータインタラクション研究会]
尾形 正泰 (産業技術総合研究所 情報技術研究部門メディアインタラクション研究グループ 研究員)
【講演概要】ヒューマンインタフェースの研究は,これまでマウス・キーボードからタッチスクリーンまで使いやすいデザインを追求してきました.センシング技術とアクチュエータ制御を用いた設計によって,コンピュータが扱える情報の範囲は物理世界にも広がってきています.最終的にはデジタルとフィジカルの垣根がなくなることで,ユーザはデジタルであるかどうかを意識せずに情報をあつかうようになるでしょう.この講演では,センシング技術によって身体の一部をタッチパッドに変える皮膚インタフェースや,空間を自在に動き回ったり自律的に組み上がるインタラクティブな紙インタフェースなどをアプリケーションとともに紹介します.
【略歴】慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了.博士(工学).Microsoft Research Asia Fellowship Award,ACM SIGCHI Best Paper Honorable Mention,日本バーチャルリアリティ学会論文賞・学術奨励賞,経済産業省 Innovative Technologies等受賞.物理現象や計測技術を活用したヒューマンインタフェースを研究.
 
研究会推薦:招待講演(7) 屋内で位置を推定する技術
[モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会]
梶 克彦 (愛知工業大学 情報科学部情報科学科 准教授)
【講演概要】みなさんは日常的にスマートフォンを通して経路検索やナビゲーションといった位置情報サービスを活用していると思います.また,IngressやポケモンGOなど位置情報ゲームも大流行しています.これらは,スマートフォンの位置を推定する技術がベースとなっています.屋外では主にGPSによって位置推定が行われますが,屋内ではGPSの電波が届かずGPSでは位置を求められません.我々はこれまで,スマートフォンに搭載された様々なセンサ(加速度・角速度・磁気・気圧・Wi-Fiなど)を用いて,屋内でユーザの位置を求める技術を開発してきましたので紹介します.
【略歴】2002年名古屋大学工学部電気電子・情報工学科卒業.2007年同大学大学院情報科学研究科博士課程修了.博士(情報科学).NTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチアソシエイト,名古屋大学大学院工学研究科助教を経て,2015年より愛知工業大学情報科学部准教授.屋内位置推定,遠隔コミュニケーション支援等の研究に従事.山下記念研究賞を2年連続受賞,情報処理学会論文賞2回受賞,DICOMO最優秀論文賞2回受賞等,受賞多数.
 
研究会推薦:招待講演(8) 悪いのは誰?:スマホ消費電力の見える化
[コンシューマ・デバイス&システム研究会]
神山 剛 (株式会社NTTドコモ サービスイノベーション部 社員)
【講演概要】ガラケーからスマホの時代になり,アプリの選択肢が増えたことでスマホを通じて本当に色んなことができるようになりました.でも,「電池がもたなくなった」と感じる方も多いのではないでしょうか.では,何が電池をくっているのでしょうか.いうまでもなく電池のエネルギーはハードウェアで消費されます.しかし,ハードウェアはソフトウェアに制御されて動きます.さらに,アプリは皆さんに使用されて動きます.結局,電池持ちが悪いのは何が「原因」なのでしょうか.本発表では,スマホの省電力化を実現するため,ソフトウェアによる消費電力とその原因を「見える化」する技術を紹介します.
【略歴】2003年(株)イージス代表取締役,2006年同社退社,東京大学新領域創成科学研究科修士課程修了を経て,同年NTTドコモ入社.先進技術研究所(〜2016),サービスイノベーション部(〜現在)にて,モバイルコンピューティング,ソフトウェア省電力化,分散システム,ユーザ行動センシング,デジタルマーケティングに関する研究に従事.また,現在社会人学生として九州大学博士後期課程に在籍中.情報処理学会正会員.
 
研究会推薦:招待講演(9) ビッグデータを瞬時に計算する
[データベースシステム研究会]
塩川 浩昭 (筑波大学 計算科学研究センター 助教)
【講演概要】ビジネスや医療,スポーツなどの幅広い分野においてデータ分析技術の活用が成功を収めており,時々刻々と生み出される大規模なデータを高速高精度に分析処理することの重要性についてはもはや疑いの余地がありません.しかしながら,例えばノートパソコンが1台与えられた時,1億件以上のレコードを持つ極めて大規模なデータを3分以内に処理することは可能なのでしょうか?我々はこの問いに答えるべく,誰しもが大規模データ処理が可能な世界を目指したアルゴリズム・システムの研究開発を行っています.本講演ではデータの繋がりを分析する「グラフデータ処理」を題材に,その高速な分析技術に関する研究成果をご紹介します.
【略歴】2009年筑波大学第三学群情報学類卒業.2011年同大学院システム情報工学研究科博士前期課程修了.2011年4月から日本電信電話(株)勤務の後,2015年筑波大学大学院博士後期課程修了,博士(工学).2015年より,筑波大学計算科学研究センター助教.データベース,データマイニング,特に大規模グラフ分析アルゴリズムの高速化に関する研究に従事.情報処理学会,日本データベース学会,ACM,AAAI各会員.
 
研究会推薦:招待講演(10) 騙し騙され音声合成
[音声言語情報処理研究会]
高道 慎之介 (東京大学 大学院情報理工学系研究科 特任助教)
【講演概要】音声合成は,人とコンピュータの超コミュニケーションを可能にする.容易に他人になりすます事さえ可能にする.一方で,そういう「声のなりすまし」を検出するセキュリティ技術が存在する.音声合成の研究者として,せっかく作った音声をセキュリティで弾かれてしまったらつまらない.ならいっそ,セキュリティを騙すように音声合成を作ればいいのである.本発表では,そういう「なりすましセキュリティを騙すための音声合成」を紹介する.
【略歴】2016年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了.博士(工学).同年より東京大学大学院情報理工学系研究科特任助教(現職).音声合成変換を主とする音声研究者.日本音響学会独創研究奨励賞板倉記念など,10以上の論文・研究業績賞を受賞.
 
研究会推薦:招待講演(11) わざと間違えるコンピュータ
[システムとLSIの設計技術研究会]
多和田 雅師 (早稲田大学 基幹理工学部情報通信学科 助教)
【講演概要】半導体上で複雑な演算器を実現すると回路面積や消費電力をはじめとする膨大なハードウェアリソースが必要となる.演算結果にあえて誤りを注入する設計により,必要なハードウェアリソースを削減できることが知られている.特にStochastic Computingと呼ばれる設計方針は演算の対象となる情報を細切れにして処理することで複雑な構造を排除しハードウェアリソースを劇的に削減する.Stochastic Computingで実装された演算器は,部分として決定的で不正確に演算し,全体として確率的に演算し正解に近い結果を出力する.本発表ではStochastic Computingの最新の研究について紹介する.
【略歴】2015年早稲田大学大学院基幹理工学研究科情報理工学専攻博士後期課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員(DC1).2015年より早稲田大学基幹理工学部情報通信学科助教.メモリ符号化技術とLSI設計技術を研究.2017年度情報処理学会コンピュータサイエンス領域奨励賞受賞.
 
研究会推薦:招待講演(12) 人生は「ロール・プレイング」~演技を引き出すシステム設計
[エンタテインメントコンピューティング研究会]
福地 健太郎 (明治大学 総合数理学部先端メディアサイエンス学科 准教授)
【講演概要】公共の場や音楽フェスティバルに設置されるようなエンタテインメントシステムの研究開発においては,恥ずかしがりやのお客様をシステムが提供する世界にどうやって引きずり込むかが常に課題となります.その解決のために私がずっと追いかけている手法の一つが,その世界における「役割」をお客様にさりげなく提供すること.これまでの研究でわかってきた,私達ニンゲンがどうやって自己を認識し,画面上の「役割」にどうなじんでいくのか,その過程を追った研究を紹介します.
【略歴】2004年東京工業大学大学院情報理工学研究科博士後期課程単位取得退学.博士(理学).電気通信大学大学院情報システム学研究科助教,(独)科学技術振興機構ERATO 五十嵐プロジェクト研究員,明治大学理工学部特任准教授を経て,2013年より現職.ユーザーインタフェースや知覚心理学,エンタテインメント応用に興味を持つ.主な作品に「EffecTV」.
 
研究会推薦:招待講演(13) 人とコンピュータとの協働
[グループウェアとネットワークサービス研究会]
福島 拓 (大阪工業大学 情報科学部情報メディア学科 特任講師)
【講演概要】情報技術を用いた多言語間対話支援においては機械翻訳が多く用いられているが,翻訳文の正確性の担保が困難であるため,医療分野のような高い正確性が求められる対話支援においては「用例対訳」と呼ばれる多言語のテキストコーパスが多く使用されている.用例対訳は複数の専門家によって作成・評価がなされているため,正確性が非常に高いが,入力された全ての文をリアルタイムで翻訳することは難しい.このような用例対訳を活用するための取り組みとして,人が得意な作業とコンピュータが得意な作業を分け,協働することで,リアルタイム性を高めつつ正確な意思疎通を可能とした例を紹介する.
【略歴】2013年和歌山大学大学院システム工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).静岡大学大学院工学研究科助教を経て,2016年より現職.協調作業支援,モチベーション維持支援,多言語間コミュニケーション支援に関する研究開発に従事.情報処理学会DICOMO2012シンポジウム,DICOMO2017シンポジウムにおいて最優秀論文賞受賞など.
 
研究会推薦:招待講演(14) 手と身体と会話のことば学
[アクセシビリティ研究会]
坊農 真弓 (国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授)
【講演概要】私たちは毎日誰かと言葉を交わし,会話する.会話は私たちの日常生活を構成するなくてはならないものだろう.言語学はかつて,ソシュールやチョムスキーといった偉大な言語学者により,その目指すべき道が定められた.しかしその範疇には,手や身体や会話は含まれていない.近年のことばに関わる研究では,会話におけるジェスチャーや身体の動きが頻繁に研究されている.本講演では,ロボット演劇でみられたロボットと俳優の身体の動き,祭りでみられた縄を結ぶときの手の動き,手話の中で見られた手と口の動きなど,ことばに関わる動きに注目する.会話の中で手と身体が紡ぎ出すことばが私たちの日常生活をどのように彩っているのかを紹介する.
【略歴】2005年神戸大学大学院総合人間科学研究科博士課程修了.ATRメディア情報科学研究所研究員,京都大学大学院情報学研究科研究員,日本学術振興会特別研究員(PD),米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員ポスドク研究員,米国テキサス大学オースティン校客員研究員を経て,2009年より国立情報学研究所・総合研究大学院大学助教.2014年より同准教授.2016年4月-2017年3月蘭国マックスプランク心理言語学研究所客員准教授.多人数インタラクション研究および手話相互行為研究に従事.博士(学術).受賞:平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞,他多数.
 
研究会推薦:招待講演(15) コンピュータと人間による合奏: 人と息を合わせて演奏するとは
[音楽情報科学研究会]
前澤 陽 (ヤマハ株式会社 研究開発統括部 第1研究開発部 音楽AIグループ 主事)
【講演概要】憧れの演奏者と一緒に息の合った合奏をしたい -- このような,楽器演奏者の夢を実現するため,我々は計算機と人間の間で合奏を行うための研究を行っています.破綻なく合奏するには,人間と同じように,計算機が演奏者を見て聞いて,意図を汲み取り先を読み,自然な演奏や仕草で合わせる必要があります.また,ステージでの本番では失敗が許されません.このような多彩かつ自然な応答を実現するにはどうすればよいのでしょう.本講演では,多くのライブ運用やヒアリングを通じて得られた,計算機による合奏において必要な要素技術と今後の展開について,実演奏を交えながら解説します.
【略歴】2011年京都大学情報学研究科修士課程修了.同年ヤマハ(株)入社.2015年社会人博士として京都大学情報学研究科博士後期課程修了.博士(情報学).楽曲解析技術の研究開発・製品化,自動伴奏技術の研究開発等に従事.東京藝大と共同で実施した,ベルリン・フィルのメンバーと,自動伴奏技術によりライブ演者として復元された20世紀の巨匠ピアニスト,スビャトスラフ・リヒテルの室内楽コンサートは国内外で話題となった.情報処理学会山下記念研究賞(2015),情報処理学会音楽情報科学研究会ベストプレゼン賞(2016,2017)等多数受賞.情報処理学会,音響学会,ACM各会員.
 
研究会推薦:招待講演(16) 「自立」したWebシステムを創る.自分の好きなことをする世界を目指して.
[インターネットと運用技術研究会]
吉川 竜太 (クックパッド株式会社 インフラストラクチャー部SREグループ エンジニア)
【講演概要】僕の望む世界は,みんながそれぞれ好きなことをできる世界です.しかし,今の世界では,自分の好きなことだけをして生きていくのは,なかなか難しいことだと思っています.みんながそれぞれ好きなことをするために,まず,僕自身の仕事をなくしてみようと考えてみました.今回は,僕の望む世界に僕の力で一歩でも近づくために,僕自身の仕事を無くすような,「自立」して動くWebシステムアーキテクチャについて語ります.
【略歴】クックパッド(株)のSite Reliability Engineer.18歳の頃より大学に通いながらインフラ構築・運用専門の会社で様々な条件・規模のシステム設計・構築・運用を6年間に渡り経験した.2017年からはクックパッド(株)にて,大規模Webサービスのシステム設計・構築・運用はもちろん,アプリケーションレイヤでのチューニングやミドルウェア開発など,サイトの信頼性に関わる全てのレイヤを責任範囲としている.July Tech FestaやOSCを始め,様々な技術者コミュニティの勉強会に登壇.興味のある分野は時系列データベース・ロードバランサ・モニタリング.