情報処理学会 第80回全国大会 会期:2018年3月13日~15日 会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 情報処理学会 第80回全国大会 会期:2018年3月13日~15日 会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス
工芸から科学へ − CG技術の新たな挑戦 −
日時:3月15日(木)9:30-12:00
会場:第2イベント会場(57号館 202)
【セッション概要】映像産業等において飛躍的な発展を遂げてきたコンピュータ・グラフィックス(CG)の技術は,近年その活躍の舞台を工業製品・芸術作品などの分野から,数学,物理学,化学,医学,認知科学等の諸分野に拡大しつつある.本イベントでは,その中でも異分野が融合する学際的なプロジェクトで活躍している研究者,およびサイエンス分野でのビジネスを展開している経営者の方々に,その新たな研究動向,異分野との協業体制,製品開発での体験談,および科学分野におけるインパクトなどについて語っていただく.本企画では,これからCGの研究を志す人,自身の研究にCG技術の導入を検討している人,および現在CGに取り組んでおりサイエンス分野での起業を考えている人や新分野の開拓を目指す人などに,大いに参考となる講演会およびパネル討論会を開催する.
司会:土橋 宜典 (北海道大学 大学院情報科学研究科 准教授)
【略歴】1992年,広島大学工学部卒業.1994年,同大大学院工学研究科博士課程前期修了.1997年,同大博士課程後期修了.同年,広島市立大学情報科学部助手.2000年,北海道大学大学院工学研究科助教授.2004年,同大大学院情報科学研究科助教授.2008年,同大大学院情報科学研究科准教授.工学博士.主としてコンピュータグラフィックスに関する研究に従事.Eurographics Best Paper Award,芸術科学会国際CG大賞特別賞,文部科学大臣表彰科学技術賞他.
9:30-9:45 講演(1) 質感とCG
土橋 宜典 (北海道大学 大学院情報科学研究科 准教授)
【講演概要】CGにおけるコアな研究分野は写実的な画像の生成であるが,これを実現するための重要な要素が質感の表現である.仮想物体の質感を決定する要素には様々なものがある.例えば,反射・透過特性,物体表面の微細形状,光源の情報などがある.CGではこれらの要素を物理的に正確にシミュレーションすることでリアルな質感を表現することが行われている.本講演では,それらの質感表現技術について概説する.
【略歴】1992年,広島大学工学部卒業.1994年,同大大学院工学研究科博士課程前期修了.1997年,同大博士課程後期修了.同年,広島市立大学情報科学部助手.2000年,北海道大学大学院工学研究科助教授.2004年,同大大学院情報科学研究科助教授.2008年,同大大学院情報科学研究科准教授.工学博士.主としてコンピュータグラフィックスに関する研究に従事.Eurographics Best Paper Award,芸術科学会国際CG大賞特別賞,文部科学大臣表彰科学技術賞他.
 
9:45-10:00 講演(2) 数学とCG
鍛冶 静雄 (山口大学 創成科学研究科 准教授)
【講演概要】線形代数や流体力学を始めとして,CGには様々な数学が用いられていますが,数学を研究する立場からCG研究はどう映るのでしょうか.海外では意外にも古くから,また日本でも最近は,離散微分幾何学といった新しい数学の源泉としてCGが認識されてきています.数学には「役に立たないほど高等だ」という考え方と同時に,歴史的に物理や工学にアイデアの起源を見つけてきたという二面性があります.CGと数学の関わりについて,トポロジーの研究者である私個人の経験を中心にお話したいと思います.
【略歴】2007年京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻修了,博士(理学).2007-2008年日本学術振興会特別研究員PD,2008-2010年福岡大学理学部応用数学科助教,2010-2016年山口大学大学院理工学研究科講師,2013年9月-2015年8月英国サウサンプトン大学Visiting Research Fellow(日本学術振興会海外特別研究員),2016年4月より現職.2016年10月より科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者(数学協働領域),2017年4月より山口大学時間学研究所兼務所員,を兼任.
 
10:00-10:15 講演(3) 化学とCG
羽生 雄毅 (インテグリカルチャ−株式会社 最高経営責任者)
【講演概要】CGは以前より科学コミュニケーションに欠かせないツールとして使われてきました.その持ち前の表現力で科学を見せるだけでなく,「魅せる」ためにもサイエンスCGという概念が生まれました.近年はVR/ARへの展開も大いに期待されています.芸術的表現を駆使して一般向けに魅せることも重要ですが,サイエンスCGの表現力を,論文図画,学会発表,科研費申請資料,学内研究報告,教材など,日々の研究現場でも活用できるのではないでしょうか.こうした科学コンテンツの層の厚さは研究成果の国際発信力にも繋がるでしょう.研究者自身が日々の研究でCGの表現力を使うには,1) 関連ソフトが無料であること,2)実験等で使うソフトとのデータ互換性,3)サイエンスCGに特化したCG制作技術の習得方法,が必要です.当日はこの3つを意識したSCIGRAでのサイエンスCG制作と教育「サイエンスCG塾」の取り組みや,3Dプリンター,VR/ARへの展開の可能性も交えてご紹介します.
【略歴】2010年,オックスフォード大学博士(化学),東北大学多元物質科学研究所,東芝研究開発センター,システム技術ラボラトリーを経て,2014年,細胞農業の有志団体“Shojinmeat Project”およびビジュアル科学コミュニケーションサービス“SCIGRA”を立ち上げ,2015年にインテグリカルチャー(株)を設立.2017年,米国シンギュラリティ大学主催の“Japan Global Impact Challenge”に優勝,シリコンバレーでのGlobal Solutions Programに日本人として初めて参加.化学・バイオ分野でのCG制作のほか,一般の研究者が日々使える3DCG技術の普及と研究成果の国際発信力の強化を目指し,研究者向け特化の「サイエンスCG塾」を運営している.
 
10:15-10:30 講演(4) 医療とCG
瀬尾 拡史 (株式会社サイアメント 代表取締役社長)
【講演概要】ヘッドマウントディスプレイを使ってARやVRで臓器を再現!格好良さそうですね!! 3Dプリンタで実物大の臓器模型を作って勉強!楽しそうですね!! …意味がわかりません.まずそもそも,医用画像からの特定の臓器の正確な抽出は今も発展段階です.抽出しやすい臓器もありますが,患者さんごとに構造や状態の異なる臓器を(妥当な範囲で)正確に抽出するのはそんなに簡単ではありません.また,仮に臓器の3DCGデータを作ることが出来たとして,VRでただ周りから眺めるだけで十分に有用な情報を得ることが出来るのでしょうか?3Dプリンタで出力した模型は,一度切開したり切断したりしてしまうと,元の状態には戻れません.各臓器の典型例を量産するならまだしも,患者さんごとの臓器模型を1つ1つ手間暇かけて作る余裕が本当にあるのでしょうか?CTやMRIなどの医用画像と3DCGとの融合のためには長い道のりがあり,何が出来て,何が出来ないのか,出来るとしても,何に時間がかかり,どんなことなら短時間で出来るのか,というようなことを治療現場の目線で考えられることが何よりも大切です.3DCGで出来ること,出来ないことを,具体的なデモも交えながらお話したいと思います.
【略歴】1985年東京生まれ,2004年筑波大学附属駒場高等学校卒業,2010年東京大学総長賞・総長大賞受賞,2011年東京大学医学部医学科卒業,医師,2013年東京大学医学部附属病院初期臨床研修修了,(株)サイアメント代表取締役社長就任,2014年総務省「異能vation」事業本採択第1期,2015年SIGGRAPH Computer Animation FestivalにてBEST VISUALIZATION OR SIMULATION受賞,2016年京都造形芸術大学客員教授就任,大隅良典先生のノーベル賞受賞記念レクチャー用CG映像制作,2017年東京大学大学院情報理工学系研究科五十嵐健夫研究室学術支援専門職員.
 
10:30-10:45 講演(5) レオロジーとCG
楽 詠灝 (東京大学 大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻 助教)
【講演概要】「Panta rhei — 万物は流転する」この言葉はレオロジー(rheology)の語源と言われている.レオロジーは,物体変形や流動一般に関する学問分野である.食品や絵の具,潤滑油,体液,マントルなどのほとんどの物体は,元の形に戻ることのできる弾性的な振る舞いと,元の形に戻らない塑性的な振る舞いの中間の性質を示す.例えば,ケーキを生クリームでデコレーションできるのは,重力程度の弱い力ではクリームはその形状を保つのに対し,大きな力で絞り出し袋から押し出すと流動して元の形に戻らなくなるためである.弾性や流動性の度合いは,材質に応じて大きく変わり,物性の理解は食品科学,工業,医療,地球科学などの幅広い分野に役立つが,その正確な理解はしばしば難しい.一方で,CGでは視覚的挙動の再現が主目的であり,計算物理ほどの精度は必ずしも要求されず,基本特性を捉えれば研究として成立することもしばしばある.そこで,CGを通過点としてレオロジーを研究することにより,双方の分野が発展することが期待される.本イベントでは,その可能性について論じていきたい.
【略歴】東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻助教.2011年同大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻博士後期課程修了.博士(情報理工学).光学や流体などの物理シミュレーションやその形状設計への応用等を中心にコンピュータグラフィックスの研究に従事.日本学術振興会海外特別研究員として米国コロンビア大学に滞在している際に,物質点法(Material Point Method)と呼ばれる連続体力学の数値計算技法を利用し,クリームなどの非ニュートン流体のシミュレーション手法を開発した.以後,レオロジー分野の研究者等とともに,その発展手法の研究に取り組む.2011年度情報処理学会山下記念研究賞受賞.
 
10:45-11:00 講演(6) スパースモデリングと可視化
藤代 一成 (慶應義塾大学 大学院理工学研究科情報工学専修 主任教授)
【講演概要】講演者は,科研費新学術領域「スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成」(2013年度〜2017年度)に参画し,その計画研究課題「スパースモデリングを促進する可視化基盤の強化」の研究代表者を務めてきた.本講演ではその主要成果を報告する.具体的には,スパースモデリングにより抽出されたデータの十数から数十次元の説明変数をさらに二,三,四次元にまで圧縮し,情報可視化を用いて所与の問題を記述するデータの挙動を視覚的に理解可能にする基盤技術について紹介する.代表的な多次元情報可視化技法の一つである平行座標系表示を対象として,その視覚解析能力をスケーラブルにするために提案した,非対称バイクラスタリングに基づく部分空間探索法とその周辺技術を採り上げ,実データへの適用事例を通じて,その効用について論じる.
【略歴】1960年生.1985年筑波大学大学院博士課程工学研究科電子・情報工学専攻で修士号取得後直ちに東京大学理学部情報科学科助手着任.1988年 理学博士(東京大学).筑波大学,お茶の水女子大学,東北大学を経て,2009年より慶應義塾大学理工学部情報工学科教授,現在に至る.2015年同塾特選塾員.応用可視化,知的環境メディアに関する研究に従事.現在,日本学術会議連携会員,日本工学会・情報科学国際交流財団理事,CG-ARTS・芸術科学会評議員.
 
11:05-12:00 パネル討論 工芸から科学へ - CG技術の新たな挑戦 -
【討論概要】講演者全員が参加する本パネルでは,会場の方々とともに,CGの新たな可能性について探っていく.
パネル司会:藤代 一成 (慶應義塾大学 大学院理工学研究科情報工学専修 主任教授)
【略歴】1960年生.1985年筑波大学大学院博士課程工学研究科電子・情報工学専攻で修士号取得後直ちに東京大学理学部情報科学科助手着任.1988年 理学博士(東京大学).筑波大学,お茶の水女子大学,東北大学を経て,2009年より慶應義塾大学理工学部情報工学科教授,現在に至る.2015年同塾特選塾員.応用可視化,知的環境メディアに関する研究に従事.現在,日本学術会議連携会員,日本工学会・情報科学国際交流財団理事,CG-ARTS・芸術科学会評議員.
パネリスト:土橋 宜典 (北海道大学 大学院情報科学研究科 准教授)
【略歴】1992年,広島大学工学部卒業.1994年,同大大学院工学研究科博士課程前期修了.1997年,同大博士課程後期修了.同年,広島市立大学情報科学部助手.2000年,北海道大学大学院工学研究科助教授.2004年,同大大学院情報科学研究科助教授.2008年,同大大学院情報科学研究科准教授.工学博士.主としてコンピュータグラフィックスに関する研究に従事.Eurographics Best Paper Award,芸術科学会国際CG大賞特別賞,文部科学大臣表彰科学技術賞他.
パネリスト:鍛冶 静雄 (山口大学 創成科学研究科 准教授)
【略歴】2007年京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻修了,博士(理学).2007-2008年日本学術振興会特別研究員PD,2008-2010年福岡大学理学部応用数学科助教,2010-2016年山口大学大学院理工学研究科講師,2013年9月-2015年8月英国サウサンプトン大学Visiting Research Fellow(日本学術振興会海外特別研究員),2016年4月より現職.2016年10月より科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者(数学協働領域),2017年4月より山口大学時間学研究所兼務所員,を兼任.
パネリスト:羽生 雄毅 (インテグリカルチャ−株式会社 最高経営責任者)
【略歴】2010年,オックスフォード大学博士(化学),東北大学多元物質科学研究所,東芝研究開発センター,システム技術ラボラトリーを経て,2014年,細胞農業の有志団体“Shojinmeat Project”およびビジュアル科学コミュニケーションサービス“SCIGRA”を立ち上げ,2015年にインテグリカルチャー(株)を設立.2017年,米国シンギュラリティ大学主催の“Japan Global Impact Challenge”に優勝,シリコンバレーでのGlobal Solutions Programに日本人として初めて参加.化学・バイオ分野でのCG制作のほか,一般の研究者が日々使える3DCG技術の普及と研究成果の国際発信力の強化を目指し,研究者向け特化の「サイエンスCG塾」を運営している.
パネリスト:瀬尾 拡史 (株式会社サイアメント 代表取締役社長)
【略歴】1985年東京生まれ,2004年筑波大学附属駒場高等学校卒業,2010年東京大学総長賞・総長大賞受賞,2011年東京大学医学部医学科卒業,医師,2013年東京大学医学部附属病院初期臨床研修修了,(株)サイアメント代表取締役社長就任,2014年総務省「異能vation」事業本採択第1期,2015年SIGGRAPH Computer Animation FestivalにてBEST VISUALIZATION OR SIMULATION受賞,2016年京都造形芸術大学客員教授就任,大隅良典先生のノーベル賞受賞記念レクチャー用CG映像制作,2017年東京大学大学院情報理工学系研究科五十嵐健夫研究室学術支援専門職員.
パネリスト:楽 詠灝 (東京大学 大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻 助教)
【略歴】東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻助教.2011年同大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻博士後期課程修了.博士(情報理工学).光学や流体などの物理シミュレーションやその形状設計への応用等を中心にコンピュータグラフィックスの研究に従事.日本学術振興会海外特別研究員として米国コロンビア大学に滞在している際に,物質点法(Material Point Method)と呼ばれる連続体力学の数値計算技法を利用し,クリームなどの非ニュートン流体のシミュレーション手法を開発した.以後,レオロジー分野の研究者等とともに,その発展手法の研究に取り組む.2011年度情報処理学会山下記念研究賞受賞.