情報処理学会 第80回全国大会 会期:2018年3月13日~15日 会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス 情報処理学会 第80回全国大会 会期:2018年3月13日~15日 会場:早稲田大学 西早稲田キャンパス
文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業 
「情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発」(2)
日時:3月14日(水)9:30-12:00
会場:第4イベント会場(56号館 101)
【セッション概要】文部科学省の大学入学者選抜改革推進委託事業に,大阪大学が代表機関となり,東京大学,情報処理学会が連携して取り組み,情報分野での現行の入学選抜における課題や問題点を調査・分析の上,その改善に向けた実践的で具体的な手法の研究・開発を行って2年目となる.特に「思考力・判断力・表現力」の評価に関する考え方,学習指導要領改訂の方向性などに留意し,学力を適切に評価するための革新的な手法の開発に取り組んでいる.事業概要の概説,次期学習指導要領についての基調講演の後,現状で得られている,思考力・判断力・表現力を評価する枠組み,「情報科」試行用CBTプロトタイプシステムおよびそれを用いた模擬試験の実施状況と本格的CBT試行システムの設計について報告し,情報入試実施に向けての課題について議論したい.
司会:角田 博保 (情報処理学会 情報入試委員会 委員長(元電気通信大学))
【略歴】1974年東京工業大学理学部情報科学科卒業.1976年同大学院修士課程修了.1981年同大学院博士課程単位取得退学.1982年電気通信大学計算機科学科助手.1990年同大学情報工学科講師,1992年助教授,2007年准教授,2016年定年退職.理学博士.計算機システムのヒューマンインタフェース,教育支援システム,文字列処理等に興味を持つ.情報処理学会コンピュータ科学教育委員会委員長,情報入試委員会委員長.ACM会員.
9:30-9:45 講演 2017年度事業概説
萩原 兼一 (大阪大学 大学院情報科学研究科 特任教授)
【講演概要】文部科学省大学入学者選抜改革推進委託事業を大阪大学が受託機関,東京大学および情報処理学会が連携機関として2016年10月に受託し,高校科目「情報科」に関する大学入試評価手法の研究開発を実施しています.2022年度の高校入学生から次期学習指導要領が学年進行で実施され,「情報Ⅰ」が共通必履修科目,「情報Ⅱ」が選択科目となる予定です.2025年度の大学入学者選抜から,この学習指導要領のもと,知識・技能のみならず,より思考力・判断力・表現力も評価する入試問題を出題することが求められています.本事業では,その要求を満たす入試問題はどのようなものであるかを明確にし,試験問題を体系的に作問できる仕組みを作り,さらにその試験を実施するCBT(Computer Based Testing)システムを開発することを研究開発の目標としています.本講演では2017年度に実施した事業の概略を説明します.
【略歴】1974年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.1979年同大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.工学博士.1992-1993年文部省在外研究員(米国メリーランド大).1993年奈良先端科学技術大学院大学教授.1994-2017年大阪大学教授.並列処理の研究に従事.2005-06年情報処理学会理事,同関西支部長.1997年より同アクレディテーション委員.J97策定WG委員.2013-14年理工系情報学科・専攻協議会会長.大学改革支援・学位授与機構情報工学部会委員.
 
9:45-10:05 基調講演 高等学校情報科の次期学習指導要領
鹿野 利春 (国立教育政策研究所 教育課程研究センター研究開発部 教育課程調査官)
【講演概要】高等学校の情報科は,現行学習指導要領では「情報の科学」と「社会と情報」から選択して履修することになっているが,次期学習指導要領では必履修科目は「情報Ⅰ」のみとなり,発展的な選択科目として「情報Ⅱ」が設置される.これは,教育課程企画特別部会論点整理の「情報科目の今後の在り方について」で「高度な情報技術の進展に伴い,文理の別や卒業後の進路を問わず,情報の科学的な理解に裏打ちされた情報活用能力を身に付けることが重要」とされたことによる.本講演では,このような方向性に至った経緯,「情報Ⅰ」及び「情報Ⅱ」で身に付ける資質・能力について解説する.
【略歴】国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官,文部科学省において高等学校共通教科情報科及び専門教科情報科の教科調査官を併任.修士(教育学)(鳴門教育大学1996年).金沢大学理学部化学科卒(1986年).石川県の公立学校教諭,石川県教育委員会を経て2015年より現職.現行学習指導要領「情報」の調査研究協力者,教科書,問題集,副読本,情報科教育法等著者(共著).文部科学大臣優秀教員表彰(2008年)
 
10:05-10:20 報告(1) 思考力・判断力・表現力を評価する枠組みとルーブリック
萩谷 昌己 (東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授)
【講演概要】本事業では,高等学校の情報科を題材として,思考力・判断力・表現力を評価する方法とそれに基づくCBTを開発することを目指している.具体的に,電通大の久野氏を中心として,思考力・判断力・表現力の一つの捉え方を定式化し,それに基づいて問題を作成する手法を提案している.また,専修大の松永氏を中心として,情報科の各分野のルーブリックを開発し,久野氏の手法も活用しながら,各段階への達成を確認するための問題の作成方法を体系化しようとしている.本講演では以上の成果について概観した後,講演者の最近の研究(一つの情報源からルーブリックの各段階の問題を自動生成する手法)について簡単に触れる.
【略歴】1982年3月東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.1982年4月京都大学数理解析研究所助手.1988年3月京都大学理学博士.1988年10月京都大学数理解析研究所助教授.1992年4月東京大学理学部助教授.1993年4月東京大学大学院理学系研究科助教授.1995年11月東京大学大学院理学系研究科教授.2001年4月〜東京大学大学院情報理工学系研究科教授.2010年4月〜2013年3月東京大学大学院情報理工学系研究科研究科長.2011年10月〜2017年9月日本学術会議会員.
 
10:20-10:35 報告(2) 模擬試験の実施と結果分析/本格的CBTシステム
角谷 良彦 (東京大学 情報理工学系研究科 特任講師)
【講演概要】本事業では,「思考力・判断力・表現力」を適切に評価するための試験問題を作成する方法について検討している.検討に従って作成した試験問題の検証と,試験を実施するためのCBTシステムの評価を兼ねて,今年度は模擬試験を実施した.この講演では,模擬試験やアンケート調査で得られたデータを統計処理し分析した結果を紹介する.また,来年度に実施予定の模擬試験に備えて準備を進めているCBTシステムの新機能についても紹介する.来年度の模擬試験では,CBTの新たな可能性を探るため,CBTの特性を活かした新しいタイプの試験問題を出題する予定である.新試験問題の類型をいくつか紹介し,それらに必要なCBTシステムの機能と実装について説明する.
【略歴】2003年,京都大学大学院理学研究科(数学・数理解析専攻)の博士課程を修了,学位を取得.日本学術振興会特別研究員PDを経て,2004年から東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻に勤務.プログラミング言語や計算モデルに関する研究を行っている.
 
10:40-12:00 パネル討論 情報入試のすゝめ
【討論概要】文部科学省の大学入学者選抜改革推進委託事業そのものが施行されたのは,中央教育審議会での高大接続改革に対する審議結果に基づいている.その高大接続改革の提唱者であり牽引者である安西祐一郎日本学術振興会理事長を招いて,大学入学者選抜改革の目指すところをお話しいただき,その中での情報教育成果を問うことの意義についてお話しいただく.パネリストには,長岡亮介先生と佐々木修先生に加わっていただく.長岡先生には大学側の立場から数学入試との関連を中心にお話しいただき,佐々木先生には高等学校側の立場から大学入試改革と情報入試への期待することをお話しいただく.高大接続改革・入試改革には,現実の入試制度の中に落とし込んでいくのに様々な難題が待ち受けている.その難題をどのように克服して理想とする姿を実現していくかについてフロアも交えて議論を深め,高大接続改革の目指す姿・形を確認して,今後の協調の強化・加速の起爆を図る.
パネル司会:筧 捷彦 (早稲田大学 名誉教授)
【略歴】1968年東京大学工学部計数工学科卒業.1970年同大学院修士課程修了.1970年東京大学工学部助手.1974年立教大学理学部情報工学科講師,1978年助教授,1986年早稲田大学理工学部数学科教授,1991年情報学科,2016年定年退職.名誉教授.プログラミング言語の定義・処理系,ソフトウェア科学に興味を持つ.本会情報処理教育委員会J17 WG主査.本会フェロー・名誉会員,日本ソフトウェア科学会会員,ACM会員.
パネリスト:安西 祐一郎 (慶應義塾大学名誉教授/独立行政法人日本学術振興会理事長)
【略歴】1974年慶應義塾大学大学院博士課程修了.カーネギーメロン大学客員助教授,北海道大学文学部助教授,慶應義塾大学理工学部教授,93年〜2001年同理工学部長,01〜09年慶應義塾長.現在,(独)日本学術振興会理事長,人工知能技術戦略会議議長,日本ユネスコ国内委員会会長等.文部科学省顧問,中央教育審議会会長,環太平洋大学協会会長,情報処理学会会長,日本認知科学会会長,日本学術会議会員等を歴任.文部科学省高大接続改革チームリーダー等として入試改革を含む高大接続改革を主導している.専攻は情報科学,認知科学.
パネリスト:長岡 亮介 (前明治大学 理工学部特任教授/現在,NPO法人 TECUM 代表)
【略歴】1947年生まれ(長野県).1965年東京大学理科I類入学.1971年東京大学大学院理学系研究科科学史科学基礎論専門課程修士課程入学.1971年東京大学大学院理学系研究科科学史科学基礎論専門課程博士課程進学.1973年同単位取得退学.1975年津田塾大学学芸学部数学科非常勤講師.1976年津田塾大学学芸学部数学科特別専任勤講師.1980年津田塾大学学芸学部数学科特別専任助教授.1990年大東文化大学法学部教授,情報センター所長.2000年 放送大学教授(数学).2010年 同退職.2012年 明治大学理工学部数学科客員教授.2014年明治大学理工学部数学科特任教授(2017/3 末まで).現在 NPO法人 TECUM 代表.
パネリスト:佐々木 修 (全国高等学校情報教育研究会 副会長/神奈川県立二宮高等学校 校長)
【略歴】1982年中央大学理工学部数学科卒業.1983年神奈川県立高等学校数学科教諭.2001年高等学校情報免許取得.以降情報担当教員として勤務.2014年神奈川県立高等学校校長.2017年神奈川県教科研究会情報部会部会長.