情報処理学会 第78回全国大会 会期:2016年3月10日~12日 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス 情報処理学会 第78回全国大会 会期:2016年3月10日~12日 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス
教育と学習におけるICTの活用の新時代
日時:3月12日(土)13:00-15:00
会場:第2イベント会場(11-31)
【セッション概要】小学校から高校(初等中等教育)における環境でも,大学でもさまざまな学習活動において,情報機器や情報サービス,情報ネットーワークインフラなどが活用されるようになってきた.書画カメラや,電子黒板(インタラクティブ・ホワイトボード),学習管理システム(LMS),学校広報でのWebやSNSの利用,教材のデジタル化とデジタル教科書,コンピュータを利用したテスト(CBT),学習者や試験受験者データの統計的活用などが普及しつつある.だが,教具を触ることに主眼が置かれていたり,海外での事例を参考にしていなかったり,ICT活用で何ができるのかを明確に把握できていなかったりする,というのが我が国の現在の教育現場に置けるICT活用である.本セッションでは,このような我が国の教育と学習におけるICTの活用が,これからどのような方向に進むべきかについて,識者らによるパネルディスカッションにより明らかにする.
司会:和田 勉 (長野大学 企業情報学部 教授)
【略歴】1978年早稲田大学理工学部電気工学科卒業,1983年筑波大学大学院数学研究科単位取得満期退学,同年東京大学生産技術研究所第3部技官,1984年長野大学産業社会学部講師,同産業情報学科講師,同助教授,同教授を経て2007年より同企業情報学部教授.2006年大韓民国高麗大学師範学部コンピュータ教育学科招聘教授.2013年4月より情報処理学会初等中等教育委員会委員長.
13:00-13:20 講演(1) 教育情報化「教具論」からの脱却〜学習者中心の情報化とは何か〜
豊福 晋平 (国際大学GLOCOM 准教授・主幹研究員)
【講演概要】OECDのPISA/TALIS調査で暴露されたように,日本の学校教育でのICT利活用度は加盟国の中でもきわめて低く,その著しい遅滞は「失われた20年」と言われている.2015年には高校生のスマートフォン所有率がほぼ100%に届く状況なのに,いまだ勉学には無用なものとされ,大半の児童生徒は学校で電子メールもSNSも満足に使えない.学校教育がデジタル・デバイドの対岸に取り残された背景には,授業研究と教具的活用への囚われがある.ICTは授業の一技法であるから指導スキル養成が喫緊の課題とされてきたが,機器トラブルリスクや教員側の負担増を嫌って,現場の授業活用は遅々として進まない.こうした状態のブレイクスルーとして期待されるのは,180度視点を転換した学習者中心の文具的活用である.諸外国では日常的やりとりや学習に関わる知的生産のために1人1台の情報端末が普及し,家庭から学校へ機材を持ち込むBYODの事例もある.本講演では,ICT利活用における教具論と文具論を比較しつつ,将来への展望を明らかにする.
【略歴】1992年横浜国立大学大学院教育学研究科修士課程修了,1995年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程中退,1996年より国際大学グローバル・コミュニケーション・センターに勤務.専門領域は学校教育心理学・教育工学・学校経営.近年の研究テーマは教育情報化と学校広報.主なプロジェクトはApple/国際大学「めでぃあきっず」(1994-1997),全日本小学校ホームページ大賞(通称:J-KIDS大賞 2003-2013)など.
 
13:20-13:40 講演(2) 海外におけるICT活用 〜 日本との比較を通して 〜
上松 恵理子 (武蔵野学院大学 准教授)
【講演概要】新しいメディアによる活動を教育に取り入れる必要性はさまざまな場所で提唱されている.Presky (2013)は,生徒に全ての新しいテクノロジーを学校でも実践する事例として130以上もの項目からなるリストをあげている.リストには,TED TALK,FaebookやTwitterなどがあるが,どれも子どもたちにはなじみが深いため,既に海外では新しいメディアを使った学習活動を教授法に取り入れ始めている.また,従来オフラインであった教室において,学習者はインターネットを使い,新たなコミュニケーションの機会を持って学習活動をしている.学習成果物や意見の瞬時共有,リアルタイムな可視化により,学習者1人1人の学習やプロセスまでも把握することができ,それぞれの能力に合わせた学習活動やプロジェクト学習によるアクティブラーニングも行われている.今後,教室の空間を超えた学びをどうクリエイトしデザインするかを検討する.
【略歴】博士(教育学)武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授.新潟大学情報文化研究科修士課程修了後博士課程に進学,メディアリテラシーの研究を行いながら,ICT教育における海外実践の調査をはじめとしてモバイルメディアの新リテラシーについての研究を行う.早稲田大学情報教育研究所招聘研究員,国際大学GLOCOM客員研究員,明治大学研究員.Asuka Acadmy理事,「教育における情報通信(ICT)の利活用促進をめざす議員連盟」有識者アドバイザー.著書に「読むことを変える-新リテラシー時代の読解(単著)」「ディジタル端末を使った教育最前線(電子情報通信学会誌,2014)」「ICT教育におけるメディアリテラシー教育(情報処理学会誌,2015)」など.
 
13:40-14:00 講演(3) 電子書籍規格EPUBによるデジタル教科書制作の未来
青木 浩幸 (株式会社グレートインターナショナル ICT事業部 主席研究員)
【講演概要】海外のデジタル教科書が学習者のための電子書籍を由来としているのに比べ,日本のデジタル教科書は教師のプレゼンテーションツールとして発達してきた経緯から「指導者用デジタル教科書」と呼ばれ,固定レイアウトに代表される独特の機能が求められてきた.電子書籍の規格は国際電子出版フォーラム(IDPF)が策定したEPUBが主流となり,デジタル教科書も標準化の波が押し寄せている.このプラットフォームの変化は日本のデジタル教科書制作に大きな影響を与えている.電子書籍の規格EPUBの中で教師用デジタル教科書に求められる機能を実現するにはどうしたらよいか.さらに,学習者用デジタル教科書への転換が図られている今,多様な学習者に対するアクセシビリティはどう実現され,さらにどのような機能が実現できるようになるか,その可能性について技術的な面から議論させていただきたい.
【略歴】1999年筑波大学大学院教育研究科教科教育専攻理科教育コース修了,神奈川県の公立学校教員を経て,2007年東京学芸大学大学院教育学研究科総合教育開発専攻情報教育コース修了.同年韓国に渡り,高麗大学校一般大学院コンピュータ教育学科に留学しプログラミング教育を研究,2013年に理学博士取得.韓国留学中からデジタル教科書コンテンツの開発に携わり,2013年から(株)イーテキスト研究所の技術責任者を務める,ベクターグラフィクス標準SVGの教育コンテンツにおける可能性について研究・提案を行っている.
 
14:00-14:10 休憩
14:10-15:00 パネル討論 教育と学習におけるICTの活用の新時代
【討論概要】初等中等から大学までの学校教育現場における情報活用と,情報機器の活用,そして電子教科書などのデジタル教材に関する現状について,連続した講演と,パネリスト同士の意見交換などを通して議論を深める.
パネル司会:辰己 丈夫 (放送大学 教養学部 准教授)
【略歴】1997年早稲田大学理工学研究科数学専攻博士後期課程単位取得退学.1993年同大学情報科学研究教育センター助手.1999年神戸大学講師.2003年東京農工大学助教授.現在,放送大学准教授.また,東京大学,産業技術大学院大学で非常勤講師.情報教育,情報倫理,数学教育の情報化に興味を持つ.著書に「情報化社会と情報倫理・第2版」(共立出版),「情報科教育法・改訂2版」(オーム社),「情報の科学」(高校「情報科」検定教科書)(日本文教出版)などがある.
パネリスト:豊福 晋平 (国際大学GLOCOM 准教授・主幹研究員)
【略歴】1992年横浜国立大学大学院教育学研究科修士課程修了,1995年東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程中退,1996年より国際大学グローバル・コミュニケーション・センターに勤務.専門領域は学校教育心理学・教育工学・学校経営.近年の研究テーマは教育情報化と学校広報.主なプロジェクトはApple/国際大学「めでぃあきっず」(1994-1997),全日本小学校ホームページ大賞(通称:J-KIDS大賞 2003-2013)など.
パネリスト:上松 恵理子 (武蔵野学院大学 准教授)
【略歴】博士(教育学)武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授.新潟大学情報文化研究科修士課程修了後博士課程に進学,メディアリテラシーの研究を行いながら,ICT教育における海外実践の調査をはじめとしてモバイルメディアの新リテラシーについての研究を行う.早稲田大学情報教育研究所招聘研究員,国際大学GLOCOM客員研究員,明治大学研究員.Asuka Acadmy理事,「教育における情報通信(ICT)の利活用促進をめざす議員連盟」有識者アドバイザー.著書に「読むことを変える-新リテラシー時代の読解(単著)」「ディジタル端末を使った教育最前線(電子情報通信学会誌,2014)」「ICT教育におけるメディアリテラシー教育(情報処理学会誌,2015)」など.
パネリスト:青木 浩幸 (株式会社グレートインターナショナル ICT事業部 主席研究員)
【略歴】1999年筑波大学大学院教育研究科教科教育専攻理科教育コース修了,神奈川県の公立学校教員を経て,2007年東京学芸大学大学院教育学研究科総合教育開発専攻情報教育コース修了.同年韓国に渡り,高麗大学校一般大学院コンピュータ教育学科に留学しプログラミング教育を研究,2013年に理学博士取得.韓国留学中からデジタル教科書コンテンツの開発に携わり,2013年から(株)イーテキスト研究所の技術責任者を務める,ベクターグラフィクス標準SVGの教育コンテンツにおける可能性について研究・提案を行っている.