情報処理学会 第76回全国大会 会期:2014年3月11日~13日 会場:東京電機大学 東京千住キャンパス 情報処理学会 第76回全国大会 会期:2014年3月11日~13日 会場:東京電機大学 東京千住キャンパス
足立から世界へ宇宙へ
日時:3月12日(水)14:30-17:30
会場:第1イベント会場 (1号館 2F 丹羽ホール)
【セッション概要】足立区は「文教立区」を目指し様々な研究教育・産官学連携活動に取り組んでいる。昨年4月にリニューアルオープンしたギャラクシティは、最新型デジタルプラネタリウムを持ち、東京大学大学院理学系研究科天文学教育研究センター、国立天文台と連携して、チリや木曽、ハワイの天文台に設置した全天周カメラで撮影した映像をリアルタイムで投影するなど、子供たちが科学技術に興味関心を持てるよう取り組んでいる。本セッションでは、足立と宇宙とを結ぶ文教活動ならびに最先端技術を解説する。さらに、天文学者が行っている最新のコンピュータシミュレーションを科学的に忠実に映像化した、迫力のあるムービーコンテンツも紹介する。
司会:山田 義弘(東京未来大学 こども心理学部 非常勤講師(天文学))
【略歴】1946年、岡山県生まれ。1965年早稲田大学入学、在学中に台湾・台北市立天文台客員研究員。1970年大学卒業後に国際航業株式会社入社、1998年天文施設コンサルタント部に異動、部長となる。定年退職後、2007年東京未来大学非常勤講師(天文学)、2010年北海道大学宇宙観測基礎データセンター研究員、北海道なよろ市立天文台名誉台長、大手前大学非常勤講師(宇宙科学)、2011年東京大学天文学教育研究センター顧問、2012年NPO法人東亜天文学会理事長。国際天文学連合は小惑星5915番をYoshihiroと命名。
14:30-14:40 ごあいさつ
14:40-15:10 講演-1 ギャラクシティ・足立区こども未来創造館の取り組み
村上 長彦(足立区教育委員会 社会教育主事・子ども家庭部青少年課 青少年教育担当係長)
【講演概要】ギャラクシティは2013年4月にリニューアルオープンした子どものための体験型施設である。科学・ものづくり・運動・文化など様々な分野の体験活動を通して、子どもの夢を育み、可能性にチャレンジする場を提供している。特徴の一つとして、直径23mの大型ドームのプラネタリウムを7Kの解像度を持つデジタル方式単独システムとしていることがあげられる。星空の投影に限らず、様々な映像を美しく投映することができるシステムを活かすため、東京大学大学院理学系研究科天文学教育研究センターと科学教育に関する協定を結び、世界最高地点の天文台であるチリのアタカマに全天周カメラを設置していただき、撮影した美しい星空をギャラクシティで投映できるようにしている。国立天文台ハワイ観測所にも同じカメラを設置していただき、投映を行っている。
【略歴】1956年、愛知県生まれ。1979年立教大学社会学部を卒業後、東京都足立区教育委員会で社会教育主事として青少年教育を中心として社会教育の振興を担当している。2004年に青少年センター青少年事業係長となり、2005年に青少年センターがギャラクシティ内に移転してギャラクシティにおけるプラネタリウム事業や青少年教育事業に携わる。2008年からギャラクシティのリニューアル計画を担当し、リニューアルオープン後もギャラクシティの事業への支援を行っている。
 
15:10-15:40 講演-2 標高世界一、東京大学アタカマ天文台(TAO)が見る宇宙
吉井 譲(東京大学 天文学教育研究センター長 / 教授)
【講演概要】チリ北部のアタカマ砂漠は世界で最も乾燥した場所で、高い晴天率、安定した大気、暗い夜空など、赤外線観測に最適な条件を誇る。東京大学が推進するTAO計画では、この地にそびえる標高5640mのチャナントール山の山頂に大型赤外線望遠鏡を建設し、ダークエネルギー、銀河や惑星の起源の謎など、天文学の重要課題の解明を目指す。2009年には口径1mのmini-TAO望遠鏡を先行設置し、これまで宇宙望遠鏡でなければ観測不可能とされてきた赤外線を地上から観測できることを実証した。現在、南半球で日本初の大型赤外線望遠鏡となる口径6.5m望遠鏡を建設中で、2017年にはファーストライトを予定。本講演では、アンデス高峰で世界最高感度の赤外線観測に挑むTAO計画について紹介する。
【略歴】1951年、新潟県生まれ。1980年東北大学大学院理学研究科博士課程(天文学専攻)修了。理学博士。東京大学理学部助手、国立天文台助教授を経て、1994年から東京大学大学院理学系研究科教授、現在に至る。この間、オーストラリア国立大学高等研究所、英国ダーラム大学、ニールス・ボーア研究所、北欧理論物理学研究所、ヨーロッパ南天天文台の客員教授を歴任。東京大学大学院理学系研究科・天文学教育研究センター木曽観測所長を経て、2000年から天文学教育研究センター長。東京大学アタカマ天文台(TAO)計画代表者。
 
15:40-16:10 講演-3 宇宙を見る目の今:すばる望遠鏡、ALMAそして30m望遠鏡TMTへ
渡部 潤一(自然科学研究機構 国立天文台 副台長 / 教授)
【講演概要】ガリレオが宇宙に望遠鏡を向けて以来、400年を越えて、宇宙を見る目は劇的に進歩した。天体望遠鏡は大型化・精密化し、19世紀には写真技術の発明によって光を蓄積する技術が天文学を大きく変化させた。20世紀になると、赤外線、紫外線、電波やX線といった可視光とは異なる波長の電磁波で観測を行うようになり、同じ天体でも多面的に研究ができるようになった。20世紀末には、さらに量子効率のよい検出器が開発され、特にCCD素子の登場で可視光天文学は大きく変貌した。こうした技術革新によって、宇宙像はどんどん更新されつつあり、冥王星が準惑星になり、第二の地球や宇宙生命を科学的なターゲットにできる時代になりつつある。本講演では、それらを推進してきた日本の天文学の大型装置と現状と将来について紹介する。
【略歴】1960年、福島県生まれ。1987年東京大学大学院東京大学東京天文台を経て、現在、自然科学研究機構国立天文台副台長、教授(理学博士)。流星、彗星など太陽系天体の研究の傍ら、最新の天文学の成果を講演、執筆などを通して易しく伝えるなど、幅広く活躍している。1991年にはハワイ大学客員研究員として滞在、すばる望遠鏡建設推進の一翼を担った。国際天文学連合では、惑星定義委員として準惑星という新しいカテゴリーを誕生させ、冥王星をその座に据えた。
 
16:10-16:40 講演-4 スーパーコンピュータ「京」で探る宇宙
永井 智哉(筑波大学 計算科学研究センター 主任研究員)
【講演概要】HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」は、ピーク性能10ペタフロップスのスーパーコンピュータ「京」を用いて、ビッグバンに始まる宇宙の歴史の中で素粒子から原子核、星・銀河形成にいたる物質と宇宙の起源と構造を統一的に理解することを目標としており、4つの研究開発課題[(1)格子QCDによる物理点でのバリオン間相互作用の決定、(2)大規模量子多体計算による核物性解明とその応用、(3)超新星爆発およびブラックホール誕生過程の解明、(4)ダークマター密度ゆらぎから生まれる第1世代天体形成]を推進している。本プロジェクトの概要と宇宙分野を中心に最近の成果について紹介する。
【略歴】1971年、愛知県生まれ。1999年東京大学大学院理学系研究科で天文学を専攻修了。博士(理学)。専門は理論天文学、研究開発アドミニストレーション。宇宙開発事業団、科学技術振興機構(日本科学未来館、研究開発戦略センター等)、国立天文台を経て、現在、計算基礎科学連携拠点・HPCI戦略分野5「物質と宇宙の起源と構造」プロジェクトマネージャー、筑波大学計算科学研究センター主任研究員。著書に『地球がもし100cmの球だったら』がある。
 
16:50-17:30 映像上映 4次元デジタル宇宙ビューワー "Mitaka"上映「宇宙の階層構造」
伊東 昌市 (科学成果普及機構)
【上映概要】国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト(4D2Uプロジェクト)が開発したインタラクティブ4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」 を用いて、地球から出発して、太陽系の惑星たちの世界、地球から夜空に見える恒星の世界、太陽が属する天の川銀河(銀河系)、そして数多くの銀河の集まる銀河団、そして宇宙の大規模構造までの莫大なスケールを自由に移動しながら、天文学の最新の観測データや理論的モデルをリアルタイムに視点を変えて見ていただく。
【略歴】1947年、富山県生まれ。1975年東京都杉並区役所入庁。杉並区立科学教育センター物理技術指導係長としてプラネタリウムを担当する。アメリカ・カナダをはじめ世界各地の天文台、天文教育施設を視察。プラネタリウムの国際化を積極的に進めてきた。元国際プラネタリウム協会日本代表評議員。2008年より国立天文台天文情報センター専門研究職員として着任。現在は国立天文台4次元デジタル宇宙(4D2U)ドーム・シアターの管理運営、科学成果普及機構の社員として、天文学普及や人材育成に力を入れている。