第1回:予測と意思決定のためのアナリティクス技術

日時:2014年6月9日(月)
会場:化学会館7F(本会場) 受付開始時間:9:30~
   大阪大学中之島センター5F 講義室507(遠隔会場) 受付開始時間:9:30~

ビッグデータブームによって機械学習や統計科学をはじめとするアナリティクス技術がにわかに注目を浴びており、各所でデータ解析の取組が盛んに行われています。 しかしながら、ただ単にアナリティクス技術を適用しさえすればデータから素晴らしい価値が自動的に得られるというものではなく、データからアクションに結び付けていくことはそれほど容易なことではありません。本セミナーでは「予測」と「意思決定」、すなわちアクションにつながるアナリティクス技術に焦点を当て、最新技術動向と先進的応用を中心に基礎から解説します。

鹿島久嗣コーディネータ:鹿島 久嗣(京都大学 大学院情報学研究科 知能情報学専攻 教授)
【略歴】1999年京都大学大学院工学研究科修士課程修了。2007年京都大学大学院情報学研究科博士課程修了。1999年から2009年までIBM 東京基礎研究所勤務。2009年より東京大学大学院情報理工学系研究科准教授を経て2014年4月より現職。機械学習、データマイニングの研究に従事。博士(情報学)。2009年情報処理学会長尾真記念特別賞。2012年マイクロソフトリサーチ日本情報学研究賞。2013年船井情報科学振興財団船井学術賞等を受賞。

OPENING 10:00~10:10

コーディネータ:鹿島 久嗣(京都大学 大学院情報学研究科 知能情報学専攻 教授)

セッション1:認識と予測のディープラーニング

[10:10-11:10]
カメラやマイク、その他様々なセンサーが携帯端末をはじめ広く設置・普及されていくにつれ、これら自然な入力に意味的なラベル付け等を行う認識・予測技術が重要となってくる。そのうち画像や音声の認識において高い精度で注目を集めているのがディープラーニングである。ディープラーニングは多数の因子が複雑かつ多段に絡み合って生成されたデータからの認識や予測に適している。本講演では特に画像からの認識において用いられるディープラーニングの技術的基礎を概説し、最新事情についても紹介する。

得居 誠也講師:得居 誠也(株式会社Preferred Networks リサーチャー)
【略歴】2010年東京大学理学部数学科卒、2012年同大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻修士。2010年Google JapanインターンシップでGoogle日本語入力の開発に参加、同年11月からPreferred Infrastructureアルバイトを経て2012年同社に入社。OSSの分散機械学習基盤Jubatusの機械学習アルゴリズム開発を行う。現在はディープラーニング及び映像解析の研究開発を行っている。

セッション2:イノベーションに向けた革新的技術の抽出と意思決定

[11:25-12:25]
科学技術が細分化・専門化する一方で、持続可能性や少子高齢化といった社会から解決を要請される課題は複雑なものとなっている。また、日々膨大な量の科学技術情報が出版される中、必要な情報を効率的・効果的に探索することはますます困難となっている。本講演では、データサイエンスのアプローチにより、科学技術動向の予測や、研究開発マネジメントの意思決定支援を行う方法論や具体例について紹介する。大量の論文情報の引用解析やテキスト解析により、研究開発動向の把握や萌芽的研究領域の抽出、複数研究領域の関連性分析による革新的研究開発課題の設計、論文-特許関連性分析による事業展開可能性の評価等に関する研究成果を紹介する。

梶川 裕矢講師:梶川 裕矢(東京工業大学 大学院イノベーションマネジメント研究科 准教授)
【略歴】1999年東京大学工学部卒業。2004年東京大学大学院工学系研究科修了。博士(工学)。日本学術振興会特別研究員を経て、2005年より東京大学大学院工学系研究科助手。その後、東京大学大学院工学系研究科助教、特任講師を経て、2011年より現職。2014年より名古屋大学客員教授。

お昼休憩 12:25~13:40

セッション3:多腕バンディットによる情報探索と活用

[13:40-14:40]
意思決定に関する基本的な枠組みの一つとして、複数の選択肢がある行動からいずれか一つを選び、その行動に応じた報酬を得るというプロセスを繰り返すというものがあります。この問題において長期的な意味で報酬を最大化したい場合、現在すでに得られているデータの解析結果から良さそうな行動を選ぶというだけではなく、現状では価値がよく分かっていない行動を時々は選んでみるという探索が必要となります。本講演では、この情報探索と活用のトレードオフを定式化したものである多腕バンディット問題についての解説を行います。具体的には、まず報酬モデルの内部構造や事前知識といった様々な設定に応じたバンディットの定式化およびそれらに対する効率的な戦略を紹介します。さらに、基本的な設定における理論限界やそれを達成する戦略についての説明を通して、バンディットに共通して有効となる基本的な考え方について解説します。

本多 淳也講師:本多 淳也(東京大学 新領域創成科学研究科 助教)
【略歴】2008年東京大学工学部計数工学科卒業。2010年同大学院情報理工学系研究科修士課程修了。2013年同大学院新領域創成科学研究科博士課程修了、同年4月より現職。専門は多腕バンディット問題および情報理論。

セッション4:予測と意思決定のためのマーケット:予測市場とその周辺

[14:55-15:55]
予測市場(Prediction Markets)とは、未来を予測するためのマーケットで、情報市場(Information Markets)、事象先物(Event Futures)などとも呼ばれています。具体的には、予測したい物事の未来の状態に応じて事後的に価値が定まる仮想の証券(予測証券)を発行し、それを多くの参加者に仮想の市場で自由に売買してもらいます。そして、その過程で現れてくる証券価格の推移に基づいて、予測対象の未来の状態に関する動的な予測を得るというものです。これによって、不特定多数の市場参加者の頭の中に存在する、予測や意思決定に役立つ情報を効率的に収集することが可能になります。予測市場は、これまでに、選挙予測や娯楽目的のほか、市場調査、疫学調査などにも応用されてきました。また、それらの成功が呼び水になって、特に欧米では、企業等の組織内でも活発に利用されるようになってきています。本講演では、予測市場を機能させるための仕組みや予測市場の応用例について紹介します。

水山 元講師:水山 元(青山学院大学 理工学部 経営システム工学科 准教授)
【略歴】1992年京都大学大学院精密工学専攻修士課程修了。住友金属工業(株)数理技術室勤務、京都大学助手、講師を経て、2011年より青山学院大学理工学部経営システム工学科准教授。博士(工学)。生産システムをGoods、Service、Ideaを組織的に生み出す系として広く捉え、その設計、分析、改善、支援等の研究に従事。最近は、予測市場などの集合知メカニズムとその応用に興味を持つ。

セッション5:推薦システムの基礎と最前線

[16:10-17:10]
推薦システムとは、利用者のものや情報に対する嗜好や行動に関する情報から、利用者が好むであろうものや情報を予測して提示するシステムである。1995年前後に研究システムが提案されたが、すぐに商用システムが普及し、現在では電子商取引サイトをはじめ広く利用されている。前半では推薦システムに関する俯瞰的・基礎的な項目を取り上げる。特に、推薦システムは、データ入力、嗜好の予測、推薦の提示の3段階の処理で構成されるが、これらのうち嗜好の予測のための基本的アルゴリズムを俯瞰する。後半では推薦システム研究の最近の話題をいくつか紹介する。ソーシャル情報の利用、推薦する情報の多様性の拡張、推薦リスト全体の最適化などの技術的なものや、プライバシやフィルターバブルなどの社会との関連について取り上げる。

神嶌 敏弘講師:神嶌 敏弘(独立行政法人 産業技術総合研究所 主任研究員)
【略歴】1968年生。1992年京都大学情報工学科卒業。1994年同大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了。2001年博士(情報学)。1994年電子技術総合研究所入所。2001年電子技術総合研究所は産業技術総合研究所へ再編。2003年度、2008年度、2011年度人工知能学会全国大会優秀賞。2009年人工知能学会功労賞。推薦システム、データマイニング、機械学習に関する研究に従事。AAAI、ACM、電子情報通信学会、人工知能学会各会員。

情報処理学会では、産業界(実務家)の視点から、関心度の高いテーマ、注目のテーマ、技術の先進性に富んだテーマを取り上げて、その最前線で活躍されている方を講師に招き、年数回にわたってセミナーを開催しています。

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