イベント企画
社会選択への計算論的アプローチ
9月3日(木) 9:30-12:00
第3イベント会場
【セッション概要】 集団の意思決定に関する理論体系を「社会選択理論」と言い、個人の意見をどう集約するか、選択のためのルール決めはどうあるべきか、社会が望ましい決定を行なうためのメカニズムをどう設計するかについて、古くは政治学や経済学的な視点から研究されてきた。一方、近年の情報技術やAIの発展などにより集合的意思決定の計算論的側面からの研究が急速に進みつつあり、「計算的社会選択理論」の分野が確立しつつある。本シンポジウムでは計算的社会選択理論の最新の研究動向について同分野で活躍する研究者による講演会の形で実施する。
9:30-9:35 司会 はじめに
小野 廣隆(名古屋大学 大学院情報学研究科)
9:35-10:20 講演(1)
五十嵐 歩美(国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 助教)
10:25-11:10 講演(2) 最適化アルゴリズムによる収入最大オークションの設計
河瀬 康志(東京工業大学 工学院 助教)
【概要】 本講演では、オークションにおいて収入を最大化するメカニズムを設計するための、最適化アルゴリズムに基づくアプローチについて紹介する。オークションにおいては、一般に、各入札者の選好に関する情報は他者からは分からないため、情報を集めるためにはうまくインセンティブを与える必要がある。Myersonは1981年に、単一財オークションについて、最適なメカニズムの特徴付けを与え、陽な表現を与えている。しかし、複数財の場合については状況が複雑であり、最適なメカニズムを陽に表現することは難しい。そこで、近年では、最適化アルゴリズムを用いることにより、最適なメカニズムを設計するという研究が行われている。本講演では、メカニズムデザインの基本的な概念を概説した後、最適化アルゴリズムを用いることにより最適なメカニズムを設計する手法について近年の進展を紹介する。
【略歴】 2014年東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻博士課程修了。博士(情報理工学)。2014年より、東京工業大学大学院社会理工学研究科助教。2016年、組織改編に伴い、工学院経営工学系に所属が変更。2017年より理化学研究所革新知能統合研究センター客員研究員(兼任)。離散最適化、特にオンライン最適化やアルゴリズム的ゲーム理論に関する研究に従事。
11:15-12:00 講演(3) 投票ルール設計のためのアルゴリズム的ゲーム理論
東藤 大樹(九州大学 大学院システム情報科学研究院 助教)
【概要】 ミクロ経済学における投票とは、複数の候補者の集合から、投票者の投票をもとに唯一の当選者を選ぶ、社会選択の伝統的な数理モデルの1つである。近年では、本セッションのテーマでもある計算論的社会選択理論や、アルゴリズム的ゲーム理論 (algorithmic game theory) と呼ばれる、情報学と経済学との境界領域の発展に伴い、一般的な投票ルールの設計のほか、より制限された施設配置と呼ばれるモデルのための投票ルール(施設配置ルール)の設計が注目を集めている。
本講演の目的は、投票と施設配置に関して、基礎的な知識を提供するとともに、特に情報学分野における最新の研究動向を紹介することである。まず、ギバード・サタースウェイトの定理や中位投票者ルールといった、経済学分野において得られてきた有名な研究成果を説明する。その後、施設配置ルールのアルゴリズム的ゲーム理論に基づく分析や、計算機を用いた投票ルールの自動設計に関する最新の研究動向を、講演者の研究成果と最近の興味を交えつつ紹介する。
【略歴】 2012年3月九州大学大学院システム情報科学府博士後期課程修了、博士(情報科学)。2010年〜2012年 学振特別研究員DC1。2012年〜2013年 学振特別研究員PD、デューク大学博士研究員。2013年12月より九州大学大学院システム情報科学研究院助教、現在に至る。ゲーム理論やマルチエージェントシステムに関する研究に従事。FIT2010論文賞およびヤングリサーチャー賞、2011年度情報処理学会論文賞、FIT2011船井ベストペーパー賞、FIT2014船井ベストペーパー賞受賞。AAAI、ACM、人工知能学会、日本ソフトウェア科学会、情報処理学会各会員。