FIT2016 第15回情報科学技術フォーラム 開催日:2016年9月7日(水)~9日(金) 会場:富山大学キャンパス
イベント企画
8K試験放送開始!実用化が進むMMTの最新状況と展望
9月7日(水) 9:30-12:00
第2イベント会場(共通教育棟A棟2階A21)
【セッション概要】 2016年8月に試験放送が開始される4K・8K放送では、MPEGで20年ぶりに改定されたマルチメディア伝送技術の国際標準であるMMT(MPEG Media Transport)が利用されている。MMTはIPベースの伝送技術であり、放送だけでなく通信でもコンテンツを同じ仕組みで伝送できる。そのため、放送と通信の連携やタブレット端末へのコンテンツ配信が容易に実現できるなど、今後さまざまなサービスの可能性が開ける。そこで本セッションでは、MMTの初歩から8K放送での伝送や通信回線での伝送、さまざまなサービスへの展開の可能性を分かりやすく解説するとともに、今後のマルチメディア情報処理技術の動向を述べる。
9:30-9:35 司会 実用化が進むMMTの最新状況
青木 秀一(NHK 放送技術研究所 研究員)
【概要】 メディアトランスポート方式は、映像・音声信号やさまざまなデータ信号を組み合わせてコンテンツを構成し、それらを伝送・蓄積する機能を提供する。Internet Protocol(IP)上のメディアトランスポート方式であるMPEG Media Transport(MMT)が2014年に規格化され、ISO/IEC 23008-1として発行された。これを受け、次世代の放送システムや映像配信サービスなどMMTを用いるシステムの開発が各国で進んでいる。日本では、MMTを用いる放送システムとして4K・8Kスーパーハイビジョン衛星放送の試験放送が2016年に開始される。本稿では、MMTの概要を述べるとともに、他のメディアトランスポート方式と比較してのMMTの特徴を概説し、放送システムや放送・通信連携サービスへの応用などの開発状況をまとめる。
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【略歴】 2003年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。2013年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。2003年にNHK入局。以来、放送技術研究所にて、IP技術を用いる放送システムの研究開発、ITU-R、MPEGでの国際標準化に従事。現在、スーパーハイビジョン放送システムの研究開発と国内外の標準化に従事。2010年、日本ITU協会より国際活動奨励賞、2015年、情報規格調査会より国際規格開発賞受賞。博士(情報理工学)。
9:35-9:55 講演(1) MMT多重化装置によるコンテンツ配信機能の実現
山影 朋夫((株)東芝 インフラシステムソリューション社 放送・ネットワークシステム部  主幹)
【概要】 2016年8月に試験放送が開始される高度BSデジタル放送では、4K・8K映像と22.2chまでのオーディオなどの多重化にIPベースの伝送技術であるMMT(MPEG Media Transport)を使用する。IPベースの伝送技術により、放送と通信の連係を容易に行えるようになる。通信用のIP網に放送コンテンツを送出する場合、網の制約でマルチキャストが使えないことや、パケット欠落などの課題が考えられる。本講演では、MMTで多重化したコンテンツ(映像・オーディオ・アプリケーション・ファイル等)をIPネットワークで配信するためのセッション管理やFEC機能について紹介する。
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【略歴】 1990年東北大学大学院工学研究科修士課程修了。同年、株式会社東芝入社。動画像符号化方式の研究・開発・国際標準化に従事。関連する標準化活動にも取り組み、ISO/IECおよびITU-Tによる動画像符号化規格(MPEG-2, H.264/AVC, H.265/HEVC)やシステム規格(MPEG-2, MMT)の策定作業に参加。また、これらの技術を用いたLSI・装置・システムの開発に従事。
9:55-10:15 講演(2) 複数搬送波伝送方式を適用した8K衛星放送のケーブルテレビ再放送システム
袴田 佳孝(NHK 放送技術研究所 研究員)
【概要】 大容量の8K信号をケーブルテレビで配信するために、8K信号を分割して複数の搬送波で伝送する複数搬送波伝送方式を開発し、方式に関する国内標準規格化および国際勧告化が完了した。今回、複数搬送波伝送方式を適用し、MMT・TLV(Type Length Value)形式の8K衛星放送信号をケーブルテレビで伝送するシステムについて紹介する。
【略歴】 2005年、東京工業大学総合理工学研究科修士課程修了。同年、NHK入局。2010年よりNHK放送技術研究所にて、ケーブルテレビでの4K・8K伝送技術の研究開発に従事。
10:15-10:35 講演(3) 10G-EPONを用いた多チャンネル8K放送信号のフィールド伝送
大石 将之(KDDI株式会社 技術統括本部/ネットワーク技術本部/オプティカルネットワーク部/アクセスシステム技術G 課長補佐)
【概要】 8K放送は、2018年に衛星を利用した実用化が計画されており、今後は多チャンネル化やVideo on Demand (VoD)サービスへの対応が想定されるため、より大容量な伝送システムが求められる。Ethernet Passive Optical Network (EPON)は、1Gbit/sの帯域を複数の加入者で共有することでFTTHサービスを経済的に提供するシステムであり、IP多チャンネル放送サービスにも用いられている。EPONの後継技術で、10Gbit/sの帯域を有する10G-EPONは、8K放送の伝送システムとして有望であるが、10G-EPONによる8K放送信号の多チャンネル同時伝送はこれまで実験報告されていない。本稿では、KDDIが開発した10Gbit/s対称型10G-EPONを用いた多チャンネル8K放送信号のフィールド伝送実験に成功したので報告する。
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【略歴】 2006年東工大・工・電気電子卒。2008年同大学院理工学研究科修士課程了。同年KDDI(株)入社、株式会社KDDI研究所配属。以来、高速光アクセス伝送技術、マイクロ波フォトニクス技術の研究に従事。現在、KDDI(株)オプティカルネットワーク部課長補佐。2012年国際会議COIN Young Engineer Award、2014年電子情報通信学会(IEICE)学術奨励賞、2016年IEICE論文賞各受賞。IEICE正員。
10:35-10:55 講演(4) MMTのAL-FEC符号化技術と通放連携サービスへの応用
仲地 孝之(NTT 未来ねっと研究所 主任研究員)
【概要】 様々な伝送路や端末などヘテロジニアス環境に対応するメディア伝送規格として、ISO/IEC MPEGのMMT (MPEG Media Transport) 標準化が完了した。現在は、実応用へ向けた取組みが加速している。MMTは、現行のMPEG-2 TSにはない様々な機能を有するとともに、AL-FEC (Application Layer Forward Error Correction)方式の誤り訂正符号をサポートしている。本講演ではNTTが提案したFF-LDGM符号を中心に、MMTのAL-FEC符号化技術と通放連携サービスへの応用について紹介する。  【イベント企画資料はこちら】
【略歴】 1997年、慶應義塾大学大学院後期博士課程了(工博)。同年、日本電信電話(株)入社。主に信号処理、映像符号化、メディア処理の研究に従事。2006-2007年には、スタンフォード大学にて客員研究員として、分散映像符号化の先駆的研究を行う。近年は、超高速誤り訂正符号の研究に従事する一方、ISO/IEC MPEGの国際標準化に携わる。第26回電気通信普及財団賞(テレコムシステム技術賞)、第6回信号処理学会論文賞(2012年)、IEEE ISPACS2015 Best Paper Award 受賞。
10:55-11:15 講演(5) 8K放送実用化に向けたMMT対応受信機の開発
高橋 真毅(シャープ株式会社 研究開発本部通信・映像技術研究所第三研究室 チームリーダー)
【概要】 2016年8月に試験放送が開始されるスーパーハイビジョン放送では、MMT、HEVC、TTML等、従来の放送方式と異なる、さまざまな新しい技術が導入される。本講演では、試験放送開始を目前に控えたMMT対応受信機の開発状況について紹介する。
【略歴】 1998年シャープ株式会社入社。以来、動画像符号化、ストリーミング、マルチメディア伝送技術の研究開発に従事。現在、通信・映像技術研究所に所属。
11:15-11:35 講演(6) ブラー不変マップ生成とMMT時代の応用
青木 輝勝(東北大学 未来科学技術共同研究センター 准教授)
【概要】 本講演では、講演者らが開発したブラー不変マップ(BIM: Blur Invariant Map)技術を基礎としたMMT時代の応用技術として、定点観測カメラへの応用、ならびに、静止画動画融合メディア生成、について紹介する。東日本大震災以降、安心・安全な社会実現のため、街中に多数のカメラを配置し、街中の様子(帰宅困難者数の確認など)を行政トップらが確認できる環境を提供する定点観測カメラシステムの導入が盛んに進められている。しかしその反面、このような取り組みに対しては、市民のプライバシーを憂慮する声も少なくない。そこで、街中の異常事態の推定とプライバシー保護を両立する手法として、BIMを用いた定点観測カメラ技術について紹介する。また、2つ目の応用技術として、雑誌などのアナログメディアとスマートフォン端末などのデジタルメディアを有機的に連携付け、静止画動画融合メディアを生成するための接触型画像マッチング技術についても併せて紹介する。
【略歴】 1993年東京大学工学系研究科電子工学博士課程修了。博士(工学)。東京大学先端科学技術研究センター助手・講師などを経て、現在、東北大学未来科学技術共同研究センター准教授。画像処理技術、画像理解技術などの研究開発に従事。文部科学大臣表彰若手科学者賞(2007年)、画像電子学会最優秀論文賞(2004年、2009年)、情報処理学会優秀教育賞(2007年)など受賞。
11:35-11:50 質疑