デジタルプラクティス Vol.8 No.1(Jan. 2017)

巻頭言

デジタルプラクティス編集委員会委員長  吉野松樹

情報処理学会は,新たな情報技術を生み出す研究者と,情報技術を活用する技術者の双方を会員とする組織である.デジタルプラクティスは,情報技術を実際に活用している技術者の経験・知識を論文として形式知とすることで,その発露・活用の場を設けることを主な目的として2010年1月に創刊された.本会がITエンジニアに対して提供しているサービスの1つである.

本会がITエンジニアに対して提供しているサービスとしては,ITフォーラム,連続セミナー,短期集中セミナー,ソフトウエアジャパン,認定情報技術者制度がある.ITフォーラムは,ITに関する幅広い課題を,学会,産業界,社会の多くの方々がともに議論できる開かれたコミュニティであり,現在6つのフォーラムが活動している.連続セミナーは,産業界(実務家)の視点から,関心度の高いテーマ,注目のテーマ,技術の先進性に富んだテーマを取り上げて,その最前線で活躍されている方々を講師に招き,年複数回にわたり連続して実施するものである.短期集中セミナーは,主に産業界向けのイベントとして時事性が高く,社会的関心度の高いテーマを取り上げて1~2日間程度で開催するものである.ソフトウエアジャパンは,ITプロフェッショナル(実務家),産業界の方向けのシンポジウムであり,2017年は,「データとAIが創り出す新たな価値」をテーマに2月3日に開催される.認定情報技術者制度は,高度の専門知識と豊富な業務実績を有する情報技術者に資格を付与することにより,その能力を可視化するとともに,資格を有する情報技術者からなるプロフェッショナルコミュニティを構築することを目的とした資格制度である.

デジタルプラクティスは,本会内外のさまざまな活動と連携している.その様子をデジタルプラクティスを中心に図示すると図1のようになる.

図1
図1 デジタルプラクティス関連図

「サービスサイエンス〜顧客中心のサービスサイエンス〜」(Vol.1 No.1),「コンタクトセンタ─コンタクトセンタは進化し続ける─」(Vol.2 No.3),「ビッグデータ分析をビジネスに活かす」(Vol.6 No.3)は,それぞれITフォーラムのサービスサイエンスフォーラム,コンタクトセンタフォーラム,ビッグデータ活用実務フォーラムのメンバが中心となって企画した特集号である.また,「高度IT資格制度」(Vol.3 No.2)は,認定情報技術者制度に関する特集号であり,さらにデジタルプラクティスおよびDPレポートへの投稿を認定情報技術者のCPD(継続研鑽)の要件の一部とするなどの連携を行っている.ソフトウエアジャパン2012のテーマ「CIOは決断する」は,同名の特集号(Vol.3 No.1)との連動企画である.全国大会,情報科学技術フォーラム(FIT)においてデジタルプラクティスの特集とリンクした企画イベントの実施も行っている.特に,2016年4月発行の「オープンサービスイノベーション」特集(Vol.7 No.2)の内容をベースに,FITでの企画イベントを実施し,さらに7月に富士通(株)主催,本会後援でイベントが開催されるなどの拡がりを見せている.また,本号の特集である「ICTとダイバーシティ社会」(Vol.8 No.1)では,会誌編集委員会女子部やInfo-WorkPlace委員会と連携した活動として,全国大会での企画イベントの実施や記事の相互掲載といった連携を行っている.

他組織とのコラボレーションとしては,JISA((一社)情報サービス産業協会)のJISAアワードの受賞案件の内容を論文の形で投稿いただいてJISA招待論文として毎年掲載している.

本会の研究者コミュニティへのサービスである研究会活動との連携も図るために,研究会,支部,シンポジウム等のイベントからのデジタルプラクティスへの推薦論文制度も2016年7月から開始した.また,本会の重要な事業の1つである情報規格調査会の活動とも連携し,「事業に活きる標準化の力」(Vol.1 No.2),「事業に活きる我が国発の標準化」(Vol.2 No.4)の2つの特集号を発行している.

デジタルプラクティスの論文を通して実践に基づく知見を蓄積し活用するという本来の価値を提供していくことはもちろんだが,ここで述べたようなさまざまな本会内外の活動と連携することで,本会の価値ならびに情報技術の利用価値を高めることに寄与できればと考えている.関連各位のこれまでのご協力に感謝するとともに,今後もさらなるご協力をお願いしたい.