情報処理学会60年のあゆみ
編集にあたって

 

 情報処理学会は今年4月に創立60周年を迎えました.2010年に本会の50年史に相当する「情報処理学会50年のあゆみ」が刊行されてから,はや10年が経過しました.1946年に電子計算機ENIACが開発されて以降最初の数十年は計算の効率化や事務処理の効率化,工場の生産性向上などのための道具として計算機が使われてきました.一方この10年を顧みると,スマートフォンの普及やフィンテックによる金融変革,人工知能(AI)を活用した仕事の自動化など,「情報処理」が計算機ユーザのための技術から社会全体で利活用される基盤技術に変化してきた感じがしています.また,政府においても,IoT(Internet of Things)やロボット,AI,ビッグデータ等の技術を活用した超スマート社会「Society 5.0(ソサエティ 5.0)」の実現が謳われ,今年度から小学校でのプログラミング教育が開始されるなど,社会全体で情報技術を取り込み,人々の「情報処理」能力を向上させようとする取り組みが数多くなされています.

 今回,情報処理学会の60周記念事業の1つとして本会の60年史「情報処理学会60年のあゆみ」を刊行することになりました.本60年史は,本会60年の歴史として50年史「情報処理学会50年のあゆみ」以降の学会の発展,具体的な活動記録,情報技術の標準化に果たした役割,情報処理技術の発展と展望を記述した内容となっています.60年史の編纂においては,本会の「30年のあゆみ」や「50年のあゆみ」と同様,第1編に学会全体の軌跡を,第2編に規格関係の活動を,第3編に情報処理技術の発展をそれぞれ記載するという編集方針を取らせていただきました.第1編の第1章では創立から50年までの概略史を記載し,第2章で学会活動の10年間のあゆみを記載し,第3章で次の10年に向けての課題や将来構想などを記載しました.第2編の第1章では標準化活動の60年の軌跡を記載し,第2章で情報規格調査会の10年間のあゆみを記載しました.第3編では本会の40研究会および4研究グループについて,それぞれの研究会・研究グループが対象とする分野に関する最近10年間の動向および研究分野の変遷,今後の展望をまとめさせていただきました.資料については,その多くをWeb上で公開し,書籍の中ではその一部のみを記載することとしました.

 これからの数十年を考えますと,日本は人口減少や高齢化,温暖化などさまざまな課題を克服していくことが求められております.そのために科学技術に期待される解決策は多岐にわたっており,AIを活用した社会システムのスマート化など情報技術はそのキーテクノロジーとしての重責を担っています.そういう意味からも,この機会に本会の60年の歴史を振り返ってまとめておくことは大変意義のあることと考えます.本60年史が皆様方の「情報処理」技術の歴史や発展に対する理解を深め,新たなイノベーションの創出に資することができれば幸いです.

 おわりに,本書の執筆にご尽力を賜った多数の著者の方々,資料を作成いただいた学会事務局の方々,60年のあゆみ編纂委員会の委員の方々をはじめご協力をいただいた関係各位に対し,深く感謝の意を表する次第です.

 2020年10月

60年のあゆみ編纂委員会

委員長 東 野 輝 夫

 

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