情報処理学会60年のあゆみ
刊行によせて

 

 1960年4月に情報処理学会が設立されてから,今年で60年となりました.創立当時の日本は高度成長真っ最中で,4年後の東京オリンピックに向け首都高速道路が建設されていました.本「情報処理学会60年のあゆみ」は2010年に刊行された「同50年のあゆみ」からの10年間を中心に本会の活動内容が記録されています.

 この10年で米国の巨大プラットフォーマGAFA+M(Google Amazon Facebook Apple+Microsoft)の時価総額は6倍以上に伸長しました.一方日本のIT市場は堅調ですが,ビジネスを革新的に変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)の普及に向けてはデジタルトラスト技術含め十分ではありません.

 詳細は本編に譲りますが,本会の10年の主活動振り返りと今後の期待について述べます.

1.新分野への挑戦

 本会には研究会が40個ありますが,そのうち5個はこの10年間で新たに設立されたものです.たとえば,人生100年時代というコンセプトが出るより先に高齢社会デザインに関して分野横断的な研究会を2015年4月に発足させました.

 また,ISO/IECの標準化活動を担う本会の情報規格調査会においては,GreenIT,IoT,人工知能(AI)等新たな分野に対する標準化活動を新たにスタートさせました.

 今後は量子情報技術向けソフト等社会的影響大な分野への取り組みが期待されます.

2.新ジャンル会員

 2015年から実施しているジュニア会員は,小学生から大学学部3年生迄を対象とし,2019年には1,000名超と急成長しました.これは,ジュニア向け会誌記事やイベント等活動の効果であり,国際的にも例を見ない制度として2019年6月のIEEE Global Society Interaction Programでも注目されました.今後はジュニア会員が成長し情報処理技術を使って彼らの夢を実現できるよう研究機関含めた教育制度の整備が期待されます.

3.IT人材育成

 ITスキルを評価するには記述試験が一般的ですが高度IT人材スキル評価には口述試験も必要です.そのため本会では認定情報資格者制度(CITP)を新設し約1万人を認定済みです.CITPは2018年3月にIFIP(International Federation for Information Processing)に認められ,国際的に通用する資格となりました.

 また本会には,初等中等教育から大学の一般情報/専門課程まで幅広くカリキュラムや教材の作成を行う専門委員会があり,J17等カリキュラム作成を行ってきました.

 今後は人生100年時代のリカレント教育も見据え,教育と資格取得でシームレスなスキルアップ可な体系(ニーズの高いデータサイエンティスト等)新設が期待されます.

 最後になりますが,60年のあゆみ編纂委員会の東野輝夫委員長をはじめ,委員の方々,そして執筆の労を執られた方々に厚く御礼を申し上げます.

 2020年10月

60周年記念事業実行委員会

委員長 中川八穂子

 

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