情報処理学会60年のあゆみ
創立60周年を迎えて

 

 1960年に,情報処理国際連合(IFIP)の設立に呼応する形で設立された情報処理学会は,本年4月に還暦にあたる,創立60周年を迎えました.この間の情報処理に関する学術の進歩とそれによる社会の変革には目を見張るものがあります.これもひとえにこの分野の発展に寄与されてきた先達のご尽力によるものであり,すべての皆様の活動に深い敬意を表するとともに感謝を申し上げます.

 本会はこれまでに「情報処理学会30年のあゆみ」,「情報処理学会50年のあゆみ」を刊行しています.学会の年史には学会の活動の記録という意味もありますが,その時々の学術,研究開発の思想と次の展開への思いを記録するという面もあります.特に技術の進化のスピードが激しくなっているなかで,「50年のあゆみ」刊行から10年経ったこの区切りのタイミングで,この間の本会の活動とこれからの展望をまとめた「情報処理学会60年のあゆみ」を刊行することとしました.多くの皆様にお目通しいただき,本会の現状の活動全体につきご理解いただくとともに,今後10年さらには来るべき大還暦(次なる60年)へ向け学会が向かうべきにところに思いを馳せていただければと考えます.

 丁寧な装丁の冊子を用い,日本語の文章と図表で刊行する「あゆみ」はこれが最後になるかもしれません.次は,豊富なコンテンツに自由にアクセスでき,自由な発想を喚起する新しい「あゆみ」がつくられることを期待しています.60周年を契機に,学会のあらゆる活動につき,自由な発想で新しいものに変革していくことを検討したいと考えています.会員層の拡大,グローバルな連携の強化,大会や会誌の新しいあり方,学会ならではのサービスの拡充など取り組めるものは数多あります.多くの皆様に協力いただきながら進めていく所存です.

 多発する自然災害や広がりをみせる新たな感染症への対応,エネルギーなど有限な資源の活用問題など地球の持続可能性を意識した議論が進み,SDGs(Sustainable Development Goals) 実現への取り組みがグローバルに行われています.人口減少が進むなか,人生100年時代を迎える日本では,人が豊かに生きるためのキャリアのあり方も議論されています.いずれにおいても,情報技術が新たな社会を創っていくうえでの鍵となります.加速度的に進化する情報技術を有効に使ってはじめて,新しい社会や文化,豊かな暮らしを実現することが可能になります.情報に関する進展を主に学術面と人材の能力向上の面から支える本会の重要性が今後高まっていくことは必須です.この先永く必要不可欠なものとして頼られ続けるよう,本会が進化することを祈念しています.そのために,これまでにも増してのご協力,ご支援を皆様にお願いする次第です.

 2020年10月

一般社団法人 情報処理学会

会 長 江 村 克 己

 

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