No.62

我が国における新世代ネットワーク

3月9日 15:30-17:30

会場:第3イベント会場

講演者 Speaker

イベント司会

写真中尾 彰宏
東京大学 大学院情報学環 准教授

講演

写真青山 友紀
慶應義塾大学 デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構 教授

写真須藤 修
東京大学 大学院情報学環 教授

写真原井 洋明
独立行政法人 情報通信研究機構 新世代ネットワーク研究センター ネットワークアーキテクチャグループ グループリーダー

写真井上 友二
社団法人 情報通信技術委員会 理事長

概要 Abstract

ユビキタスネットワークの進展,アクセス網のブロードバンド化,コンテンツのリッチ化などネットワークを巡る環境は日々変化している.現在のIPネットワークはIPパケット損失の発生や,セキュリティ・サービス品質の不足,ネットワークの拡張・高度化の限界,複雑化による機能の不整合の発生等様々な課題を抱えている.そこで,次世代ネットワークの次の世代を見据え,10年・20年先の社会を支えるインフラとして,既存のIPネットワークの課題・限界を抜本的に解決する新世代ネットワークの構築が求められている.ここでは,新世代ネットワークとはどのようなものかを技術面だけでなく,海外動向や新世代ネットワークが要求される場面(医療等)等の社会経済的側面からの検討を踏まえ,分かりやすく紹介する.

プログラム Program

15:30-15:35 オープニング

15:35-15:55 講演(1):新世代ネットワークの研究展開と課題

青山 友紀

2020年代以降の社会の要請を満たすネットワーク技術を既存IPネットワークの改良ではなくclean-slateで研究開発する新世代ネットワーク(欧米ではFuture Internetと呼ぶ)について,世界の研究状況を俯瞰するとともに,その課題について考察する.

15:55-16:15 講演(2):新世代ネットワークの戦略的活用

須藤 修

2020年代以降の社会の要請のなかでも特に重要と考えられる保健医療の在り方,ネットワークロボットを活用した生活空間の在り方,環境問題への対応にみられる公共的意思決定の在り方,以上3点に焦点を当てて,新世代ネットワークをどのように利活用すべきか,これまで新世代ネットワークフォーラムアセスメントWGで検討してきた結果を報告するとともに,これからの社会のガバナンスについて展望する.

16:15-16:35 講演(3):新世代ネットワークを実現するアーキテクチャ設計と構成技術

原井 洋明

情報通信研究機構を中心にした新世代ネットワークプロジェクトであるAKARIアーキテクチャ設計プロジェクトの概要を紹介する.本プロジェクトでは,現在の制約にとらわれず,2015年以降の社会要求と実現可能技術を制約とするという視点でネットワーク設計を実施し,実証のための研究開発を実施している.本講演では,上記の概要を紹介するとともに,移動通信やセキュリティに貢献するID・ロケータ分離階層構造,新しいネットワーク実証の場でありアーキテクチャであるネットワーク仮想化技術,エンドトゥエンドの接続性と品質保証の対極にあるサービスを提供するパケット・パス統合ネットワーク技術などについて紹介する.

16:35-16:55 講演(4):新世代ネットワークを支えるネットワーク仮想化技術

中尾 彰宏

要求の異なる多種多様なネットワーク・アーキテクチャを同時に収容するメタ・アーキテクチャを実現するための最新のネットワーク基盤技術として注目されている「ネットワーク仮想化技術」の紹介を行う.ネットワーク仮想化技術は,コンピュータ・ネットワーク資源を仮想化技術により分離(Resource Isolation)し アプリケーション毎に特化したネットワークを複数共存させる技術であり,新世代ネットワークアーキテクチャの根幹を成す重要な技術として期待されている.

16:55-17:15 講演(4):JGN-2plusとその後

井上 友二

新世代ネットワークの研究開発では,そのチャレンジする技術の革新性もさることながら,その成果を社会に広く普及させるために,画期的な産官学ならびに地域社会やアジア諸国との連携を行っている.その範囲は,単に情報通信分野だけでなく自然科学から生活密着型アプリケーション開発まで広範囲に亘っている.ここでは,JGN-2plusとして現在活動している最新情報をご紹介すると共に,その後継となるテストベッドの検討状況をご紹介する.さらには,日本の産業構造を「箱物型から人々の生活を豊かにする産業」へ転換するための萌芽的なアジア連携トライアルについても紹介する.

17:15-17:30 講演全体における質疑応答

講演者略歴 Biography

中尾 彰宏
東京大学理学部物理学科卒業(1991年),東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修士修了(1994年),IBM Texas Austin研究所,IBM東京基礎研究所(1994年)などを経て,米国Princeton大学大学院情報科学科にて修士及び博士取得(-2005年),東京大学大学院情報学環助教授 (2005年),ACM SIGCOMM Conference External Reviewer(2005年),新世代ネットワーク推進フォーラム アセスメントワーキンググループ副主査(2007~)

青山 友紀
東京大学大学院修士課程修了(1969年).同年,日本電信電話公社入社.以降,電気通信研究所にて情報通信システム,広帯域ネットワーク等の研究に従事.米国MIT客員研究員(1973年).NTT 光ネットワークシステム研究所所長(1995年).東京大学工学系研究科教授(1997年),慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構教授(2006年).(独)情報通信研究機構プログラムコーディネータ.東京大学名誉教授.工学博士.日本学術会議会員.電子情報通信学会会長,IEEE Fellow.グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム会長,新世代ネットワーク推進フォーラム副会長など.

須藤 修
東京大学大学院経済学研究科博士課程修了(1985年),経済学博士.
参議院商工委員会客員調査員(1997年),政府「IT新改革戦略評価専門調査会」委員,「電子政府評価委員会」座長(2006年~),政府「次世代電子行政サービス基盤検討プロジェクトチーム」座長(2007年~),政府「情報セキュリティ政策会議情報セキュリティ基本計画検討委員会」委員長(2008年),総務省「電子自治体の推進に関する懇談会」座長(2007年~)など.

原井 洋明
大阪大学大学院博士課程修了後,通信総合研究所(現在の独立行政法人 情報通信研究機構(NICT))に入所(1998年).ネットワークアーキテクチャグループリーダーとしてAKARIアーキテクチャ設計プロジェクトを主導 (2008年9月~現在).ネットワークアー
キテクチャ,光パケット交換ネットワーク,光グリッド基盤等の研究開発を歴任.第3回IEEE ComSoc アジア太平洋Outstanding Young Researcher 表彰 (2007年).博士(工学).

井上 友二
九州大学大学院工学研究科修士課程修了(1973年),同年日本電信電話公社に入社し,網同期発振器,デジタル加入者線伝送方式等の研究実用化及びCCITT SG-XVIII(現ITU-T SG13)での各種の標準化等に従事.工学博士(1986年 九州大学),NTTマルチメディアネットワーク研究所長(1998年),モンゴル技術大学名誉教授(1999年),NTTデータ取締役(2000),(社)情報通信技術委員会 理事長(2007~現在)