No.46

企業活動に役立つ数理科学 ~ サービス化に向けて

3月9日 9:30-12:00

会場:第4イベント会場

講演者 Speaker

イベント司会

写真田島 玲
日本アイ・ビー・エム(株) 東京基礎研究所 部長

講演・パネリスト

写真岡野 裕之
IBMビジネスコンサルティングサービス(株) ビジネス・アナリティクス&オプティマイゼーション シニア・マネージング・コンサルタント

写真西川 徹
(株) Preferred Infrastructure 代表取締役

写真河本 薫
大阪ガス(株) 情報通信部 課長

写真山西 健司
東京大学 大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻 教授

概要 Abstract

便利になる,自動化する,という視点でITが企業活動を大きく変えてきた功績は大きなものがありますが,かなり成熟しつつあるのも事実です.一方で,最適化する・予測する,など,自動化以上のビジネス的な価値を創出するための道具としての数理科学に注目が集まっています.IT部門でなく事業部門,CIOでなくCEO/CFOにこそ訴求する活動に目をむけ,各界のリーダーをお招きして最新事情・事例を紹介いただきます.

プログラム Program

9:35-10:05 講演(1):数理科学によるビジネス最適化 ~IBMにおけるBAOサービスを例として~

岡野 裕之

企業がかかえるデータは爆発的に増加・複雑化している.増大したデータの多くは,それを価値に変える分析手法が確立されないまま,単に蓄積されるだけとなっている.また,データ種類が増加しているため,有用情報とノイズを峻別することが困難となっている.これらのビジネス課題の解決には数理科学が必要不可欠であるとの認識から,IBMではビジネス課題への数理科学(特にデータ解析と最適化)の適用をBAO (Business Analytics & Optimization) と呼び,サービスとして提供している.本講演ではIBMにおけるBAOサービスの事例をご紹介する.

10:05-10:35 講演(2):コンピュータ科学の新しい使われ方

西川 徹

コンピュータ科学を活用して収益を上げている企業はとても多い.大企業だけではなく,生まれたてのスタートアップも,コンピュータ科学をフル活用して企業の成長に結び付けている.さまざまな規模の会社がコンピュータ科学を活用している今,企業の垣根をこえてさまざまなバックグラウンドの人たちがお互いの技術・知識を共有することはとても重要である.ベンチャーをやっている立場から,スタートアップの世界でどのような技術が活用されているのか,また,それが実際にはどのような企業にとっても有用な技術であることを詳説する.

10:35-11:05 講演(3):企業の意思決定プロセスにおける数理系人材の活用方法

河本 薫

企業の経営環境が複雑化するに伴い,企業の意思決定プロセスにおいて論理的思考やシステム的思考の重要性が高まっている.しかし,意思決定組織は調整力や決断力に秀でるが前記思考力は充分に発揮できない場合もある.そこで,大阪ガスでは,数理系人材による組織横断的な意思決定支援を目的として「社内コンサルティング機能」と称する専任グループを10年前から本社に設置してきた.講演では,大阪ガスの「社内コンサルティング機能」を紹介し,代表的な事例を交えながら,それが意思決定組織に合理的な意思決定を促し,組織を超えた全体最適化を図り,自律的に企業思考力を高めることを示す.また,その成功条件として,数理系人材に求められる能力および意思決定組織との協調体制を説明する.

11:05-11:35 講演(4):潜在するビジネス的価値を掘り起こす―解析の数理から戦略の数理へ

山西 健司

大量なデータが溢れる現在,そこからビジネス的価値を引き出そうという試みとしてデータマイニングや各種のビジネスデータ解析手法が発達してきた.しかしながら,表層的なデータの関係性を掘り起こすだけでは,現状の分析にとどまり,未来への戦略につなげるには不十分であることがわかってきた.そこで,より深い潜在的な知識の世界へと踏み込み,その「動き」や「変化」としての""Latent Dynamics""(潜在的ダイナミックス)に注目することが重要であると考えられる.Latent Dynamicsは現状分析のみならず,データに潜む本質的な構造を理解し,未来への戦略へとつながる知識を生み出す可能性を秘めている.そのようなLatent Dynamicsを捉えるためには,潜在的確率モデル,非定常モデル,変化分析,グラフマイニングなど様々な新しい数理的手法を有機的に結合した総合的体系が必要である.本講演では,アカデミアの立場から,Latent Dynamicsをもとにビジネス的価値を掘り起こすための数理的手法の方向性を概観し,それらがいかに「解析の数理」から「戦略の数理」へと発展できるかについて論じたい.

講演者略歴 Biography

田島 玲
1992年東京大学工学部工学系研究科修了.1992年-2002年 日本アイ・ビー・エム(株)東京基礎研究所研究員.1997年-2000年 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻 社会人博士課程,博士(理学).2002年-2005年 A.T.カーニー(株)コンサルタント/マネージャー.2005年より日本アイ・ビー・エム(株)東京基礎研究所に勤務,2009年6月より数理科学分野を担当

岡野 裕之
IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社 シニア・マネージング・コンサルタント.
1990年東京農工大学数理情報工学修士課程修了.同年日本IBM入社.
IBM東京基礎研究所にて組合せ最適化アルゴリズムの研究に従事.博士(情報科学)
2009年IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社に出向.

西川 徹
東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士卒.在学中はコンピュータアーキテクチャに興味を持ち,修士のときに現在の会社を設立.現在は代表取締役として会社の経営を行う.会社では,コンピュータ科学を活用したソフトウェアを開発・提供している.ビジネスに数理科学を生かすため日々コンピュータ科学の各分野を深堀りしている.ttp://twitter.com/preferred_jpが会社の公式Twitterアカウントである.

河本 薫
1989年京都大学工学部数理工学科卒業,1991年同大学院応用システム科学専攻修了.1991年大阪ガス入社.1998年~2000年米国ローレンスバークレー国立研究所客員研究員.2005年大阪大学から博士号(環境工学)授与.2008年から東京大学先端科学技術研究センターの客員研究員を兼務.2010年から神戸大学経済学部の非常勤講師を兼務.専門は,エネルギー環境政策分析およびエネルギーマーケット分析.

山西 健司
1987年東京大学工学系大学院計数工学専門課程修了.1992年東京大学 博士(工学)取得.1987年4月-2008年12月NEC研究所勤務,NEC主席研究員,データマイニング技術センター長を務める.1992年-1995年NEC Research Institure, Inc.にVisiting Scientistとして出向.2009年1月より現職.