特別トラック(2)
IPv6を基盤としたインターネットの新展開
●基調講演 3月27日(木)11:00-12:00[T2会場(研究所棟4F 402)]
「実空間インターネット:日本での役割・世界への責任」
村井 純(慶大)
 現職:慶應義塾大学環境情報学部 教授.1955 年生まれ.1984 年慶應義塾大学工学部数理工学博士課程修了.1987 年博士号取得.1984 年東京工業大学総合情報処理センター助手,1987 年東京大学大型計算機センター助手.1990 年慶應義塾大学環境情報学部助教授を経て1997 年より現職.1999 年慶應義塾大学SFC研究所所長.1984 年 JUNET を設立.1988 年 WIDE プロジェクトを設立し,今日までその代表として指導にあたる.社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター理事長.ICANN ボード.著書「インターネット」,「インターネットII」
(岩波新書),監訳「インターネットシステムハンドブック」(インプレス),「IPv6:次世代インターネットプロトコル」(プレンティスホール) 他.
[講演概要]
 21世紀の情報通信基盤は,インターネットプロトコルIP (Internet Protocol)をそのコア技術として,信頼性のある産業・生活基盤としての役割を果たさなくては ならない.インターネット技術は,デジタル化された知識と情報を,人々に提供したり,人々の間で共有したりすることがその主な利用法であったといえる. ところが,半導体技術を核としたデジタル情報処理技術の発展は,計算機以外のデジタル機器をも,インターネットに接続することを可能にし,それにともない, これまでは,ネットワーキングされることがなかった機器までも,インターネットに接続されようとしている. センサーノードをはじめとして,身の回りに,さまざまなデジタル機器を配備することによって,新しい情報空間を創造する方向性が模索されている. 単に,たくさんのデジタル機器を偏在させた,いわゆるユービキタス・ネットワーク環境とともに,はっきりとした目的を達成するために必要なデジタル機器を配備するといった,現実的な検討が推進され,グローバルな実時間インターネットの構築に向けて多くの展望が開けてきた.さまざまな実空間インターネットの現状と課題について多角的に議論する.
 
●パネル討論(1) 3月26日(水)10:30-12:00[メイン会場(研究所棟B1F B01)]
「ブロードバンドとコンテンツ流通」
[討論概要]
インターネット電話サービスは,フラットレート課金を前提とした,ブロードバンド環境の急速な導入と普及に伴い,急速に普及しようとしている.インターネット電話は,いわゆる VoIP(Voice over IP)に関する技術を集約して展開されるサービスである.PSTN網やCTIシステムとの相互接続に関する 技術的およびビジネス的課題,さらには,インターネット電話サービスの次に展開されるであろう,本格的な,これまでの電話網的なマルチメディアではない, "マルチメディア"通信の方向性と課題. 本パネルでは,技術的な観点から,インターネット電話の現実と課題,そして,今後の展開に関する議論を行う.
司会兼パネリスト:櫻井 智明(キールネットワークス)
平成9・1  リアルネットワークス株式会社 技術部長として入社.平成10・12 株式会社キールネットワークス設立/代表取締役社長 就任.平成12・9 株式会社スパイナルコード設立/代表取締役社長就任.平成13・6 株式会社スパイナルコード/代表取締役社長退任. 平成14・6 株式会社エコス/取締役就任.平成14・8 株式会社ディメンジョンワークス/代表取締役社長就任.平成9・1 慶応大学 環境情報学部 村井研究室研究員.平成11・6 財団法人インターネット協会 インターネット放送部会副部会長 .平成13・3 総務省情報通信審議会 専門委員, 情報通信審議会情報通信政策部会インターネット基盤委員会 所属.現在に至る.
パネリスト:桑名 栄二(NTT-BB)
1984年電気通信大学大学院修士課程修了.同年,日本電信電話公社に入社.以後,ソフト工学,CSCW,インタラクティブシステム等の 研究開発に従事.1991年〜1992年ミシガン大学客員研究員.2001年からNTTブロードバンドイニシアティブ(株)にて,コンテンツ流通システムの開発に従事.情報処理学会論文誌編集委員会主査(応用分野),同GW研究会幹事等を歴任.博士(工学).
パネリスト:今井 祐二(富士通研)
1992年名古屋大学工学部情報工学専攻博士前期過程修了.同年,株式会社富士通研究所入社.高信頼OS,大規模Webクラスタの研究に従事 .2000年University of California Irvine, Department of Information and Computer Science 訪問研究員.現在,IPv6上のコンシューマ向けマルチキャストの研究開発に従事.  
 
●パネル討論(2) 3月26日(水)15:30-17:30[T2会場(研究所棟4F 402)]
「IPv6ビジネス展開」
[討論概要]
 IPv6技術は,これまでのインターネットの発展と進化を支えてきたエンドエンドアーキテクチャモデルを維持しながら,これまでのインターネットでは 収容していなかったいわゆる計算機以外のデジタル機器をインターネットを接続し,それらが,自律的に相互にデジタル情報を共有交換加工するような 環境を提供する. このような環境では,これまでのサイバースペースとしての情報空間ではなく,リアルスペースと情報空間の融合が起こる.本パネルでは, このようなIPv6技術が切り開くリアルスペースインターネットにおける新しい情報通信のビジネス展開の方向性と技術課題を議論する.
司会:江崎 浩(東大)
87年九州大工学部電子工学科修士課程了. 同年4月(株)東芝入社.90年米国ベルコア社,94年米国コロンビア大学客員研究員.94年ラベル スイッチ技術のもととなるCSR技術をIETFに提案.98年より東大大型計算機センター助教授,2001年より現職(東大情報理工学系研究科 助教授).WIDEプロジェクトボードメンバー.IPv6普及・高度化推進協議会専務理事.工学博士(東京大学).
パネリスト:神牧 秀樹(日立)
1987年同志社大学工学部電気工学科卒業.同年日立製作所入社.システム開発研究所に所属.PC/WSシステムの研究開発を経て現在 ,IPネットワークのシステムLSI,端末システムの研究開発に従事.電機学会会員.
パネリスト:藤原 憲明(松下電工)
1956年生まれ.1980年京都大学工学部数理工学科卒業.大学時代の研究は論理システム.1980年松下電工入社.コンピュータ応用解析・ 計測業務を中心としたアプリケーション開発に従事.1996年12月から約2年間米国にてオブジェクト指向システム開発の研究開発後,システム開発推進部にてソフトウエア・オートメーション,ミドルウェア開発,インターネット接続機器システム,特にIPv6関連機器と システムの行い現在に至る.
パネリスト:矢野 和男(日立)
昭59年早大修士了.同年日立中研入社.工博.低温用素子,パストランジスタ論理,単一電子素子,SoC技術の研究に従事.平3年アリゾナ州立大客員研究員.現在システムLSI研究部長としてセンサネット,システムオンチップ,新メモリに関する研究を推進.
IEEE Paul Rappaport賞,Lewis Winner賞,Jack Raper賞を受賞.
パネリスト:高木 康志(NTT)
1985年阪大・工・産業機械卒.1987年同大大学院修士課程了.同年日本電信電話(株)入社.以来,ATMネットワークおよびシステム 構成方式の研究実用化,IPサービスネットワーク構成方式の検討,ADSLサービス網構成方式の検討,移動体IPコアネットワーク構成方式 および次世代モビリティ技術の研究実用化等に従事.現在NTTネットワークサービスシステム研究所主幹研究員.
 
●パネル討論(3) 3月27日(木)9:30-11:00[T2会場(研究所棟4F 402)]
「インターネット電話の現状と今後の展開」  
[討論概要]
インターネット電話サービスは,フラットレート課金を前提とした,ブロー ドバンド環境の急速な導入と普及に伴い,急速に普及しようとしている.インターネット電話は,いわゆる VoIP(Voice over IP)に関する技術を集約して展開されるサービスである.PSTN網やCTIシステムとの相互接続に関す る技術的およびビジネス的課題,さらには,インターネット電話サービスの次に展開されるであろう,本格的な,これまでの電話網的なマルチメディアではない, "マルチメディア"通信の方向性と課題. 本パネルでは,技術的な観点から,インターネット電話の現実と課題,そして,今後の展開に 関する議論を行う.
司会:砂原 秀樹(奈良先端大)
奈良先端科学技術大学院大学情報科学センター長.88年慶応義塾大学理工学部博士課程修了.村井純(慶應義塾大学環境情報学部教授)らと ともに,1984年からJUNET,1988年からWIDEプロジェクトを通じて ,日本におけるインターネットの構築とその研究に従事.
パネリスト:村田 利文(ソフトフロント)
1981年北海道大学大学院修士過程(電子工学)修了.大学院在学中の1980年 ,札幌で同級生とビー・ユー・ジーを設立し取締役に.1992年に退職して独立.その後,合併を経て1997年に.VoIPを手掛けるソフトフロントの代表取締役となり現在に至る.地域の産業活性化のためのビジネス交流組織「札幌Biz Cafe」のボードメンバーも努めている.
パネリスト:平山 義明(フュージョン・コミュニケーションズ)
千葉大学工学部卒業.ソード(株),日本高速通信(株),KDD(株),クロスウェーブ(株)をへて,2001年7月にフュージョン・ コミュニケーション(株)立ち上げ参画.現在に至る.
パネリスト:奈須野 裕(日本テレコム)
昭和58年4月 NTT入社,電子・ディジタル交換機技術者として一歩を踏み出す.平成5年4月 日本テレコム入社 ,技術開発室(現在サービス開発本部)にて,インテリジェントネットワークの研究開発とITU−Tの標準化に貢献.平成10年12月,次世代IP統合 ネットワーク構想(PRISM)の実現を取りまとめ発表.IP-VPNやVoIPの研究開発に従事.技術士(電気・電子部門).
著書:企業を変える次世代IPネットワーク(リックテレコム)
 
●チュートリアル(1) 3月26日(水)9:30-12:00[T2会場(研究所棟4F 402)]
「IPv6技術の概要と現状」
講師:江崎 浩(東大)
(略歴は「パネル討論(2)」を参照)
[講演概要]
IPv6技術は,1990年頃から,インターネット技術の世界標準を決定しているIETF(Internet Engineering Task Force)において,その技術検討が開始され,既に基本的な技術標準化が完了しています. IPv6システムは,政府のe-Japan戦略においても中核的な基盤技術として位置付けられ,いわゆる研究的な開発および 実験から,実運用・商用運用の段階へと進展しました. 本チュートリアルでは,IPv6技術が導入されるべき必要性と必然性を解説するとともに,IPv6技術の 詳細と今後の技術課題,IPv6技術の開発状況と実ネットワークへの導入状況,各国におけるIPv6に関する取り組みを解説し,今後の展開を展望します.
 
●チュートリアル(2) 3月27日(木)14:30-16:00[T2会場(研究所棟4F 402)]
「ピアツーピアアーキテクチャ」
講師:斉藤 賢爾(慶大)
1993年,コーネル大学大学院計算機科学科工学修士課程修了.日立ソフトウェアエンジニアリング(株),ジオワークス(株)にお ける小型情報通信機器の基本ソフトウェア開発およびサポートエンジニアを経て,現在,慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期 博士課程に在籍.ピアグループによるオーバレイネットワークのためのインフラストラクチャや,その応用としてのインターネット上で の自由通貨の研究を行なう.ACM会員.
[講演概要]
 このチュートリアルでは,近年,ファイル共有等の分野で特に注目を集めているピアツーピアという概念について,その意味を整理し,最新の研究トピックを 紹介するとともに,それがインターネットのアーキテクチャに与えるインパクトについて考えます.予定している内容は次の通りです: 1)ピアツーピアの歴史;2)ピアツーピアの意味;3)ピアツーピアとオーバレイネットワーク;4)分散ハッシュテーブル技術とその応用;5)最新の研究トピック;6)将来の展望 .ピアツーピアの考え方の多くは,長年培われてきた分散コンピューティングの研究成果に基づいています.今,私たちは,これまで分散シムについて何を 考えてきたか,見直すよい時期に来ていると言えるのではないでしょうか.このチュートリアルを通して,ピアツーピアとは一体何なのか,私たちにとって 何が変わるのか,私たちには何ができるのか,みなさんが考える上での一助となれば幸いです.