特別トラック(10)
e-Japanの進展 −企業活動や社会生活に変革をもたらす電子政府・電子自治体−
●基調講演 3月26日(水)9:45-10:45[T10会場(研究所棟 2F 202)]
「e-Japanの行方と展望」
大山 永昭(東工大)
1982年,東京工業大学大学院総合理工学研究科物理情報工学専攻博士課程終了.1983年,同大学工学部附属像情報工学研究施設助手.1988年, 同大学工学部附属像情報工学施設助教授を経て1993年,教授となり,2000年4月同大学フロンティア創造共同研究センター情報系研究機能 教授となり現在に至る.専門分野は医用画像工学,光情報処理.工学博士.IT戦略の今後のあり方に関する専門調査委員会(内閣官房) 委員他を務める.
[講演概要]
 現在の「e-Japan戦略」は,平成13年1月に策定公表されたものであるが,これまでの2年間で当初の目標である高速・超高速ネットワークの整備や電子政府の 構築などが順調に進展していることから,現在,IT専門調査会が開催され,「e-Japan戦略」の改訂作業が行なわれている.この改定における最大のポイントは, 国民を中心としたITの利活用であり,その実現を図るために構造改革と新価値創造をあげている.具体的には前者は,官民における業務の見直しによる無駄の 排除すなわち社会全体のBPRを,後者は新しい製品やサービスさらには市場等の価値を創造することを意味している.本発表では,上記の専門調査会での議論と 考え方を紹介するとともに,電子政府,人材育成,政府認証基盤のセキュリティ向上,知的財産の流通促進などに関する新たな課題とその対応策などについて提示する
●パネル討論 3月26日(水)15:30-17:30[T10会場(研究所棟 2F 202)]
「電子政府・電子自治体の基盤整備」
[討論概要]
 2005年に世界最先端のIT国家になるという e-Japan戦略に基づき,行政・公共分野の情報化が積極的に進められている.特に,電子政府,電子自治体の構築は, 行政・公共分野の情報化の柱であり,その目標は,政府・自治体,企業,市民の間における情報共有を進め,行政サービスをより効率的,効果的なものに することにある.既に,霞ヶ関WAN,総合行政ネットワーク(LGWAN),住民基本台帳ネットワークなど,電子政府・電子自治体の基盤整備は着実に 進展しつつあるが,言うまでもなく,こうした情報基盤が有用なものになるか否かは,これらの情報基盤をどう活用するかにかかっている.このパネル討論では, こうした動きを政治,行政,民間,市民の関係,すなわち社会構造そのものを変えていくプロセスとしてとらえ,パネラーの方々に政治,行政,民間の それぞれの立場からご意見をいただき,電子政府・電子自治体の課題を浮き彫りにしたい.
司会:前川 徹(早大)
1955年生まれ,名古屋工業大学情報工学科卒,1978年に通産省に入省,機械情報産業局情報政策企画室長,JETRO New Yorkセンター産業用電子機器部長,情報処理振興事業協会(IPA)セキュリティセンター所長を経て,99年9月より早稲田大学大学院国際情報通信研究科客員教授. <著書・論文>『サイバースペースとアメリカ情報産業』,『ECビジネス最前線』,『ネットバブルの向こう側 ECビジネスの未来戦略』など.
パネリスト:平井 卓也(衆議院議員)
香川県生まれ.1980年上智大学外国語学部英語学科卒業後,(株)電通に入社.テレビ局,国際局,ISL室などで勤務.87年西日本放送(株) 代表取締役社長就任.93年スペインの現代美術の粋を集めた丸亀平井美術館を設立,日本人で唯一人スペイン国際現代美術見本市(ARCO) 財団会員.2000年の総選挙で初当選.現在,衆院経済産業委員.HP「ひらたくドットコム」(http://wwwhirataku.com)では自身の日記を 毎日公開し好評を得ている.
パネリスト:猿渡 知之(総務省)
昭和60年東京大学法学部卒業後自治省入省.その後,青森県企画部理事,総務省自治政策課理事官を経て現職.
パネリスト:牧内 勝哉(経済産業省)
1959年:北海道札幌市生まれ.1984年:北海道大学電子工学専攻修士課程修了,通商産業省入省.通商産業省においては,主に情報政策, 科学技術政策を担当.1995年:米国イリノイ大学アーバナシャンペーン校客員研究員.1998年:通産省機械情報産業局新映像産業室長. 1999年:JETROデュッセルドルフセンター.2002年:現職.主に電子政府とインターネット政策を担当.
パネリスト:三谷 慶一郎(NTTデータ)
1985年新潟大学工学部卒.同年日本電信電話(株)入社,(株)NTTデータを経て,1993年より現職.行政機関や企業における情報化戦略 立案に関するプロジェクトを多数実施.近年は電子政府・電子自治体や電子商取引分野,それらの基盤となるセキュリティ分野等に関連した コンサルティング活動に取り組んでいる.1995年より日本システム監査人協会理事.主要著書「電子文書証明〜eドキュメントの原本性確保」 (NTT出版 2001年)
●チュートリアル 3月26日(水)11:00-12:00[T10会場(研究所棟 2F 202)]
「次世代電子政府技術」
講師:国分 明男(ニューメディア開発協会)
電子技術総合研究所(現在は、独立行政法人産業技術総合研究所)において、連想記憶マシンなどのコンピュータシステムの研究開発を 20年以上行う。1990年から財団法人ニューメディア開発協会理事・開発本部長。2000年から常務理事・開発本部長。電子公証システム、 レイティング/フィルタリングシステム、原本性保証電子保存システム、汎用電子申請システム、次世代ICカードシステムなどの情報化社会に おける基盤的システムの開発を推進。
[講演概要]
 電子政府における業務改革内容の明確化,政府と企業・国民の関係変化,サーバ,ネットワーク,端末環境変化などに伴い,必要となるアーキテクチャ, 応用システム,要素技術が変わろうとしている.業務における処理フローの明確化は,ナレッジマネージメントやエキスパートシステムの再登場をうながす. 民から官への電子申請における書類添付から参照先添付への方向は,システム的にはクライアント・サーバ構成から,ネットワーク分散環境への移行に ほかならない.セキュリティ面の課題を抱えながら官民ポータルを始めとするウェブに基づくシステムやウェブサービスも検討されている.認証とセキュリティの 課題をクリアするために,次世代ICカードの普及も進められている.このような,電子政府を実現するためにこれから求められる技術の応用動向を解説すると 共に,オープンソースなどのソフトウェア導入に対する考え方などを述べる.