ホーム > 第2回「グリーンICTによるスマートな社会の創出」
第2回の概要
電力需給の逼迫に伴い、東北・関東地方で大口需要家に対する強制的な電力使用削減が実施される一方、小口需要家や一般家庭においては、使用電力の抑制は呼びかけに留まっている。
本連続セミナーの第2回は、一般家庭におけるエネルギー管理に焦点を当て、家庭で消費される電力に対して、情報通信技術(ICT)を利用して、生活者の利便を損なわず、かつ生活者が意識することなく、確実に消費電力の削減を達成する技術を確立することを目指す研究の動向について紹介する。
コーディネータ:岡部 寿男 (京都大学 学術情報メディアセンター 教授)
【略歴】1988年京都大学大学院修士課程修了。京都大学助手、同助教授を経て、2002年より京都大学学術情報メディアセンター教授、現在に至る。同大学院情報学研究科知能情報学専攻兼担。国立情報学研究所客員教授。博士(工学)。インターネットアーキテクチャ、ネットワークセキュリティ、並列・分散アルゴリズムなどに興味を持つ。2009年より情報通信研究機構「情報通信・エネルギー統合技術の研究開発」委託研究に従事。
プログラム
SESSION.1 9:30-11:00
オンデマンド型電力ネットワークシステム ~エネルギーの情報化による節電率保証付き省エネシステムの実現~
【講演概要】需要家サイドにおけるスマートエネルギーマネジメントの実現を目指す「エネルギーの情報化」の考え方、実現プロセスについては、情報処理学会学会誌2010年8月号で述べた。本講演では、エネルギーの情報化の中核を成す「オンデマンド型電力ネットワーク(EoD:Energy on Demand)システム」に焦点を当て、その実現法を紹介し、EoDシステムによって節電率が保証された省エネシステムが実現できることを示す。
講師:松山 隆司 (京都大学 大学院情報学研究科 教授)
【略歴】1976年京大大学院修士課程修了。京大助手、東北大助教授、岡山大教授を経て1995年より京大大学院電子通信工学専攻教授。現在同大学院情報学研究科知能情報学専攻教授。工博。画像理解、分散協調視覚、3次元ビデオの研究に従事。最近は「人間と共生する情報システム」、「エネルギーの情報化」の研究を進めている。2009年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)。国際パターン認識連合、情報処理学会、電子情報通信学会フェロー、日本学術会
議連携会員。
SESSION.2 11:10-12:40
スマートタップネットワークとその応用、実証、標準化
【講演概要】本講演では、我々が提唱する「エネルギーの情報化」のネットワーク基盤であるスマートタップネットワークについて述べる。スマートタップは、家電とコンセントの間や家庭内の電源と電力配線の間に取り付け、家電や電源が使用・供給する電力の解析や制御を行う機能と通信機能を備えたアダプターであり、電力ネットワークと情報通信ネットワークを統合するためのインタフェースである。スマートタップネットワークとは、多数のスマートタップとそのデータ収集・解析・管理を行うホームサーバから構成される電力センシング・マネージメントネットワークである。スマートタップネットワークの応用として、消費電力の見える化、人物行動認識とオンデマンド型電力ネットワークについて説明し、これらの技術を生活空間で実証するためのスマートマンションルーム、およびエコハウスでの取り組みについて紹介する。またスマートタップネットワークの標準化への取り組みである i-Energy Profileについて紹介する。
講師:加藤 丈和 (京都大学 学術情報メディアセンター 特定准教授)
【略歴】1997年岡山大学工学部情報工学科卒業。2001年同大大学院博士課程修了。2001年から2002年まで産業技術総合研究所特別研究員。2003年から2007年まで和歌山大学システム工学科助手、2007年から2009年同大学講師、2009年から2010年情報通信研究機構特別研究員、2010年から2011年京都大学情報学研究科特定研究員、2011年より同大学術情報メディアセンター特定准教授。博士(工学)、パターン認識、データマイニング、エネルギーの情報化の研究に従事。情報処理学会、電子情報通信学会、IEEE各会員。
 お昼休み 12:40-13:40
 
SESSION.3 13:40-15:10
ユビキタスコンピューティングによるグリーンICT
【講演概要】物や場所に埋め込まれたコンピュータを連携させて利用するユビキタスコンピューティングで、人々の日々の暮らしが大きく変わろうとしている。本講演では、このようなユビキタスコンピューティングによるグリーンコンピューティングの実現について、特にオンデマンド型電力ネットワーク(EoD:Energy-on-Demand)を有効活用するために人々の行動を予測しながらエネルギー需要を予測する手法を中心に解説を行う。
講師:塚本 昌彦 (神戸大学 大学院工学研究科 教授)
【略歴】1987年京都大学工学部数理工学科卒業。1989年同大学院工学研究科博士前期課程修了。同年、シャープ株式会社入社。1995年大阪大学大学院工学研究科講師、1996年同助教授。2002年同大学院情報科学研究科助教授、2004年神戸大学工学部教授、現在に至る。工学博士。ウェアラブルコンピューティングおよびユビキタスコンピューティングの研究開発に従事。特定非営利活動法人ウェアラブルコンピュータ研究開発機構理事長。
SESSION.4 15:30-17:00
スマートハウスを構築するホームネットワーク技術の現状
【講演概要】家庭内の機器を情報通信ネットワークに接続して様々なサービスを実現しようとする試みは1970年代から継続して行われており、時代ごとに新たな技術やニーズに基づき進歩を遂げてきた。現在の"スマート"ハウスのポイントは、常時接続広域ネットワークの存在と、その背後にあるクラウドサービスの出現にあるが、実現可能なことと期待されることの乖離が過去に例をみないほど大きくなっていることも特徴の一つである。本講演では、エネルギーマネジメント分野を中心に、スマートハウスを実現するための全体像について述べ、各要素技術の現状と今後の展望について述べる。
講師:丹 康雄 (北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授)
【略歴】1993年東工大博士後期課程修了。博士(工学)。同年より北陸先端大情報科学研究科助手。同情報科学センター助教授を経て2001年助教授、2007年教授。ホームネットワーク関連技術に興味を持ち、ITU-Tなどの標準化活動に従事。