囲碁では, 将棋などの他のゲームで使われるmin-max 探索があまり有効でないことが知られている. これは, 探索空間が広いだけでなく, 評価関数の設計が難しいことが理由となっている. 代わりに, モンテ カルロ木探索が有効とされ, 精力的な研究が行われている. 本研究ではモンテカルロ木探索の効果を高める 技術の一つであるRAVE に着目し, RAVE を改善する研究を行った. 「RAVE は, 情報が少ない局面の好 ましさを, 類似する局面の勝率を用いて見積もることで, モンテカルロ木探索の性能を高める手法」と一般 化して考えることができる. しかしながら, 局面の類似性については, これまで厳密に検討されてこなかっ た. あまり似ていない局面では荒い見積もりしかできないが, よく似ている局面ではより正確な見積もりが 可能と考えられる. そこで, 本研究では着手近辺の局所的な類似性に着目し, RAVE における見積りの精度 を向上させることを試みた. 局所的な類似のもっとも簡単な指標として, 着手の周囲8 ヶ所の状態の一致の 有無を採用した. 着手の周囲8 ヶ所の状態は, RAVE 以外のパラメータ調整では既に囲碁で用いられてい るため, RAVE でも効果的であると期待できる. RAVE の更新時の重みの調整を通じて局面の重視する度 合いを変えたところ, もっとも良いパラメータで, 9 路盤における黒番で提案手法を用いていないプログラ ムに対する勝率は10000 試合で59. 4%であった. 同様の条件で, 提案手法を用いていないプログラムの勝 率は56%であった. また, 他のプログラムに対しても勝率を向上することができた. 総合して, 着手の周囲 8 ヶ所の状態の一致有無に着目する提案手法は有望であると考えられる.