【富士通】 FM-8(エフエム エイト)

富士通の最初の8ビットパソコン(当時はパソコンと呼ばれずマイコンと呼ばれた).学習用マイクロコンピュータLKIT-8(1977年3月発表)およびNEW LKIT-8を経て,1981年5月に8ビットマイコンFUJITSU MICRO 8(以下FM-8)が,FMシリーズの第一弾として発表された.FM-8は,斬新な設計と最新の半導体技術の採用により開発され,高級ホビーユースからビジネスユースやプロ・コン(制御)ユースまで広い分野での利用を狙ったパソコンであり,次のような特徴を持つ.

(1) モトローラ8ビットCPU 6809を2個搭載(メイン用とサブ用)
(2) 世界で初めて大型機並みの64キロビットDRAMをマイコンに採用(64キロバイトの主記憶)
(3) 漢字キャラクタROM(JIS第1水準漢字2,965種,オプション)による日本語表示
(4) 高解像度(640×200ドット,1ドット当たり8色指定可能)のカラーグラフィクス
(5) F-BASICに加えて,UCSD-PASCAL,FLEX,CP/M(Z80カードオプション要)などのOSを提供
(6) 外部記憶としてバブルメモリ(発表時 容量32キロバイトのバブルカセット,後に128キロバイトのカセットを追加)をパソコンで初めて採用(これは普及せずFM-7では標準機能から削除された)

1982年11月には,FM-8の上位機FM-11(エフエムイレブン)と普及機FM-7(エフエムセブン)が発表された.

FM-7はFM-8の機能を絞り込み(バブルカセットを削除),小型化と大幅な低価格化を図ったモデルである.豊富なサウンド機能(シンセサイザ用LSI搭載による3重和音機能)と多彩なソフトウェアの提供により,ホビーマシンとしての地位を獲得した.その後,高集積メモリとゲートアレイLSIによりFM-7の機能をそのままに低価格化を実現したFM-NEW7と上位機FM-77へと発展した.当初から,高解像度カラーグラフィクスと日本語表示を重視したFM-7/77系の流れが,次のFM77AVに始まるAV(Audio Visual)パソコン,そしてハイパーメディアパソコンFM TOWNSへと引き継がれ,同社のホビー機の流れが形成された.

富士通の初期のパソコン諸元
  FM-8 FM-7 FM-NEW7 FM-77
発表時期 1981年5月 1982年11月 1984年5月 1984年5月
CPU メイン部 68A09(1MHz) 68B09(4.9/8MHz切換) (*1) 68B09(8MHz)(*1)
サブ部 6809 68B09 68B09E
RAM メインメモリ 64KB 64〜256KB
VRAM 48KB
日本語表示 オプション 40字×12行 標準 40字×12行
オプション 40字×25行
漢字ROM JIS非漢字453種,JIS第1水準漢字2965種
オプション 標準装備
グラフィック表示 640×200ドット 1画面,8色
640×400ドット - オプション
1画面,16色中2色指定
サウンド機能 - 3重和音・8オクターブ
内蔵フロッピーディスク - 3.5inch 320KB×1/2
システムソフト(標準装備) F-BASIC(ROM) F-BASIC

*1:68B09(最後にEが付いていないもの)は,外部に接続した発振器の周波数の1/4のクロック周波数で動作するが, 68B09E(最後にEが付いているもの)は,接続した発振器の周波数で動作する.つまり,8MHzの60B09の動作周波数は2MHzであり,2MHzの68B09Eと性能は同じである.


FM-8FM-8本体の内部FM-7