Design of Authenticity Identification Scheme for Audio Ownership Protection and Image Tampering Verification

(邦訳:オーディオ所有権保護と画像改ざん検証の為の真正性識別スキームの設計)
 
Rimba Whidiana Ciptasari(リンバ ウィディアナ チプタサリ)
テルコム大学 講師

[背景]デジタルメディアでは複製防止や所有権保護が課題
[問題]所有権保護によるデータ劣化と改ざん検知技術の攻撃耐性
[貢献]所有権保護と改ざん検証のための方式設計と安全性を評価

 デジタル時代に入り,デジタルマルチメディアの利用が広がっている.デジタル信号は痕跡を残すことなく簡単に再生産やコピーの作成が可能であり,科学的かつ自動的にマルチメディアコンテンツの適法性を検証することは重要な課題である.マルチメディア認証には2つの主要なアプローチ,アクティブ手法とパッシブ手法がある.前者は電子透かしや署名認証などに用いられている.電子透かしでは,供給側でコンテンツに電子透かしを挿入し検知側で透かし情報を検証する.一方,後者は事前情報無しに認証を実現している.すなわち,電子透かしや署名の有無によらずコンテンツの認証が可能である.

 従来から複数の権利者を守るスキームは提案されている.しかし,それらのうち,各スキームが利用している構造を形式的に定義しているものはなかった.この問題に取り組むことが本研究の最初の挑戦であった.我々は,direct feature-based methodと名付けた方法により,権利者保護のための形式的スキームを定義した.従来研究では,電子透かしをホストデータに埋め込む.その結果データにゆがみが発生してしまいデータのクオリティを下げてしまう.また,容量と人間に気づかれるロバスト性,継承問題の有無といった性質とのトレードオフもある.Direct feature-based methodは,これらの状況を解決する.我々は.既存研究に比べて電子透かしの鍵を減らすように,索引フィールドではなく索引データを用いて電子透かしの鍵を生成している.また,提案手法はゆがみに耐性もある.評価実験により,我々の電子透かし鍵長は電子透かしデータと同じくらいであることを示した.

 コンピュータフォレンジクスの主な目的は,コンピュータ上の証拠の識別と収集である.しかしながら,すべての画像に関するフォレンジクススキームは不正に関して検証可能な情報を持っていなかった.それゆえ,我々の2つ目の挑戦は不正検証可能なスキームの構築となった.パッシブ手法に関する我々の予備調査では,改ざんに関する共通的なフォームを調べた.それは,画像の断片を他の画像に挿入し元画像に含まれるオブジェクトを削除する者であった.デジタル画像における相関性から着想を得て,cross-correlation関数のピークを用いて,継ぎ目を自答的に発見する方法を実現した.一方,我々の手法は高い相関係数を持つ画像を挿入した場合,擬陽性が高くなってしまう問題があった.そのため,ピクセルベースのアライメント手法を追加し改善を行った.その後,我々は回転や拡大・縮小といった変換を加えられた画像に取り組んだ.こうした画像においては,エッジの発見が難しいことが分かっていたため,幾何的な情報を表す特徴量について調査し,クラスタリングによって不正な領域を発見する手法を提案した.
 

 
 (2014年7月7日受付)
取得年月日:2013年9月
学位種別:博士(情報科学)
大学:九州大学



推薦文
:(コンピュータセキュリティ研究会)


本論文は,音声データの所有権保護手法と改ざん検出手法を提案し, 実験を通してそれら提案手法の有用性を論じている.本博士論文のベースとなっている研究論文がInternational Workshop on Digital Watermarking 2012にてBest Paper Awardを受賞しており,博士論文速報の推薦に値する博士論文である.


著者からの一言


本研究はデジタルエビデンスの抽出という現実的な問題に取り組んだものである.我々は,本研究結果がまだ途中段階であると考えている.最終的な目的を達成するために,次の4年間で我々は電子透かしだけではなくマルチメディアフォレンジクスにも取り組む.インドネシア研究技術省による研究プログラムSINAS 2015へも応募し国内外との連携を考えている.