(邦訳:空間および時間的変調光源を用いた半透明物体のモデルベース解析に関する研究)
田中 賢一郎 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 助教 |
[背景]半透明物体を計測したい
[問題]光が散乱して広がってしまう
[貢献]半透明物体の内部の可視化や材質の推定
半透明物体の計測は,工場自動化,自動ロボット・車のセンサ,文化財調査など,さまざまな分野において重要な基礎技術である.しかしながら,半透明物体の計測は,光が散乱し,さまざまな方向に広がってしまうため,いまだ挑戦的な問題である.
コンピュータビジョン分野においては,コンピュテーショナルフォトグラフィと呼ばれる,光学設計と計算処理を組み合わせることで,画像を見やすくする取り組みが活発に行われてきた.本研究では,半透明物体をコンピュテーショナルフォトグラフィ技術によって計測する新たな手法を開発した.具体的には,プロジェクタによる空間的な変調光や,Time-of-Flightカメラによる時間的な変調光を用いて,光の広がりを間接的に計測することで,計算によって半透明物体内部の鮮明な画像や物体の正確な3次元形状の復元,および材質分類が可能であることを示した.
本研究は以下の4つから構成されている.
(1) パターン投影を用いた透視画像の鮮明化
図(a)に示すように濁った液体中等でも鮮明な画像を撮影できる技術を開発した.空間的に高周波なパターンを投影すると,直接光はパターンを維持するのに対して散乱光はパターンが消えてしまう現象を利用し,パターンが残された成分のみを抽出することで鮮明な画像を復元した.
(2) パターン投影を用いた油絵などの内部の可視化
図(b)に示すように,油絵などの半透明物体内部を可視化する技術を開発した.内部に行くほど徐々にパターンがボケていく現象を利用し,各層からの反射光を分離できることを示した.
(3)Time-of-Flightを利用した形状復元
屈折率に応じて光の速度が減少することを利用し,計測された距離の間違え量から物体の形状を復元した.
(4)Time-of-Flightを利用した材質分類
材質の半透明度(散乱の強さ)の違いによって,計測距離の歪み量が異なることを利用し,半透明物体の材質を分類した.図(c)に示すように,ディープラーニングなどの機械学習では見分けが難しい,見た目が似ている物体に対しても,容易に材質の違いを見分けることができることを示した.
コンピュータビジョン分野においては,コンピュテーショナルフォトグラフィと呼ばれる,光学設計と計算処理を組み合わせることで,画像を見やすくする取り組みが活発に行われてきた.本研究では,半透明物体をコンピュテーショナルフォトグラフィ技術によって計測する新たな手法を開発した.具体的には,プロジェクタによる空間的な変調光や,Time-of-Flightカメラによる時間的な変調光を用いて,光の広がりを間接的に計測することで,計算によって半透明物体内部の鮮明な画像や物体の正確な3次元形状の復元,および材質分類が可能であることを示した.
本研究は以下の4つから構成されている.
(1) パターン投影を用いた透視画像の鮮明化
図(a)に示すように濁った液体中等でも鮮明な画像を撮影できる技術を開発した.空間的に高周波なパターンを投影すると,直接光はパターンを維持するのに対して散乱光はパターンが消えてしまう現象を利用し,パターンが残された成分のみを抽出することで鮮明な画像を復元した.
(2) パターン投影を用いた油絵などの内部の可視化
図(b)に示すように,油絵などの半透明物体内部を可視化する技術を開発した.内部に行くほど徐々にパターンがボケていく現象を利用し,各層からの反射光を分離できることを示した.
(3)Time-of-Flightを利用した形状復元
屈折率に応じて光の速度が減少することを利用し,計測された距離の間違え量から物体の形状を復元した.
(4)Time-of-Flightを利用した材質分類
材質の半透明度(散乱の強さ)の違いによって,計測距離の歪み量が異なることを利用し,半透明物体の材質を分類した.図(c)に示すように,ディープラーニングなどの機械学習では見分けが難しい,見た目が似ている物体に対しても,容易に材質の違いを見分けることができることを示した.

(2017年5月2日受付)