情報処理学会 第79回全国大会 会期:2017年3月16日~18日 会場:名古屋大学 東山キャンパス 情報処理学会 第79回全国大会 会期:2017年3月16日~18日 会場:名古屋大学 東山キャンパス
特別講演 IPSJ-ONE
日時:3月18日(土)15:30-17:30
会場:特別会場(豊田講堂)
【セッション概要】情報処理学会では,3領域38の研究会で活動が行われ約2万人の会員が在籍しているが,異なる研究会や研究領域あるいは情報処理学会全体でどのような研究がなされ注目を集めているのかを知る機会は少ない.本企画では,その多様な研究分野を垣根なく俯瞰し,すぐれた研究を自らの言葉で語れるプレゼン力の高い,若手を中心とした研究者を,希望する研究会が主体的に推薦する形式で募集し,応募の中から招待講演者を厳選する.この講演会はこうした特別な招待講演者達による「見逃せない講演会」であり,持ち時間1人数分で次々に登壇していく.さらに講演内容は専門家のみならず,高校生,学部生,他分野での聴衆が理解しやすいように内容も配慮し,招待講演者を選定する.異分野間の融合やそれぞれの研究の発展に役立て,さらなる情報処理の可能性を社会に問い,新たなコラボレーションや展開を作り出していく場とするため,マスメディア・ネットメディア,動画中継,ステージ演出を含め,講演だけで終わることのない情報発信やネットワーキングの場として多数の演出やアウトリーチを予定している.
司会:竹川 佳成 (IPSJ-ONE企画・実施委員会 委員長/公立はこだて未来大学 システム情報科学部 准教授)
【略歴】2007年大阪大学院情報科学研究科博士課程修了.同年より神戸大学自然科学系先端融合研究環重点研究部助教.2012年より公立はこだて未来大学システム情報科学部助教.2014年より同大学システム情報科学部准教授,現在に至る.2015年IPSJ-ONE(音楽情報科学研究会推薦)にて「もしもピアノが弾けたなら~理想のピアノ学習支援システムを目指して~」という題目で講演し,ピアノに対するマッドな愛とその研究に関する発表が好評を博し,2016年IPSJ-ONEの司会者として抜擢される.2011年にはMIT Media Lab.にてAssistant Visiting Professorを兼務.博士(情報科学).2013年度情報処理学会山下記念研究賞(音楽情報科学研究会およびエンタテインメントコンピューティング研究会)をダブル受賞する.同年度に2つの異なる研究会から山下記念研究賞を受賞することは初の事例.その他受賞多数.
司会:森勢 将雅 (IPSJ-ONE企画・実施委員会 副委員長/山梨大学 大学院総合研究部 特任助教)
【略歴】2008年和歌山大学大学院システム工学研究科博士課程修了.博士(工学).関西学院大学大学院理工学研究科博士研究員,立命館大学情報理工学部助教を経て,2013年2月より現職.医工融合領域による音声・聴覚の研究に従事するため,医学部との共同研究として生理学実験の修行を積む.SNSによる緩い共同研究を新たな研究スタイルとして確立するため,ハンドルネームやP名で構成された本名すら知らないメンバーと学会発表する実験を試みる.2010年のエイプリルフールネタとして始めたオープンソース音声合成システムWORLDの研究は,気が付けば自身最大の成果となる.意外にも,色々な賞を受賞する機会に恵まれた.

[研究会推薦]

 
研究会推薦:招待講演(1) 「攻撃者の視点に立つ」〜情報セキュリティ研究の面白さ〜
[コンピュータセキュリティ研究会]
森 達哉 (早稲田大学 基幹理工学研究科 情報理工・情報通信専攻 准教授)
【講演概要】サイバー攻撃対策に有効な技術としてAI技術が注目を集めている.例えばフィッシングサイトの検出やマルウェアの検知・分類はAI技術が有効に活用されてきた例であり,商業的にも成功を修めている.このようにAI技術はセキュリティ対策としても有用である.その一方で有用な技術は悪意をもつ者に悪用されてきた歴史があり,AIもその例外ではない可能性が高い.すなわち我々はAIで強化されたサイバー攻撃に備える必要がある.本講演では講演者が取り組んでいるAIを悪用したプライバシー情報漏えい攻撃とその対策に関する研究の概要と,情報セキュリティの研究に特徴的な「攻撃者視点の研究」の面白さを伝えたい.
【略歴】1999年3月早稲田大学理工学研究科修了.同年よりNTT研究所勤務.2005年早稲田大学情報科学専攻博士後期課程修了.博士(情報科学).2007年から2008年までウィスコンシン州立大学マディソン校訪問研究員.2013年4月より早稲田大学基幹理工学部准教授.データ解析技術を軸として,ハードウェアや電磁波等の低レイヤーからアプリケーションや人間といった上位レイヤーまで幅広く情報セキュリティに関する研究を行っている.最近は機械学習技術を活用したサイバー攻撃対策,および機械学習を悪用したサイバー攻撃に関する研究に注力している.
 
研究会推薦:招待講演(2) コンピュータを用いた手芸設計支援
[デジタルコンテンツクリエーション研究会]
五十嵐 悠紀 (明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 専任講師)
【講演概要】オリジナルな手芸作品を設計することは初心者には難しいが,コンピュータグラフィックスを利用することで,初心者でも簡単にオリジナルな手芸作品を設計できるような技術を研究・開発してきたので紹介する.通常3次元モデリングとシミュレーションは別々の過程で行われるが,我々はモデリングを行いながら並行してシミュレーションを用いることで,布や毛糸の特性を活かしたモデリングを効率良く行うことができることを提案した.ぬいぐるみ,ビーズ細工など,さまざまな手芸作品を題材に,提案手法を実装し,一般ユーザに使ってもらうためにワークショップを開催してきたので紹介する.
【略歴】2010年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).2010年より日本学術振興会特別研究員PD,2013年よりRPDとして筑波大学に所属.2015年より明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科専任講師.コンピュータグラフィックスやユーザインタフェースに関する研究に従事.2016年よりJSTさきがけ研究員.Yahoo!ニュース個人,日本ビジネスプレス,オーサー.
 
研究会推薦:招待講演(3) 運動視差 ~動けばわかる~
[グループウェアとネットワークサービス研究会]
坂本 竜基 (ヤフー株式会社 先端技術応用室 室長)
【講演概要】人間がモノの形を立体的に把握するためには多方面からそれを見る必要があります.例えば,スーパーでリンゴを手に取ったら,手首をグルっとまわして,どんな形なのか,傷がないのかといったことを確認するでしょう.このグルッと回している瞬間,瞬間でのリンゴは2次元の画として眼に映っていますが,人間はこれら大量の画を頭の中で無意識に組み立て,三次元の形状を把握しています.このように,瞬間,瞬間での対象物の「見え」の変化は運動視差と呼ばれ,奥行や形状の把握だけではなく,存在感にも影響を与えますがWebの画像には運動視差がありません.そこで本講演では,運動視差付きの画像をWebで配信する試みについて紹介します.
【略歴】ヤフー(株)先端技術応用室室長,北陸先端科学技術大学院大学博士後期課程修了後,ATR知能ロボティクス研究所において看護業務のヒヤリハットを自由視点映像で記録する研究に従事し,2008年より和歌山大学システム工学部講師,2012年よりYahoo! JAPAN研究所上席研究員に着任後,2015年より現職.2014年度社団法人情報処理学会山下記念研究賞受賞.IPA未踏ソフトウェア創造事業 天才プログラマー/スーパークリエータ.博士(知識科学).
 
研究会推薦:招待講演(4) 知能システム・知能エージェントたちの開拓する未来
[知能システム研究会]
大澤 博隆 (筑波大学 システム情報系 助教)
【講演概要】計算機のように複雑な内的状態を保持できる道具が開発されたことにより,人間や動物と同じように,我々自身にとって志向姿勢を持つ他者として受容される人工物を,ユーザに対するインタフェースとして作成することが可能な時代となった.このような背景が現在のヒューマンエージェントインタラクション(HAI)研究を支えており,情報技術とHAI研究には大きな関わりがある.本研究では講演者の過去の研究を振り返りつつ,今後我々がどのような未来を迎えるか,ビジョンを示す.
【略歴】2009年慶應義塾大学大学院開放環境科学専攻博士課程修了.2009年慶應義塾大学訪問研究員および米国マサチューセッツ工科大学AgeLab特別研究員.2010年日本学術振興会特別研究員PDに採択され,国立情報学研究所へ出向.同年から2011年にかけて,JSTさきがけ専任研究員に従事.2011年より2013年まで,慶應義塾大学理工学部情報工学科助教.2013年より現在まで,筑波大学大学院システム情報系助教.ヒューマンエージェントインタラクションおよび人工知能の研究に従事.人工知能学会,情報処理学会,日本認知科学会,ACM会員.博士(工学).「戯曲の魔女」
 
研究会推薦:招待講演(5) 知覚の「編集」で現実を変える
[エンタテインメントコンピューティング研究会]
鳴海 拓志 (東京大学 大学院情報理工学系研究科 講師)
【講演概要】本年度は「バーチャルリアリティ(VR)元年」という言葉がメディアを賑わし,エンタテインメントを中心にVRの活用が進んだ年でした.VRというと没入感の高い映像を提示することで,現実とは切り離された別世界を体験するものというイメージを抱かれがちですが,VRの可能性はそれだけに留まりません.講演者は,触覚,嗅覚,味覚といった五感に働きかけるインタフェースを開発し,人の知覚を編集し,人の行動や気持ちに影響を与える技術を研究してきました.食べ物の見た目を変えることで食べる量を変えてしまう拡張満腹感技術などの研究事例の紹介を通じて,VRを活用した知覚の編集が持つ,現実を変える力の可能性について議論します.
【略歴】2011年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).同大学情報理工学系研究科知能機械情報学専攻助教を経て,2016年より同専攻講師(現職).バーチャルリアリティや拡張現実感の技術と認知科学・心理学の知見を融合し,限られた感覚刺激提示で多様な五感を感じさせるクロスモーダルインタフェース,五感に働きかけて人間の行動や認知,能力を変化させる人間拡張技術等の研究に取り組む.日本バーチャルリアリティ学会論文賞ほか,受賞多数.
 
研究会推薦:招待講演(6) スマホがあなたのココロの未来を予想する
[モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会]
深澤 佑介 (株式会社NTTドコモ サービスイノベーション部 担当課長/東京大学 人工物工学研究センター 客員研究員)
【講演概要】ケータイを持っているだけであなたのココロの未来を予想してくれたらどんなことが起きるでしょう.ココロは常に変化します.何かに夢中になっている時,達成感であふれている時,失敗して落ち込んでいる時期,いやな思いをしている時.特に落ち込んでいるときにはだれかに気付いてほしいものです.モノの中で一番身近なスマホがそのような存在になれることを目指しています.ココロの状態が変化するとき,気づかないうちに日々の活動に表れると思います.スマホでそのような活動の変化が分かればココロの変化に気づけないかと考えています.ビッグデータと最先端の機械学習ロジックを組み合わせ,こんな未来の実現に取り組んでいます.
【略歴】2002年東京大学工学部卒業.2004年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了.同年(株)NTTドコモ入社.2011年東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了.同年10月より東京大学人工物工学研究センターにて協力研究員,2016年4月より客員研究員兼任.現在に至る.Webマイニング,パーソナライゼーション,確率モデルに関する研究開発を行っている.IEEE,情報処理学会,人工知能学会各会員.博士(工学).
 
研究会推薦:招待講演(7) コンピュテーションがつなぐ人とデザイン
[コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会]
小山 裕己 (東京大学 大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 博士課程)
【講演概要】「便利な」ものや「かっこいい」ものをデザインしたいと思うことはありませんか?本講演では,私が取り組んでいる「コンピュテーショナルデザイン」(=計算機科学的な方法論に基づいて人間の行うデザイン活動をモデル化し,拡張し,支援する新しいデザインのパラダイム)を紹介します.デザイン活動を数学的な最適化計算として解釈することで,モノを置くのに便利なホルダーを全自動でデザインしたり,変な形の紙飛行機デザインでもよく飛ぶように賢く調整したり,さらには人間を計算資源として利用する「群衆計算」によってかっこいいデザインを半自動的に探索したりと,様々なことができるようになります.
【略歴】東京大学大学院博士課程に在籍.日本学術振興会特別研究員(DC1).コンピュテーションを活用したデザイン支援技術の研究に従事.情報処理学会山下記念研究賞(2012),経済産業省Innovative Technologies(2013,2014),情報処理学会CGVI研究会優秀研究発表賞(2012,2015,2016)等受賞.情報処理推進機構(IPA)認定未踏スーパークリエータ.
 
研究会推薦:招待講演(8) 言葉を「計算」できる世界へ
[自然言語処理研究会]
荒瀬 由紀 (大阪大学 大学院情報科学研究科 准教授)
【講演概要】人間は言葉を使って思考し言葉でアイデアを表現します.しかし言葉はコンピュータにとっては扱いがとても難しいものです.なぜなら言葉はコンピュータが得意とする数値データではなく,記号である単語と,文に現れる構文構造により構成されるからです.さらに言葉には同意や反意の関係があり,また多義性もあります.このような複雑な性質をもつ言葉を数値データであるベクトルで表現する手法が研究されてきました.言葉をベクトル化することで高度な言語処理を簡潔な演算で実現でき,さらに画像データなど様々なデータと統合的に処理できるようになります.本講演では言葉を計算できる世界を目指して取り組んでいる研究について紹介します.
【略歴】2006年大阪大学工学部電子情報エネルギー工学科卒業.2007年同大学院情報科学研究科博士前期課程,2010年同博士後期課程修了.博士(情報科学).同年,Microsoft Research Asia(北京)に入社,自然言語処理に関する研究開発に従事.2014年より大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻准教授,現在に至る.言い換え表現抽出,機械翻訳技術,対話システム研究に興味を持つ.
 
研究会推薦:招待講演(9) 自動運転~破壊的創造と創造的破壊~
[組込みシステム研究会]
加藤 真平 (東京大学 大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 准教授)
【講演概要】自動運転とは,クルマの運転における認知と判断と操作をすべてコンピュータが実行する技術をいう.高速道路に関しては自動車メーカーを中心として,既に2020年に向けた実用化が規定路線となってる.一方,本丸といえる市街地一般道での実用化に向けては,自動車メーカーのみならずIT企業や電機メーカーも市場に参入しようとしており,技術開発競争の熾烈さが増している.自動運転は社会と産業のあり方を変えてしまうかもしれない.その命運を握るのは最先端研究であるということ,そしてそのコア技術と勝者のエコシステムについて,是非多くの方々に知ってもらいたい.
【略歴】2008年慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了.博士(工学).2012年名古屋大学大学院情報科学研究科講師,2013年同研究科准教授.2016年東京大学情報理工学系研究科准教授.現在,オペレーティングシステム,並列分散システム,自動運転システムの研究開発に従事.
 
研究会推薦:招待講演(10) ソフトウェア自動進化への挑戦
[ソフトウェア工学研究会]
肥後 芳樹 (大阪大学 大学院情報科学研究科 准教授)
【講演概要】ソフトウェアは一度リリースされてもそれで開発が終わりということはあまりなく,使われている限り機能追加やバグ修正が行われます.現在はもちろん人がこのような作業を行っていますが,人の手を煩わせることなくできるようになると素晴らしいとは思いませんか?難しいデバッグをしなくてよくなるし,新しい機能が追加されるのを長く待つ必要がなくなるでしょう.ソフトウェアが人のさまざまな要求に応えながら自動的に進化していく,そんな未来が早く来ればいいなと私は思っています.この講演では,ソフトウェアの自動進化実現に向けた現在までの取り組みを紹介します.
【略歴】2006年大阪大学大学院情報科学研究科修了.博士(情報科学).日本学術振興会特別研究員,大阪大学大学院情報科学研究科助教を経て,2015年3月より現職.高品質なソースコードを低コストで開発・維持することに興味を持ち,現在は主にソースコードの変更支援や重複コードに関する研究に従事.2015年情報処理学会長尾真記念特別賞,2010年同学会50周年記念論文賞.2007年および2014年同学会論文賞などを受賞.
 
研究会推薦:招待講演(11) ゆるふわコンピュータ
[システム・アーキテクチャ研究会]
高前田 伸也 (北海道大学 大学院情報科学研究科 情報エレクトロニクス専攻 准教授)
【講演概要】コンピュータの構成要素の中で,ソフトウェアはやわらかいもの,ハードウェアはかたいものだと,皆さん思っていませんか?今後のコンピュータの性能向上には,FPGAや再構成可能アクセラレータなどの,やわらかいハードウェアとその効率的な設計技術の導入が必須です.そして,このようなやわらかいハードウェアを用いることで,自分だけのカスタムコンピュータを作ることができます.本講演では,現在のアーキテクチャ研究で大注目されている,やわらかいハードウェアを用いたゆるふわコンピュータの実力と魅力を紹介します.また,そのようなハードウェア開発を効率的に,そして楽しく行うためのソフトウェア技術を合わせて紹介します.
【略歴】2014年東京工業大学大学院情報理工学研究科博士課程修了.博士(工学).2011年から2014年まで日本学術振興会特別研究員.2014年から2016年まで奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教.2016年から北海道大学大学院情報科学研究科准教授.コンピュータアーキテクチャ,リコンフィギャラブルシステム,高位ハードウェア設計方式に関する研究に従事.Pythonを用いたハードウェア設計ツールをオープンソースにて開発中.
 
研究会推薦:招待講演(12) Door to Doorの輸送サービスを目指したICTサービス開発
[高度交通システムとスマートコミュニティ研究会]
日高 洋祐 (東日本旅客鉄道株式会社 JR東日本研究開発センターフロンティアサービス研究所 研究員/東京大学 大学院学際情報学府 博士課程)
【講演概要】本講演では,JR東日本におけるICTを活用した研究開発事例について紹介します.リアルタイム列車位置情報,駅構内ナビゲーションシステム,公共交通連携のためのスマートフォン向け情報提供サービスについて紹介し,将来的な公共交通サービスのあるべき姿について共有したいと思います.
【略歴】2005年東京工業大学大学院メカノマイクロ工学専攻卒業.同年東日本旅客鉄道(株)入社.2010年慶応義塾大学SFC訪問研究員を経て,2011年より現職(JR東日本研究開発センターフロンティアサービス研究所).ICTを活用した交通情報提供サービスの開発に従事.担当件名として,列車位置情報提供システム(JR東日本アプリ),駅構内ナビゲーションシステム,公共交通情報連携システム等.2014年より東京大学大学院情報学環先端表現学コース(博士後期課程)に在籍.
 
研究会推薦:招待講演(13) 高度に発達したシステムの異常は神の怒りと見分けがつかない
[インターネットと運用技術研究会]
坪内 佑樹 (株式会社はてな サービス・システム開発本部システムプラットフォーム部 シニアエンジニア)
【講演概要】複雑化したシステムの異常は,まるで神の怒りと表現したくなるような原因不明の現象と見分けがつきません.人は不明な現象に対して後ろ向きになりがちであり,不自由を強いられます.そこで,わたしは,システムを構成する各要素から情報を収集し,システムに何が起きているかを知るための研究開発をしています.システムを知るだけなく,最終的に,人々がシステムの不自由から解放され,自由に操ることができるようになった先に全く新しいことができるようになるような世界が来ることを信じています.本発表では,無数のサーバの時系列な健康情報を収集し,データベース化する研究について紹介します.
【略歴】株式会社はてなのWebオペレーションエンジニアとして,成長するウェブサービスを支えるインフラ基盤開発に取り組んでいる.2012年大阪大学基礎工学部情報科学科卒業,2013年同大学情報科学研究科修士課程中途退学.同年に(株)はてなに入社.サーバ監視サービスMackerelのサーバ・ネットワーク基盤の設計・構築を担当.2016年以降,同社シニアエンジニア兼システムプラットフォーム部基盤開発チームリーダー.
 
研究会推薦:招待講演(14) 髪の毛で音を感じる新しいユーザインタフェースOntennaを世界中のろう者へ届けるために
[アクセシビリティ研究会]
本多 達也 (富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 総合デザインセンター UIデザイナー)
【講演概要】Ontennaは,ヘアピンのように髪の毛に装着し,振動と光によって音の特徴をユーザに伝える新しいユーザインタフェース装置です.「まるで,ねこのヒゲが空気の流れを感じるように,髪の毛で音を感じることのできる装置」をコンセプトに,ろう者と協働して開発を試みました.Ontennaは,30dB〜90dBの音圧を256段階の振動と光の強さに変換して,音の特徴をユーザに伝達します.音源の鳴動パターンをリアルタイムに振動と光に変換することで,音のリズムやパターン,大きさを髪の毛を用いて知覚することができます.本講演では,Ontennaの誕生ストーリーとこれからの展望について発表させていただきます.
【略歴】1990年香川県生まれ.大学時代は手話通訳のボランティアや手話サークルの立ち上げ,NPOの設立などを経験.人間の身体や感覚の拡張をテーマに,ろう者と協働して新しい音知覚装置の研究を行う.2014年度未踏スーパークリエータ.第21回AMD Award 新人賞.2016年度グッドデザイン賞 特別賞.現在は,富士通(株)総合デザインセンターにてOntennaの開発に取り組む.
 
研究会推薦:招待講演(15) モンテカルロ法と集積回路設計の接点
[システムとLSIの設計技術研究会]
粟野 皓光 (東京大学 大規模集積システム設計教育研究センター 助教)
【講演概要】半導体製造技術の発展に伴い,数センチ四方のシリコン片に数十億個ものトランジスタを集積出来るようになった.これほどまでに微細化が進むと,原子レベルの凹凸ですら素子特性を大きくばらつかせてしまう.そこで,現代の集積回路設計では,ばらつきの影響を見積もるため,様々な数学的手法が活用されている.集積回路は社会インフラの要であり,非常に高い信頼性が求められるため(例えばメモリセルに許される故障確率は数百万分の1以下),設計工程では,極めて稀にしか発生しない不良事象の生起確率を推定しなければならない.本発表では,モンテカルロ法に基づく稀少事象解析に関する最新のアプローチと,回路解析への応用例を紹介する.
【略歴】2016年京都大学大学院情報学研究科博士課程修了.博士(情報学).日本学術振興会特別研究員(DC1).日立製作所中央研究所を経て,2017年から東京大学大規模集積システム設計教育研究センター助教.集積回路の信頼性,計算機援用設計の研究に取り組む傍ら,生物のコミュニケーション解明も趣味で研究している.2015年山下記念研究賞,2016年CS領域奨励賞等を受賞.
 
研究会推薦:招待講演(16) ビッグデータ時代の超大規模グラフ処理への挑戦
[ハイパフォーマンスコンピューティング研究会]
岩渕 圭太 (東京工業大学 大学院情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 博士課程学生)
【講演概要】将来,IoTの発展等で膨大な量のデータがスーパーコンピュータ(スパコン)などの大規模システムに流れ込むことが予想され,行われる処理も従来の計算中心のものとは大きく異なり,膨大な量のデータから新たな知見や洞察を抽出するための複雑なデータアクセスを伴った処理となる.その代表例として,WebやSNSの解析,脳や人工知能まで,ものとものの「関係」に着目したグラフを用いた処理に注目が集まっており,さらにその問題サイズは数百万〜数兆要素へと非常に巨大なものとなる.本講演では,超大規模グラフ処理に関する研究について,特にその膨大な量のデータをどのようにスパコン上で格納・保持するかについてを中心に紹介する.
【略歴】2014年東京工業大学大学院情報理工学研究科数理・計算科学専攻 修士課程修了.同年より,同専攻の博士課程に在学しながら,米ローレンスリバモア国立研究所にて複数回インターンシップを経験.大規模グラフ処理に関する研究に従事.日本学術振興会特別研究員(DC2).2014年度情報処理学会山下記念研究賞,2016年度同学会コンピュータサイエンス領域奨励賞受賞.
 
研究会推薦:招待講演(17) 歴史学の情報 part3 ~読めない文字への挑戦~
[人文科学とコンピュータ研究会]
耒代 誠仁 (桜美林大学 総合科学系 専任講師)
【講演概要】日本の古文書には,私たちが知らない昔の人の暮らしや考え方,社会の仕組みなどの情報がたくさん書かれています.しかし,多くの文字が私たちにとって読めない「くずし字」であったり,文字の一部が欠けていたりして,せっかくの情報をうまく読み出せません.私は,パターンマッチングの技術を応用したMOJIZOというWebアプリケーションを開発しています.MOJIZOに文字の画像を入力すると,類似した古文書の文字画像を表示します.MOJIZOは,古文書を自動で読むことはできません.でも,表示した文字画像が古文書解読のヒントになるかもしれません.人とコンピュータの新しい協力関係を築く一つの研究についてご覧ください.
【略歴】2004年3月東京農工大学大学院工学研究科電子情報工学専攻博士後期課程修了.博士(工学).東京農工大学産官学連携・知的財産センター研究員,同大学共生科学技術研究院助手,助教,同大学大学院工学府特任准教授を経て,2010年度から桜美林大学総合科学系専任講師.手書き文字認識に関連する技術の歴史学/教育学分野への応用に関する研究に従事.日本情報考古学会2008年度論文賞,情報処理学会コンピュータと教育研究会SSS2009奨励賞,情報処理学会2012年度山下記念研究賞受賞.