情報処理学会 第79回全国大会 会期:2017年3月16日~18日 会場:名古屋大学 東山キャンパス 情報処理学会 第79回全国大会 会期:2017年3月16日~18日 会場:名古屋大学 東山キャンパス
文部科学省 大学入学者選抜改革推進委託事業
「情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発」
日時:3月16日(木)13:00-15:30
会場:第2イベント会場(ESホール)
【セッション概要】文部科学省の大学入学者選抜改革推進委託事業に,大阪大学,東京大学,情報処理学会が連携して応募し,情報分野での現行の入学選抜における課題や問題点を調査・分析の上,その改善に向けた実践的で具体的な手法を研究・開発している.特に「思考力・判断力・表現力」の評価に関する考え方,現在審議中の学習指導要領改訂の方向性などに留意し,学力を適切に評価するための革新的な手法の開発に取り組んでいる.本事業では,「情報科」入試実施における評価手法の検討,「情報科」CBTシステム化に関する研究,情報技術による入試の評価に関する研究,広報活動と動向調査研究,を4つの柱として活動しており,現状で得られたいくつかの成果に付いて,報告し,議論したい.
司会:角田 博保 (情報処理学会 情報入試委員会 委員長)
【略歴】1974年東京工業大学理学部情報科学科卒業.1976年同大学院修士課程修了.1981年同大学院博士課程単位取得退学.1982年電気通信大学計算機科学科助手.1990年同大学情報工学科講師,1992年助教授,2007年准教授,2016年定年退職.理学博士.計算機システムのヒューマンインタフェース,教育支援システム,文字列処理等に興味を持つ.情報処理学会コンピュータ科学教育委員会委員長,情報入試委員会委員長.ACM,ヒューマンインタフェース学会各会員.
13:00-13:20 基調講演 情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発
萩原 兼一 (大阪大学 大学院情報科学研究科 教授)
【講演概要】文部科学省の大学入学者選抜改革推進委託事業を大阪大学が受託機関,東京大学および情報処理学会が連携機関として受託し,高校科目「情報科」に関する大学入試評価手法の研究開発を実施しています.現在,高校の次期学習指導要領が検討されていて,平成34年度の高校入学生から実施されます.したがって,平成37年度の大学入学生から入試内容が変わります.その大学入試では,今までの入試内容は主に知識・技能を評価していたが,思考力・判断力・表現力も評価することが求められています.本事業では,その要求を満たす「情報科」の入試問題はどのようなものであるかを明確にし,その試験を実施するCBT(Computer Based Testing)システムを開発することを目標としています.本講演ではこの事業の概略を説明します.
【略歴】1974年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.1979年同大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.工学博士.同基礎工学部助手,講師,助教授を経て,1993年奈良先端科学技術大学院大学教授.1994年より大阪大学教授(基礎工学部,現在,情報科学研究科).1992〜1993年文部省在外研究員(米国メリーランド大).データベース,VLSIアルゴリズム,分散アルゴリズム,並列処理に関する研究に従事.2005〜06年情報処理学会理事,同関西支部長.1997年より同アクレディテーション委員.J97策定WG委員.2013〜14年理工系情報学科・専攻協議会会長.
 
13:20-13:40 報告(1) 「情報科」の情報学参照基準による知識体系化
萩谷 昌己 (東京大学 大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 教授)
【講演概要】本事業では,理工系大学教育の分野別質保証,参照基準を考慮した「情報科」入試評価項目の検討を行うことを目標としている.日本学術会議の大学教育の分野別質保証委員会では,専攻分野毎に大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準を設けている.本事業では,上記目標を達成するために,主に理工系大学教育の各分野および情報学分野で共通的に必要となる「情報科」の内容について考慮し,入試評価項目を検討する.具体的に,「情報科」で教えられる知識および技能を,情報学の参照基準に照らして体系化することを試みている.また,他の分野の参照基準も参照し,各分野に共通的に必要となる知識と技能を明らかにする.本講演では以上の検討の結果について報告する.また,本事業では,試験問題作成段階でAI/ビッグデータ技術の適用可能性について探ることも目標としており,時間があればその成果についても報告する.
【略歴】1982年3月東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.1982年4月京都大学数理解析研究所助手.1988年3月京都大学理学博士.1988年10月京都大学数理解析研究所助教授.1992年4月東京大学理学部助教授.1993年4月東京大学大学院理学系研究科助教授.1995年11月東京大学大学院理学系研究科教授.2001年4月〜東京大学大学院情報理工学系研究科教授.2010年4月〜2013年3月東京大学大学院情報理工学系研究科研究科長.2011年10月〜日本学術会議会員.
 
13:40-13:55 報告(2) 「情報科」大学入学者選抜における評価手法
久野 靖 (電気通信大学 大学院情報理工学研究科 教授)
【講演概要】現在我々は,文部科学省の大学入学者選抜改革推進委託事業の一環として,情報分野での具体的な選抜手法を研究・開発している.その中でもとくに重要となるのが,思考力・判断力・表現力を評価できるような試験方式やその作題の手法を定式化することである.本報告では,思考力・判断力・表現力を試験で問える形にするためにどのように定式化し,またそれに対応する力を見るためにどのような形で設問を構築しようとしているかについて,現状を報告する.
【略歴】1984年東京工業大学大学院情報理工学研究科情報科学専攻博士後期課程単位取得退学.東京工業大学助手,筑波大学講師,助教授,教授を経て,現在,電気通信大学教授.筑波大学名誉教授.理学博士(1986年東京工業大学).
 
13:55-14:10 報告(3) 「情報科」大学入学者選抜CBTシステム化の仕様
西田 知博 (大阪学院大学 情報学部 准教授)
【講演概要】現在大学入試センター試験では試験科目とはなっていない「情報科」の学力評価を全国規模で行うことは,それをCBT(Computer Based Testing)として採点コストを削減することにより実現性が高くなると考えられる.また,コスト削減だけでなく,コンピュータの操作を通じた評価や,個々の受験者に適応した出題など,CBTを導入により実現できることも多くある.本事業では,これまで情報入試研究会として実施してきた大学情報入試全国模擬試験を出発点とし,「思考力・判断力・表現力」を評価するという視点も加えて「情報科」大学入学者選抜をCBTシステム化するためにはどのような機能が必要かを検討している.ここではそこで挙がった要求仕様とそれらの実現可能性について紹介する.
【略歴】1991年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業,1996年同大学基礎工学研究科単位取得満期退学.大阪大学情報処理教育センター助手,大阪学院大学情報学部講師を経て,現在,同大学准教授.2014年より情報処理学会コンピュータと教育研究会主査.同学会情報入試委員会委員,初等中等教育委員会,情報規格調査会SC36専門委員会委員などを務める.同学会シニア会員.
 
14:10-14:25 報告(4) 「情報科」大学入学者選抜の国内外の動向
辰己 丈夫 (放送大学 教養学部 教授)
【講演概要】我が国で「情報活用能力」とされる内容は,多くの国の初等中等教育段階では「情報科」のような独立した教科ではなく,他教科で学習される.本講演では,その能力を他国ではどのように測定・評価し,それが本人のキャリアにどの程度関連するようになっているのかについて,複数の国での聞き取り調査などを元にして報告する.
【略歴】1997年早稲田大学理工学研究科数学専攻博士後期課程退学.2014年筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程修了.博士(システムズ・マネジメント).1993年早稲田大学情報科学研究教育センター助手.その後,神戸大学講師,東京農工大学助教授,放送大学准教授を経て,2016年4月から放送大学教授.現在,本会情報処理教育委員会幹事,コンピュータと教育研究会・運営委員など.
 
14:30-15:30 パネル討論 どうする「情報科」大学入学者選抜
【討論概要】高等学校共通教科情報科の次期学習指導要領の全範囲に亘って,「思考力・判断力・表現力」を評価する観点からどのような問題をどのような方法で課し,それをどうやって評価すべきかを議論する.具体的な手段としては,CBTを想定しているがその有効性についても考える.そもそも,高等学校共通教科情報科は必履修教科であるにも関わらず,現段階においてそれを入学試験に取り入れている大学は極めて少数である.このことが,高等学校において情報科の軽視や教科内容の過剰な分散,さらには教員の採用や配置の不適切な状態を放置することにもつながっている.この現状が望ましくないことは誰の目にも明らかで,大学,高校双方に改善のための努力が必要である.一方,PISAでは課題解決力が非常に重視されており,情報科は課題解決力を涵養する中核的な教科として期待されている部分もある.そこで,高等学校共通教科情報科を大学入試に導入するために克服すべき課題や,われわれは何をしていけばいいのか,各パネリストの立場から議論する.
パネル司会:中野 由章 (神戸市立科学技術高等学校)
【略歴】芝浦工業大学工学部通信工学科卒,同大学院工学研究科電気工学専攻修了,大阪大学大学院人間科学研究科人間科学専攻単位修得退学.日本IBM大和研究所,三重県立高校,千里金蘭大学,大阪電気通信大学を経て,神戸市立科学技術高校教諭兼大阪電気通信大学客員准教授.初等中等教育における情報教育に関心をもつ.情報処理学会シニア会員,情報入試委員会幹事,初等中等教育委員会委員,コンピュータと教育研究会幹事,関西支部 プログラミング・情報教育研究会主査.技術士(総合技術監理・情報工学).
パネリスト:萩原 兼一 (大阪大学 大学院情報科学研究科 教授)
【略歴】1974年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.1979年同大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.工学博士.同基礎工学部助手,講師,助教授を経て,1993年奈良先端科学技術大学院大学教授.1994年より大阪大学教授(基礎工学部,現在,情報科学研究科).1992〜1993年文部省在外研究員(米国メリーランド大).データベース,VLSIアルゴリズム,分散アルゴリズム,並列処理に関する研究に従事.2005〜06年情報処理学会理事,同関西支部長.1997年より同アクレディテーション委員.J97策定WG委員.2013〜14年理工系情報学科・専攻協議会会長.
パネリスト:萩谷 昌己 (東京大学 大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 教授)
【略歴】1982年3月東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.1982年4月京都大学数理解析研究所助手.1988年3月京都大学理学博士.1988年10月京都大学数理解析研究所助教授.1992年4月東京大学理学部助教授.1993年4月東京大学大学院理学系研究科助教授.1995年11月東京大学大学院理学系研究科教授.2001年4月〜東京大学大学院情報理工学系研究科教授.2010年4月〜2013年3月東京大学大学院情報理工学系研究科研究科長.2011年10月〜日本学術会議会員.
パネリスト:久野 靖 (電気通信大学 大学院情報理工学研究科 教授)
【略歴】1984年東京工業大学大学院情報理工学研究科情報科学専攻博士後期課程単位取得退学.東京工業大学助手,筑波大学講師,助教授,教授を経て,現在,電気通信大学教授.筑波大学名誉教授.理学博士(1986年東京工業大学).
パネリスト:西田 知博 (大阪学院大学 情報学部 准教授)
【略歴】1991年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業,1996年同大学基礎工学研究科単位取得満期退学.大阪大学情報処理教育センター助手,大阪学院大学情報学部講師を経て,現在,同大学准教授.2014年より情報処理学会コンピュータと教育研究会主査.同学会情報入試委員会委員,初等中等教育委員会,情報規格調査会SC36専門委員会委員などを務める.同学会シニア会員.
パネリスト:辰己 丈夫 (放送大学 教養学部 教授)
【略歴】1997年早稲田大学理工学研究科数学専攻博士後期課程退学.2014年筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程修了.博士(システムズ・マネジメント).1993年早稲田大学情報科学研究教育センター助手.その後,神戸大学講師,東京農工大学助教授,放送大学准教授を経て,2016年4月から放送大学教授.現在,本会情報処理教育委員会幹事,コンピュータと教育研究会・運営委員など.