情報処理学会 第79回全国大会 会期:2017年3月16日~18日 会場:名古屋大学 東山キャンパス 情報処理学会 第79回全国大会 会期:2017年3月16日~18日 会場:名古屋大学 東山キャンパス
J17 - J07から10年,何を変え何を定めるか
日時:3月17日(金)9:30‐12:00
会場:第4イベント会場(坂田平田ホール セミナー室)
【セッション概要】情報系専門学科カリキュラム標準J07を定めてから10年が経とうとしている.この10年の間にITの科学技術は進展を続け,情報専門系学科の研究・教育に対して社会の期待も変化し,より一層,高度IT人材育成に対する要求が高まっている.そうした中で,2016年3月には日本学術会議が情報学分野に対する大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準を公表している.目を海外に転じると,J07が参照したACM,IEEE-CSによるカリキュラム標準CC-2005の各分野CS,IS,CE,SE,ITに対する標準もそれぞれに改定が行われてきた.これに加えて,情報セキュリティとデータサイエンスの2つの分野に対する標準策定が始まっているし,これらを統括したカリキュラム標準CC-2020を策定する動きも始まっている.
 こうした背景の下で,J07をどう変え,どう改定してJ17とするかの検討が情報処理教育委員会で基本的な方向づけの検討が行われてきた.J07ではCC2005の枠を超えて一般情報教育(GE)のカリキュラム標準や副専攻向けのカリキュラム標準も策定したことを引き継いで,J17でのこれらのカリキュラム標準を組み込む方向づけが行われた.
 2016年度になってJ17WGが設けられ,J17プロジェクトが正式に始動した.2016年度作業としては,文部科学省委託事業による情報専門教育の国内外の現状調査が行われ,各カリキュラム委員会でもJ17に向けて何をどう策定するかについての検討が行われた.
 このセッションでは,まず,4年制大学すべてを対象にした総括的な情報教育の現状調査の結果報告と,CC-2005以後のACM/IEEE/AISによるカリキュラム標準改定状況の報告を行う.その上で,各カリキュラム委員会から委員長をパネリストとして招いてパネル討論を行い,フロアの発言も受けながらJ17の策定方針に関しての議論を深める.
司会:筧 捷彦 (J17 WG 主査)
【略歴】1970年東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了.1970年東京大学工学部助手,1974年立教大学理学部数学科講師,(1978)助教授,1986年早稲田大学理工学部数学科教授,(1991)情報学科,(2003)コンピュータ・ネットワーク工学科,(2004)基幹理工学部情報理工学科,2016年早稲田大学名誉教授.本会フェロー,日本ソフトウェア科学会会員,ACM会員.情報処理教育委員会J17 WG主査.
9:35-10:05 報告(1) 情報教育の国内現状 - 全大学対象の調査結果
高橋 尚子 (GE 副委員長)
【講演概要】2016年11月に,文部科学省の委託を受け「超スマート社会における情報教育の在り方に関する調査研究」の一環として,情報学分野の教育に関する現状調査を行い,その結果を報告する.調査は,日本国内の大学で実施されている情報学分野の教育実態(プログラム構成,教育内容,プログラム履修者,担当者,教育環境等)を把握し,分析する目的で実施した.情報学分野の詳細な定義は,「日本学術会議大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準:情報学分野」(情報学の参照基準)に基づいた.情報の専門教育課程を持つ学部や学科だけでなく,非情報系学部・学科における情報教育,全学または学部等の共通教育において情報学分野の教育(一般情報教育),高校教科「情報」の教職課程のうち教科に関する科目にまで範囲を広げた.さらに,大学で運用管理している教育用電子計算機システムの状況についても調査した.
【略歴】東京女子大学在学中に女子大初のマイコンクラブを結成.卒業後,女性SE第一期生として富士通入社,大型コンピュータからパソコンまで多数の業務システムを開発.ASCIIでのビジネスパソコンスクール開校,OAインストラクタを経て,ソフトウェアコンサルティング,人材育成,テクニカルライティング(マニュアル制作)を行うナウハウス(有)として独立.1995年から大学でPCスキルの非常勤講師を始め,2007年から國學院大學経済学部で情報教育に携わる.文系学生に,情報システムや情報通信ネットワークをわかりやすく解説することを心がけている.Office系アプリケーションや情報リテラシー,資格検定,マニュアル制作に関する著書多数.
 
10:05-10:25 報告(2) カリキュラム改定の国際状況 - CC-2005 その後
角田 博保 (CS委員長)
【講演概要】情報系専門学科カリキュラム標準J07が参考としているACM/IEEE-CSによるカリキュラム標準CC2005はCS,IS,CE,SE,ITの5分野からなっている.各分野ごとにカリキュラム標準が定められており,J07が参考としたのはCS2001,IS2002,CE2004,SE2004,IT2006であった.このそれぞれの分野において,その後改定作業がなされ,CSはCS2013,ISはIS2010,CEはCE2016,SEはSE2014,ITはIT2017へと改定されている.更にCC2020への策定作業が進んでいる.本報告では,現状でのACM/IEEE-CSのカリキュラム標準の変更状況を大まかに述べるとともに,特に,それらの基礎となりうるCS2013をより詳しく,知識,技能の要求レベルにおいて比較検討する.
【略歴】1974年東京工業大学理学部情報科学科卒業.1976年同大学院修士課程修了.1981年同大学院博士課程単位取得退学.1982年電気通信大学計算機科学科助手.1990年同大学情報工学科講師,1992年助教授,2007年准教授,2016年定年退職.理学博士.計算機システムのヒューマンインタフェース,教育支援システム,文字列処理等に興味を持つ.情報処理学会コンピュータ科学教育委員会委員長,情報入試委員会委員長,ACM,ヒューマンインタフェース学会各会員.
 
10:30-12:00 パネル討論 J17をどう策定するか
【討論概要】J17プロジェクトの1年目のまとめとして,文部科学省委託事業として実施した情報学教育の現状調査の結果と,各カリキュラム委員会によるACM/IEEE-CSのカリキュラム標準改定の調査の結果に基づいて,J07の後継としてのカリキュラム標準J17をどのような形で取りまとめるかについて検討を重ねてきたことを報告し,2017年度に行うJ17策定の方針について議論を行う.
パネル司会:筧 捷彦 (J17 WG 主査)
【略歴】1970年東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻修士課程修了.1970年東京大学工学部助手,1974年立教大学理学部数学科講師,(1978)助教授,1986年早稲田大学理工学部数学科教授,(1991)情報学科,(2003)コンピュータ・ネットワーク工学科,(2004)基幹理工学部情報理工学科,2016年早稲田大学名誉教授.本会フェロー,日本ソフトウェア科学会会員,ACM会員.情報処理教育委員会J17 WG主査.
バネリスト:角田 博保 (CS委員長)
【略歴】1974年東京工業大学理学部情報科学科卒業.1976年同大学院修士課程修了.1981年同大学院博士課程単位取得退学.1982年電気通信大学計算機科学科助手.1990年同大学情報工学科講師,1992年助教授,2007年准教授,2016年定年退職.理学博士.計算機システムのヒューマンインタフェース,教育支援システム,文字列処理等に興味を持つ.情報処理学会コンピュータ科学教育委員会委員長,情報入試委員会委員長,ACM,ヒューマンインタフェース学会各会員.
バネリスト:辻 秀一 (IS委員長)
【略歴】1974年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了,工学博士.同年,三菱電機(株)入社.中央研究所,コンピュータシステム製作所,情報技術総合研究所にて勤務.2000年東海大学に奉職.情報理工学部情報メディア学科教授,情報通信学部組込みソフトウェア工学科教授として勤務.2015年東海大学を定年退職.NPO法人M2M研究会理事,現在に至る.この間,ヒューマンインタフェース,人工知能などの研究開発,および電子商取引,情報セキュリティ,M2M/IoTシステムの研究・教育に従事.また,2014年より情報処理学会・情報システム教育委員会委員長.
バネリスト:岡部 忠 (CE副委員長)
【略歴】2006年名古屋大学大学院理学研究科博士前記課程修了.同年4月川崎マイクロエレクトロニクス(株)入社.2009年10月(地独)東京都立産業技術研究センター入所.都産技研入所以来,組込みシステムの開発,システムの高速化・低消費電力化,FPGAの応用研究及びハードウェアエンジニアの育成等に従事.2016年4月より情報処理学会情報処理教育委員会委員.
パネリスト:井上 克郎 (SE委員長)
【略歴】1979年大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.1984年同大学大学院博士課程修了.同年同大学基礎工学部助手.1984-86年ハワイ大マノア校情報工学科助教授.1989年大阪大学基礎工学部講師.1991年同助教授.1995年同教授.2002年大阪大学大学院情報科学研究科教授.工学博士.ソフトウェア工学,特に,ソフトウェア開発手法,プログラム解析,再利用技術の研究に従事.
パネリスト:駒谷 昇一 (IT委員長)
【略歴】1985〜2007年NTTソフトウェア(株).2007〜2013年(株)NTTデータ.2007〜2010年筑波大学.2013年〜奈良女子大学.情報処理学会情報処理教育委員会委員.著書「ずっと受けたかったソフトウェアエンジニアリングの授業」,情報処理学会IT Textシリーズ「情報とネットワーク社会」,「情報と職業」,「情報システム基礎」他.
パネリスト:稲垣 知宏 (GE委員長)
【略歴】1995年広島大学大学院理学研究科博士課程修了.博士(理学).広島大学総合情報処理センター助手,広島大学総合科学部講師,広島大学情報メディア教育研究センター准教授などを経て,2015年から教授.広島大学の情報教育改革に取り組んできた.主な研究分野は情報教育,計算物理学など.