情報処理学会 第79回全国大会 会期:2017年3月16日~18日 会場:名古屋大学 東山キャンパス 情報処理学会 第79回全国大会 会期:2017年3月16日~18日 会場:名古屋大学 東山キャンパス
情報通信技術が先導するオープンイノベーション
日時:3月17日(金)13:00‐15:00
会場:第1イベント会場(坂田平田ホール)
【セッション概要】我が国の産業界においては,従来,必要な技術は自社開発すべきという考え方が強かったが,情報通信技術の急速な進化により,そのような自前主義では急速な技術革新に取り残されるという認識が広がっており,オープンイノベーションの必要性が高まっている.第5期科学技術基本計画においても,情報通信技術の進化がもたらす大変革時代における知識・価値の創造プロセスとして,オープンイノベーションに着目している.このセッションでは,国(ファンディングエージェンシー)および産業界の立場から,情報通信技術分野を中心とするオープンイノベーションに対する認識と取り組みについて紹介する.
司会:高田 広章 (名古屋大学 未来社会創造機構/大学院情報科学研究科 教授)
【略歴】名古屋大学未来社会創造機構教授.東京大学助手,豊橋技術科学大学助教授等を経て,2003年より名古屋大学大学院情報科学研究科情報システム学専攻教授.2006年4月より附属組込みシステム研究センター長を兼務.2014年より現職.博士(理学).組込みシステム開発技術の研究に従事.オープンソースのリアルタイムOS等を開発するTOPPERSプロジェクトを主宰.名古屋大学発ベンチャ企業APTJ(株)を設立し,その代表取締役会長・CTOを務める.
13:00-13:40 講演(1) オープンイノベーションの展開と大学への期待
後藤 吉正 (国立研究開発法人 科学技術振興機構 理事)
【講演概要】オープンイノベーションは新しい概念ではなく,特定の業界では活発に実践されてきた.しかし,近年のわが国でのオープンイノベーションの動向は次の2つの特徴がある.①産業界が大学を研究パートナーとして位置づけ,従来は企業内で実施していた研究を大胆に大学に依拠しようとする動向である.②多数の企業がオープンイノベーションに動いている.これらを促進する国の政策や産業界の提案も少なくない.講演者は,企業,大学を経て,現在は,科学技術振興機構(JST)で,大学や公的研究機関に研究資金を提供する業務を担当している.JSTは,アカデミアの研究資金を供給する国内の主要な研究ファンディング機関の一つである.企業や大学での経験を踏まえ,研究ファンディング機関の視点から見た,わが国のオープンイノベーションの進展を踏まえ,今後一層に進化するための条件や課題を考察する.特に,大学への期待や大学に迫られた課題を検討する.
【略歴】1979年3月名古屋大学大学院工学研究科博士前期課程修了.1993年9月同博士後期課程修了.博士(工学).1981年2月松下電器産業(株)(現パナソニック(株)).1985年7月カーネギーメロン大学コンピューターサイエンス学科客員研究員(1988年3月まで).2001年12月松下電器産業(株)経営企画グループチームリーダー.2003年9月同R&D知的財産権センター所長.2008年4月同上席理事(国際標準化及び知的財産担当).2012年4月国立大学法人名古屋大学学術研究・産学官連携推進本部教授.2015年10月国立研究開発法人科学技術振興機構理事.2016年3月立命館大学大学院博士後期課程修了博士(技術経営).
 
13:40-14:20 講演(2) 39Works: ドコモにおける オープンイノベーションプログラムの紹介
栄藤 稔 (株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 執行役員 部長)
【講演概要】大企業では,イノベーションは起きないとの通説ができつつある.どの企業も創業期は情熱とリスクへの挑戦があったはずだが,成長すると,既存事業維持を目標とする管理エリート集団に変貌してしまう.この状況を打破するには,もういちど0から1を生む組織と文化を作るしかない.この観点でNTTドコモの39worksというイノベーション創出プログラムを紹介する.この39Worksでは,企業内外に関係なく起業家集団を作ること,企業内にある政治,慣習,既存エコシステムのしがらみから逃れて,事業企画,技術開発,サービス運用を一体として行うことに特徴がある.実例を持って前述の通説を打破したい.
【略歴】3年毎にやることが変わる技術屋.学生時代はZ80で並列コンピュータ試作する計算機研究.パナソニックに就職と共にデジタルVCR試作.3年後ATRに出向.役に立たない非単調推論,知識構造表現を研究.ATRから大学に行き,パターン認識と機械学習の研究を2年間.これで学位取得.今起きているAIブームに対応できる素養となった.パナソニックに戻り動画像符号化を始めMPEG標準化のリーダー.2000年にドコモに転じ,モバイルマルチメディアを担当.そのときAppleと組んで定めたファイル形式がMP4.自称iPodの外祖父.2002年末にシリコンバレーに異動となり,モバイルインターネット.一方で,標準化活動でMPEGのエミー賞受賞に貢献.2005年に日本に戻り,分散音声認識を商用化.2007年にデータマイニングを立ち上げ,並列分散ペタバイトデータベースを構築.この活動がその後10年に渡って起こるドコモのビックデータによるイノベーションの原点となった.自然言語処理応用をデータ量と並列計算システムで解決するアプローチを実践.これは「しゃべってコンシェル」で具現化.現在は自動翻訳の商用化やクラウド利用による開発手法の変革,さらにマイクロサービスなどR&Dの再定義に挑戦している.
twitter IDは「mickbean」
詳しい略歴は以下を参照のこと.
http://www.linkedin.com/in/micketoh
 
14:20-15:00 講演(3) トヨタ自動車におけるオープン・イノベーション 『名古屋COIの取り組み』
畔柳 滋 (トヨタ自動車 未来開拓室 担当部長/名古屋大学 名古屋COI拠点 拠点長)
【講演概要】超高齢化の進む日本において,名古屋COI拠点は「多様化・個別化社会イノベーション拠点」として,すべての人が地域差・個人差なくいつまでも社会の現役として活躍できる社会の実現に向けて,高齢者が自らの意思でいつでもどこでも移動できる「高齢者が元気になるモビリティ社会」の構築をビジョンに掲げ,産官学連携での革新的イノベーションを創出すべく研究開発を推進しています.チャレンジングな研究開発課題を克服するために,アンダーワンルーフで大学・企業・行政の関係者が一体となって議論し大学や企業だけでは実現できない研究開発に取り組み,プロトタイピングや実証実験も活用しながら確実にイノベーションを創出していきます.スピーディな社会実装に向け新たな共同研究機関の参画により拠点活動を活性化しつつあります.このスタイルは今後のオープン・イノベーションにおける産官学連携のグランドデザイン構築につなげていきます.本講演では,トヨタ自動車におけるオープン・イノベーションの1つである名古屋COIの取り組みにつきご紹介します.
【略歴】1983年慶應義塾大学工学部を卒業.同年,トヨタ自動車(株)に入社.パワートレーン電子制御システムの先行・量産開発を担当.近年は電子プラットフォーム主査として電子システム全体のアーキテクチャ及び要素技術開発の企画を担当し,2009年より制御システム基盤開発部部長として次世代制御開発の革新的なプロセス構築およびツール開発を推進.同年,(一社)JASPAR運営委員長に就任.2016年4月より現職.