情報処理学会 第79回全国大会 会期:2017年3月16日~18日 会場:名古屋大学 東山キャンパス 情報処理学会 第79回全国大会 会期:2017年3月16日~18日 会場:名古屋大学 東山キャンパス
社会システム・サービス最適化のためのソーシャルCPSの研究開発
日時:3月17日(金)15:10‐17:40
会場:第3イベント会場(IB大講義室)
【セッション概要】多様なセンサーを通じて人やモノから得たデータから実世界の事象を把握し,その分析結果から実世界に対して適切なフィードバックすることで実世界の課題解決をめざすサイバー・フィジカルシステム(CPS)に期待が集まっている.平成24年度に開始した文部科学省事業「社会システム・サービスの最適化のためのサイバーフィジカルIT統合基盤研究」においては,特に社会システムの効率化をめざしたソーシャルCPSを提案し,そのIT統合基盤技術の研究を推進するとともに有効性の実証のためのサービス実験に取り組んできた.本イベントでは,このシステムへの要求条件や統合基盤のデザインコンセプト,センシング機構,データ管理・可視化・統合分析基盤,実証実験の概要と今後の展望を議論したい.
司会:安達 淳 (国立情報学研究所 教授)
【略歴】1981年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.工博.東京大学大型計算機センター助手,文部省学術情報センター助教授,教授を経て現在国立情報学研究所教授.東京大学大学院情報理工学研究科教授を併任.データベースシステム,情報検索,テキストマイニング等の開発研究や学術情報基盤の企画,開発,運用等に従事.電子情報通信学会,情報処理学会各フェロー,データベース学会,IEEE,ACM各会員.
15:10-15:30 講演(1) ソーシャルCPSの目指すもの(プロジェクト概要)
安達 淳 (国立情報学研究所 教授)
【講演概要】社会システムやサービスをさらに高度化していくために必要なITプラットフォームとして「ソーシャルCPS(Socal Cyber-Physical Systems)」を提案している.現実世界から様々なセンサーによりリアルタイムにデータを獲得し,それにクラウドソーシングで得られるデータも加味して,データ分析や可視化を行う.さらにシミュレーションをも活用し総合的に状況把握し,ステークホルダーの多い環境下での課題解決方法を見いだす.このような一連の作業をリアルタイムに行うためのプラットフォームである.ビッグデータ処理,機械学習,IoTなどの最近のITが盛り込まれたシステムでもある.運用時には実世界へのフィードバックを行い,社会システム全体の効率化をめざすために効果を発揮する.このようなソーシャルCPSの基本アーキテクチャ,要素技術,そしてこのプラットフォームの有効性を示すために行った実証実験などを総覧し,我々のプロジェクトの全体像を紹介する.また,研究開発の過程で明らかになった課題や社会実装における考慮点などについてまとめる.
【略歴】1981年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.工博.東京大学大型計算機センター助手,文部省学術情報センター助教授,教授を経て現在国立情報学研究所教授.東京大学大学院情報理工学研究科教授を併任.データベースシステム,情報検索,テキストマイニング等の開発研究や学術情報基盤の企画,開発,運用等に従事.電子情報通信学会,情報処理学会各フェロー,データベース学会,IEEE,ACM各会員.
 
15:30-15:45 講演(2) 札幌市における除排雪の効率的運用を目指したソーシャルCPS技術の確立と応用
田中 譲 (北海道大学 大学院情報科学研究科 特任教授)
【講演概要】ソーシャルCPS基盤技術の適用実証実験として昨年度から2年間の予定で遂行している札幌市における除排雪の効率的運用に関する研究開発とその実証実験に関して報告する.札幌市の年間積雪量は6mであり,人口100万人以上の世界中の都市の中で最も多く,徐排雪の年間予算は180億円に達する.本研究では,札幌市全域にわたる,気象,交通,除排雪作業,交通事故に関する多様な過去データや実時間データを網羅的に用い,これらの可視化分析を通じて,降雪による交通への影響度や,路線バスの遅延状況などの現状分析を実時間で情報提供し,除排雪作業による交通改善効果を定量的に評価し,プローブカーデータの分析により路側堆雪の局所的出っ張りや違法駐車などの渋滞原因の位置特定を行い,ピンポイント除排雪を提案する.さらには,気象の変化とABS起動データの分析による路面凍結予測法,気象,除排雪作業の履歴と交通状況の分析による除排雪の要否判断法について紹介する.
【略歴】1974年京都大学電子工学専攻修士課程修了.同年北海道大学電気工学科助手.講師,助教授を経て1990年同教授.2004年同大学情報科学研究科教授,現在に至る.1985年〜1986年IBMワトソン研究所客員研究員.1996年〜2014年北海道大学知識メディアラボラトリ長.1998年〜2000年京都大学情報学研究科併任教授.2004年より国立情報学研究所客員教授.2013年よりJST CRESTプログラム「ビッグデータ応用」研究領域研究総括.工学博士(東京大学).データベース理論,データベースマシン,知識メディア,知識フェデレーション,探索的可視化分析などの研究に従事.
 
15:45-16:00 講演(3) 群衆センシングと都市のスマート化
東野 輝夫 (大阪大学 大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 教授)
【講演概要】ソーシャルCPS(Socal Cyber-Physical Systems)の適用分野として都市のスマート化が考えられる.米国NSFでも次世代のスマート・シティ研究としてSmart and Connected Communitiesの研究開発が進められている.都市のスマート化を考える場合,都市空間の群衆の動き(Mobility)をできるだけ正確且つリアルタイムに収集できることが望まれる.本研究では,レーザーレンジスキャナーや様々なセンサを活用した群衆センシング技術を紹介すると共に,人の活動をセンシングし,ビルや商業施設のエネルギー利用の効率化やサービスの改善につなげる「人間中心のエネルギー利用効率化」の試みについて紹介する.
【略歴】1986年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.工博.同年同大学助手.2002年より大阪大学大学院情報科学研究科・情報ネットワーク学専攻・教授.モバイル・ユビキタスコンピューティングに関する研究に従事.日本学術会議会員.本会副会長.日本学術振興会・学術システム研究センター・主任研究員(2013-2016),本会理事,監事などを歴任.
 
16:00-16:15 講演(4) センシング技術に基づく細粒度の電力利用最適化
谷口 倫一郎 (九州大学 大学院システム情報科学研究院 教授)
【講演概要】サイバーフィジカルシステムの具体的な応用分野としてエネルギー分野が挙げられる.すでに様々なエネルギーマネージメントシステムが研究・開発され,省エネルギーや環境負荷の低減に貢献している.本発表では,従来の研究では対象としてこなかった,細粒度の省エネルギーにサイバーフィジカルシステムの考え方を適用した事例について報告する.具体的には,研究室や企業のオフィスなどその構成員がはっきりしているところに対して,構成員の行動や電力利用の状況を個人レベルでセンシングし,それに基づいて電力利用を低減させるためのリコメンデーションを行う.各構成員の電力利用状況が全体の中でどのような位置づけになっているかを可視化したり,事前に入力された予定表に基づいて,若干の予定の変更を推薦することを通して,電力利用の削減を目指すシステムについて発表する.
【略歴】1978年九州大学情報工学科卒業.1980年同大学院修士課程修了.九州大学大学院総合理工学研究科助手,助教授を経て1996年より現職.2011〜2013年度同研究院長.2014年度より九州大学情報基盤研究開発センター長を併任.コンピュータビジョン,サイバーフィジカルシステム等の研究に従事.本会コンピュータビジョンとイメージメディア研究会主査,理事等を歴任.1993年本会論文賞,1995年本会坂井記念特別賞等を受賞.2013年本会フェロー.
 
16:15-16:40 招待講演 ソーシャルCPSを支える知・人材・資金の良い循環
武田 一哉 (名古屋大学大学院 未来社会創造機構/情報科学研究科 教授)
【講演概要】「ソーシャルCPS」は,わが国が目指す「超スマート社会」の実現そのものとも言うべき重要な課題であり,名古屋大学でも,地域に集積される製造産業との協業により「新しい価値の創造」を支えるソーシャルCPSの様々な研究が行われています.講演では,本学が進める2つのプロジェクト,博士課程リーディングプログラム(JSPS)「実世界データ循環学リーダー養成プログラム」,共創プラットフォーム共同研究推進事業(JST)「人と知能機械との協業メカニズム解明と共創価値に基づく新しい社会システムを構築するための基盤技術の創出」の活動を紹介し,ソーシャルCPSを支える「知・人材・資金の循環」について考えたいと思います.
【略歴】1985年名古屋大学工学研究科博士(前期)課程修了(都市環境騒音の評価法の研究).同年,国際電信電話(現KDDI)入社.1986年,ATR自動翻訳電話研究所出向(音声データベース,音声合成の研究).1988-89年,マサチューセッツ工科大滞在研究員.1990年,国際電信電話研究所復職(音声認識システムの研究).1995年,名古屋大学助教授(音響・音声信号処理の教育研究).2003年,名古屋大学教授(行動情報処理の教育研究).
 
16:40-17:40 パネル討論 ソーシャルCPSの展開と課題
【討論概要】CPS研究プロジェクトとしてのこれまでの成果を踏まえ,ソーシャルCPSとしての今後の価値創造の可能性と課題を議論する.従来のサイバー空間での情報処理に閉じず,実世界との連携,融合によって様々な応用分野の基盤となるCPSは,IoT,ビッグデータ,AI等の ‘総合化技術’とも言え,多くの技術的課題や実証上の問題も抱えている.そこで,実世界データ収集から管理・分析,そしてサービスとしてのフィードバックというソーシャルCPS実現のための各ステージでどのような課題が想定され,それらにどのように取り組んで来たかについて,実証実験等を通じた経験なども含め議論する.そして研究成果から期待される社会的価値創造の可能性について,社会ニーズとコストの視点も含め社会実装上の課題や展望を総合的に議論する.
パネル司会:今井 和雄 (国立情報学研究所 研究戦略室 シニアリサーチアドミニストレーター 特任教授)
【略歴】1976年京都大学大学院修士(数理工学)修了後,NTT研究所に入所.データ交換,広帯域パケット通信方式,情報配信プラットフォーム等の研究開発に従事.1994年〜98年米国NTT America社に勤務.2000年よりNTTドコモにてネットワーク研究所長,総合研究所長として将来のモバイル・ネットワークやサービスの研究を推進.2007年〜2011年ドコモUSA研究所President & CEO.2011年7月より現職.電子通信学会,情報処理学会,IEEE各会員.博士(国際情報通信).
パネリスト:安達 淳 (国立情報学研究所 教授)
【略歴】1981年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.工博.東京大学大型計算機センター助手,文部省学術情報センター助教授,教授を経て現在国立情報学研究所教授.東京大学大学院情報理工学研究科教授を併任.データベースシステム,情報検索,テキストマイニング等の開発研究や学術情報基盤の企画,開発,運用等に従事.電子情報通信学会,情報処理学会各フェロー,データベース学会,IEEE,ACM各会員.
パネリスト:田中 譲 (北海道大学 大学院情報科学研究科 特任教授)
【略歴】1974年京都大学電子工学専攻修士課程修了.同年北海道大学電気工学科助手.講師,助教授を経て1990年同教授.2004年同大学情報科学研究科教授,現在に至る.1985年〜1986年IBMワトソン研究所客員研究員.1996年〜2014年北海道大学知識メディアラボラトリ長.1998年〜2000年京都大学情報学研究科併任教授.2004年より国立情報学研究所客員教授.2013年よりJST CRESTプログラム「ビッグデータ応用」研究領域研究総括.工学博士(東京大学).データベース理論,データベースマシン,知識メディア,知識フェデレーション,探索的可視化分析などの研究に従事.
パネリスト:東野 輝夫 (大阪大学 大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 教授)
【略歴】1986年大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了.工博.同年同大学助手.2002年より大阪大学大学院情報科学研究科・情報ネットワーク学専攻・教授.モバイル・ユビキタスコンピューティングに関する研究に従事.日本学術会議会員.本会副会長.日本学術振興会・学術システム研究センター・主任研究員(2013-2016),本会理事,監事などを歴任.
パネリスト:谷口 倫一郎 (九州大学 大学院システム情報科学研究院 教授)
【略歴】1978年九州大学情報工学科卒業.1980年同大学院修士課程修了.九州大学大学院総合理工学研究科助手,助教授を経て1996年より現職.2011〜2013年度同研究院長.2014年度より九州大学情報基盤研究開発センター長を併任.コンピュータビジョン,サイバーフィジカルシステム等の研究に従事.本会コンピュータビジョンとイメージメディア研究会主査,理事等を歴任.1993年本会論文賞,1995年本会坂井記念特別賞等を受賞.2013年本会フェロー.
パネリスト:武田 一哉 (名古屋大学大学院 未来社会創造機構/情報科学研究科 教授)
【略歴】1985年名古屋大学工学研究科博士(前期)課程修了(都市環境騒音の評価法の研究).同年,国際電信電話(現KDDI)入社.1986年,ATR自動翻訳電話研究所出向(音声データベース,音声合成の研究).1988-89年,マサチューセッツ工科大滞在研究員.1990年,国際電信電話研究所復職(音声認識システムの研究).1995年,名古屋大学助教授(音響・音声信号処理の教育研究).2003年,名古屋大学教授(行動情報処理の教育研究).