情報処理学会 第78回全国大会 会期:2016年3月10日~12日 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス 情報処理学会 第78回全国大会 会期:2016年3月10日~12日 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス
特別講演 IPSJ-ONE
日時:3月12日(土)15:30-17:30
会場:特別会場(藤原洋記念ホール)
【セッション概要】情報処理学会では,3領域38の研究会で活動が行われ約2万人の会員が在籍しているが,異なる研究会や研究領域あるいは情報処理学会全体でどのような研究がなされ注目を集めているのかを知る機会は少ない.本企画では,その多様な研究分野を垣根なく俯瞰し,すぐれた研究を自らの言葉で語れるプレゼン力の高い,若手を中心とした研究者を,希望する研究会が主体的に推薦する形式で募集し,応募の中から招待講演者を厳選する.この講演会はこうした特別な招待講演者達による「見逃せない講演会」であり,持ち時間1人数分で次々に登壇していく.さらに講演内容は専門家のみならず,高校生,学部生,他分野での聴衆が理解しやすいように内容も配慮し,招待講演者を選定する.異分野間の融合やそれぞれの研究の発展に役立て,さらなる情報処理の可能性を社会に問い,新たなコラボレーションや展開を作り出していく場とするため,マスメディア・ネットメディア,動画中継,ステージ演出を含め,講演だけで終わることのない情報発信やネットワーキングの場として多数の演出やアウトリーチを予定している.
司会:落合 陽一 (IPSJ-ONE企画・実施委員会 委員長/筑波大学図書館情報メディア系 助教)
【略歴】筑波大学助教,デジタルネイチャー研究室主宰,メディアアーティスト.メディアアーティスト,筑波大学助教.デジタルネイチャー研究室主宰.巷では現代の魔法使いと呼ばれている.筑波大でメディア芸術を学んだ後,東京大学を短縮修了(飛び級)して博士号を取得.2015年5月より筑波大学助教,落合陽一研究室を主宰している.経産省より未踏スーパークリエータ,総務省の異能vationに選ばれた.研究論文はSIGGRAPHなどのCS分野の最難関会議・論文誌に採録された.作品はSIGGRAPH Art Galleryを始めとして様々な場所で展示され,Leonardo誌の表紙を飾った.LAVAL VIRTUALよりグランプリ&部門賞,ACEより最優秀論文賞,他にもACM UIST, EUROHAPTICSでも受賞経験があり,グッドデザイン賞,経済産業省Innovative Technologies賞&特別賞,日本マニフェスト大賞やロハスデザイン大賞,TIME誌とFortune誌によるWorld Technology Awardなどでも入賞やノミネートされ,他にも受賞多数.プロジェクトは,CGCHANNELが選ぶ2014年のベストSIGGRAPH論文や,NewScientist誌が選ぶ2012年のベストビデオ等に選ばれている.応用物理,計算機科学,アートコンテクストを融合させた作品制作・研究に従事している.BBC,CNN,ディスカバリーチャンネル,AP,ロイター,デイリーメール紙,テレグラフ紙,ロシア国営放送,フランス国営放送,などメディア出演多数.最近では執筆,コメンテーターなどバラエティやラジオ番組などにも出演し活動の幅を広げている.TED World Talent SearchやTEDxTokyoではスピーカーを努め好評を博した.2015年World Technology AwardのIT Hardware部門を受賞.
司会:竹川 佳成 (IPSJ-ONE企画・実施委員会 副委員長/公立はこだて未来大学 システム情報科学部 准教授)
【略歴】2007年大阪大学院情報科学研究科博士課程修了.同年より神戸大学自然科学系先端融合研究環重点研究部助教.2012年より公立はこだて未来大学システム情報科学部助教.2014年より同大学システム情報科学部准教授,現在に至る.2015年IPSJ-ONE(音楽情報科学研究会推薦)にて「もしもピアノが弾けたなら〜理想のピアノ学習支援システムを目指して〜」という題目で講演し,ピアノに対するマッドな愛とその研究に関する発表が好評を博し,2016年IPSJ-ONEの司会者として抜擢される.2011年にはMIT Media Lab.にて Assistant Visiting Professorを兼務.博士(情報科学).2013年度情報処理学会 山下記念研究賞(音楽情報科学研究会およびエンタテインメントコンピューティング研究会)をダブル受賞する.同年度に2つの異なる研究会から山下記念研究賞を受賞することは初の事例.その他受賞多数.

[研究会推薦]

登壇順は現在調整中・下記のプログラムの記載は五十音順.
研究会推薦:招待講演(1) コンピュータに気持ちよく操られる社会へ向けて
[モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム研究会]
荒川 豊 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 准教授)
【講演概要】情報技術の進展により,人の行動をセンシングしたり,推定する研究が盛んに行われ,状況に応じて適切なサービスが提供される便利な社会が現実のものとなりつつあります.しかし,この先はどうなるのでしょうか?本発表では,この人と情報技術の連携が成熟した先にあるべき未来の「社会」に関して,これから始まる研究について紹介します.具体的には,人間の行動を情報技術によって変化させ,変化によって生み出されるエネルギーを社会の維持と発展の原動力にするというものです.情報技術によって,いかにして行動を変化させ,その行動の変化をどう社会システムの運営に活かすのか,という難しい課題ですが,その先にはコンピュータに気持ちよく操られるシンギュラリティな社会が待っているかもしれません.
【略歴】2006年慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了.博士(工学).2013年3月より奈良先端科学技術大学院大学准教授.主として,センサシステム,ユビキタスコンピューティングに関する研究に従事. 2011年情報処理学会山下記念研究賞,2014年同学会長尾真記念特別賞,受賞.
 
研究会推薦:招待講演(2) 情報技術でスポーツを支援する
[マルチメディア通信と分散処理研究会]
内山 彰 (大阪大学 大学院情報科学研究科 助教)
【講演概要】Apple Watch, Fitbit, SmartBand—ヘルスケアやスポーツにIT技術を応用する機運が世界的に高まっています.これらのウェアラブルデバイスやカメラなど, 様々なセンサを活用してスポーツ選手の競技力向上,障害予防,競技への復帰を支援し,ひいてはメダルを増やすことができないでしょうか?その第一歩として,私はウェアラブルセンサや環境センサから得られる情報を組み合わせて身体深部の体温を推定する方法を考案しました.そして,これをきっかけに関わることになった,工学,スポーツ医学などの様々な分野連携によるスポーツ支援研究プロジェクトを紹介します.
【略歴】2003年 大阪大学基礎工学部を退学し,同大学院情報科学研究科博士前期課程へ入学.2008年 大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程 修了.博士(情報科学).日本学術振興会特別研究員PD,イリノイ大学客員研究員,大阪大学大学院情報科学研究科 特任助教を経て,2013年より現職.モバイルセンシングに興味を持ち,人の行動センシングやモバイルヘルスケアに関する研究に従事.
 
研究会推薦:招待講演(3) アナロジーによる検索
[データベースシステム研究会]
加藤 誠 (京都大学 大学院情報学研究科 特定助教)
【講演概要】「AppleのiPodはMicrosoftの何に当たるか」,「京都の和食屋『おぐらや』は東京のどの店に当たるか」,「X JAPANと宇多田ヒカルを足して2で割ったような歌手は誰か」.これらの疑問に答えることのできるアナロジーによる検索システムについて紹介します.アナロジーによる検索では,ユーザが既知の分野からいくつかの要素を選択することによって,未知の分野における情報を検索できるようになります.このような検索を実現するための要素技術として,Webマイニング,トピックモデル,Wikipedia解析,転移学習などに基づく手法を簡単に説明し,特に飲食店のアナロジーによる検索のために実施した実験の結果をご紹介します.
【略歴】2008年京都大学工学部情報学科卒業.2009年同大学院情報学研究科社会情報学専攻修士課程修了.2012年同専攻博士後期課程修了.博士(情報学).2012年より京都大学大学院情報学研究科特定助教.情報検索,特に対話的情報検索に関する研究に従事.
 
研究会推薦:招待講演(4) コンピュータを変幻自在の道具にするためのプログラミング環境技術
[ヒューマンコンピュータインタラクション研究会]
加藤 淳 (産業技術総合研究所 情報技術研究部門メディアインタラクション研究グループ 研究員)
【講演概要】スマートフォンなどの普及に伴い,コンピュータは誰にとっても欠かせないものとなりました.そんなコンピュータを思い通りに動かして,変幻自在の道具にできる手段が「プログラミング」で,今や現代人の教養と言われるほど注目されています.本講演では,プログラミングのために利用される統合開発環境(IDE)が,作りたいプログラムに応じて様々なユーザインタフェースを必要とすることを示します.ロボットの制御(Picode)や,画像処理(DejaVu),果ては楽曲動画制作(TextAlive)やIoTデバイス開発(f3.js)まで,私が研究開発してきたIDEを紹介し,プログラミングの未来について考えます.変幻自在の道具を作れる道具もまた,変幻自在なのです.
【略歴】2014年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.博士(情報理工学).日本学術振興会特別研究員(DC1), Microsoft,Adobeなど海外企業研究所での研究インターンを経て,現在,産業技術総合研究所研究員.2012年度Microsoft Research Asia Fellowship,ACM CHI 2013/2015 Best Paper Honorable Mentionなど受賞.プログラム,すなわちインタラクティブなコンテンツを直感的に制作できるユーザインタフェースの研究に従事.
 
研究会推薦:招待講演(5) ランダムとは何か
[アルゴリズム研究会]
河村 彰星 (東京大学 総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系 講師)
【講演概要】乱数は色々な計算に使われるが,実際に用いるのは何らかの規則で作られた擬似乱数でしかない.真にランダムな乱数など作れるのか,というのは難しい問だが,計算理論では「作れるか」を問うよりも,まずは「使う」側の立場でランダム性を説明した.つまりランダムさとは「先を予測できない」「特徴を見破れない」という概念なのだから,誰にとってそうなのかという観察者の情報処理能力(例えば計算時間の制約)を想定して初めて意味をなすというのである.この「計算」と「ランダム」の関係を様々な捉え方で分析する研究の一端を紹介する.
【略歴】2011年トロント大学計算機科学部博士課程修了.東京大学情報理工学系研究科助教を経て2015年より東京大学総合文化研究科講師.専門は計算量理論,数理論理学,情報数理,アルゴリズム工学.
 
研究会推薦:招待講演(6) 想定外のエンタテインメントを「発掘」する
[エンタテインメントコンピューティング研究会]
栗原 一貴 (津田塾大学 情報科学科 准教授)
【講演概要】エンタテインメントというと,クリエータが「作る」ことなしには始まらない,とお考えの方もいらっしゃるでしょう.しかし既に莫大な情報にあふれた現代では,意外なところから新しいエンタテインメントを「発掘」することもできるのです.本発表ではそんな事例として,画像認識技術を用いてNASAの公開している地球外天体の衛星写真から人の顔に見える地形を自動的に探すプロジェクトの成果や,テトリスで遊ぶだけで3Dプリンタで印刷するための三次元モデルのデザインが行えるツールの紹介をします.
【略歴】津田塾大学学芸学部情報科学科准教授,博士(情報理工学).日本学術振興会特別研究員(DC2),(独)産業技術総合研究所主任研究員,東京大学大学総合教育研究センター助教等を経て2014年4月より現職.ヒューマンコンピュータインタラクション,およびエンタテインメントコンピューティング分野において物議を醸すシステム開発研究を得意とする.2012年イグノーベル賞,第12回・第18回日本ソフトウェア科学会論文賞,WISS'11論文賞・発表賞等受賞.第25回暗黒星雲賞次点入賞.宇都宮愉快市民.
 
研究会推薦:招待講演(7) 歴史学の情報?Part2〜人文科学者が行う情報処理〜
[人文科学とコンピュータ研究会]
後藤 真 (国立歴史民俗博物館 研究部 准教授)
【講演概要】「歴史学にはどのような情報が存在しているのか,それらはなぜ歴史学では必要とされているのか,1つの歴史資料からどのような情報が生成されるか」前回,ある講演者が話をした.歴史の一つのことを解き明かすには,大量の情報をつなぎ合わせて,分析・処理している.そのつなぐ・分析するという部分に,情報技術が多く入り込んできている.今回は,人文科学側の研究者が情報処理学会で培った研究を活かし,人文科学の方法論を定式化して情報技術で処理していく,その方法を具体的な史料を示しながら見せていきたい.
【略歴】博士(文学).2007年,大阪市立大学大学院後期博士課程修了.日本学術振興会特別研究員(PD,)花園大学文化遺産学科専任講師,人間文化研究機構本部特任助教を経て,現在の国立歴史民俗博物館研究部准教授.2003年山下記念研究賞受賞.専門は人文情報学・情報歴史学.日本古代の文書に関する情報発見手法の研究や,博物館の歴史的情報の発見手法の研究を行っている.正倉院文書研究会・木簡学会等の会員でもある.
 
研究会推薦:招待講演(8) BitVisor: OSを手玉に取る仮想化ソフトウェア
[システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会]
品川 高廣 (東京大学 情報基盤センター情報メディア教育研究部門 准教授)
【講演概要】近年のPCやMacでは,OSとしてWindowsやOS Xなど欧米勢が作った非常に巨大で複雑なソフトウェアが使われています.これらは複雑すぎてセキュリティの維持が困難になっているほか,中身をいじって新しい機能を追加することが容易ではありません.BitVisorは,OSとハードウェアの間に入り込んでセキュリティやシステム管理など新しい機能を追加できる国産のオープンソース仮想化ソフトウェアです.準パススルー型という新しいアーキテクチャを研究開発することにより,小型軽量化と高機能化を両立させ,高いセキュリティや開発効率の向上,WindowsやOS Xが安定動作する高い実用性を実現します.
【略歴】2003年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻博士課程修了.博士(理学).東京農工大学助手,筑波大学講師を経て,2011年から東京大学情報基盤センター准教授.オペレーティング・システムや仮想化技術,セキュアコンピューティングなどのシステムソフトウェアに関する研究に従事.情報処理学会1999年度論文賞,2002年度山下記念研究賞などを授賞.
 
研究会推薦:招待講演(9) 秘匿ゲノム検索
[バイオ情報学研究会]
清水 佳奈 (産業技術総合研究所 創薬基盤研究部門 主任研究員)
【講演概要】近年,ゲノム配列を決定する技術が大幅に向上し,個人のゲノムデータを低コストで取得することが可能になった.個人ゲノムの情報解析は医学,生物学における様々な問題の解決に役立つと期待されているが,現状ではプライバシ保護の問題があるため,各研究拠点で収集したデータを流通させることが難しく,潜在的には豊富に存在するデータを十分に活用できない問題がある.本講演では,我々がこれまでに開発を進めてきた,ゲノムデータの中身を秘匿したまま情報検索を行う「秘匿ゲノム検索」を概説する.また,秘匿ゲノム検索をゲノムバンクで応用するための取り組みについても紹介する.
【略歴】2006年早稲田大学より博士(工学)取得.同年,産業技術総合研究所に入所.2013~2015年 メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター客員研究員.CSS2013, CSS2014最優秀デモンストレーション賞,IIBMP2015研究奨励賞,最優秀口頭発表賞受賞.バイオインフォマティクスの研究に従事.最近は高速シークエンシングデータの解析アルゴリズムの開発,ゲノム配列の秘匿検索等に興味を持っている.
 
研究会推薦:招待講演(10) 「第3のコンピュータ」をソフトウェア志向で使いこなすシステム設計環境SWORDSフレームワーク
[システムとLSIの設計技術研究会]
高瀬 英希 (京都大学 大学院情報学研究科 助教)
【講演概要】高度情報化が進む我々の生活を支えるコンピューティングデバイスとして,従来のプロセッサやASIC(特定用途向けハードウェア)に次ぐ「第3のコンピュータ」であるFPGAの活用が進んでいる.FPGAはハードウェア設計言語によって任意の論理機能が実現できる再構成可能デバイスであり,性能や電力効率の面で利点がある.近年では,プロセッサとFPGAを1チップに集積したプログラマブルSoCと呼ばれるデバイスも注目されている.講演者は,組込みリアルタイムシステムの効率的な設計を支援するSWORDS(SoftWare ORiented Design & Synthesis)フレームワークの開発を進めている.プログラマブルSoCを採用するシステムの設計者は,本フレームワークへの入力として,ソフトウェア向けのプログラミング言語によって記述されたシステム設計と構成情報を与える.ソフトウェアの機能の一部は,与えられた構成情報に応じて切り分けられ, FPGA部分で実行可能なハードウェアモジュールとして合成される.さらに,プロセッサ−FPGA間の通信を担うインタフェースモジュールも自動的に生成される.研究成果は,設計生産性の向上に寄与するだけでなく,FPGAの利点を活かした情報システムの高品質化にも貢献する.
【略歴】2012年3月名古屋大学大学院情報科学研究科博士課程後期課程修了,博士(情報科学)取得.2012年4月より京都大学大学院情報学研究科助教,現在に至る.組込みリアルタイムシステムの消費エネルギー最適化技術,システムレベル設計手法,システムソフトウェアなどに関する研究に従事.2013年より組込み分野の学生・若手技術者を対象とした短期合宿型教育実習LED-Campを企画運営,LED-Camp4は2016年8月下旬に開催予定.
 
研究会推薦:招待講演(11) 身体の共有
[ユビキタスコンピューティングシステム研究会]
玉城 絵美 (H2L, Inc. 創業者/JST さきがけ 研究員/早稲田大学 人間科学学術院 助教)
【講演概要】本講演では,手の動作を共有する装置UnlimitedHandの応用開発と研究の一つを紹介します.SNSや動画配信サイトでは,多数の体験の情報が共有されています.しかし,動画と言語による共有が主になっているため,実際に体験した投稿者本人のみが楽しく,同じ体験ができない閲覧者によっては羨ましさから精神的な負担になる場合もあります.つまり,投稿者にその意図がなくとも,SNSや動画配信サイトは,幸せやリア充であることのアピールの場になってしまうことがあります.そこで,HMDとUnlimitedHandを用いることによって,視覚,聴覚と手の身体感覚の情報,つまり身体の出来るかぎりの情報を共有し,閲覧者が出来るだけ投稿者に近い身体の体験をする応用開発と研究が進められています.この応用開発と研究により閲覧者も幸せやリア充になった風になり,精神的な負担を軽減するかもしれません.※もしかしたら余計に精神的な負担になるかもしれません.
【略歴】VR(Virtual Reality)とAR(Augmented Reality)内でのコンピュータからヒトに触感や身体感覚を伝達する研究とその普及を目指している.2011年コンピュータがヒトに手の動作を制御する装置PossessedHandを発表し,多数の学会で注目される. PossessedHandは,CNNやABCで報道され,米Time誌が選ぶ50の発明に選出される.同年,東京大学大学院にて博士号取得し,東京大学総長賞受賞と同時に総代をつとめる.研究用装置を研究者に提供し消費者へ共有するため,2012年にH2L, Incを創業した. 2013年早稲田大学に移籍し,研究活動を再開した.2015年日経ウーマン ウーマンオブザイヤー準大賞を受賞,同年,KickStarterにてVRゲームのキャラクターになりきってゲーム内の物体の触感を感じるためのデバイスUnlimitedHandを発表し,60日の支援期間中22時間で目標額を達成し注目を集めている.
 
研究会推薦:招待講演(12) プログラムを説明するプログラム
[自然言語処理研究会]
Graham Neubig (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 助教)
【講演概要】プログラミングは難しい.その理由の一つとして,プログラミング言語(CやPythonなど)が分からなければ,プログラムを見てもその動きが分からないことが挙げられる.例えば,「if x % 2 == 0」は「もしxが偶数であれば」という意味だが,必ずしもプログラミング初心者にはこれが分かるとは限らない.この問題を解決するために,我々はプログラムから,コードの意味を言葉で説明する文を自動生成する研究に取り組んでいる.具体的には,プログラムとそれを説明する文章から,統計モデルを学習する枠組みで,データさえあればどのプログラミング言語でも説明できるようにする手法である.本発表では,このような「プログラムを説明するプログラム」について紹介する.
【略歴】2001年8月〜2005年5月イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 工学部計算機科学専攻 学士課程卒.2005年9月〜2006年7月但馬農業高等学校外国語指導助手.2006年8月〜2008年3月兵庫県庁国際交流員.2008年4月〜2010年3月京都大学情報学研究科 知能情報学専攻修士課程.2010年4月〜2012年3月京都大学情報学研究科 知能情報学専攻博士後期課程.2012年4月〜現在 奈良先端科学技術大学院大学(NAIST) 助教.
 
研究会推薦:招待講演(13) パーソナルデータの安全な利活用を支えるプライバシー保護技術
[コンピュータセキュリティ研究会]
濱田 浩気 (日本電信電話株式会社 NTTセキュアプラットフォーム研究所 研究員)
【講演概要】近年個人に関する情報,いわゆる「パーソナルデータ」の活用が盛んになってきています.活用の対象となるパーソナルデータは,より個人のプライバシーに関わる情報へと拡大しており,これまでよりも有益な知見の獲得が期待される一方で,プライバシー侵害への懸念が大きくなってきています.本発表では,この懸念を解消して安全なデータ活用を実現する「プライバシー保護技術」の中から,データからプライバシー侵害につながる情報を削減する「匿名化技術」と,データを誰一人見ないまま処理することでプライバシーを守る「秘密計算技術」を紹介します.
【略歴】2007年京都大学工学部情報学科卒業.2009年同大学大学院情報学研究科修士課程修了.同年日本電信電話(株)入社.以来,プライバシー保護技術の研究に従事.現在,同社研究員.2011年SCIS論文賞,2011年度情報処理学会論文賞,2012年・2014年CSS論文賞,2013年度山下記念研究賞受賞.
 
研究会推薦:招待講演(14) 人工知能はWEBサーバーの暗闇を救う
[インターネットと運用技術研究会]
松本 亮介 (GMOペパボ株式会社 技術部技術基盤チーム シニア・プリンシパルエンジニア)
【講演概要】Webサービスの高度化に伴い,システムは複雑になり運用コストが増加している.そのため,今後,人の手を介さずにWebサービスを人工知能のアプローチによって自動制御したいという要求がある.それによって,究極的に人々はシステムの管理から開放され,技術革新に向けたアイデアを考えるための時間が増えたり,自分の時間や家族と過ごす時間が増えることでストレスが減少し,さらに過ごしやすい世界を支えるWebサービス技術発展に寄与できる.Webサービスを支えるサーバ設定のプログラミング言語化や,動的なリソース制御といった我々の研究の最新情報を紹介する.
【略歴】2008年3月学部卒業後,ホスティング系企業で3年間大規模ホスティングサービスの運用・開発に従事.企業での経験が認められ,2012年4月より京都大学大学院情報学研究科において,修士課程を飛ばして博士課程から入学.OS・Middleware・HTTPに関する研究に従事.2015年4月からGMOペパボ(株)にてシニア・プリンシパルエンジニアとしてインターネット基盤技術の研究・開発を担当.2014年,第6回フクオカRuby大賞 優秀賞,第9回日本OSS奨励賞 ,2014年度 情報処理学会 山下記念研究賞, RubyPrize2014 最終ノミネート受賞.などその他受賞多数.
 
研究会推薦:招待講演(15) 人にやさしいコンピュータを創る
[グループウェアとネットワークサービス研究会]
宮田 章裕 (NTTレゾナント株式会社 スマートナビゲーション事業部 主査)
【講演概要】人がコンピュータを使いこなせない場合,人が悪いのではなくコンピュータのデザインが未熟であるという信念のもとで取り組んできた「人にやさしいコンピュータ」を2件紹介する.1つ目は,教科書をスマートフォンで撮影すると,映像教材が閲覧できるシステム「Kappan」である.上手く撮影できない子どもでも使えるよう,撮影状態が悪くても100万ページから1ページを特定できるロバスト性を実現している.QRコード等が印刷されていない既存書籍に使える点も大きな特徴である.2つ目は,貼り付けるだけで家具をインテリジェントにする「xSeal」である.このデバイスを貼り付けると,出かけるときに午後の天気を教えてくれるドアや,薬の飲み忘れを教えてくれる薬箱等を容易に実現できる.コンピュータを操作することなく,日常生活を送るだけでICTのメリットを享受できる,人にやさしいデザインである.
【略歴】NTTレゾナント(株)主査.博士(工学).日本電信電話(株)NTTサービスエボリューション研究所研究主任を経て2015年9月より現職.ヒューマンコンピュータインタラクションの研究に従事し,家庭,教育,災害などの各シーンにおいて「人にやさしいコンピュータ」の仕組みを多数開発し,事業化する.情報処理学会2007年度山下記念研究賞,2014年度・2015年度特選論文,インタラクション2010ベストペーパー賞など受賞多数.
 
研究会推薦:招待講演(16) ハードウェアを増やしてコンピュータを省エネに
[システム・アーキテクチャ研究会]
三輪 忍 (電気通信大学 大学院情報システム学研究科 准教授)
【講演概要】これまでのコンピュータ・システム設計には厳しいハードウェア資源制約が課せられていたことから,任意の処理を高いエネルギー効率で実行する,万能型のハードウェアを開発する方向で汎用コンピュータは進化してきた.しかし,数年後には,LSI製造技術の進歩によって資源制約が現在の数分の1にまで緩くなり,その結果,エネルギー制約が相対的に厳しくなると予想されている.このような緩い資源制約のもとで省エネルギーなコンピュータを実現する方法として,講演者は,特定の処理に特化したハードウェアを組み合わせてシステムを設計し,システムに搭載された複数ハードウェアをアプリケーションの実行中に切り替えながら処理する方法を研究している.本講演では,上記の研究内容を非専門家にわかりやすく解説する.
【略歴】2000年京都大学工学部情報学科卒業.2002年京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻修士課程修了.2005年京都大学大学院情報学研究科通信情報システム博士後期課程単位取得退学.博士(情報学).現在,電気通信大学大学院情報システム学研究科 准教授.コンピュータ・アーキテクチャ,高性能計算,組込みシステム等の研究に従事.2010年組込みシステムシンポジウム優秀論文賞 受賞.ACM,IEEE,電子情報通信学会,情報処理学会 各会員.
 
研究会推薦:招待講演(17) 「要は何?」:ユーザ特性に合わせたわかりやすい情報提示技術
[コンシューマ・デバイス&システム研究会]
望月 理香 (日本電信電話株式会社 サービスエボリューション研究所 研究員)
【講演概要】相手にわかりやすく物事を説明したい時,その相手にとって最もわかりやすい表現で,なるべく端的に言い表したいと思うことがあります.本研究では,このように,その人の感性や属性,状況などに合わせて情報をわかりやすく補足する技術によって,情報の理解を促進したり,人と人とのコミュニケーションをサポートすることを目指しています.具体的には,ライフログを活用した事物の『たとえ』による表現方式,異なるバックグラウンドのユーザ間の共感創出を目指す感性コミュニケーション技術,シンプルに物事を説明する『要するに何?』提示方式などの取り組みについてご紹介します.
【略歴】2009年中央大学大学院理工学研究科情報工学専攻修了.同年日本電信電話(株)入社.博士(工学).現在NTTサービスエボリューション研究所に所属,中央大学理工学研究科客員研究員.同じ対象物から誘発される感覚・感性の個人差に興味を持つ. 個人の色知覚特性に合わせた色弱補正アルゴリズムの研究,ライフログを活用した情報提示方式の研究に従事. 前者ではフジサンケイビジネスアイ第23回独創性を拓く先端技術大賞にて文部科学大臣賞受賞,後者ではLOIS研究会研究賞など受賞.
 
研究会推薦:招待講演(18) 「感動的な歌声」の可能性
[音楽情報科学研究会]
森勢 将雅 (山梨大学 大学院総合研究部 特任助教)
【講演概要】感動的な歌声の研究は難しい.上手い歌手の歌声は人を感動させ,下手な歌声は誰でも下手だと判断できる.動画共有サイトでは,明らかに合成音と知覚される歌唱でも,一部は感動的と評価されている.これらの事実は,人間の歌声であることは感動的な歌声の絶対条件ではなく,合成歌唱は合成歌唱の中で聴取者を感動させる「何か」があることを示唆する.感動的な歌声の合成は,人間の模倣ではなく感動させる「何か」を追求する困難な課題設定である.講演者は,技術開発者・楽曲制作者・聴取者を対象に,感動的な歌声の条件について調査・研究を行ってきた.本講演では,一連の活動内容について述べ,感動的な歌声の合成に挑戦する研究を紹介する.
【略歴】2008年3月和歌山大学大学院システム工学研究科博士後期課程修了.博士(工学).関西学院大学大学院理工学研究科博士研究員,立命館大学情報理工学部助教を経て,2013年2月より現職.医工融合領域による音声・聴覚の研究に従事.SNSによる緩い共同研究を新たな研究スタイルとして確立するため,ハンドルネームやP名で構成された本名すら知らないメンバーと学会発表する実験を試みている.意外にも,色々な賞を受賞する機会に恵まれた.
 
研究会推薦:招待講演(19) コンピュータと物理をより近くに
[グラフィクスとCAD研究会]
楽 詠灝 (Columbia University Computer Science Department Postdoctoral Research Scientist)
【講演概要】実世界の物体の挙動は物理則によって支配されています.こうした挙動は複雑で,しばしば人間にとって理解・制御することが容易ではありません.コンピュータで物理現象や物理制約を賢く扱えるようになると,1)複雑な物理的挙動の予測,2)複雑な物理制約を満たす機能的人工物の設計,3)物理的タスクを実行できる賢いロボットの開発ができるようになります.本講演では,これらの研究を紹介します.
【略歴】1983年上海市生まれ.1991年来日.東京大学理学部情報科学科,同大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修了.博士(情報理工学).2011年東京大学大学院新領域創成科学研究科助教.2012年同理学部情報科学科助教兼担.2013年コロンビア大学 Postdoctoral Research Fellow(日本学術振興会海外特別研究員).2015年同大学Postdoctoral Research Scientist.物理ベースの光学・流体シミュレーション,及びデザインやファブリケーションへの応用などの研究に従事.