情報処理学会 第78回全国大会 会期:2016年3月10日~12日 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス 情報処理学会 第78回全国大会 会期:2016年3月10日~12日 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス
ポスト・ディズニー(ピクサー)のコンテンツ産業の行方 ―今後10年のコンテンツ産業を支えるメディア技術は何か―
日時:3月11日(金)9:30-12:00
会場:第1イベント会場(MMR)
【セッション概要】さまざまなコンテンツのディジタル化が進み,米国ではディズニーのCG映画に代表される巨大産業が形成され,研究機関や大学が先端的な研究を生み出し続けている.一方,日本からは独自のコンテンツ文化が世界的に認知されているにもかかわらず,コンテンツ産業が潤沢な利益を上げる仕組みとなっていない.先端ディジタル技術研究との相乗効果が少ないことはその結果でもあり,その原因かもしれない.今後10年のスパンで,日本のコンテンツ産業と技術研究者たちがどのように協業すれば,それぞれ利益と業績を上げることができるのか.そのためのキーとなるメディア技術は何か.研究者に求められるものは何か.それぞれタイプの違う企業の第一線で活躍し,研究開発者としても卓越した知見を持つパネリストを迎えて討論を行う.
司会:栗山 繁 (豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 グラフィックメディア研究室 教授)
【略歴】1987年大阪大学電子工学科修士課程修了,翌年より日本IBM東京基礎研究所,1994年より広島市立大学情報工学科助教授, 1998年より豊橋技術科学大学情報工学系助教授,2005年より同教授,現在に至る.2005年より約4年間,産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター可視化チーム長兼務,2006年より3年間,早稲田大学招聘研究員.工学博士(大阪大学).スタイルに基づくコンテンツ情報処理,ビジュアルメディアを介したデータ通信や環境演出などの研究に取り組む.
9:40-10:00 講演(1) ストーリーテリングの可能性
山森 徹 (株式会社ポリゴン・ピクチュアズ 技術部門 執行役員)
【講演概要】ディズニー/ピクサーといった海外の大手アニメーションスタジオは,緻密に計算されたストーリーテリングを軸に,圧倒的な物量とそれを表現するための技術開発を積み上げてきた.デジタル技術は無限であるとはいえども,国内では予算・スケジュール・計算力等の現実的な制限により,アニメーションに従事するアーティストは,限定された表現手法を用いてストーリーテリングを表現し,視聴者の感情をトリガーしてきた.このような環境下で培われたストーリーテリングや感情デザインが,これからのコンテンツ産業において,アニメーション以外にも活用される可能性があるのではないかと考える.本講演ではその可能性や産業の変化を,テクノロジーとあわせて考察したい.
【略歴】千葉大学工学部画像工学科卒業.CGエンジニアとしてリアルタイムCG,アニメーション,フルCG,VFX,広告など,3DCG業界の様々な分野でソフトウェア開発/エンジニアリング/テクニカルディレクションを経験し,2013年より同社の技術部門を統括.ワークフローの高度化とそれを支えるインフラ/パイプライン開発,および独自表現を実現するためのソフトウェア開発に従事.
 
10:00-10:20 講演(2) ポストピクサー時代にモルフォが目指すこと
平賀 督基 (株式会社モルフォ 代表取締役社長)
【講演概要】今までのコンテンツ文化はハリウッドを中心とした映像コンテンツ,そしてゲームやアニメーションなど比較的新しいメディアとともに発展してきている.これらは原則的に中央集権的な著作権ビジネスを基本としており,ピクサーやディズニーもその流れの中にある.これまでの映像技術の研究開発は,そうしたプロフェッショナル向けの表現をいかに実現するかを主題に行われてきた.一方で近年のテクノロジーの進歩により,誰もが写真や映像をスマフォで撮影し,クラウド上で共有することが簡単にできる世界が実現しつつある.それによって今後変化していくであろうコンテンツ制作のありかたと,テクノロジーの関わり方について述べる.
【略歴】1974年東京都生まれ.1997年に東京大学理学部情報科学科を卒業.2002年,東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻(博士課程)修了.博士(理学).2004年5月,画像処理技術の研究開発や製品開発を行う(株)モルフォを設立.モルフォの画像処理ソフトウェアは2006年6月にNEC製携帯電話端末に搭載されたのを皮切りに,国内外の携帯電話端末メーカーに幅広く採用されている.2011年7月東京証券取引所マザーズ市場に上場.
 
10:20-10:40 講演(3) 世界レベルのコンテンツ制作を実現するために
清水 亮 (株式会社UEI 代表取締役社長兼CEO)
【講演概要】コンテンツ大国と言われる日本だが,まだまだ海外での活躍の場は限定的というのが現状です.UEIはCVOとして映画監督の樋口真嗣を擁し,傘下にあった研究所UEIリサーチはコンピュータグラフィックス分野の世界的権威である西田友是を擁しており,現在ドワンゴCGIプロジェクトとしてCG人材を広く募集しています.ポスト・ディズニー映画を考えることは,ポスト・エンターテインメントを考えることと同じくらい重要度の高いテーマと言えます.いま我が国のコンテンツ制作は何が弱いのか,そして我々は何に注力していくべきかを皆様と一緒に考えさせていただきたいと思います.
【略歴】1976年新潟県長岡市産まれ.電気通信大学在学中に家庭用ゲーム開発やゲーム技術動向の研究・教育に携わり,米MicrosoftでSDK開発に携わる.1998年に大学を中退し,ドワンゴでエグゼクティブゲームディレクターとして携帯電話事業を立ち上げる.1999年ゲーム技術交流会CEDEC設立に関わった後,2002年に渡米.2003年より現職.2012年に映画監督の樋口真嗣をチーフ・ビジョナリー・オフィサーとして招聘.2013年に東京大学名誉教授の西田友是を招聘し自社内にUEIリサーチ設立.2015年にUEIリサーチを(株)ドワンゴに移管し,UEIリサーチの設立者として自身も(株)ドワンゴ社内でCGIプロジェクトを率いる.
 
10:40-11:00 講演(4) 10年後のコンテンツ産業を越えるもの
安生 健一 (株式会社オー・エル・エム・デジタル 取締役・R&Dスーパーバイザー)
【講演概要】映画やテレビ,ゲームにみられる昨今のCG映像の隆盛は,1980年代に始まった Pixarの地道な努力の結晶である.一方1980年代の日本のCG技術は,要素技術と してはそれなりの水準であったが,当時の日本では映画産業よりも機械系CADや 自動車産業からの高い期待には応えられなかった.現在のCG技術は成熟したよう に見え,またVRやARなどの発展や大衆化によるデジタル技術の応用分野拡大が世 界中で進んでいる.本講演は,もはや旧来のコンテンツ産業というくくりには収 まりにくい,ユニークなデジタル産業に向かう徴候を紹介しつつ,将来の技術や 技術者の役割について言及したい.
【略歴】2000年に本格的研究開発部門を立ち上げ,デジタル映像制作に関する基礎研究や 実用化まで精力的に推進している.国内外の研究者・技術者との「使える」技術 開発のコラボレーションや,SIGGRAPHを始めとするCG国際会議への貢献も継続している. SIGGRAPH Computer Animation Festival審査員(2014, 2015),ACM Digital Production Symposium(DigiPro) 創設(2012),CEDECアドバイザリー ボード(2009-2014).平成26年度文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門).
 
11:00-12:00 パネル討論 ポスト・ディズニー(ピクサー)のコンテンツ産業の行方 ―今後10年のコンテンツ産業を支えるメディア技術は何か―
【討論概要】画像・映像コンテンツの制作環境に関連する技術開発から起業した方々をパネリストに迎えて,コンテンツ産業の今後の方向性や技術トレンドを予測してもらうと同時に,その将来に備えて研究開発者に求められているスキルや発想を,開発現場の視点から鋭く指摘していただきます.また,コンピュータグラフィックスや画像・映像の技術にとどまらず,コンテンツ産業の将来像を人工知能,IoT,ビッグデータ,脳科学などの様々な学術的視点からも探っていきます.さらに,企業と大学との共同研究の経験から得られた,産学連携を成功させるための秘訣や行動規範,および研究者としての心構えなどに関しても意見を述べてもらい,次世代のコンテンツ産業の研究開発の協業の仕組みについて,その現状と課題を深く掘り下げながら討論します.
パネル司会:栗山 繁 (豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 グラフィックメディア研究室 教授)
【略歴】1987年大阪大学電子工学科修士課程修了,翌年より日本IBM東京基礎研究所,1994年より広島市立大学情報工学科助教授, 1998年より豊橋技術科学大学情報工学系助教授,2005年より同教授,現在に至る.2005年より約4年間,産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター可視化チーム長兼務,2006年より3年間,早稲田大学招聘研究員.工学博士(大阪大学).スタイルに基づくコンテンツ情報処理,ビジュアルメディアを介したデータ通信や環境演出などの研究に取り組む.
パネリスト:山森 徹 (株式会社ポリゴン・ピクチュアズ 技術部門 執行役員)
【略歴】千葉大学工学部画像工学科卒業.CGエンジニアとしてリアルタイムCG,アニメーション,フルCG,VFX,広告など,3DCG業界の様々な分野でソフトウェア開発 / エンジニアリング / テクニカルディレクションを経験し,2013年より同社の技術部門を統括.ワークフローの高度化とそれを支えるインフラ/パイプライン開発,および独自表現を実現するためのソフトウェア開発に従事.
パネリスト:平賀 督基 (株式会社モルフォ 代表取締役社長)
【略歴】1974年東京都生まれ.1997年に東京大学理学部情報科学科を卒業.2002年,東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻(博士課程)修了.博士(理学).2004年5月,画像処理技術の研究開発や製品開発を行う(株)モルフォを設立.モルフォの画像処理ソフトウェアは2006年6月にNEC製携帯電話端末に搭載されたのを皮切りに,国内外の携帯電話端末メーカーに幅広く採用されている.2011年7月東京証券取引所マザーズ市場に上場.
パネリスト:清水 亮 (株式会社UEI 代表取締役社長兼CEO)
【略歴】1976年新潟県長岡市産まれ.電気通信大学在学中に家庭用ゲーム開発やゲーム技術動向の研究・教育に携わり,米MicrosoftでSDK開発に携わる.98年に大学を中退し,ドワンゴでエグゼクティブゲームディレクターとして携帯電話事業を立ち上げる.99年ゲーム技術交流会CEDEC設立に関わった後,02年に渡米.03年より現職.12年に映画監督の樋口真嗣をチーフ・ビジョナリー・オフィサーとして招聘.13年に東京大学名誉教授の西田友是を招聘し自社内にUEIリサーチ設立.15年にUEIリサーチを(株)ドワンゴに移管し,UEIリサーチの設立者として自身も(株)ドワンゴ社内でCGIプロジェクトを率いる.
パネリスト:安生 健一 (株式会社オー・エル・エム・デジタル 取締役・R&Dスーパーバイザー)
【略歴】2000年に本格的研究開発部門を立ち上げ,デジタル映像制作に関する基礎研究や 実用化まで精力的に推進している.国内外の研究者・技術者との「使える」技術 開発のコラボレーションや,SIGGRAPHを始めとするCG国際会議への貢献も継続している. SIGGRAPH Computer Animation Festival審査員(2014, 2015),ACM Digital Production Symposium(DigiPro) 創設(2012),CEDECアドバイザリー ボード(2009-2014).平成26年度文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門).