情報処理学会 第78回全国大会 会期:2016年3月10日~12日 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス 情報処理学会 第78回全国大会 会期:2016年3月10日~12日 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス
〜コンピュータパイオニアが語る〜「私の詩と真実」
日時:3月10日(木)10:00-12:00
会場:第2イベント会場(11-31)
【セッション概要】情報処理学会歴史特別委員会ではオーラルヒストリーのインタビューを進めているが,大先輩のお話は毎回大変示唆に富み印象的なので,これを広く会員の方々,特に若い世代の会員に直接お聞かせできないものかと検討してきた.そして海外の事例なども参考にし,コンピュータパイオニアあるいは情報処理学会会長経験者,またはそれらに相当する経歴の大先輩をお招きして,若い頃の研究生活の思い出や今の若い世代に伝えたい経験談などをお話いただくシンポジウムを企画した.なお本シンポジウムは第70回大会から開催しており今回が第9回目となる.
司会:浦城 恒雄 (東京工科大学 名誉教授)
【略歴】1959年東京大学理学部物理学科卒業.1991年日立製作所研究開発推進本部長.1995年同所技師長.1999年東京工科大学教授.2007年同大名誉教授.
10:00-11:00 講演(1) 認知科学・人工知能研究の詩と真実
安西 祐一郎 (独立行政法人日本学術振興会 理事長)
【講演概要】今でいう認知科学と人工知能の研究を独力で始めたのは,1974年,今回の全国大会が開催される慶應義塾矢上キャンパスに助手として勤務していたときのことである.谷を挟んで向う側の日吉キャンパスにあったUNIVAC 1106に,矢上のテレタイプ端末から徹夜でアクセスする日々.あれから40年,今も世界をリードするカーネギーメロン大学や北海道大学などでの経験を含め,多くの共同研究者,学生たちとともに研究を進めてきた.講演では,その40年間にわたる研究の背後にある「詩と真実」を語ろうと思う.現在の人工知能ブームは,私の「詩と真実」から見て,どう捉えればよいのだろうか?
【略歴】1974年慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了.カーネギーメロン大学心理学科客員助教授,北海道大学文学部助教授,慶應義塾大学理工学部教授など.慶應義塾大学理工学部長(1993-2001),慶應義塾長(2001-09).現在(独)日本学術振興会理事長,慶應義塾学事顧問,科学技術・学術審議会委員.情報処理学会会長,日本認知科学会会長,中央教育審議会会長など歴任.
 
11:00-12:00 講演(2) 社会の基礎としてのコミュニケーションに何を求めるのか
齊藤 忠夫 (東京大学 名誉教授)
【講演概要】自分で考えたことを記憶し,考えを他人に伝え,コミュニケーションする能力を持つ生物は人類しかいない.コミュニケーションの基礎には社会を形成する信頼関係がある.その手段は声から文字に発展し時間的,地理的な範囲を広げた.手段が進歩すれば,同時に信頼関係の形成を広げる努力が重要である.文字によるコミュニケーションは紀元前3500年のシュメール時代に遡ることかできるが,電気技術がコミュニケーションを支援できるようになったのは,200年の歴史しかない.技術者はこの200年の間技術を発展させ,世界的規模の新しい社会を作る努力で成果を上げてきた.しかし,その前提となる信頼関係の形成についての考え方は昔の声によるコミュニケーションの時代から出ていない.近年注目されている情報犯罪事件やセキュリティー事件も,発展した技術と,それに対応できない社会の問題である.社会問題の中には技術が不十分な時代の本質を理解しない多様な規則もある.21世紀を安定に発展させるために情報技術と社会の関係について,理解を深めなければならない.それは技術を発展させて来た技術者の責務であろう.
【略歴】東京大学名誉教授,工学博士.東京大学大学院工学系研究科修了.東京大学助教授,教授,情報基盤センター長,トヨタIT開発センターCTOを歴任.初期のデジタル交換,コンピュータネットワーク,信号機をコンピュータ制御システム等の研究を行い,現在のインフラストラクチャの基本となっているものもある.1980年代以降,日本の通信事業体系の形成を支援した.電気通信審議会電気通信事業部会長を長く務め,光ブロードバンド化政策を推進した.情報システム関連では,自治体情報システムの標準を提案し,ネットワーク化推進した.郵政大臣表彰, 総務大臣表彰(04年)など受賞多数.電子情報通信学会名誉員,IEEEライフフェロー.