情報処理学会 第78回全国大会 会期:2016年3月10日~12日 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス 情報処理学会 第78回全国大会 会期:2016年3月10日~12日 会場:慶應義塾大学 矢上キャンパス
知のコンピューティング,次の一手
日時:3月11日(金)9:30-12:00
会場:第2イベント会場(11-31)
【セッション概要】科学技術振興機構(JST)が戦略事業CRESTで進めている「人間と調和した創造的協働を実現する知的情報処理システムの構築」について,CRESTの元となった戦略イニシアティブ「知のコンピューティング」の全体構想やワークショップの様子を共有した上で,進行中のプロジェクトの狙いや第二期採択チームの具体的開発内容を紹介する.最後のパネル討論では,「新しい技術の社会受容に向けた課題に,研究者はいかに立ち向かうべきか」というタイトルで,研究総括,アドバイザ,研究者による熱い議論を繰り広げる.
司会:茂木 強 (科学技術振興機構 研究開発戦略センター フェロー)
【略歴】1980年京都大学理学部卒業.同年4月三菱電機(株)入社.汎用機からミニコンのコンパイラの開発に従事.1991年米国スタンフォード大学留学.以後,情報技術総合研究所にて情報システム技術部門統括を経て,現在は(独)科学技術振興機構研究開発戦略センターにて情報科学技術分野に関する研究開発戦略策定に従事.戦略プロポーザル『知のコンピューティング』作成メンバー.2010〜11年情報処理学会理事.
9:30-9:45 講演(1) 知のコンピューティング・グランドデザイン
岩野 和生 (科学技術振興機構 上席フェロー)
【講演概要】2013年にCRDSが知のコンピューティングのコンセプトを提唱,戦略提言書を発行した.翌年文部科学省にてこれに基づいた戦略目標が策定され,JSTにてCRESTが立ち上がった.これは知のコンピューティングの全体構想からすると最初の一歩である.グランドデザインでは,知のコンピューティング全体に関する課題と施策を,情報科学だけでなく人文社会科学の観点から広く俯瞰する.
【略歴】三菱商事(株)企画業務部顧問 兼 ビジネスサービス部門顧問.1975年東京大学理学部卒業後,日本IBM入社.東京基礎研究所所長,米国ワトソン研究所,大和SW開発研究所所長,先進事業担当,未来価値創造事業担当を経て,2012年3月より三菱商事(株).科学技術振興機構 研究開発戦略センター上席フェロー.東京工業大学客員教授.情報処理学会フェロー,日本学術会議連携会員.Ph.D. (米国プリンストン大学).
 
9:45-10:00 講演(2) 倫理的・法的・社会的課題(ELSI)を考慮した人間と機械のハーモニアスなシステムとは ーCREST「人間と調和した創造的協働を実現する知的情報処理システムの構築」第2期の狙いー
萩田 紀博 (国際電気通信基礎技術研究所 所長)
【講演概要】ロボットや環境センサが人々の行動や感情を認識し,知識化してしまうとそれを受け容れる人とそうでない人が生まれてくる.この問題を解決するには,倫理的・法的・社会的課題(ELSI)な視点を考慮したシステム開発が不可欠である.2014年度から立ち上げたJST CRESTの新研究領域では,この点を考慮したシステム構築を推進している.人とハーモニアスな関係を持つ機械にはどんな機能を新たに追加する必要があるかについて,具体的な事例を用いて紹介します.
【略歴】1978年慶應義塾大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了,同年日本電信電話公社(現NTT)武蔵野電気通信研究所に入所, NTT基礎研究所,ATR 知能ロボティクス研究所所長などを経て,現職.主な研究分野は,ネットワーク ロボット,ヒューマン・ロボット・インタ ラクション,パターン認識等.工学 博士.IEEE,電子情報通信学会,情報処理学会,人工知能学会各会員,日本学術会議連携会員.
 
10:00-10:15 講演(3) エージェント技術に基づく大規模合意形成支援システムの創成
伊藤 孝行 (名古屋工業大学 大学院工学研究科 教授)
【講演概要】ネット上の大規模合意形成技術は次世代の民主主義の新しいプラットフォームであり,人類のコレクティブインテリジェンスを促進する.本研究では,エージェント技術による大規模合意形成支援システムを創成する.課題は,炎上などのネット上の大規模な議論特有の現象を防ぎながらより良い合意形成を支援することである.本研究では参加者の意見や好みをハーモニアスに取り込み,効果的に合意形成支援するエージェント技術の確立を目指す.
【略歴】名工大大学院教授.2000年同大大学院博士後期課程修了.博士(工学).JSPS特別研究員.2001年北陸先端大助教授.2003年名工大助教授.2014年名工大教授.USC,ハーバード,MIT客員研究員.最先端次世代研究開発プログラム,JSTさきがけ研究員,JST CREST,AAMAS2013 PC chair,IEEE CS TC 上級委員,IFAAMAS理事.JSPS賞,文部科学大臣表彰科学技術賞,文部科学大臣表彰若手科学者賞,日本ソフトウェア科学会論文賞,IPA未踏ソフトスーパークリエータ,本学会長尾真記念特別賞,本学会全国大会優秀賞,ACM/IEEE上級会員.
 
10:15-10:30 講演(4) 神経科学の公理的計算論と工学の構成論の融合による人工意識の構築とその実生活空間への実装
金井 良太 (株式会社アラヤ・ブレイン・イメージング 人工意識開発部門 代表取締役)
【講演概要】機械に意識を持たせることは可能だろうか?意識が脳からどのように生じるのかは未だ未解決な科学における難問ではあるが,意識という現象が脳から生じ,何らかの自然法則にしたがって生じていることは間違えがないだろう.意識の本質は脳内での情報であるが,なぜ情報が主観的に感じられる「赤の赤らしさ」といった感覚を伴うのだろうか.近年,脳科学において意識は漸く科学の対象として研究され始めたことにより,情報理論的観点からの意識に関する理論も登場してきている.特に,ジュリオ・トノーニが提唱する統合情報理論では,意識は内的に統合された情報であると提案されており,具体的に計算可能なΦ(ファイ)という意識量も提案されている.統合情報理論を元にして,現在の人工知能システムがどの程度の意識を持っているかを計量し,また意識量を高めることで,新たな人工知能システムの構築の発想を得ることが可能となってきており,その先には人工意識の構築の可能性が見え隠れしてきている.本講演では,人工意識構築を目指すCRESTプロジェクトの展望と概要を説明し,人工意識研究のもたらす社会的・経済的意義について議論する.
【略歴】京都大学理学部卒.オランダ・ユトレヒト大学で実験心理学PhD取得.カリフォルニア工科大学,ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)にて意識研究に従事し,英国サセックス大学・サックラー意識研究センターにて准教授.2015年より(株)アラヤ・ブレイン・イメージングの代表取締役として,脳科学の社会への応用と人工意識の開発に従事.文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞.著書に『個性の分かる脳科学』,『脳に刻まれたモラルの起源』,訳書に『意識の探求ー神経生物学からのアプローチ』(クリストフ・コッホ著)がある.
 
10:30-10:45 講演(5) 記号創発ロボティクスによる人間機械コラボレーション基盤の創成
長井 隆行 (電気通信大学 大学院情報理工学研究科 教授)
【講演概要】本講演では,JST CRESTで進めているプロジェクトである「記号創発ロボティクスによる人間機械コレボレーション基盤創成」の概要を紹介する.本プロジェクトは,人とロボットが意味理解を伴ったコミュニケーションに基づいて日常的なタスクを協調しながら達成する「人間機械コラボレーション」を実現する基盤技術の確立を目指している.実世界で意味理解を扱う「記号創発ロボティクス」のアプローチをコミュニケーションやビッグデータ利活用へ拡張し,ロボットが言葉や行動,環境の真の意味を自ら獲得し理解・行動するための技術を開発することが中心的な課題である.また,開発技術を搭載したロボットの実践的評価を行う.
【略歴】1993年,慶應義塾大学理工学部電気工学科卒業.1997年,同大学院博士課程修了.博士(工学).1998年より電気通信大学電子工学科助手.2003年,カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員などを経て,2014年より現職.2015年よりJST CREST研究代表者.Advanced Robotics Best Paper Award(2013年)など多数受賞.知能ロボティクスに関する研究に従事.
 
10:45-11:00 講演(6) 「知の創造とアクチュエーション」ワークショップ
茂木 強 (科学技術振興機構 研究開発戦略センター フェロー)
【講演概要】2015年10月に実施した「知のコンピューティング:知の創造とアクチュエーション」ワークショップについて報告する.ワークショップでは,予測・発見を通して新しい価値を創造するためには,知の創造とアクチュエーションに関する探求が必要不可欠であるとの認識の下,2007年1月に開催されたワークショップ「予測と発見 ~大規模情報からの『知識』獲得技術~」で得られた成果を「知のコンピューティング」の観点からリ・デザインするとともに,予測・発見を通して新しい価値を創造するための「知の創造とアクチュエーション」について深掘りする.
【略歴】1980年京都大学理学部卒業.同年4月三菱電機(株)入社.汎用機からミニコンのコンパイラの開発に従事.1991年米国スタンフォード大学留学.以後,情報技術総合研究所にて情報システム技術部門統括を経て,現在は(独)科学技術振興機構研究開発戦略センターにて情報科学技術分野に関する研究開発戦略策定に従事.戦略プロポーザル『知のコンピューティング』作成メンバー.2010〜11年情報処理学会理事.
 
11:00-12:00 パネル討論 新しい技術の社会受容に向けた課題に研究者はいかに立ち向かうべきか
【討論概要】人工知能やロボットの技術進歩と応用展開は予想以上に急進展し,社会受容を懸念する言論が欧米で活発化している.このような状況を踏まえ,知のコンピューティングのような新しい技術が,社会や人々にどのようなインパクトを与えうるか,また,どうすれば社会や人々に受け入れられてもらえるかについて,具体的な論点のケーススタディなどから討議する.
パネル司会:岩野 和生 (科学技術振興機構 上席フェロー)
【略歴】三菱商事(株)企画業務部顧問 兼 ビジネスサービス部門顧問.1975年東京大学理学部卒業後,日本IBM入社.東京基礎研究所所長,米国ワトソン研究所,大和SW開発研究所所長,先進事業担当,未来価値創造事業担当を経て,2012年3月より三菱商事(株).科学技術振興機構 研究開発戦略センター上席フェロー.東京工業大学客員教授.情報処理学会フェロー,日本学術会議連携会員.Ph.D. (米国プリンストン大学).
パネリスト:萩田 紀博 (国際電気通信基礎技術研究所 所長)
【略歴】1978年慶應義塾大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了,同年日本電信 電話公社(現NTT)武蔵野電気通信研究所に入所, NTT基礎研究所,ATR 知能ロボティクス研究所所長などを経て,現職.主な研究分野は,ネットワーク ロボット,ヒューマン・ロボット・インタ ラクション,パターン認識等.工学 博士.IEEE,電子情報通信学会,情報処理学会,人工知能学会各会員,日本学術 会議連携会員.
パネリスト:土井 美和子 (国立研究開発法人 情報通信研究機構 監事)
【略歴】1979年東京大学修士修了.1979年東芝入社以来,ヒューマンインタフェースを専門分野とし,日本語ワープロ,機械翻訳,VR,道案内サービス,ネットワークロボットの研究開発に従事.2014年より国立研究開発法人情報通信研究機構監事,(株)国際電気通信基礎技術研究所客員研究員.現在,日本学術会議会員,東工大経営協議会委員,大阪大学招へい教授などを務める.電子情報通信学会フェロー,IEEE Fellow,情報処理学会フェローなど.博士(工学).
パネリスト:小林 正啓 (花水木法律事務所 所長)
【略歴】1986年3月,東北大学法学部を卒業.1992年4月弁護士会登録(44期)し,2000年4月花水木法律事務所を創設.2014年,情報通信研究機構映像センサー使用大規模実証実験検討委員会委員,科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業領域アドバイザーに就き,現在に至る.
パネリスト:佐藤 洋一 (東京大学 生産技術研究所 教授)
【略歴】1990年東京大学工学部機械工学科卒.1997年カーネギーメロン大計算機科学部博士課程了.東京大学生産技術研究所研究機関研究員,講師,助教授,同大学大学院情報学環准教授を経て,2010年より同大学生産技術研究所教授.現在,同研究所副所長,同研究所附属ソシオグローバル情報工学研究センター長.コンピュータビジョンに関する研究に従事.2011年日本学術振興会賞,2010年,2008年,2006年電子情報通信学会論文賞,2011年情報処理学会50周年記念論文賞,2000年日本VR学会論文賞等を受賞.