情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス 情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス
さきがけ「情報環境と人」 ~研究に翼を!さきがけ研究終了報告会~
日時:3月18日(水曜日)9:30-12:00,15:20-17:50
会場:第5イベント会場(吉田南総合館 2F 共北27)
お問い合わせ先:科学技術振興機構さきがけ「情報環境と人」領域事務所
                HP http://www.human.jst.go.jp/contact/index.html
【セッション概要】平成21年にさきがけ「情報環境と人」研究領域が発足し,36課題が採択されました.今回の成果報告会では,平成21年度に採択された課題(1期生・5年型4名)と平成23年度に採択された課題(3期生・3年型10名)の14課題が研究終了につき発表致します.
司会:松岡 政治 (独立行政法人科学技術振興機構戦略研究推進部さきがけ「情報環境と人」研究領域)
9:30-9:40 開会挨拶・座長 (第一セッション) 
石田 亨 (京都大学大学院 情報学研究科 教授) さきがけ「情報環境と人」領域 研究総括
【座長】2009年に発足したさきがけ「情報環境と人」研究領域の趣旨や発表概要について紹介する.
【略歴】1978年,京都大学工学研究科修士課程修了.同年,日本電信電話公社(現NTT)入社.1993年より京都大学教授.2011年電子情報通信学会情報・システムソサイエティ会長,情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各フェロー.日本学術会議会員.さきがけ領域研究総括.人工知能,特にマルチエージェントシステムを研究.デジタルシティ,言語グリッドなど情報技術と社会をつなぐ研究プロジェクトを推進.
 
■1期生(5年型) 4名
9:40-10:00 講演(1) 長期インタラクション創発を可能とする知能化空間の設計論
尾形 哲也 (早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 教授)
【講演概要】近年,ロボット技術に関するプロジェクトの中で,実環境や人間に対して適応的な行動選択を長期に渡って実行可能な,知能化技術に注目が集まっている.本発表では,大型の神経回路モデル,特に近年,画像,音声,言語の学習で大きな注目を集めている深層学習の枠組みを,自律ロボットの行動学習に応用した我々の研究について述べる.さらに長期のインタラクションのための適応的な言語学習について,RecurrentNeural networkを利用したモデル,さらに未知の道具利用の学習モデル等についても紹介する.
【略歴】1993年早稲田大学 理工学部機械工学科卒業.日本学術振興会特別研究員,早稲田大学助手,理化学研究所脳科学総合研究センター研究員,京都大学大学院情報学研究科准教授を経て,2012年より現職.2009年よりさきがけ領域「情報環境と人」研究員兼任.ニューラルネットワークおよび人間とロボットのコミュニケーション発達に関する研究に従事.2013年日本ロボット学会理事.
 
10:00-10:20 講演(2) 触覚の時空間認知メカニズムの解明に基づく実世界情報提示
梶本 裕之 (電気通信大学大学院 情報理工学研究科 准教授)
【講演概要】身体運動計測技術が安価に入手可能となった今日,全身の運動を用いたヒューマンインタフェースが一般に普及しつつある. こうしたインタフェースは遠隔操縦からリハビリテーションまで多岐にわたる応用につながるが,運動した際に本来感じるべき運動感覚の呈示を低コストに行うことが難しく普及の妨げとなっていた.本発表はこの課題に対する新たな解決手法を複数紹介する.まずハンガー反射と名づけた皮膚圧迫によって生じる頭部回旋運動現象を身体全体へ適用することで全身の力覚知覚手段として用いる手法である.本件に関しては医療応用に関しても概略を述べる.さらに関節部への触覚提示によって身体姿勢を誤認させる手法,筋骨格内の深部感覚受容器に対する刺激によって擬似的な運動を生起させる手法についても紹介する.
【略歴】1998年東京大学工学部計数工学科卒業.2004年東京大学大学院情報理工学研究科システム情報学専攻 博士号(情報理工学)取得.2003年東京大学助手,2006年電気通信大学助教授を経て2007年より電気通信大学准教授.触覚ディスプレイ,触覚センサ, バーチャルリアリティシステムなどの研究開発に従事.外界情報を人の運動・情動につなげるインタフェース研究に主な興味を持つ.
 
10:20-10:40 講演(3) 力覚信号処理技術に基づくリハビリ支援ネットワーク
辻 俊明 (埼玉大学大学院 理工学研究科 准教授)
【講演概要】医療福祉ロボットや触覚インタフェースの実用化が進むにしたがって,視覚聴覚に次ぐメディアとして触覚・力覚技術が注目を集めている.また,クラウド化の進行は多くの人々の運動を記録・保存する運動データベースが現実味を帯びつつあることを示唆している.そこで本研究では力覚信号処理を実装したリハビリ支援機器を開発し,その訓練動作をサーバにデータベースとして保存するシステムを構築した.本講演では,さきがけ研究で開発された,運動能力の可視化,類似症例の検索,訓練効果の解析,等の新技術を紹介し,運動データの有効利用によって様々な新規サービスが創出されうることを示す.
【略歴】2006年3月慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻後期博士課程修了.同年4月東京理科大学工学部第一部機械工学科嘱託助手.現在,埼玉大学工学部電気電子システム工学科准教授.博士(工学).2006年度,2007年度ファナックFA ロボット財団論文賞等を受賞.主として力覚センシングに基づくロボット制御の研究に従事.
 
10:40-11:00 講演(4) 作業プロセスの環境依存化による作業集合知の形成
長谷川 晶一 (東京工業大学 精密工学研究所 准教授)
【講演概要】技の伝承では,指導者は,学習者を観察して必要な知識に気づき指示する.この指示を集積できれば,作業の集合知が作成できると考えられる.しかし,指示は環境と学習者の言葉の解釈に依存するため集積しにくい.本講演では,環境と学習者を固定して指示を集積するために試みている2つの方法を紹介する.調理作業について,作業環境と学習者をシミュレータ内に作り,人工言語で指示を行うことにより環境と言語を統一する試みと,スキー滑走について言語化しやすい感覚指標を提示することにより言語表現を統一する試みを紹介する.
【略歴】1997年東京工業大学工学部電気電子工学科卒業.1999年同大学大学院知能システム科学専攻修士修了.同年ソニー(株)入社.2000年東京工業大学精密工学研究所助手.2007年電気通信大学知能機械科准教授.2010年-東京工業大学精密工学研究所准教授.2004年〜2007年科学技術振興機構さきがけ「デジタルメディア作品の制作を支援する基盤技術」兼任研究員,2010年〜2015年科学技術振興機構さきがけ「情報環境と人」兼任研究員.
 
■3期生(3年型) 10名
11:00-11:20 講演(5) 集合記憶の分析および歴史文書からの知識抽出手法の開発
Adam Jatowt (京都大学大学院 情報学研究科 特定准教授)
【講演概要】Computational science is changing the way in which social scientists work. This talk will first present the results of our study on collective memory carried to investigate how the past is collectively remembered based on the evidences from different data sources: news articles, Wikipedia and Twitter. Next, I will show how computational methods can help in supporting historical analysis by using large scale text data. In particular, I will demonstrate methods for estimating temporal features of documents, portraying language evolution and for extracting historical knowledge from document archives.
【略歴】Academic career
2005年東京大学大学院情報理工学系研究科卒業.情報通信研究機構専攻研究員,京都大学大学院情報学研究科特任助手を経て,2010年より現職.2011年よりさきがけ領域「情報環境と人」研究員兼任.テキストからの時間情報に基づく情報の探索,計算機による歴史学および情報信憑性に関する研究に従事.ICADL2014, SocInfo2013 and IPRES2011のPC co-chairおよび多数の学会でPC memberを務める.
 
11:20-11:40 講演(6) 知識の自動獲得・構造化に基づく情報環と人の論理構造とリスクの分析
岡崎 直観 (東北大学大学院 情報科学研究科 准教授)
【講演概要】インターネットやモバイル通信などの情報通信技術により,一般の人がいつでも,どこでも,誰とでも繋がり,情報交換を行えるようになった.しかし,情報の受け手の情報処理能力の壁により,実際には新しい情報環境の恩恵を受けられないことが多い.本講演では,大規模なテキストからの常識的な知識の獲得と,ネット上の情報間の意味的な関係の解析技術を紹介する.さらに,2011年に発生した東日本大震災に関する応用事例を紹介する.
【略歴】2007年東京大学大学院情報理工学研究科博士課程修了.2005年英国テキストマイニングセンター・リサーチフェロー,2007年東京大学大学院情報理工学系研究科・特別研究員を経て,2011年より東北大学大学院情報科学研究科准教授.2011年~2015年,科学技術振興事業団さきがけ研究員兼任.専門は自然言語処理,テキストマイニング.
 
11:40-12:00 講演(7) インターネット環境が脳と認知機能へ与える影響の解明
金井 良太 (サセックス大学 心理学 リーダー(准教授))
【講演概要】インターネットが社会に浸透するにつれて,情報との関わり方やコミュニケーションのあり方が変化してきた.本さきがけ研究では,認知神経科学の手法を用いて,ネットの齎した情報環境の変化に伴い,人間の脳と認知機能がどのように変化しているかを研究してきた.ネットでのコミュニケーションの好みや,マルチタスクをどれほど頻繁に行っているかなど,ネットとの関わり方は個人個人で千差万別である.本研究では,そのような日常的なネットとの関わり方は,社会性や高次認知機能を司る脳部位の構造と機能の違いに反映されていることを明らかにした.また,インターネットを殆ど使っていなかった人たちが,利用を始めることで,脳がどのように変化するかの経時的変化を追跡した研究結果についても紹介する.
【略歴】2005年オランダ王国 ユトレヒト大学 実験心理学PhD取得(Cum Laude).米国 カリフォルニア工科大学,英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンにて研究員を経て,2012年以来,英国サセックス大学にて准教授.