情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス 情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス
招待講演(4)
山極 寿一(京都大学 総長)
言語以前のコミュニケーション

日時:3月18日(水曜日)14:05-15:05
会場:第1イベント会場(百周年時計台記念館 1F 百周年記念ホール)

【講演概要】現代の人間は言語なしには暮らすことができない.しかし,人類700万年の進化史で言語が登場したのはわずか10数万年前の出来事であるし,脳は60万年前にはすでに現代人の大きさに到達していた.すると,言語以前の人類はいったいどんなコミュニケーションを用いて暮らしていたのだろうか.野生の類人猿と比較すると,それを類推することができる.サルと類人猿では,共感の能力と子供の成長期間が大きく異なる.人類は類人猿の対面交渉を食の社会化と共同の子育ての中で発達させ,音楽的なコミュニケーション能力を伸ばしたと考えられる.それは人間に家族と共同体という原理の異なる社会の両立を可能にした.しかし,近年のIT化によるコミュニケーション革命は個人の価値を高め,社会的なつながりを希薄にした.それは共感能力を必要としない,サルのような個体本位の格差社会を現出させる.情報化社会の豊かなあり方を探ってみたい.

【略歴】1952年東京生まれ.京都大学理学部卒,理学博士.京都大学教授を経て2014年より京都大学総長.アフリカ各地でゴリラの行動や生態をもとに初期人類の生活を復元し,人類に特有な社会特徴の由来を探っている.著書に『家族進化論』(東京大学出版会),『ゴリラ』(東京大学出版会),『暴力はどこからきたか』(NHKブックス),『サル化する人間社会』(集英社),『ゴリラは語る』(講談社)など.