情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス 情報処理学会 第77回全国大会 会期:2015年3月17日~19日 会場:京都大学 吉田キャンパス
「次世代eラーニング研究」シンポジウム(1)
日時:3月19日(木曜日)9:30-12:00
会場:第6イベント会場(吉田南総合館 2F 共北28)
【セッション概要】次世代eラーニングの姿を捉えるため,現状を分析し,今後の進展の可能性を議論する.前半のシンポジウムは,この分野に数多くの先駆的な実績を持つ専門家による3件の講演をお願いする.まず,日本で展開するJMOOCを取り上げる.先行する欧米・アジアの実状を見極めながら,産学での協働事業を前提とする日本での期待と進め方に注目する.優れた授業コンテンツが公開され,これらが高等教育における専門導入科目・教養科目・語学などの基盤教育科目はもちろん,社会人教育・生涯教育などに利用される可能性を考慮しながら,今後の動向を探る.また,ICT利用による情報処理教育と英語教育を取り上げ,それぞれの専門家による教育理念と高等教育における学習のあり方を議論する.長年,カリキュラム策定や教材開発に取り組んでこられた経験を持つ2人の専門家から,将来を展望する.ICTは大学教育の陳腐化を防ぎ,学習のスタイルを変える可能性を秘めていると思われる.特に,興味・経験・達成レベルなどそれぞれ異なる個性を持つ学生の学習に対し,ICTは何をどうやってできるかを議論することも大切な目的の一つである.
司会:平澤 茂一 (早稲田大学 名誉教授)
【略歴】1961年早稲田大学第一理工学部数学科卒業,1963年同学部電気通信学科卒業.同年三菱電機(株)入社,中央研究所所属.1975年工学博士(大阪大学).1981年早稲田大学教授,理工学部工業経営学科(現経営システム工学科)所属.2009年早稲田大学名誉教授,同年早稲田大学理工学術院総合研究所研究員,現在に至る.情報理論・符号理論などに関する研究に従事.IEEEライフフェロー,電子情報通信学会フェロー.
9:30-10:20 講演(1) JMOOCのインパクトと今後の動向
白井 克彦 (放送大学学園 理事長/JMOOC 理事長)
【講演概要】米国をはじめ,ヨーロッパそしてアジアでもMOOCという活動が起って,急速に広まりつつある.MOOCの内容は徐々に多様なものになってきているが,話題となったのは,米国の有名大学の人気教授の授業であった.わが国からも東京大学が既に講義を公開し,世界中で相当数の受講者を得た.日本でもJMOOCが一年前に開始された.MOOCは高等教育にどのような影響を与えるのかは,まだ未知数である.秀れた授業コンテンツが公開され,無料で利用できるのであるから,個人的に学習できることはもちろん,大学においても,教材として様々に利用されることになるであろう.さらに,このような知の公開がグローバル社会の文化基盤へと成長していくことは,将来の大きな期待である.
【略歴】1968年早稲田大学大学院理工学研究科博士課程単位取得満期退学.工学博士.早稲田大学教務部長,国際交流センター所長,常任理事等を歴任し,2002年~2010年早稲田大学第15代総長.現在,同学事顧問.2011年4月より放送大学学園理事長.2013年11月JMOOC理事長に就任.文部科学省中央教育審議会大学分科会委員,日本私立大学連盟顧問等,多数の要職を兼務.専門は知能情報学.
 
10:20-11:10 講演(2) ICTを用いた情報処理技術者教育の現状と展望
神沼 靖子 (情報処理学会 フェロー)
【講演概要】情報技術系のモデルカリキュラムが目指しているスキルの向上と知識獲得に関連して,大学教育の質保証の問題とアウトカムズ評価に注目する.ここでは.実践的教育による学習者のモチベーションの向上,モノ創りにおけるeラーニングのデザイン,ICT利活用と学習者のコンピテンシー評価などの現状に触れる.さらに学習者と教育者の思いの共有を重視しながら,産学連携による情報処理技術者の育成について展望する.
【略歴】日本鋼管,横浜国大,埼玉大,帝京技科大を経て前橋工科大教授を2003年3月に定年退職.以後,教育・人材育成に関するプロジェクト等に参加し,情報処理技術者の質保証の問題に取り組み今日に至る.学術博士.専門は情報システム学.情報処理学会フェロー.
 
11:10-12:00 講演(3) e-Learningによる英語教育の可能性と将来の予測
中野 美知子 (早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授)
【講演概要】文科省は2013年12月に「グローバル化に対応した英語改革実施計画」を発表した.この実施計画によれば,2016年より逐次,英語教育の実践レベルは欧州共同体の教育庁が2001年に発表した言語教育のための共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages: CEFR)へと移行されることになる.CEFRは今現在でも国際基準であり,TOEFL, TOEIC,PTE: Academicなど有名な外部試験はCEFRとの対応関係を検証するための実験研究をすでに完了している.CEFRでは,英語の熟達度を3レベルにまず規定し(A:Basic User; B: Independent User; C: Proficient User), 各レベルを更に2分割し,合計6レベルとなっている.現行の指導要領では,中学校はA1,高等学校はA2である.我々が注意すべきは,文科省は英語の熟達度を一気に改善しようとしている点にある.現在,大学入試センター試験の問題はA2レベルであるが,これが一気にB2に格上げされることが予測される.即ち,新たな指導要領では,中学校がA1,A2を目指し,高校がB1,B2,大学がC1,C2レベルを目指して学習していくことになる.この様な急速な変化を実装するためには,ICT活用,MOOCの導入が必須となろう.この様な点を踏まえて,e-Learningの活用方法を提案する.
【略歴】Co-Chair, Asian Conference on Education, Co-Chair, Pan-Pacific Association of Applied Linguistics, CSLI, Stanford University, 1996〜1997, 研修 Centre for Cognitive Science とDept. of Theoretical and Applied Linguistics, Edinburgh University, 1984〜1986 研修.早稲田大学・教育総合科学学術院・教授,大学総合研究所・副所長.